お風呂でウンチされたらどうしよう、という不安はベビーバスで沐浴させていた頃からあった。とくに新生児の頃は、おむつを開けるたびにしている感じだったし、今はしないでねと言ったって通じるはずもないから、いつされてもおかしくなかった。お湯のあたたかさに誘われる、という話も聞いたし、一度してしまうと、気持ちがいいのでくせになる、とも聞いた。実際、子育て仲間のK嬢は、「お風呂に入ると、ここでするものだ、と思うらしくて……」入浴のたびにされて困っていた。「それって、どうなるの?」と聞くと、「わたしは『なたね湯』って呼んでる」。コピーライターの先輩でもある彼女は、粋な名前をつけていた。生後一か月を過ぎると、大人と一緒に普通のお風呂に入れるのだけれど、なたね湯が怖いK嬢はなかなかベビーバスを卒業できない、と嘆いていた。被害を最小限に食い止めるべく、まず洗面器におしりをつけて在庫一掃してからベビーバスへ移す、という涙ぐましい対策を取っていた。
「お風呂でウンチ」を恐れて、最初の頃は湯船から早めに引き上げていたのだけれど、だんだん気が大きくなって、長湯をするようになり、なたね湯の憂き目に遭うこともなく、一年が過ぎた。そしたら今夜、「ギャ〜〜〜たま〜〜〜!」というダンナの悲鳴が風呂から聞こえてきた。滑ってタイルに頭でも打ちつけたか、とすっ飛んだら、「ウンチしてる〜〜〜」と情けない声を上げるダンナの傍らに、プカプカと浮かぶ塊が見えた。プールの監視員をしたことのある知人が、プールに浮かぶウンチを見つけると「Uです」と隠語で報告が入る、という話をしてくれたことを思い出した。報告を受けると、早急に網を持って駆けつけ、ささっと掬い取るのだと言う。なたね湯は手ごわいけれど、プカプカUなら手に負える。たまのお風呂おもちゃになっている百円均一の調理小物(卵の白身と黄身を分けるやつ)がU採り網になった。パパとママのあわてぶりを愉快そうに見ていたたまが、常習犯にならないことを願うばかり。
生後一年と四日で初Uのたまがお風呂でUする確率は、一日二度お風呂に入った日もあるから、400分の1以下となるだろうか。それでも、何百分の一が運悪くそのときに重なったら、と怖気づいてしまい、いまだに公衆のお風呂やプールに入れるのをためらっている。一方、K嬢となたね湯が日課だった息子君は、すでに何度か温泉につかり、今のところ、なたね湯は免れているという。
2005年08月26日(金) 『道成寺一幕』→『螢光 TOKYO』
2004年08月26日(木) 土井たか子さんと『ジャンヌ・ダルク』を観る
2003年08月26日(火) アフロ(A26)
2002年08月26日(月) 『ロシアは今日も荒れ模様』(米原万里)