昨年5月、南インド料理のダバインディアでカレー三昧した帰り、一緒に行ったヤマシタさんが言った。「押上にSpice Cafe(スパイスカフェ)っていうむっちゃいい店があるんです。次はそこ行きましょう」。その後なかなかカレーを食べに集まる機会がなかったのだけど、今宵宿願を果たす。メンバーはダバインディアのときと同じくヤマシタさんとアサミちゃんとわたし。今週火曜に昭和芸能舎のお芝居を観たのも、この三人。会えるときは、続けて会える。
CMプロダクションで働くヤマシタさんは、アサミちゃんとわたしがマッキャンエリクソンという広告会社で働いていたときにアサミちゃんと同じ得意先を担当していた。この三人を今もつなげているのは、芝居好きとカレー好きの縁。ヤマシタさんは演劇フリーペーパープチクリの編集人の一人で、アサミちゃんがレイアウトをやっている。その打ち合わせで顔を合わせるたびに「また今井ちゃんに会いたいねえ}と二人で噂してくれているらしい。
さて、押上駅から歩くこと10分強。通り過ぎても気づかないようなひっそりした佇まいのお店は古い木造アパートを改造したもの。木のぬくもりに迎えられ、東京にいるのに旅先の遠い町にいるような錯覚を覚える。先日、東京カリ〜番長の水野仁輔君に「今度スパイスカフェに行くんですよ}と言ったら「日本人で本格的なカレーをやっている希少なお店です」と大絶賛していたので、味にも期待が高まる。
「前菜1種類、カレー1種類、デザート2種類、飲み物」で2500円のコースを二つと「前菜2種類、カレー3種類、デザート3種類、飲み物」で3500円のコースを一つ注文。これでカレーは全5種類、デザートは9種類中7種類を制覇できることに。前菜は「本日の5品盛り」を各自注文して、もう自家製ソーセージを分け合う。シェフは地中海料理出身だそうで、見た目も美しく上品な味わいで、シードルによく合う。
白ワインとともに、メインのカレーは定番のマトン、チキン、野菜、トマトと日替わりのドライカレー。マトンはまったく臭みがなく、どれも素材の味わいが上手に引き出されている。ごはんを大盛りにしたらとんでもない量が皿に盛られてきて焦ったが、しっかり平らげられた。
デザートは別腹。バナナのムースといちじくのタルト、チョコレートのタルトとヨーグルトムースとカスタードプリン、ぶどうのゼリーと大葉と柚子のシャーベット。インド料理屋のデザートと言うと、お米のプリンなど何ともいえないメニューに遭遇することが多いけど、これだけデザートが充実しているのはうれしい。
併設のギャラリーでは明日から始まる「琉9典子展〜かさなるかたち〜」(27日まで)の版画が飾られ、作者の琉9典子(りゅうきゅうてんこ)さんとお話しできた。名前から察する通り沖縄からやってきたという。静岡出身、東京を経て、今は名護に暮らしているそう。「都会の那覇よりも名護のほうが沖縄らしい」「地図のくびれの上と下で人柄が変わる」など興味深い話をにこやかに、ふわふわと。「困ったときに手を見てしまうのは、こまって、の『て』だったんだ!」というのが最近の大発見だったそう。サイトのエッセイも不思議な詩のような味わい。
建物を出て、小径を抜けて通りに出て振り返ると、やはりそこに店があるとは気づかない。今のは夢か幻か、明日来たらそこにはもう何もないのかもしれない。そんなことさえ思わせる時間が流れていた。でも、歩いても歩いてもずっしりとおなかに詰まったごちそうの存在感が、夢じゃなかったんだよと教えてくれる。
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