こんなに好きでもいいですか? すみれ 【MAIL】【HOME】
- 2003年01月23日(木) ある愛の詩
あの頃の私達にとって「トライベッカ」は
他の場所とは格段に違う特別な場所だった。
置いてある物は他の店と同様に、
琥珀色の水だったり、
色とりどりの魔法の水滴だったり、
それでも、その店に行くと他の店よりもキラキラして神々しく見えた。
☆.。.:*・゚☆.。.:*・゚☆☆.。.:*・゚☆.。.:*・゚☆☆.。.:*・゚☆.。.:*・゚☆
AH-悲しいほどに素敵
恋は不思議な、不思議な、不思議な出来事
You’re my Angel 迷わないで!
OH!BABY’Cause I love you
Because I love you
Because I love you抱きしめて!
虹色の空を越えて 深いところで感じ合っていたい
☆.。.:*・゚☆.。.:*・゚☆☆.。.:*・゚☆.。.:*・゚☆☆.。.:*・゚☆.。.:*・゚☆
彼女を知ったのは、まだ初恋の淡い日溜りに揺れる高校生の頃だった。
その時、好きだった彼が一本のテープを私にくれた。
「女の子って・・・何処かしら可愛い所があるんだよ?
だから・・・私なんて駄目だ・・・なんて言っちゃいけないよ・・・?」
よく私に、その人が言っていた・・・・。
チャーミングな人・・・・。
この世界に、そんな人達が存在する事を知った。
☆.。.:*・゚☆.。.:*・゚☆☆.。.:*・゚☆.。.:*・゚☆☆.。.:*・゚☆.。.:*・゚☆
AH-腕を離さないで
恋は気ままな、気ままな、気ままな出来事
You’re my Angel あせらないで!
OH!BABY’Cause I love you
Because I love you
Because I love you呼び止めて!
壊れそうなガラスの糸 繋ぎ合わせ時の彼方
貴方といるだけで自由になれる気がする
☆.。.:*・゚☆.。.:*・゚☆☆.。.:*・゚☆.。.:*・゚☆☆.。.:*・゚☆.。.:*・゚☆
彼女が「トライベッカ」に来る事を知ったのは、
私がこの街に住み出して
沢山の友達に囲まれ好きな事をしたいようにしている時だった。
その頃はまだマスターとの面識は薄かったけれど、
代わりに知り合いが厨房でアルバイトをしていた。
そして私はT’REXのアルバムを抱えて、
長身の彼と親密そうにしている彼女の話しを耳にした。
当時、付き合っていた彼が同じ職業だった事もあり、
ロンドンで彼と彼女が同じ場所で作業していたらしいと聞くと、
「どんなスタジオなの?」としつこいくらいの質問を浴びせた。
☆.。.:*・゚☆.。.:*・゚☆☆.。.:*・゚☆.。.:*・゚☆☆.。.:*・゚☆.。.:*・゚☆
『真実を重ねあって 偽りをきどらずに
永遠を探し出して この瞬間を夢見るのサ』
☆.。.:*・゚☆.。.:*・゚☆☆.。.:*・゚☆.。.:*・゚☆☆.。.:*・゚☆.。.:*・゚☆
彼女が私を抱きしめたのは、
マスターの粋な計らいがあったからこそだった。
「BooFooWoo」はこの街では言わずと知れた店で、
彼の親類が経営していると噂で聞いていた。
マスターは私達にそこへ来るように言ってくれ、
そして、お酒を飲むとアカペラでも歌い出す彼女の声をじかに耳にした。
「まるで天真爛漫な天使の様な人だ」私はそう感じた。
帰り際「またね」の代わりに私を抱きしめた彼女は、
思っていたよりも、とても小さな人だった。
19番が仄かに漂って、とても優しい気持ちになった。
「同じ所のなんだね〜」
彼女が私のつけている物を褒め称えてくれている様で嬉しかったし、
その素敵なオーラに包まれて私は夢心地になっていた。
彼女の笑顔はまるで太陽を浴びて輝くひまわりの様で、
私も少なからず彼女の元気なPowerを貰ったような気がしていた。
ただ・・・・・・
ひまわりの下の地面には大きな影があるのを誰も気がつかなかった。
☆.。.:*・゚☆.。.:*・゚☆☆.。.:*・゚☆.。.:*・゚☆☆.。.:*・゚☆.。.:*・゚☆
二つの影が傷ついても きっといつかどこかで又逢える
貴方といるだけで素直になれる
☆.。.:*・゚☆.。.:*・゚☆☆.。.:*・゚☆.。.:*・゚☆☆.。.:*・゚☆.。.:*・゚☆
一度目も・・・二度目に逢った時も気がつかなかった、
それに友人の噂話には呆れすぎて耳を傾ける事など馬鹿らしいと思っていた。
それが暫く経って画面上の痩せ細ったあの女性を目にした時、
悲しすぎで胸が締め付けられるように痛かった。
それでも私はこの街に彼女が来る時、なるべく彼女に逢いに行った。
初めて彼女を知ってから、もう10年近い歳月が流れていた。
彼女が独りになったのは、それから3年後だったように思う。
☆.。.:*・゚☆.。.:*・゚☆☆.。.:*・゚☆.。.:*・゚☆☆.。.:*・゚☆.。.:*・゚☆
『真実を語り合って 偽りを慰めあい
永遠を誓い合って この瞬間を夢見るのサ』
☆.。.:*・゚☆.。.:*・゚☆☆.。.:*・゚☆.。.:*・゚☆☆.。.:*・゚☆.。.:*・゚☆
ずっと彼女はどんな風に過ごして来たんだろうか・・と気掛かりだった。
あの痩せ細った人の事をどう思って来たんだろうか・・・と。
一人で寂しさの為にベッドに顔を埋めたりしていないだろうか・・・。
これから、又あんなlovePowerを皆に見せてくれるだろうか・・・。
私が『永遠の愛の詩』だと信じて来た曲はまだ生きているんだろうか・・・。
熱のある頭で物事を考えるのは良く無いと思いながらも、
私は裏表紙までマジマジと眺めながら、
その本をベットの脇へと静かに置いた。
何となくだけど彼女の言いたかった事が伝わった。
それでも、今の私にはとても複雑な気持ちだった。
「ねぇ・・・すみれ?今、貴女がしている事って・・・・。
あの時の彼女に苦痛を与えさせている事と同じなんじゃないの?」
誰かが私に囁いた。
彼女の問いだけが揺ら揺らと空を舞っていた。
Quotation&Source by
Lilith(British Fantasy)
「ある愛の詩」
for Ms. Kumiko Yamashita's cooperation.