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毎日が慌ただしいと、小さな幸せに足を止める暇もなくなってしまいます。 それでも、ふっと見つかった隙間の時間で『シカゴ育ち』を読んでいます。 その中に、『冬のショパン』という短編があります。
ジャ=ジャ(祖父)と僕(孫息子)の話だけれど、とうにジャ=ジャは心を閉ざし、家族との交流も断っていて、この二人にはハートウォーミングな触れ合いがあるわけでもない。ただほんの束の間、階上から漏れ聞こえてくるショパンの調べが、二人を繋いでいる。その繋がり方も、互いに一方的な感じで。やがて、ピアノを弾いていた階上の娘が去り、ショパンが聞こえなくなると、ジャ=ジャは前よりも一層閉ざされていく。
しかし、音楽は消え去っても、僕の中には、「何か」が残り、それ以前とは、大きく変化している。
淡々と日々は過ぎ去っていく。
私もジャ=ジャと僕を繋いでいたもの、ジャ=ジャの心を惹きつけていたもの、あるいは僕の心に残り続ける何かに触れてみたくて、ショパン全曲集を買いました。けれどここには、ジャ=ジャはいないから、ジャ=ジャのいた空間を感じ取ることはできない。それでも、加湿器の湯気を見ながらショパンを聴いていると、ふと、二人の情景が見えるような気がします。
隙間が見つかると、良い短編をぱらぱらと開きます。 『停電の夜に』(J・ラヒリ/新潮文庫)も思い出したように続きをゆっくりと読んでいます。(シィアル)
『シカゴ育ち』 著:スチュアート・ダイベック / 訳:柴田元幸 / 出版社:白水Uブックス
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管理者:お天気猫や
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