こんなに好きでもいいですか? すみれ 【MAIL】【HOME
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2002年07月16日(火) 柔らかな時間



子供が寝冷えをしてしまったらしく、急な発熱で登園出来ませんでした。
本人は熱がある他は至って元気でしたので、
彼から電話があった10時過ぎにはキャーキャー言って騒いでいました。
最近はウルトラマンがお気に入りらしくて、本を開いては、
「ウルトラマン・・・ウルトラマン・・・」と、たどたどしく話します。
「あれっっ?保育園には行かなかったの?」と聞く彼に、
状況説明をして出張に行く前の今日のランチを断りました。
私は彼が、お父さんの事で出張を取り止めにしたと思っていたのですが、
強行して行くとの事で、何度も何度も「大丈夫なの?」と聞きました。
彼は病院の駐車場から電話を掛けていてくれました。
今日が入院日だと聞いていたので、朝の電話も
遅くなる事を予想はしていましたが、
何時も決まった時間に来るメールが待ち遠しくて、
何度も彼用の受信ホルダーを覗いていました。
昨日の夜から、お兄さんが実家に泊まり込みで、
入院の準備をしてくれた様で、病院の駐車場で待ち合わせをしている彼。
「今日は駐車場が満車だから、兄貴達が来たら駐車場を譲って、
そのままオヤジに声を掛けたら、出社しようと思ってるんだ。」
そう言う彼に、
「声を掛けるだけでも良いから、お父さんの事が心配で病院まで行ったの?」
と思い、本当にお父さんの事が心配で堪らないだな・・・と思いました。
約束の入院時間まで随分、時間があったので30分くらい話をしていました。
「会社に戻って出張に行く時間になったら又、電話するからね。」
と言ってくれて電話を切りました。
少し子供が眠そうにしていたので、お昼寝にはまだ早く、
夜はナカナカ寝てくれないなっと思ったのですが、
熱もあり汗を掻かせないといけないと思い、私も横になりました。
彼が電話をくれたのは3時近くでした。
私達はそれまで寝てしまって居たのか・・・。
気がつくと子供も御腹をすかした顔で起きま出して来ました。
「御腹すいた〜すみれの家で御飯食べてもいい?」
そう私に聞く彼に「コンビ二で御飯買って来るんだろうな〜。」
と思って、「今から親子丼作ろうと思うんだけど・・・食べる?」
と言ってみました。
「えっ?ホント?食べたい! !」と元気な返事が返って来たので、
私も笑顔になりました。

でも・・・彼が家に来る事を少し戸惑っている私も居ました。
この前、彼が「離婚できない・・・」と言った時、
私の中で、「すみれ?この恋愛にはやっぱり、リスクが在り過ぎるよ。」と
呟く、もう一人の私が居ました。
彼とは今まで平然のように外で逢って食事をしたり、
旅行に行ったり、家に来て貰ったり、子供と遊んで貰ったりして来ました。
子供と彼を逢わせるのは、もうやめた方が良いのかも・・・。
私は、この前の事でそう思い始めて来ました。
彼と私の子供が始めて会ったのは、
彼の出張へ便乗して旅行に行った時の事でした。
子供がロビー中の噴水へ入ってしまい、フロントの従業員の人と彼とで、
大騒ぎして思い出に残る旅行でした。
次に子供と彼を逢わせた時、彼が選んでくれて、
近くの郷土資料館へ行った時の事でした。
そこで少し子供を遊ばせた後、帰り近くになって笑いながら彼に聞きました。
「何度も子供と、こうやって遊んでいると、
子供がパパは誰なのか、解らなくなっちゃうかもね。」





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私達3人は和やかなムードで資料館を後にしました。
私はその後、事在るごとに
「血の繋がらない子供を持って、本当に育てて行ける?」と彼に問いました。
「うん、普通に育てていけると思うよ?」
彼は何時も穏やかに、私を宥める様に答えを出してくれていました。
「離婚出来ない」という彼・・・・。
子供もあれから半年が経ち、色々解るようになって来ました。
彼と逢うと子供は満面の笑みで彼を見ています。
それは同居人と居る時の顔とは、まるで違いますが
少なくとも彼に特別の感情を持っている事が解る表情です。
この幼い無垢な心は彼をどう思っているのでしょう?
ママと仲の良い優しいおじさん、とでも思っているのでしょうか?
彼の腕に抱かれている子供は何時も安心して、
満足げな顔をして私を見下ろしています。
彼も・・・・この不可思議な状況を何と思っているのでしょう?
家に来る事も、子供と会う事も、当たり前だと・・・
もう、麻痺した気持ちなのでしょうか・・・・。


そんな事を思いながら、親子丼の用意をしていると、
家のチャイムが鳴りました。
彼は手にスーパーの袋をぶら下げ、その中には熱のある子供にと、
プリンやゼリーや子供用御菓子やジュースが沢山、入ってありました。
3人で親子丼を食べました。
家の食卓テーブルは2人用で、
子供の食事用チェアーが真ん中に設置してあります。
「美味しいね〜すみれの家には親子丼用の鍋もあるんだね〜。」
ニコニコしながら私の前で親子丼を食べている彼と、
ニコニコしながら、そんな彼を見て、おどけながら親子丼を食べる
私の子供を見ていると、

「今日のメニューは私には余りにも酷だったかも・・・。
親子丼なんて・・・・。」

そんな事を思ってしまいました。
私達に御互いの家族や・・・両親や・・・・。
そして世の中の柵が無ければ本当の家族として一緒に居られる
時間があるのかもしれません。
それを思うと又、切ない想いが、何処からとも無くやって来てしまいます。
彼は出張に出発する少しの時間を子供と絵本を読んだり、
外れていたステレオのスピーカーの配線を繋げてくれたりして過してくれました。
「そろそろ、行ってくるね」と玄関先へ行く彼を夢中で追いかける子供。
それでも、同居人が外出する時の様に泣き叫んだりはせずに、
「ばいばい・・・・ばいばい・・・」と手を振っていました。
彼はそんな子供を見ながら「早く熱が下がるといいね。」と子供にキスをして、
そして、そっと私にキスをすると、
「それじゃ〜行って来ます。」と自分の家から出勤するように出て行きました。


夜は又、出張先からネットを繋げて私とメッセをする彼・・・・。
どんなに遠くなって姿が見えなくなっても・・・。
私は貴方の事が好きです・・・・。
今日は柔らかな時間を有難う・・・・。
いつかね・・・ホントの親子になれたらいいね・・・。
でも・・・それは出来ない事だから・・・・。
この次ね・・・この次は・・・・。
私があなたの子供にでも・・・母にでも・・・何でもいいよ・・・。
貴方と一緒に居られるなら・・・何にでもなるよ・・・・。
そう呟きながら、キーボードでは別な事を叩いている私でした・・・。





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