こんなに好きでもいいですか? すみれ 【MAIL】【HOME
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2003年01月26日(日) 絞殺死体

テレビに実家の真っ白い海が映っていた。

「今年も来たんだな・・・一番、寒い季節だね・・・・」

年を費やしたんだろう・・・・。
最近では色々な事に切なくなって、
目尻に冷たい物が溜まるのを自分でも驚いたりする。
画面に釘付けになりながら、子供を母や養父に見せてあげられない事を
悲観してしまった・・・。
生きてるなら何時か逢えるし、飛行機で帰れば何時間かの距離なのに・・。
お正月の約束を守れなかった事が・・・悲しくて仕方が無い・・・。


今日は子供も私もお休みで、
ユッタリとした朝を過した後、洗濯や掃除に奮闘した。
子供は洗濯物をパンパンと伸ばすのが何時ものお気に入り、
「これ・・・僕の・・・・」
自分のトレーナーを差し出して、「一番、先に干してくれ」と
催促のつもりなんだろう。
勢い良く自分の洋服たけを伸ばしている。






早く寝かせなくっちゃ・・・そう思っていたのに、
子供がナカナカ寝付かなくて、代わりに私も一緒に眠ってしまった。
それでも、点けっ放しにしてあったPCから微かな音が聞こえると、
体を無理に起こして、彼に返事をする。
子供がナカナカ眠らなくて、私も一緒に寝ちゃった・・・と言うと、

「ホントに寝ちゃったの?」

何度も何度も私に聞く彼。
「変な事ばかり聞いてゴメンネ。
でも、僕がメッセを繋げると、何時も子供と一緒に寝ちゃった・・
て言われるから・・・」

彼は何を心配しているのか最初は解からなかった。
そのうちに段々、頭が眠りから覚めてその意味を捉えた。

「そんなに同じ事を聞くのは・・・私の事を心配してくれているからだよね?
私の事・・・心配になるくらい・・・好きだからだよね・・・?」

一応、助け舟を出したつもりで居たのに、彼は又その話を進めた。

「すみれは怒っているでしょ?
僕が勝手に色々な事を想像して変な事を言うから・・・」

私も・・・彼の話を聞いているうちに悲しくなって、
自分から心配ばかりさせている事を何度も謝った。
本当に・・・最近、彼は要らぬ心配ばかりしていて、
可笑しくなってしまうんじゃ無いだろうか・・と逆に私が心配になる程だ。

「僕もね・・・自分が我慢すれば良いんだ・・・とは思ってるんだけど・・」

私達の恋愛感は全く違うものだから、今日の様な遣り取りは前から続いていた。
私の言い訳からすれば、私が彼への想いを成就したが為に、
自分の気持ちをあからさまに態度で現してしまうと、
彼はそれに応えられない事を嘆き悲しみ、
それを目にする私も何時の間にか悲壮感を漂わせて、
肩を下げて前を向く事も忘れてしまう。

自由で居たい・・・。
それが私の本心なのかもしれない。
彼に言わせれば「都合の良い、ずるい女」だと言われかねないだろう。
でも、手に入るか解からないものに執着しすぎて、泣きを見続けてきた私にとって
もう一度、賭けに出て失敗すのは、恐ろしく怖い悪夢にしかほかならない。

その点、同居人は私に一切、束縛を課さない人だった。
誰と何処へ行こうが、誰と何を食べて何を話そうが全く関知しなかった。
それは「興味がない」だけの事で・・・寂しく思った時期もあったが、
元々、私は自由奔放だったし、今では好都合だとも思う。
何しろ、昨日の様に彼との逢瀬の後に結んだ髪が乱れていようと、
口紅の色が無くなっていたとしても、一言もその事に触れた事など無かった。
「これが彼だったら、どうだっただろう?」
そんな事を考えていたら、彼が徐に言い出した。

「でもね・・・本当に男友達と会っている所を目撃したり・・・
チャットやメールの現場を見てしまったら・・・どうだろう?
ちょっと、実のところ・・・どう考えるかわからない・・・
それを受け止める寛容性というか・・・付き合っていく自信がない・・」

私は・・・彼の言葉を聞いて、静かに首を絞められているように感じた・・・。
ジワジワと私の首に彼の優しい手が延びて来て、
そして、ユックリと首を締め上げられる様な感覚・・・・。
今は彼の顔が薄暗く惚けて見えないけれど、
本当に首に手が回った時の彼の顔は、きっと不安や信頼薄や悲しみで、
酷く歪んでいる事だろう・・・・。

時計を覗くと、もう午前4時だった。
明日は彼も私も仕事。
「もう・・眠らなくっちゃね、明日は貴方も仕事でしょ?」
私はそう言った筈なのに、彼が私に聞いて来た。





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「うん。貴方だけだったょ」
私は真実を話しながら・・
それを天井で見下ろしている、もう一人の自分がいる事を感じた。







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上で喚いている自分の声を聞きながら、
私はPCの前で、自分が好きな男に絞め殺される姿を想像した。


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