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夢の図書館新館

お天気猫や

-- 2002年02月27日(水) --

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『こころの処方箋』

なんとなくバランスを取っているつもりでも、 人間どこかに悩みは生じている。 あるいは煩悩にまみれて苦悩している。 そういうものを抱えたこの手で、 「こころの処方箋」を開き、読み始めるのである。

文庫で各4ページずつ、55のテーマについての処方箋。 言葉がわかりやすくて、 あの河合さんでもそうなのか、凡人と自称しているぞ、 などと上手に思わせてくれるので 読むのに時間はかからない。が、 ひとつひとつ、つきつめてゆこうとすると、 まさに良薬は苦しに通じる処方箋なのだった。

今の私にとって感慨深かったのは、 「灯を消す方がよく見えることがある」 というテーマと河合さんのエピソードである。 心理療法家の役割は、

「灯を消して暫らくの闇に耐えてもらう仕事を共にする」(本文より)

ことなのだと河合さんは言っている。 たとえばジェームズ・タレルの、 視覚を手段とした作品のなかに 身を置いたときの感覚がよみがえってくる。 はじめ闇と思われた空間が、じっと耐えているうちに、 色彩と形あるものに見え始める、あの光の世界。

自分はあることについて病的なのではないだろうか、 それとも名前のつくような病気なのだろうか、 そんな不安がよぎるうちは、まだきっと ラインは超えていないのだろうと思うような日常の自己満足が、 やっぱりおかしいのかもしれないけれど、 それでもいいんだなという諦めにも似た安堵の 色に染まってゆく。 他のだれでもない、自分であるのだから。 (マーズ)


『こころの処方箋』 著者:河合隼雄 / 出版社:新潮文庫

2001年02月27日(火) 『アマリリス』

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