2013年01月31日(木)  三枝成彰オペラ「KAMIKAZE−神風−」

作曲家・三枝成彰さんのオペラ『KAMIKAZE−神風−』初日を鑑賞。

脚本はわたしが審査員を務めたNHK奈良「万葉ラブストーリー」で受賞された縁で親しくしている福島敏朗さん。演出は今井雅子脚本3作目の映画「ジェニファ〜涙石の恋」でご一緒した三枝健起さん。三枝成彰さんの弟さんでもある。美術は千住博さん、キャストも神崎光司少尉役のジョン・健・ヌッツォさん、その恋人・土田知子役の小川里美さんをはじめ、華やか。

出征前日を恋人と過ごす特攻隊員の物語。実話を膨らませた三幕で、オペラ初心者のわたしにも筋運びがわかりやすく、休憩を入れて3時間を超える上演を最後まで楽しめた。

「面白くないものを見ていたいのです」という言葉に、残された時間の一瞬一瞬を愛おしむ切なさを感じた。待ち合わせにいつも遅れたというような思い出話も、印象に残った。命を散らすという大きな悲劇を前にしたときは、大きく構えた言葉よりも、何気ない言葉のほうがより胸に響く。

神風特攻隊員はずばぬけたヒーローではなく、恋人とのささやかな幸せを慈しむ、どこにでもいる普通の若者たちだった。国を守るという使命感と愛する人を残して旅立つ悲壮感の葛藤を抱えたまま零戦に乗り込み、帰らぬ人となった。それは、ほんの60余年前のこと。彼らが生きられたかもしれない未来に、今わたしたちはいる。そして、今ある平和を当たり前のことと思わず、大切に守らなくては、悲劇は繰り返される……。

様々な想いをめぐらせ、万雷の拍手が鳴り渡るカーテンコールに胸を熱くし、万葉ラブ出身・福島さんの活躍を誇らしく、眩しく感じながら、爆弾が降ることも身近な誰かが爆弾を落としに行くこともない時代にいるありがたみを噛み締めて帰った。


ひさしぶりの東京文化会館、ホールもロビーも格調高く雰囲気があって、こういう場に浸る時間をときどきは持たないと、と思った。幕間のシャンパンもきりりと冷えていて、さすが。

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