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■ 懐刀
今日、職場の目標管理面接みたいなのがあった。 師長さんとの面接だ。
仲のいいもとPICUメンバーの先輩とかから、先輩が辞める旨を話したときに「○○ちゃん(先輩の名前)は裏切ったんじゃ!」と師長さんがリアルに大号泣しただとか、 職場に適応できなくなって結婚してやめていった他の先輩に 「もし○○さんが子供を産んで、その子が心臓疾患でウチ(の科)にかからなくいけんくなったら、どんな顔であなたが来るか見ものだわ」 とか、まァその他もろもろなかなかにプシけている師長さんの話を聞いている身としては、何ひとつ弱みを握らせてはいけないある意味緊張の面接である。
「何か気になることはある? 人間関係とか…あの人がどうだ、とか。私には話してもいいんよ」
いやいやぁ、具体的な名前や行為を挙げられるわけないじゃないすかー、 どうせその情報また上のスタッフに流すんだろ? 全部を具体的に流すんじゃなくて、かいつまんで流すでしょう? そのほうが余計たち悪いっての。 そんでもって私がこの部署の不利益になるようなことをしたときや、やめるときとかに、その私の弱みを逆に凶器として振るうかもしれない人に、何ひとつ漏らせるわけないじゃんかー
まるで背中に、笑みを浮かべながらひたりと刃物を突きつけられて、 質問をされているような感覚だ。 わあ、こわいな。 不用意なことを口走るなよ私。
力入れすぎ? 考えすぎ? 疑心暗鬼? いやいや。 全てひっくるめて、しまいこんでしまえば、 それはあったことにはならないよ。 「ないもの」に対して、ふるえる刃なんてそうそうありゃしない。 それくらいでたぶん丁度いい。それでもまだ足りないくらい。
妙に物分りのいい返事をする私は「○○ちゃんは私が思うに、ちょっと大人じゃから、こういうことで悩んだりせんかもしれんけど」とか思われてたり、
師長 「今回こういった事情で急な異動になって、最初は元の部署に戻すって話だったらしいけど…ちょっと、こっちは戻すのは難しいっていうか…3月まで働いてもらうことになったし… だから、何か言いたい事とか気になってることとかあったら看護部長さんが面接で話を聞くって言ってて、他の異動の子も行ったりするみたいなんだけど…」 私 「お話を最初に頂いた時点で、もどれないだろうなと思ってましたよ。教育するのにそもそも時間がかかるし、難しいですよね…。それに私は来年の異動の件で部長さんとはお話させていただいてるので、その面談はしなくて大丈夫です(ニコヤカ)」 師長 「○○ちゃん、大人じゃなぁ…」
とか思われていたらしいが、
いやいやァ、そりゃ師長さん、 何言ったって無駄だと思ってるから何も言わないだけですよ もう見切りをつけて居なくなるつもりだから、唯々諾々と従ってるんだよ
どこまで真に受けてくれてるのか甚だ疑問だけれど、 言葉っていうのはなかなか便利なツールだね。 慎重に使わなければ手ひどく怪我をするけれど、 うまく使えばなかなか良いものだ。
背にひたりとあてられた刃物を感じながら、 決して振るうつもりもない懐刀を、 だいじにだいじに撫でながら私は心を鎮めていく。
おかしいおかしい、 刃を見せない限りコレが刀だとも気付かないかもしれない。
どうぞどうぞ、 気付かないままに。 私はただコレで、林檎をむいたり工作をしたり、髪を切ったりしているだけですから。
2010年09月27日(月)
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