こんなに好きでもいいですか? すみれ 【MAIL】【HOME】
- 2003年01月21日(火) Virus
朝から喉が痛かった。
昨日の夜、同居人が帰宅してから、少し口論してしまったから、
それのせいだろうと高をくくって居たら、
お昼を過ぎた頃から寒気がしだした。
「この書類が終ったら・・・早退しよう」
誰もがティシュ片手にPCへ向う私の事を、心配そうな顔で覗き込んでいた。
「あぁ・・・きっと子供のインフルエンザがうつったんだな・・・」
何時もは開けっ放しにしているフロアーのドアを閉めながら諤々の膝で考える。
ワクチンは打ったけれど、効き目が出るのは数週間後・・・。
数日前の子供の事で思い知った。
この一週間弱で同居人、子供、そして私・・・ウィルスは何時の間にか家の中で
蔓延してしまった。
誰が一番、先にウィルスを家の中に持ち込んだのか・・・。
そんな事を言い出しても犯人は一目瞭然、
「それを追求しても今更どうにかなる訳でもなしに・・・・。」
何時もの同居人への強気な態度もなくなったのは、
体が思い通りにならない証拠。
1時間置きに悪寒とボッーとした熱に侵される。
帰ろうと思っていた時に限って、
チェックをしなければいけない書類が後から後から追加される。
そして、気がつくと、もう外は真っ暗闇だった。
「今日は忙しいですか?頭が痛くて・・・
帰りに病院へ行こうと思っていたのですが自力で行けないかも・・・・。
後で電話 しても良いですか?」
定時で帰ろうとは思っていたが、
その頃には車を運転して帰る気力さえも無くなっていた。
周りの皆が心配になったみたいで、
同居人に電話をして迎えに来て貰う様に催促する。
仕方無しに電話を入れてみたが、
「明日じゃ駄目なのかよ」
惚けた返事しか返って来なかった。
返事を聞くやいなや私は静かに受話器を置き、そして昔の事を思い出した。
同居人がまだ学生だった頃、仕事場から同居人の家へ直行した私は
酷い頭痛と悪寒に襲われていた。
頭がガンガンして立っているのもやっとの状態だった。
御願いだから病院へ連れて行って欲しいと言う私を後にして、
同居人はバイトへ出掛けて行った。
寒空の中、故障した自分の車を置いてまでタクシーで駆けつけ
私を背中におぶりながら病院へ運んでくれたのは別の男友達だった。
私はその友達には心から感謝した。
それでも私の熱は下がらずに、1ヶ月も入院する羽目になってしまった。
「あの頃と全然変わっていないんだな・・・・」
同僚達に「忙しくて来れないそうです・・・」と答えながら、無情の顔を作った。
彼は直ぐに出したメールの返事を送ってくれた。
「 風邪、悪化してきたかな?
あのね・・・こういう時こそ、
早退して送って行ってあげたいんだけど・・・
今日ね・・・6時から社員会議があるんだ・・・
役員を除いた全員で、今回の会社の処遇について話合おうと、
何時もと別の会議室を借りて・・・
すみれ・・・大丈夫?ごめんね
ひとりで運転できるかな?」
どうして私はこうもタイミングが悪いのだろう・・・。
あの頃とは全然違って・・
私を背中におぶりながら、病院まで駆け込んでくれる男友達も見当たらない。
私は自力で車を運転しだした。
「なんとかして病院へ6時までには行かなくっちゃ・・・。
保育園で子供が待っている・・・・。」
又血液検査で3本も針を刺された。
私の血管は看護婦泣かせ、
そんな事より早く楽になりたかった。
「2・3日休んで行きますか?」
医者は当たり前の顔をして言うけれど、
誰が子供の世話をするのだろうと・・・断らざるをえなかった。
その代わりに「明日又来ます」と約束する。
薬を飲み、自分で座薬を挿して眠った。
でも、苦しくて何度も目が覚めた。
「大丈夫なのかな?寝込んでるのかな?
連絡が無いと・・・いらない心配までしてしまったりして・・・」
真夜中にPCを覗くと彼からのメールが1件。
帰宅してからも子供に御飯を食べさせる事で精一杯。
私はその後、ベットに倒れ込むように眠ってしまったし、
彼への連絡を怠っていた。
「帰ってきてからメールチェックしなかったの?」
もしかすると・・・・。
そう思って行ってみると案の定、彼は何時もの場所で私を待っていた。
「連絡も無いから色々心配だったよ・・
病院へは行けただろうかとか・・・
他にも色々考えてしまったよ・・・・」
「他にも・・・・ってどんな事?」
彼はどややら私が別の人に頼んで病院へ連れて行って貰ったんじゃないかと
考えていたらしい、その後、その人と食事をしたり、ドライブに行ったり・・・・。
私からしてみると体調が悪いのに、
どうしてそんな想像が出来るのか不思議な感じがしたけれど、
彼の心配な気持ちを思うと居た堪れなくなって、ひたすら謝り続けた。
「あまり干渉しちゃ・・・息がつまっちゃうだろうけど・・・」
彼の無い物強請りの気持ちは痛い程解かったが、
私も話を聞いていくうちに気持ちまで元気が無くなって行きそうで、
「おやすみ」と言ってPCを閉じた。
ベットに入ると鼻が詰まって上手く呼吸が出来なくて、
何時もより深い憂鬱が遣って来たように感じた。
熱のある頭で考えると・・・・・。
そんな考えまで浮んできた。