僕らの日常
 mirin



  特別@晴臣

欲しいものは、いつもすぐ手に入る
誕生日でも、クリスマスでもなくても
欲しいと言えば、両親はどんな物でもくれた。

その2人の両手以外は・・・

『晴臣。貴方は大きくなったら、この会社で』
『お前は私の後継ぎになって.....』

だから、特別にならなきゃいけないって思ってた。
あの2人の期待に答えられたら、1番欲しい物が
手に入る気がしたから、だから・・・

ずっと保たれていた筈の人との距離
ボクが普通の人とは違うための間隔
それを彼はいとも容易く崩してくれた。

初等部4年の時あった、理科の授業の月見観測会
夜学組と同じ授業を受けたのはこれがはじめてで
でも、初対面の生徒達は互いにすぐ仲良くなった。

『えっと...晴臣くん?これ、月見団子』
『あ、ありがと』
『・・・・・・。』
『・・・何?』

月見団子を配りに来た男子生徒がジッとボクを見た。
その視線がなかなか離れなくて、その居心地の悪さに
ボクは、視線の意味を尋ねる。

『ね。本当に、楽しいと思ってる?』

え?・・・何言ってるの?そんな感じで見つめ返したら
彼はただ小首を傾げていた。

『ソラ〜!こっち団子回ってない』
『心配しなくても、今持ってくよ』

他の生徒の早く配ってと団子の催促する声に苦笑しつつ
彼は、ぱたぱたと生徒達の輪に入っていった。

2002年05月17日(金)
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