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2002年06月11日(火) 今までの事<不倫する2>



中絶する前に彼ともう一度、話し合いました。
私は子供を堕胎したくない。
貴方の子供が本気で欲しいと思う。
子供を育てて行く気持も本物。
離婚で御金がなくなってもいい。

彼はどれ一つ「うん」とは答えてくれませんでした。

中絶する事が決まり、私は紹介された病院へ行きました。
別の病院では紹介状を見た先生がすぐに診察されました。
外来の内診室では処置として子宮に黒い棒の様な物を何本も入れられました。
私は「痛いので何とかして下さい。」と先生に言いましたが、
診察が終わり、中絶の過程を説明する先生の顔はとても冷酷でした。
「もう中絶するには時間が無いのを知っていますよね?」
「子宮をわざとに臨月くらいの大きさにして普通に出産するのと同じように
堕胎します。方法はこれしかありませんので痛みが伴うのは仕方ないです。」
先生は予めの説明を終らせると看護婦さんに入院手続きの指示をしていました。
私は「あぁ〜前に読んだ内田春菊のファザー・ファッカーと
同じ堕ろし方なんだな〜」と入院の説明を聞きながら、
体がとても冷たくなって行くのを感じました。
入院期間は2週間でした。
すぐに母が故郷からやってきました。
産婦人科なので付き添いなどは要らないのですが、
私の事を心配してか養父が側についている様にと母を送り出したそうです。

母は私に何も言いませんでした。
つい何ヶ月前まで二人で「良かったね〜」と笑い一緒に買い物をして喜んでいた、
自分の娘が御腹を抱えてウンウン唸っている姿を見て、
気丈な母も落胆した様子でした。
母もそれまでは彼を信じて養父が反対する分、
何とか娘の想う人と結婚させてあげたいと思っていたようですが、
今となっては彼に裏切られたという思いでイッパイだった様でした。
私が行ったその病院は産婦人科としては、とても高級な病院で、
ディナーは夫と一緒にピアノ演奏を聞き可愛いピンクのパジャマを着ながら、
「ここはホテルのラウンジ?」という様な食事の部屋のテーブルで
摂る形式になっていました。
1階は外来で2階は産婦人科入院棟と分娩室・処置室、
そして3階は私の入院していた婦人科入院棟と皆が食事をするレストランの様な
広い食事部屋がありました。
私の夕食は入院していた部屋にひっそりと運ばれ母が買って来てくれた
青いパジャマを着て母と一緒に摂りました。
私が食べられないと母が
「体力が無いと駄目だから・・・」とポツリと言いました。
一口、二口食べて部屋を出ると廊下には食事部屋から楽しそうな
笑い声が聞こえてきていました。
「どうして私だけ、こんな思いをしなくっちゃいけないの?」
「私はどうして、そこに入れないの?」
そう思って暗い気持に拍車が掛かりました。

私の病室は2人部屋でした。何日かして隣のベットが埋まりました。
面会には可愛い子供と旦那さんが来ていました。
私から話しかける事は無かったのですが、すぐに相手が私に話しかけてきました。
3人目の子供が出来たけれど、成長が止まって心音も聞こえなくなって
母体が危ないので、中絶するとの事でした。
(雅子様が最初に御懐妊した時と同じ症状ですね。)
その後、私のベットに状況を知らない友人から電話が来て状況報告をしていて、
やっと隣のベットの人が、どうして私がここに居るのか理解したようで、
静かになりました。
彼が毎日、面会に来ていたので、それまでは「意志に反しての中絶」
とは解らなかったようです。
その人は3日か4日で退院していきました。退院の日は入院した時と同じように
家族が迎えに来ていました。
彼女は私に「頑張ってね」と一言いい病院を後にしました。

