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■ フィルター2@暁生
げ。
ドアを開けた瞬間、そのまま速効で閉めて帰りたい衝動に かられた。普通に出したはずの2歩目の右足が妙に重くて 一瞬、スローモーションでもかかったような気がした。
俺のすぐ目の前に見えるのは、いつも鳥羽が言っている。 月色の髪…なんで、昼間に居るんだ!?喉まで出かかった 声をなんとか飲み込んで俺はなるべく見ないようにした。
カタン...
席を立つ音がして、邪魔になるとか思ったのか、そいつは 俺を背にしてそのまま扉へと向かう。そのすれ違いざまに 夜いつも見る印象とどこか違う感じがするのに気づいた。 別に鳥羽じゃないけど、妙に気になった。だから・・・
「お前、あの時、何で怒らなかったんだ」 「・・?・・・ぁぁ...怒る理由ないでしょ?」
唐突に話しかけた俺を振りかえり、一瞬だけ、怪訝そうな 顔をすると、「ぁぁ」と思い出したように声を出し言った。
「今日みたいな例外がないと、僕本当に夜しか来ないし」 「例外?」 「そそ。自由参加の化学の実験、アレ夜はやらないから」
そういえば、今日は校内のいたる所に暗幕が貼られてたな ふと思い出したら、自然とそいつから目をそらせていた。
「それとも、怒った方が良かった。かな」
クス...小さく笑った声が微かに聞え、俺の眉間にしわが寄る 人が他人のことを気にして言ってやったっていうのに、その 対応はないだろ?そう思って、キッとそいつの顔を直視して 気づく・・・銀色フレームの薄いレンズのメガネ。
「メガネ?」 「気づかなかったんだ」
レンズの向こうから見える目が明かに笑っていた。呆れとか 変だとか、そういうものじゃなくて、ただ面白がって笑った。
・・・でも、たしかこいつの視力は、2.5と馬鹿高い数字を 叩き出したことがあると、同級の生徒達が騒いでたような。
2002年05月24日(金)
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