僕らの日常
 mirin



  虚像空間2@謡

窓がブラインドウとカーテンに覆われた部屋。

太陽の光は届かない
私達の身体にはただ危険だから

白熱灯の光がぼんやりと部屋の中を照らしている。


「飛びたいなぁ、こう…ぶ〜んて」
「ぶ〜ん?」

真壁センセイが帰った後、私と宇宙は病室へ戻った。
部屋へ入ると、私達と同い年の琥珀が模型の飛行機を
振り回しながらくるくる回っていた。

「そう、飛んだりたいんよ」

どこか、イントネーションの違う口調で話す琥珀を
チラリと見て、私は口を挿んだ。

「ウタも飛びたい。ソラは?」
「ぼくは…いいや。今は飛びたくない、かも」
「え〜?面んないよ。んなん」

宇宙は、んー…と暫く考えてから小さく答えた。
それに納得がいかないらしい琥珀が抗議の声を上げる。

「ウタは飛びたいよ。
隙あらばピョーンて脱出するのよ。ね?」
「ねえ」

もう一度、繰り返すとウンウンと琥珀が頷いてくれた。

「危ないよ」

宇宙は、少し慌てるように言った。

「じゃ、ソラは飛ばなきゃいいの。青空はあんなに
素敵なの、一回見たくらいで罰なんか当たらないわよ」

頬を膨らましてそっぽを向いた私にはその後の泣きそうな
宇宙の表情なんか見えなかった。

2005年04月28日(木)
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