■体に良さそうなスープとおいしいフランスパンの朝食で目覚める。イングリッシュ・ブレックファースト続きだったので新鮮。「ロイズに入れるチケットがあるんですが、興味ありますか」とC君。「そうですね。ひょっとしたら、欲しいものが見つかるかもしれないし」とダンナが神妙に言うと、「え? ロイズって保険の取引所」ですよ」とC君。ダンナは宝石屋だと勘違いしていたが、わたしも「レストラン?なわけないか」と思っていた。ロイズでは市場のように各保険会社がブースを出していて、そこで日々保険が売り買いされているそう。損害保険会社に勤めるC君は入管許可証を持っていて、家族や友人を同伴することもできるのだとか。「関係者以外立ち入り禁止」の館内に足を踏み入れ、グランドフロアを見学。アンダーライターと呼ばれる「書類にサインをする人」が待ち受けるブースの間をブローカーが顎を上げ、颯爽と歩き回っている。脇に抱えているのはPCではなく分厚い書類。デジタルではなくアナログなのだ。建物中央のエスカレーターはスケルトンになっていて、黄色い車輪が回っているのが見える。上層階にもブースはあるが、グランドフロアに出店するのがステータスなのだとか。行きかう人々の顔からは誇らしさが感じられ、大晦日だというのに活気に満ちている。ひときわ目を引く祠のようなものには、難破船から引き上げられたという鐘と、それを鳴らすための赤いローブをまとった老番人が佇み、荘厳さと風格を醸し出している。わたしの仕事とは縁遠い空気に包まれたこの場所に招き入れてくれた友人に感謝。■イギリス紳士たち(最近ではもちろん女性も)はパブで一杯引っ掛けながら仕事を話をする。というわけでロイズのすぐ脇にあるDavyというパブへ。昼休みの11時を過ぎると、たちまち人でいっぱいに。席に着かず、立ち飲みの人がほとんど。今年の仕事納めということで「お疲れ様」の雰囲気が感じられるが、書類を広げて商談を進める紳士の姿も。食事はなかなかおいしく、レバノン料理のhoumosa(?)というヒヨコ豆とにんにくのペーストが最高。タバコと年月でセピア色に染まった壁、積み上げられた樽、ブーブクリコの空き瓶のロウソク立てもいい味を出していて、ノンアルコールでもいい気分。■スーパーマーケットに立ち寄り、King's Roadを冷やかし、6時頃からY邸で夕食。夫婦二組で年越しするはずだったが、今朝、わたしの留学時代の同期だったN君から「ロンドンで働くことになり、一昨日からこっちで家探ししている」と電話があり、大晦日は一人きりだと言うので、C君I嬢に相談したところ、N君も混ぜてもらえることになった。I嬢の手料理に歓声を上げながら、よく食べ、よく飲み、よくしゃべる。N君は初対面のC君をいきなり指差し、「下唇が大きいから、あなたはグルメですね」と断言。N君とは高校時代からのつきあいだが、あんなに話す姿を見たのは初めて。とても楽しかったよう。テレビに映し出されたビッグベンが12時を指し、一同で「あけましておめでとう」。ロンドンの新名所となっている巨大観覧車ロンドン・アイ周辺で繰り広げられる花火が10分にわたって中継される。観覧車の周りを火が走ったりして大掛かり。■こちらのテレビは始終スマトラ沖地震の津波のその後を報道しているが、大晦日のニュースでも「皆さんが新年を祝っているこの瞬間も救いを求めている人々がいます」と時間を割く。新聞の一面も、連日、食料を求める家族連れや親を亡くした少女の写真が飾る。自分だけ幸せになれない、ならない、ということを強く意識させられるようになっている。日本でも同じような報道がされているのだろうか。悲劇は時間とともに忘れられるが、復興は根気と時間が要る、とレポーターは訴える。地震に遭った新潟の人々は、希望を持って年を越せただろうか。 2003年12月31日(水) 年賀状でペンだこ2002年12月31日(火) 大掃除に救世主あらわる2001年12月31日(月) 祈り2000年12月31日(日) 2000年12月のおきらくレシピ
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