こんなに好きでもいいですか? すみれ 【MAIL】【HOME
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2003年01月31日(金) Blizzard


朝は晴れていたのに午後から大荒れの一日だった。
何時もは何とかなっていた駐車場も帰ってきた時には酷い雪で、
車の中に子供を残して除雪せざるをいけない状況。
そのうち一人ぼっちが寂しくて子供も泣き始める。
前も見えない横殴りの風の中、子供も外に出して大量の雪を除けると、
隣に停めてある車の主も丁度帰って来て、
私の状況を見るに見かねて手伝ってくれた。




彼は今日、この大荒れの天候の中、少し遠い所まで日帰り出張。
最近は今後の会社の行く末の為に、営業会議で遅くまで仕事をしている。
今日も金曜だというのに、午後からは会議、
それが延々続いて私の電話も取れない状況だったのだろう。
子供が又鼻水でグズグズしていたので今日は御風呂を控えようと思い、
夕食後の一時、今日はこれで最後にしようと思いながら彼の携帯にダイヤルした、


「ゴメン、ゴメン、会議は終ってたんだけど、
まだ皆残ってて話していたから・・・」

彼が何時もの優しい口調で電話を取ってくれた。
今日は日帰り出張だったのに、
色々遣らなくてはいけない事があって急いで帰社したと話す彼・・・。
「えっ?この雪なのに前・・・・見えたの?」

私は会社から帰宅するだけでも恐々と運転していたのに、
彼は普段でも2時間以上掛かる道程をあっと言う間に帰ってきて、
そして時間通りに会議に出席したらしい。
私にとっては神業のような出来事だ。

「前は全然見えなかったけれど何時も通っている道だからね。」

彼は意図も簡単に、それを遣って退ける。
私にとっては、そういう部分も頼もしく見えてしまう部分。
『彼は大丈夫』
『彼なら大丈夫』
時にそう思って余計な問題まで負担させてしまう・・・・。


今日も、もしかするとそうだったかも知れない・・・。
他愛の無い話をしていたのに、
私が彼なら解かってくれると勝手に思い込み、
又余計な事を話してしまった。

「車ね・・・やっぱり来ないょ・・・・
エンジンから黒煙が出て納車が遅くなるとか言ってた・・・」

年末に同居人が勝手に作った私名義の借金、
それを撤回させる為の方法・・・。
嘘を吐いてローンを組み、その代わりに安い車を購入する
所謂「飛ばし」という名目の不良債権処理。
簡単に言えば、新車を購入したと見せ掛けて中古車を手にし、
残った金額を借金に宛がうという、あくどい処理方法がこの世には存在する。
私はこの遣り方が嫌で年末近くから同居人と言い争いが絶えなかった。
私の実家にも相談したが、
「自分達の事だから自分達でどうにかしなさい」という返答だった。
前から通勤の為に家に車が一台しかないのも不都合だと
同居人は喧しいほどだったし、
遣り方は嫌だったけれど、
勝手に同居人が私名義の借金を作って来た事が許せなくて、
どうにかして借金名義を同居人の名前にしたかった私は、
この処理を受けざるしか出来なかった・・・。
様々な事を調べたけれど、夫婦である以上夫婦で作った借金は
夫婦で返して行くという方法しか今の法律では当て嵌まる物が無く、
今後の生活で私が同居人を必要としない時期が来た時は
自分名義の借金が傍迷惑にならざる物にしかないからだった。


どうにか年越しまでには、この処理で
私名義の借金は同居人名義に移行したけれど、
肝心の中古車の納車が何時まで経っても成されていないのだ・・・。
私の意見からすると、不良債権の為に「飛ばし」を行ったのだから、
車など我が家の物などにならなくても良いし、
それが当たり前だと思っている。
只、同居人に「車・・・何時来るの?」と聞くと、
今日の様に納車がずれ込むと返事をするばかり、
「今回の事で又何かあったら出て行って! !」
私がそう言うと、ただ「解かった」と答えるばかりの同居人。


