こんなに好きでもいいですか? すみれ 【MAIL】【HOME】
- 2003年01月25日(土) Time limit
「その書類、打ち込んじゃってね」
もう定時をとっくに過ぎて、残っているのは私くらいなのに、
どうして、こんな日に限って課長はそんな事を言い出すんだろう・・・。
約束の時間はもう10分以上も過ぎているのに・・・。
何枚かの書類を打ち込んでから痺れを切らした私は
「続きは来週にします」と言って、更衣室に駆け込んだ。
彼は会社から少し離れた所で何時もの様に私を待っていてくれた。
「体調は良くなった?
今日も無理しなくて良かったんだよ?
足は冷たくない?」
優しい言葉が心地良い・・・。
途中で「何処へ行こうか?」と二人で悩みながら、コンビ二に入る。
今日も陳列棚の懐かしい御菓子の袋を見ながら、アレコレ吟味していた。
「あのね・・・今日は余り遅くなれないょ・・・・ごめんね・・・・」
彼が運転しながら呟いた。
「エ〜!?」
何時もなら、そんな風にして、大袈裟に振舞ってしまうけれど、
「そうだよね・・・今日は土曜だし・・・
家に居ない事自体、可笑しい事だもんね・・・」
そう胸にして、我侭は言わない事にした。
何よりも週末の土曜日に、彼が横にいる事がとても嬉しかった。
時間が無いのは知っていたけれど、
御互いに、どうしても確かめ合いたくて、
3回目になる、あの場所へ車を滑り込ませた。
Room serviceで食事を頼んだ後、
もっと別な・・・大事な話をすれば良かったのに、
私達はくだらない話しかしなかった。
どうやって、家を抜け出してきたのかと彼に聞くと、
「書類が溜まっているから仕事に行って来ると言い訳をした」と答えてくれた。
「仕事・・・もう私は貴女の会社の仕事など請け負っても居ないのに・・・。」
考えている事が顔に出てしまったのか、彼も同じ質問を私に投げ掛ける。
「仕事で遅くなるって言って来た・・・・」
私達はどうやら同じ穴の貉・・・。
御座なりな行為だとは思わなかったけれど、
今日はゆっくりと目を閉じる時間さえなくて慌しかった。
ベットの上で少しだけ彼の会社の事を聞いた。
「もう少し聞きたい・・・・。」
そう思う日に限ってタイムオーバー・・・。
着替えて部屋を後にする前に、もう一度だけ彼が私を引き寄せて、
自分の胸に私の顔を埋めさせてくれた事だけが、
唯一の誠意だと感じた。
帰りの車の中で、一昨日読んだ本の話をした。
話しながら・・・・。
「私は今、彼と何をしているんだろう・・・?」
と自分のしている事が自覚出来なくなった。
何処から遣って来たのか、頭の中で・・・
あの長身の彼が、今は妻となったあの痩せた女の人に
歌わせた詩がリフレインして、自分でも驚いた。
「私は・・そんな曲聞きたくない! !」
心の中で何度も何度も首を振って消そうとしたのに、
それは彼と初めて逢った家の近所の駐車場を眺めるまで
ずっとリピートして鳴り続けていた。
「もう少し時間が・・・あったらね・・・」
家に着く前の100メートル先で私が呟くと、
彼は悲しそうな顔をして私の目を見ていた。
家に戻ると、子供と同居人が寝転んでテレビを見ている。
子供と一緒にじゃれながら部屋着に着替えて、
PCデスクに寄り掛かると、2時間前の事が嘘のように感じる。
「余りにも時間が無さ過ぎて・・・・」
それが今日の感想・・・・。