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2002年07月25日(木) ハルニレの森と百合の花





暫く彼に逢わないほうが良いのか・・・とも思う。
このまま、彼に何時もの様に逢っていると、
麻薬患者の様に何もかも麻痺して、
別れる時は人間の殻だけを残して、
私の魂はスッポリ抜け落ちてしまうのではないかと思ったりする。
それはそれで、本望なのかも知れないが、
彼を失った後の事を考えると、少し怖くなる。






今日も朝の出勤時にメールと電話。
久しぶりに快晴の空を見ながら、御互い仕事なんてしないで、
ただボッーとして居たいねっ、なんて話をする。
私が思い出して、「百合を見に行こうって約束はどうしたの?」
と話した事から始まってしまった。
彼は最初「今日じゃなくっちゃ駄目なのかな?」と困った様な返答だったが、
「もう7月も終るし好きな百合も枯れてしまうょ」と言うと、
「そうだね、良い天気の日がそうそう続くとは限らないし・・・。
会社に行って今日の仕事に予め目を通したら連絡するね」
彼はそう言って電話を切った。
連絡があるまでの3・4時間・・・。
私は段々「百合はいいよ、又の機会にしよう・・・」
そういう考えに心が侵食されて来ていた。
何だか朝の口調で彼が無理をしている様にも思えたし。
毎日のように彼と逢うのも何だか色々と心苦しくも思えて、
百合を見に行く約束なんて別にどうでもよい事に感じて来た。





百合は私の一番、好きな花。
かのこ百合やスズメ百合という可愛らしい百合よりも、
カサブランカやマドンナ・リリィのように大輪で馨しい百合が好きだ。
時々、「百合の様な人」に出逢う時がある。
凛として人を何処かしら引き付ける魅力のある人だ。
近くに居て親しくなったとしても、
決して一線を越えさせない何か力強いオーラがある。
それは極端に冷たく感じる物ではなく、
受け取るこちら側の背筋がピンッと延びるような、
そんな素敵な優しさだったりする。
何時か・・・・私も・・・・・。
そんな風になれたらな・・・と時々、思う。




行こうか行くまいか、考えているうちに、
あっという間に時間が来てしまった。
御昼を押して私を迎えに来てくれた彼に、
オニギリを3つ手渡す。
中身はイクラと鮭と梅。
食べ物の好みは似ているから、きっと喜んでくれると思ったが、
その前にコンビ二のオニギリを2つも食べて菓子パンを摘んでいる所だった。
それでも、嫌な顔もせずに私の作ったオニギリを食べてくれる。
お目当ては「イクラ」・・・・でも、中々当たりは出なかった。
百合は時期が遅すぎてしまったのか、もう散る所だった。
他にも色とりどりの百合が咲いていたが、
私が見たかった百合ではなかった。
彼と見たかった百合は本当に少ししか咲いていなかった。
少し寂しかった・・・。
好きな百合が散る事はこの街にも本格的な夏が訪れる事・・・。
この街の夏が去るのは本当に早い・・・・。
夏が過ぎたら彼とも1年の付き合いになる。
1年前と何も変わらない・・・・。
1年前と何も変われない・・・・。
そう思うと、何となく又虚しさがやって来た。


百合の代わりにハルニレの木を沢山みつけた。
私達はその木の木陰にゴロンと横になった。
真っ青な空を見上げて目を瞑ると心地よい風が吹いて、
暫くすると手が届きそうな近さで飛行機やヘリが空を横切って行った。
私が持ってきた一眼レフで、
彼は寝転びながら空や木の葉を撮って遊んでいた。
とても楽しそうだった。
カメラを地面に置くと少し他愛のない話をして楽しんだ。
横を向くと彼は目を瞑ってジッとしていた。
とても気持ち良さそうに目を瞑る彼は、恐らく何も考えていなかったと思う。
私は・・・・。
私は色々考えていた。
頭の中でグルグルと、どうでも良い事を考えるのは何時もの悪い癖だった。








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そんな事・・・・・
あるはずも無いのに、
私はゆっくり目を瞑った。









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