こんなに好きでもいいですか? すみれ 【MAIL】【HOME】
- 2002年08月11日(日) 泡の残り香
御昼前に彼から電話が来る。
同居人は今日、勝手に出社してくれて助かった・・・。
彼は今日、一泊出張の為、日曜なのに400kの道程を出発する。
市内を出る前に、会社の人へ昨日のサッカーで届けられなかった書類を
持って行くんだょ・・・と言っていた。
出張から戻ってくるのは月曜の深夜。
それが済むと来週まではお盆休みだ。
「一週間も・・・逢えないんだ・・・・・。」
「休みが終っても・・・予定なんて立てられない・・・。」
そう思うと、どうしても寂しくなってしまって、
無理にお願いをしてしまった・・・。
「あのね・・お願いしたい事があるんだけれど・・・・。」
「牛乳と煙草を買って来て〜それから、オヤツも・・・・。」
彼は快く引き受けてくれた。
用事が済んだら電話をくれると思っていたのに、
待っても待っても電話が来ない。
やっと電話が来たのは予定よりも1時間以上遅れての事だった。
「もう、良いんだよ〜出張に行くのが遅くなるから・・・・」
私がそう言うと・・・・。
「だって・・・通り道でしょ?」と言い、彼は笑いながら家に来てくた。
「30分だけだよ〜」と何時も言うものの、
今日も子供と3人でスパゲティーを食べてテレビを見ながら、寛いでいる。
子供が恥かしいそうにして居るのにも関らず、
食卓テーブルから、わざとにフォークを落としたりしているのを見て彼が・・・
「注目されたいんだよ、きっと・・・・」
「自我が芽生えてきたんだね。」
と子育ての先輩として色々教えてくれていたが、
何時も食事の時間に悪戯ばかりするのは内緒にしていた。
「お盆休みはどうするの?」と聞かれて、
「うーん、何も決まっていないよ」と答えると。
「気分転換に何処かに行ったほうが良いよ」と彼は言う。
本当は私の実家に帰りたかったのだが、長旅で燃料費も掛かるし、
どうしようかと思っていた。
実家に行けば行ったで、親戚の目もある。
同居人のお陰で私の実家では、私も一緒になって良い笑い物だ。
同居人は昨年、運送業を営んでいる私の叔父に、
世話になるだけ世話になって、
恩を仇で返す様な真似をしてしまってから、
私の教育が悪いのだと親戚からは白い目で見られている。
その後、その叔父の会社で私も働く事になったのだが、
退社する時にはやはり、叔父に言われた。
「又・・・帰ったら、色々言われると思うから・・・・・。」
彼にそう言うと、全てを知っている彼も困ったような顔をしている。
同居人も実家には帰ろうと言っていたのだが、
帰るとなると御土産も持って行かなければいけないし、
「御盆にお金を使ってしまったら、お給料日までどうするの?」と聞くと、
「キャッシングすれば?」と同居人は言う。
誰のカードでキャッシングしようと思っているのだろう・・・・。
どうして返せるあてが在るのか無いのかも解からない御金を借りようと
するのだろう?
私が又同居人の事でイライラしていると彼も益々、困ったような顔をしている。
「でも・・・・こんな時くらい何処かに出掛けないと・・・子供が可哀相だよ?」
そんな事を言う彼の顔を見ながら、私は又別の複雑な思いに苛まれていた。
家族で何処へ出掛けろと言うのだろうか・・・・。
同居人と何処かに出掛けたって、決して楽しくない事を知っているくせに・・・。
この人は・・・私にどうしろと言うのだろう・・・・。
それより、私は貴方と一緒に居たいのに・・・・。
テレビを見ている彼の横顔を眺めながら、
家族という物は本当に厄介な物だと改めて思い返していた。
出張を行く道程で彼は何時ものように何度も電話をくれた。
「今、○○だよ〜。」
「もうすぐ、○○だよ〜」
携帯の電波が悪くて途中で切れてしまっても、
律儀にその度に「ごめん、ごめん電波が弱くて・・・」と何度も掛け直してくれる。
彼が目的地に程近い場所から電話を掛けてくれた時、
私から出たその言葉で、
無意識のうちに彼を不愉快にさせてしまったかもしれない・・・。
「たまにはゆっくり・・・何も無い日も作らないとね・・・・。」
そう言うと、「うん・・・たまには時間を気にせずにベタベタしたいよね・・・」
と彼は返答した。
「えっ?違うよ・・・・」と私が言うと「えっ?違うの?」と驚いていた彼。
「うん・・・・携帯メールもPCメールもメッセも御互いにしないで、
声も聞かない日、本当に何も無い日だよ・・・・。」
私達は平日も週末も絶対、連絡を取り合っていた。
それは付き合い出してから1日も欠かしたことが無い。
連休もお正月も・・・それはずっと続いていた。
メールが少ない日は電話で・・・電話が出来ない日はメッセで・・・・。
飽きもせずに、そんな毎日を送ってもうすぐ1年になる。
だから・・・彼が居ない日を私は知らない。
御互い別々の場所で暮していても、
彼が私の側から離れた日を・・私は知らない。
きっと、電話代や彼の携帯のパケット通信料、
それに・・・今まで行ったラブホ代で、御互い新しく暮せる家賃の敷金・礼金
くらいは出せただろう・・・・・。
それくらい、御互いの連絡の為に時間やお金や労力を費やしている。
無い物強請りだとも思う・・・。
でも・・・その位の事をしても、私達は一緒に居られないのだ・・・・。
これから、又同じような事を繰り返して行くのだろうか・・・・。
これから来る、御盆休みと何度も繰り返す週末と、
一緒には眠れない夜の事を考えたら、
不意にそんな事を言ってみたくなったのかもしれない・・・・・。
「ちゃんと・・・話さないと・・・駄目だね。」と彼を困らせてしまった。
でも、私達には時間が無い。
キチンと向き合って話そうと言っても、長い時間が掛かるだろう。
きっと、一昼夜話してもキリが無いのかもしれない・・・・。
それでも、何時かは答えを出さなければいけない日が来るのだろうか・・・。
夜、同居人が帰宅する前、
よく彼と行くラブホの御風呂場から持ってきたバブルバスをお湯に入れて、
子供と2人で浸かった。
家にはジャグシーなんて大それた物は無いから、
泡はほんの一瞬で消えて行く・・・・・。
それでも、泡の残り香が後になっても消えないで御風呂場全体を優しく包み込む。
時々・・・・形あるものなんて何時かは壊れるのだし、見えないものの方が、
強いのかもしれないよね・・なんて思ってしまう。
私の心には落胆している人も居れば、
こんな事で気を取り直す人も確かに存在している。