彼女が退院するとすぐに私は2度目の処置をされました。
内容は同じ物でした。
でも、前回と違っていたのはそこが処置室だった事・・・。
分娩台は見た事がありました。
一度目の中絶で経験した時と同じ冷たい椅子でした。
でも、処置室の目の前は分娩室で、
今まさに妊婦さんが子供を産もうとしている所でした。
(その病院は立会いでなくても出産しているのが解るようにか分娩室の入り口に
小さな小窓がついていました。)
チラッと見えた小窓では助産婦さんが何人かせわしなく動いていました。
私は処置室に入ると処置台に座り脚掛け台に脚を乗せました。
処置は前と同じように黒い棒のような物を何本も子宮に入れられる事。
でも、意志に反して異物が入ってくる感じ・・・冷たい鉄の様にしか感じられず、
我慢しているうちに痛みや悲しみや空虚や、そして自律神経が可笑しくなる感じ・・・・。
私は耐えられなくなって大声で叫び、暴れていました。
看護婦さんが私の脚を力いっぱい抑えました。
私の声に驚いたのか他の看護婦さんも処置室に入ってきて、
私の体を押さえつけました。
主治医の先生とは別の先生も誰に呼ばれたのかやって来ていました。
「大丈夫ですよ〜鼻で息を吸って〜」遠くで看護婦さんの声が聞こえました。
気絶するんじゃないかと思うほどの痛みが何度も何度も繰り返されました。
30分くらい経つと処置は終りました。
でも、死ぬほど長い時間、処置台の上に居たような気がしました。
私の脚にはクッキリと看護婦さんの指の跡が残っていました。
すぐには病室に戻れませんでした。
処置台の直ぐ横のベットに暫く寝かされていると、
「分娩室でも暴れているし、処置室でも暴れているし」と若い看護婦さんが
言っていたのを聞きました。
私は「産みの苦しさだったら、幾らでも耐えるのに・・・」と心の中で思っていました。
少し年上の看護婦さんが、「そんなに暴れても駄目でしょ?」と
少し怒りながら私に言いました。
私が泣いていると、
「だって中絶しないと駄目だからここに来たんでしょ?」と冷たく言い放ちました。
無言の私に看護婦さんがカルテを机の上から取り上げ、ペラペラ捲りながら
「こんなになるまで放っておいて・・・・」と言うので
「彼の離婚が上手く行かなくて・・・・・」とそう言うと。





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処置室から出ると車椅子が用意され、母が心配そうに待っていました。
私の叫び声は廊下中に聞こえ、母は気が気じゃなかったようです。
分娩室ではもう赤ちゃんが産まれたようで、
沢山の家族が嬉しそうにしていました。
処置室の扉の横では次の人が待っていました。
その人はまだ、20歳くらいの女の子でした。
彼女は泣いていました。
車椅子に乗りながら、その子を見て、
まるで震えてる小鳥のようだな〜とボーっと思いました。

その日も彼は面会に来ました。
何時もと変わらず「調子はどうだい?」と言いました。
私は「悪いよ」と言いながら、心の中で・・・・・・・・・。

「今日、私がどんな思いをしたか知らないでしょ?
何ならアンタが変わってよ。
何で女ばかり、こんな思いをしなくっちゃいけないの?
ねっ!!なんで?」

と繰りかえしていました。


3度目の処置は入院から1週間ちょっと経ってからでした。
前回と同じ処置ですが先生が「痛みが酷いみたいなので全身麻酔します。」
と言いました。
「えっ?麻酔ですか?嫌です。」と言いましたが、
無情にも右肩に注射針が刺されました。
遠のく意識の中で私は「嫌だなぁ〜」とポツリと言いました。
「何が嫌なの?麻酔でしょ?」と先生が言った言葉を耳にして
私は死んでいく感覚ってこんなのだろうか?
と思いながら、後の事は全く記憶が失くなりました。

看護婦さんに起こされて意識が戻った時、私は同じ場所にいました。
「良かった・・・・死んでなかった。」と思いました。
とっさに「今、何時ですか?」と聞くと
看護婦さんが「5・6分しか経っていませんよ?」と言いました。
「前の時も本当はこの位で終る処置だったんですよ?」と言って、
前回、暴れた事を指摘されてしまいました。
3度目の処置は暴れなかったせいなのか、
子宮が膨らんで来たのに体が慣れたせいなのか余り痛くはなかったです。
病室には歩いて戻れました。

私が入院している間、母は古本屋に行って本を買い、病室で静かに読んでいました。
私は母に頼んで「私にも本を買って来て」と言いました。
「お前の趣味は何だか解らないけれど・・・」と言って買って来てくれた本は
有吉佐和子や遠藤周作でした。
私は遠藤周作の本を読み始めました。
狐狸庵先生と呼ばれた彼の作品は同じクリスチャンの私にとって、
とても読みやすいものでした。
何ページも一気に読んで少し現実を忘れました。
でも時々「私は人の命を自分の手で絶とうとしているんだな・・・
神様が居たとしたら・・・・それに背く事をしているんだな・・・」
と思い本を胸に置くと
「もう、赤ちゃん・・・御腹の中で死んでいるかな?」と母に聞くと。
母は「そうだね・・・・・・・・・・・。」と私の前で泣きました。




