世間のブームからずいぶん遅れて、テレビシリーズ『相棒』に出会ったのは、去年の暮れ。『アテンションプリーズ スペシャル』の本作りの追い込みで深夜に帰宅したときに再放送していたのを偶然観て、一話で寝よう、二話で寝ようと見続けているうちに四話分観て明け方になった。10年ほど前にも同じようなことがあり、そのときはNHKで『Mr.ビーン』をまとめて放送していた。あれも年末だった気がする。
『相棒』再放送は、ゴールデンウィーク公開の映画版の予告も兼ねていて、シーズン6までどっさりあるテレビシリーズをじゃんじゃん再放送しつつ、映画の告知をし、古くからのファンやわたしのような新規ファンに動員をかけていたのだった。封切られた最初の週末にて丸の内TOEIに駆けつけたら「夜まで立ち見です」と言われ、機会を逃しているうちにひと月半あまり経ってしまったけれど、まだまだロングラン上映中。穴場を狙ってJR王子駅近くにある王子シネマへ行くと、場所柄か、上映8週目だからか、余裕で席に着けた。
映画本編は犯人からの犯行予告を読み解く鍵がチェスになっていて、よくぞこれだけチェスネタを捻ったものだと感心する。チェスを少しでもかじっていれば、より楽しめたと思う。東京ビッグシティマラソンが標的にされるところは、計測チップの使い方など、東京マラソン2008に出場した親近感から興味深く観た。世論という見えない暴力への挑戦は面白いが、数年前に実際に起きた出来事と重ねて観てしまうと、そのモデルに感情移入できるかどうかで作品への評価は分かれるだろう。個人的には、世間がなんと言おうとわが子を守りたいという親の心情に乗っかれた。
子どもは生まれた瞬間から自立に向かって歩み出すのに対し、親の人生は子どもが生まれることによって子ども中心に回り出し、手にかけた分だけ、親の中で子どもの存在感は増していく。子どもが成人しても自立しても、親はいつまでも親で、子どもの人生を背負い続け、世界を敵に回しても子を守り抜こうとする。その切なさを思った。そして、世間を騒がせた当事者の親や家族までが不特定多数からの攻撃にさらされるのは、日本以外の国でもあることなのだろうか、日本的な現象なのだろうか、などと考えた。子どもが生まれて以来、映画を観る目線が「子」から「親」へ変換したのを感じる。
親子といえば、一緒に観に行ったダンナが「ここ、もしかしたら……」と場内を見回し、「初めて映画を観に来た映画館かも」と言い出した。幼稚園の頃、『やさしいライオン』という作品を母親と弟とともに観に来たという。娘はTOHOシネマズのママズシアターで映画館デビューは果たしているけれど、自分が楽しむ作品という意味では、はじめての映画はこれからのお楽しみ。何十年も先に思い出せるような作品を見せてあげられるかなあとダンナの実家で留守番をしている娘の話をしながら帰り道についた。
2007年06月21日(木) マタニティオレンジ133 おおらかがいっぱい
2005年06月21日(火) 『子ぎつねヘレン』ロケ見学4日目
2002年06月21日(金) JUDY AND MARY
1998年06月21日(日) カンヌ98 2日目 ニース→エズ→カンヌ広告祭エントリー