こんなに好きでもいいですか? すみれ 【MAIL】【HOME】
- 2002年07月26日(金) 彼と私の10年後
子供が熱を出したみたいで、予定外に早く保育園に御迎えに行く。
午前中に送っていった時はとても元気だったのに・・・。
2歳になった、この時期は体調が目まぐるしく変わる頃なのかもしれない。
「男の子は小さいうちは弱いものよ〜」
同じ団地に住む、3人の子を育てたというオバサンは笑って、
私の子供を見ながら、言っていたが、そうなのかもしれないな・・・・と思う。
保育園に行くと、保母さんが「今日は元気にプールに入ったんですけどね〜」
と教えてくれた。
オデコに手を当ててみるが、思っていたほど熱くは無かった。
一度、家に戻って小児科にでも連れて行こうかと思ったが、
安心したのか子供は元気に遊んでいる。
「体温計をこんなに嫌がる子も居るのかな?」
そう思う程、うちの子は水銀の体温計を嫌がっていたが、
今はスッカリ慣れてしまった。
産まれてくる時の準備品として、耳で計る体温計を買っては見たものの、
前に一度、とても高い温度を示して、使い物にならず、
わざわざメーカー交換までして貰った。
今の小児科の先生に40度まで熱が上がったと言ったら、
「耳で計る温度計は当てにはならないですよ?」と言われて、
水銀の温度計を使う事を勧められた。
二つの体温計を使って熱を計ってみるが、今日も水銀の温度計の方が、
当たっていた・・・それ程の熱でも無く様子を見る事にする。
子供と一緒に居る時間は今の私にとって思うように行かないけれど、
とても楽しい時間だ。
アルバムを引っ張り出して2年前の写真を見ると、
こんなに大きくなったのが嘘の事の様にも思える。
子供も自分の写真が面白いのかアルバムをめくって、
自分の名前を言っている。
最近は砂が水を吸っていく様に何でも吸収するようだ、
「コナン」「コナン」とテレビを見ながら指をさす子供を見ていると、
親として改めなければ、いけない部分が沢山あるようにも思う。
同居人は思ったよりも早い帰宅だったらしく、
帰りに電話を掛けてきた。
何時もは遅くに帰ってくるので子供と一緒に夕食は食べられない。
少し子供にも可哀相な気持ちになったので、
今日は最寄の駅まで子供と2人して同居人を迎えに行った。
本当は・・・ゆっくり3人で食事をした後、
子供を遊ばせてあげたかったのだけれど、
何時もの様に私は、彼と連絡を取って逢う事にしてしまった・・・。
何時も考えているのは、子供の事や家庭の行き先なのに・・・・。
私の取っている行動はそれとは逆の事ばかりだ・・・。
いや・・・本当は違うのかもしれない・・・・。
本当は毎日、彼の事ばかり考えているのかもしれない。
家の事や同居人との、これからの行く先なんて、
コレッポッチも考えてはいない。
子供の事は大切だけれど・・・・・。
そんな事を考えながら、外に出る階段を降りると彼は何時ものように
車の中で下を向いて黙って私の事を待っていた。
街では恒例の花火大会が今日も行われていて、
私の家まで来る道程も混んでいただろうと思うが、
彼は急いで車を飛ばし約束の時間までに着いて居てくれた。
今日、彼は・・・・。
明日が休みという事もあり、とても私に逢いたかった様子だった。
私が車に乗り込むと、すぐに左腕で頭を抱きかかえて
自分の体にピタッとくっつけた。
「すみれ・・・・・。」
「うん?」
私が彼に自分の名前を言われ、どうしたのかと聞いても、
時々、名前を呼びたかっただけだからと、可笑しな返事しか返って来ない。
きっと、彼に聞いたら「全然、違うよ」と答えが返って来そうだが、
まるで小学生の時、クラスの虐めっ子が、後ろを向いている子に
名前を呼掛けて、知らん振りをしているような、そんな感じだ。
今日も何時もの麦畑に行って、二人して色々な話をした。
彼の友達の事、仕事の事、今日逢えなかったら又来週まで逢えなかったね・・・・。
そう言うと、彼が優しくギュッとしてくれた。
昨日、彼にこんなメールを送った。
「もう、同居人と一緒に居るのは限界です。」
「それでも、私と貴方の生活はどんなに頑張っても一緒になる事は無いから、
これからは掛け離して考えるようにしなくっちゃね」
「今は貴方の事が好きだから・・別れるその日まで、一生懸命に好きで居ます。」
彼は・・・このメールを読んで、もしかして切なくなったのかもしれない。
きっと、彼も私とは何時か別れなければいけないと思ってるのだと思う。
でも・・・そう思えば思うほど、
「別れたくない」「離れたくない」「もっと・・・・」
考えている事は彼も私も同じだ・・・。
色々考えていると、二人して下を向いて
「どうしたら良いのものか・・・・」と頭を抱え込んでしまう。
どちらからか、冷静に考えて「このままじゃ・・・駄目だね・・・」と言って、
終らせられれば、それでオシマイなのに・・・・。
今は二人とも、それが嫌で・・・怖くて・・・仕方が無い・・・。
彼は何時も「御互いに嫌いになれたら良いのにね・・・。」と言う。
そんな事、出来るんだろうか・・・。
彼を嫌いになるなんて・・・そんな事、あるのだろうか・・・。
でも、私は彼に言ってみた。
笑いながら明るく言うつもりだったのに・・・・。
私は彼の膝に頭を持たれて泣いてしまった・・・・。
「これじゃ・・・いけないんだ・・・・。」
そう思って笑おうとしても、顔が歪んで上手く笑えない。
「ごめん・・・ごめん・・・・」
無理に言ってみても、虚しくなるばかりで、涙が止まらなくなる・・・。
彼はそんな私を見て、鼻水でグシャグシャの顔にティッシュをあてて
涙を拭いてくれる。
私は又彼の優しさが切なくて、涙が止めどなく溢れてくる・・・。
彼は私の背中をさすって、こう言った・・・。
私は・・・・少し救われた気がした。
彼がもし、「ごめんね」と言ったとしたら、
それはとても、絶望的だと思っていた。
彼で・・・良かったと思った。
私の好きになった人が彼で・・・・・。
家に帰って来た後、
少し考えた・・・・。
どうして、私には予知能力が無かったのだろう・・・。
これから、10年・・・私はどんな風に過して行ったらいいのだろう・・・。
10年後はどうなっているだろう・・・・・。
私は当たり前の顔をしてキチンと母親業を全うしているだろうか・・・。
同居人とはどうなっているのだろう・・・。
彼は・・・・。
彼はどうなっているだろう・・・・。
良い父親として、彼も自分の生活を全うしているのだろうか・・・。
それとも、前に言っていたように、自分の為に何も犠牲にしないで、
自由に生きているのだろうか・・・。
10年後・・・私の前に・・・・彼の姿はあるのだろうか・・・・。
それとも・・・彼の姿は遠く遠く・・・・。
もう全く見えなくなっているのだろうか・・・。
10年先の予測なんて・・・誰にも解からないはずなのに・・・。
私はそんな事ばかり考えて・・・・。
又、一人で例えようの無い、暗い闇の中を漂っていた。