■ロンドンからシェイクスピアの故郷Stratford upon Avonへ行くには「Paddington駅から」とガイドブックに書いてあったので、Paddington発Stratford upon Avon着で列車を検索し、プリントアウトを持ってきた。乗換えがいっぱいで厄介だなあと思っていたら、乗換え1回というルート見っけ。London Paddington駅から地下鉄で2駅のLondon Marylbone駅へ行けば、あとは一本。地図で調べると、Marylboneは「ロンドンにいくつもある鉄道始発駅のひとつ」だとわかる。二日酔いのC君に直接駅まで送ってもらい、乗換えなしで終着駅のStratford upon Avonまで約2時間半。今夜から4泊するB&B、Heron Lodgeは駅をはさんでタウンセンターと反対側へ約1マイル。ご主人のBobに駅でピックアップしてもらい、宿に到着すると、夫人のChrisが温かいお茶とクッキーで迎えてくれる。
■外は強い風雨だが、傘を借り、タウンセンターまで歩く。雨の元旦ということで人出は少なく、開いている店もまばら(商店は5時で閉まることを後で知る)。だが、ロイヤルシェイクスピア劇場では今夜上演があると言う。窓口で「なるべく舞台に近い席」をお願いすると、前から3列目が空いていた。芝居前に腹ごしらえする客目当てのレストランが集まるSheep StreetのOppoという店で海鮮サラダとラザニアの夕食。イギリス料理にしては繊細な味つけ。バースより食事のレベルは高いのかも。調子に乗ってデザートも注文したら、甘さに卒倒しそうになる。
■7:15Beauty and Beast開演。黒いスーツとドレスに白塗りの顔の男女が客席側から舞台に上がり、呼吸を合わせてサングラスをかけ、スポットライトがONになる。かっこいいオープニング。このお芝居では彼らが黒衣とダンサーを兼ねる。対照的な白い衣装の男女8人が登場。お金持ちの夫婦と6人の子どもたち。長男は天文家を夢見る勉強バカ。次男はオリンピックを目指すスポーツバカ。三男は嫌われ者のただのバカ。長女は高望みな生意気娘。次女は物欲狂いの病気ちゃん。今度こそ、の望みを託されて生まれた三女は生まれたときに"Qu'est bella la Monde(世界は何て美しいの!)"と言ったことからBeautyと名づけられ、姿も心も美しい子に育つ。■舞台装置は極めてシンプルだが、想像力をかきたてる計算が尽くされている。母が亡くなり、父が事業に失敗し、召使つきの生活から一家が没落するシーンでは、天井から吊るされた7本のハンガーに父子がそれぞれの上着をかける。天井に引き上げられる上着を見上げる7人は客席に背を向けているが、もう手が届かない優雅な暮らしを惜しみ、行く末を案じる気持ちは、表情を見せないことでかえって伝わる。そして、自らが耕すことになる荒野へ向かう7人は、天井から吊るされた大きなブランコに乗り込む。ステージ上をスイングするブランコの上で力強く歌う父子。その下では沼地を表す茶色い布が張られ、布の下を動き回る黒衣の動きがぬかるみを表現。左右からパペットのウサギが現れると、"What's that?""Dinner!"と笑いを取ることも忘れない。ロープ使いといえば、道に迷ってBeastの屋敷に迷い込んだ父がBeautyのために摘むバラの花は、左右からピンと張られたロープの真ん中に咲いていた。Beastが天井から壁を這って登場したり、Beastの屋敷のMirror Roomの「鏡」を枠と黒衣のパントマイムで表現したのも面白かった。役者もレベルが高く、Beauty一家とBeastはもちろん、三枚目役のロボット召使(三男、長女が二役)のコミカルな演技も爆笑を誘っていた。■ディズニー映画のBeauty and Beastは大家族の設定でなかった気がするが、この舞台は、バラを摘んだのを見つかった父がBeastに「生きたまま食うぞ」と脅され、「さもなくば、Beautyという愛娘を差し出せ」と持ちかけられる。父の苦悩を知ったBeautyが自ら宮殿に乗り込み、Beastと心を通わせ、呪いを解く。感動的なストーリーだが、呪いが解けて人間の姿になったPrinceが立ち上がったとき、観客の目に最初に飛び込んだのが淋しい頭髪で、ちょっと夢がさめてしまった。大団円のウェディングパーティーの後、冒頭と同じく黒衣たちが舞台中央に集まり、ポーズを決め、サングラスをかけ、指で「オフ」の合図をするとライトが落ちる。その瞬間沸き起こる拍手の嵐にゾクゾク。シェークスピア作品ではないけど、さすがシェークスピア劇場!
2003年01月01日(水) 2003年の初仕事
2002年01月01日(火) 幸先
1999年01月01日(金) テスト