「もう、何度も嘘を吐かれているから・・又今回も同じだと思う」

彼にそう言うと・・・・。

「エンジンからは黒煙なんて出ないよ・・・
出るのは白煙だし、黒煙が出るのは
マフラーからだとしたら理解出来るけどね。
それにしてもCDチェンジャーが付いてるとか付いてないとか・・・・
嘘を付くのに、そんな事わざわざ言うだろうか・・・・」

彼のどっちつかずの解釈が、落ち着かない私を苛々させた。


「すみれの家に車が来るの・・・凄い楽しみにしているんだぁ〜」


もう随分前に電話口で彼が子供の様に言っていた。
元々、究極の車好きの彼、
そして家に来る事になっている車種は彼にとって、
とても思い出深い物だったから、
まるで自分の事の様に喜んでいた。

でも・・・

その車は我が家に来るかどうかも解からない・・・。
そして、それは私にとって同居人との別居を指していた。

同居人と別居した後の事を考えると、
今の様に彼と対等な立場で付き合っていくなんて事は・・・
私の事だから出来ないだろう・・・。
彼を今以上に必要として苦しめたり、
時には冷たく突き放したりもするだろう・・・。
一人になり日々色々な事が圧し掛かって来て、
とても彼とは笑顔で居られる事など考えられない。


「ねぇ・・・・」
「苛々するから車の話をするのは止めよう」



自分から話したのにも関らず、
一人で苛々して彼に強い口調でそんな事を言ってしまった・・・・。
後ろでは子供が泣いている・・・・。
私は・・・もうどうして良いのか解からない。
一番、良い事は車が予定通り納車になり、
同居人との負債を今迄通り返済し続ける事だ。
でも、それもどうなるか解からない・・・。
同居人の事なんて何も信用出来ない。
本当は同居人となんて一緒に居たくない・・・。
好きな人と・・・彼と一緒に居たいのに・・・。
私には、その方法さえ知る術が無い・・・・。








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ハッとして気がついた。
彼は当事者じゃなく、ただの傍観者だった。
悲しいけれど、それは真実で・・・
彼は私の精神構造の請負人ではなかった・・・。
彼が発した一言は余りにも理に適っていて・・・。
私はそのまま何も言わずに電話を切ってしまった。


10分位経って、気を取り直し一言「ごめんね」と言う為にプッシュボタンを
何度か押したが、彼の携帯は電源が落ちていて繋がらなかった。


「こちらは留守番サービスです・・・」


私の嫌いな、あの女性の声がするだけ・・・・・。





「今回の事が又嘘だったら同居人と別居する話をしようと思います。
もしそうなったとしたら貴方とも付き合えなくなるね。
立場に誤差があり過ぎるし、私は子供を育てる為に
色々考えなくっちゃいけなくなるし・・・。
既婚者の貴方とは・・・付き合っていけないな・・ってね・・・。
子供の将来を考えたら・・・キチンとした人と色々考えなくっちゃ・・・。」


「喧嘩は嫌だねって言ってたのにね・・・ごめんね。
私も仕事があるし色々考えなくっちゃいけない事や
遣らなくっちゃいけない事があるし・・・。
時間も無いから仲直りするには
時間が掛かるので嫌だと自分でも思ってたのに・・・
普通の家だったら車を買う事は嬉しい事なのにね・・・
私の家は可笑しいから・・・
同居人がこんな性格じゃなかったら・・・
今頃ニコニコして車を運転してただろうに・・・
貴方も・・・普通の家の人と付き合ってね・・・
私は・・・もう駄目だと思う。」



本心を彼へ送る・・・・・。
彼は私という可笑しな女じゃなくて・・、
もっと普通に生活していて、もっと普通の女性と付き合っていたなら
本当はもっと、もっと、沢山幸せな笑みを絶やさずに居られた様な気がする。
どうやら・・・
一生懸命に目を凝らしても前が見えないのは
この吹雪のせいだけじゃないみたいだ・・・・・。



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