昨日の夜、ひさしぶりに外で食事をして、お酒を飲んだ。去年の春から夏にかけて仕事をしたプロデューサー嬢と「一度食事を」と約束していたのが、半年経って実現。わたしを彼女につないでくれたプロデューサー氏もまじえて三人で飲むことになった。
案内されたのは、麻布十番の『礼』という「うまい魚と野菜で呑める日本料理屋」(リーフレットのコピーより)。間接照明の下で食事をするなんて、いつぶりだろう。外で飲む機会は会社勤めの頃はしょちゅうあったし、フリーになってからもちょくちょくあったけれど、娘が生まれてからはめったにない。メニューを開いてお酒を選ぶことがとても新鮮だったりする。にごり桃酒とにごり柚子酒ですっかりいい気分になり、調子に乗って白ワインも頼んだら、酔っ払いの出来上がり。弱くなったと言おうか、燃費が良くなったと言おうか。
お酒だけじゃなくて、食べ物もしみるようにおいしい。温泉卵のようなとろとろの胡麻豆腐からはじまる和食のコースは上品な関西風の味付けで、来る皿来る皿わたし好み。デザートのフルーツゼリーまで途切れることなく幸せに包まれる。器も盛り付けも運ばれてくるたびにほうと眺めてしまうほど素敵。刺身皿をほんのり照らすのは、薄くむいた大根のスクリーン越しに揺れるキャンドルの炎だったりする。ああ、お皿がいっぱい、それだけでもうれしい。いたずら盛りの一歳児と二人きりの夕食では、おかずもご飯も野菜もいっしょくたにミルフィーユ状に盛った丼に娘の残飯までのっけてかき込んでいる。娘が振り回すスプーンから飛んでくる飯粒を顔で受け、娘が落としたスプーンを拾い(拾うまで「あーあ」とため息を繰り返される)、味わうどころではない。ゆっくりと舌で味を受け止め(普段は特急で通過するところを各駅停車)、とろけて骨抜きになりながら、「味わうとは、舌の滞在時間のこと」というご近所仲間のK夫人の名言を思い出した。
同席したプロデューサー二人も「おいしい」と繰り返していたので、もともとおいしい店なのだろうけれど、わたしが人一倍おいしく味わい、楽しんだ自信はある。ほろ酔いだからできる噂話、ここだけの話もおいしい。わたしの場合、昼は一人で、夜は娘と二人でということが多いので、会話の楽しみという非日常がトッピングされるだけで、ごちそう気分を味わえる。会社を辞めたことと子どもが生まれたことで失ったものをひとつ惜しむとしたら「会食」となるが、Hunger is the best appetizer(空腹は最高の前菜)。飲み会がお祭りになるなら、イベントに飢えるのも悪いことじゃない気がする。
2007年02月02日(金) マタニティオレンジ70 子連れで江戸東京博物館
2005年02月02日(水) しましま映画『レーシング・ストライプス』
2003年02月02日(日) 十文字西中学校映画祭
2002年02月02日(土) 歩くとわかること