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世の中の多くの物語の基礎を成しているシェイクスピア作品ですが、 以前、『マクベス』の話をしていた時、→マクベス(その1) 『指輪物語』の中にも『マクベス』由来のネタが入っているって 言いましたよね。映画を見て、気が付きました?
「うん、すぐ判った。マクベスの魔女の予言でしょ?」
マクベスは滅びはせぬ、あのバーナムの森が
ダンシネインの丘に攻め上ってくるまでは
「『二つの塔』の中で、森の木のおじいさん達が ずんずん進んで塔を攻めるところ」 木の牧人、エント達ですね。 樹木の姿をしているので、森の木が直接城を攻めに来たように見える。 トリックでもなんでもない、言葉通り森が攻めてくるのでありました。
もうひとつは、今回の映画『王の帰還』の中にありました。 「これは簡単だよ」
マクベスを倒せる者はおらぬ、
女の産み落とした者のなかには
「もっとシンプルになってたけど。翼龍に乗った幽鬼の王。 "no man can not kill me"と威張って、manでないものに退治された」 やっぱり英語のひっかけなので、日本語にするともたつきますね。
実はもう一つ、映画では登場しなかったマクベス的場面があります。
いずれも医術から見はなされた病、
それが御手をふれただけでたちまち癒えます
マクベスの画策を逃れ、亡命中のマクダフとマルコムが、 「王の病」を癒すイングランド王の噂を聞きます。 このくだりはシェイクスピアが王に劇をお目にかける際、サービスで 御先祖エドワード懺悔王を誉めた場面と言われていますが、 「王は病を癒す力を持っている」という英国伝説が登場する訳ですね。
さて、映像化されなかった『指輪物語』の『王の帰還』の中では、 秘かにミナス・ティリスの都に入ったアラゴルンが、 「王の葉」と呼ばれる薬草を用いて、手の施し様がなかった 重病人達の命を救う場面があります。 (爽やかなハーブの描写が、とても気に入っているシーンなのですが) この、病人を救った奇跡のせいで、「癒し手」である真の王が 都に戻られた、という噂が人々の間に広がるのでした。
私としてはこの場面が「王の帰還」というテーマを象徴していると 思ったのですが、映画では真正面から帰還しました。
そういえば、狂乱のデネソール公はリア王ですね。 とすれば可哀想なファラミア様はコーデリアか。
あと、最近のマクベスものといえばあれでしょう、 リメイクされたTVドラマ『白い巨塔』(笑)。 さすがに時代が変わったので社会派医療ドラマと呼ぶには かなり苦しいけれど、そのぶんマクベス的権力闘争と破滅のドラマ、 といった骨格のほうを今回はより強調した作りになっています。 この話もまた後日。(ナルシア)
『マクベス』 著者:ウィリアム・シェイクスピア / 訳:福田 恒存 / 出版社:新潮文庫
『マクベス』 著者:ウィリアム・シェイクスピア / 訳:木下順二 / 出版社:岩波文庫
『マクベス−シェイクスピア全集3』 著者:ウィリアム・シェイクスピア / 訳:松岡和子 / 出版社:ちくま文庫
『マクベス−シェイクスピアコレクション』 著者:ウィリアム・シェイクスピア / 訳:三神勲 / 出版社:角川文庫クラッシクス
・『新版指輪物語』全7巻
著者:J・R・R・トールキン / 訳:瀬田貞二・田中明子 / 出版社:評論社
・『新版指輪物語』文庫 全10巻(『王の帰還』上・下)
著者:J・R・R・トールキン / 訳:瀬田貞二・田中明子 / 出版社:評論社
2003年02月27日(木) 『C・S・ルイスの秘密の国』
2002年02月27日(水) 『こころの処方箋』
2001年02月27日(火) 『アマリリス』
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管理者:お天気猫や
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