<今日の出来事>


今日は彼が出張から帰ってきました。
(今日の日記から読まれた方、↑の「今までの事」で書いている彼と今の彼は
別人ですので、誤解しないようにお願いします。)
スタッフの方と食事を終えてからの対面だったので、
とても遅い時間になってしまって、
私はもう、眠かったですし、彼も長い道のりを運転して帰ってきたので
疲れていた様子でしたが、
先日、頼まれた仕事の見直しなどをしました。

その前に・・・・
実は私の友達の事で彼が怒っている事があって、それについて少し話しました。
私の友達は彼の事を客観視すると、
納得行かない事が多少在って、それについて私と友達はよく話をします。
私も彼女と話していて「うんうん。」と思う事もあれば
「ちょっと違うかも・・・」と思う事もあります。
ただ、「不倫」と呼ばれる関係にある以上、
彼女の話を聞かなければいけない事が多々あるのが今の現状です。
それに、彼女は私が独身時代にしていた不倫の事も痛い程、知っている人なので、

やはり私には同じ思いをして欲しく無いという気持ちがあります。
彼女は私の事を思って色々、言ってくれているのだと思います。
私も自分が爆発しそうになって彼にぶち当たってしまいそうになる時、
誰かに迷惑を掛けてしまいそうになる時は彼女に色々、話します。
彼女も私で良かったら話を聞くよと言ってくれます。
でも、彼にとっては自分の知らない所で自分の事をよく理解して無い人に、
そういう話をされるのは不愉快な事です。
きっと、それは誰しもそうだと思います。

でも・・・・・・私はこう思います。
「不倫」という形の無い物にとらわれている私と彼はある意味、
「恋愛状態にラリッて居る2人」に見られがちです。
自分達の外で「不倫」と言うものがどういう風に見られて居るのかが時として
理解できなくなってしまう事だってあるでしょう。
私達だけの世界の中には「不倫」という言葉は存在しないのかもしれません。
それに甘んじてズルズルと関係を続けて行ってしまって、
果たして良い物か悪い物かは今は誰も解りません。
彼女は第三者ですが、第三者的な意見が言える立場です。
不倫をして最終的にこうなるのではないか?
又、時としてこういう事も在り得るのではないか?
そういう意見を言ってくれる人が彼女の今の役割です。
でも、そう言ったとしてもやはり彼女は当事者では無いので幾ら意見したとしても
結果をどうにかしようとするのは私と彼です。
それに、不倫の結果は今は誰にも解らない事です。
私は彼が想っている私への気持も解ります。
彼女が思っている「不倫」という形への気持も解ります。
どちらの話にも耳を傾けます。
全てを受け入れて噛み砕いて消化していくのが今、私ができる事です。

彼の役割もまた聞き役に徹する事だと思います。
今はどう足掻いても「離婚」は出来ないしアクションを起こせない彼。
周りから「不倫はやっぱり不倫」と言われても反論できない立場です。
ならば、やはり黙って聞いておかなくっちいけない事なんだと思います。
彼女の意見は世間一般の見解なのですから、
自分達がただのラリラりカップルなのかはそこで判断できるのかもしれません。
それを受け入れるのも受け入れないのも彼が決める事ですが・・・。


その日は彼に上手く説明できませんでした。
何だか、ちょっとモヤモヤ・・・・・・。
仕事の話は答え合わせをしているように色々、教えてくれました。
でも、私は本当に眠くて集中力が無くなってきたので、
途中で中断させてしまいました。
彼に「もう、こんな時間だよ?おうちは大丈夫?」と言うと
「出張もう1泊っていってあるから」との事。
「どうして言わないの?」と言った私に彼は「眠そうにしてたから・・・・」と
一言。
そうです私、ラブホに行った時も大爆睡で彼を独りにさせた事があります。
という訳で彼と私は御互い疲れていたので、その日は朝方まで車の中で
暫しの仮眠タイムでした。
それにしても大の大人が車の中で熟睡なんて(笑)
気がついた時にはもう空は明るかったです。
家に送ってもらってPCを開いて彼にお礼のメールも書かず、
そのまま爆睡を続けました。




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