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JIROの独断的日記
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2011年11月19日(土) 【音楽】「ヴェニスの謝肉祭-トランペット・ニュースタンダード Vol.2-」神代修さんのトランペット。

◆日本音楽史上、最高のトランペット奏者だと思います。

神代修(くましろ おさむ)さんのトランペットを聴いたのは、

2009年1月18日、東京JSバッハ合唱団が杉並公会堂で、

バッハの「クリスマス・オラトリオ」を演奏したときのことです。

バッハの宗教曲では、ロ短調ミサとクリスマス・オラトリオに

トランペットが使われますが、それはピッコロトランペットという、

通常よりも、オクターブ音域が高い、大変難しい楽器で、難しいパートを

吹くのです。そのトランペットの音が、ひときわ見事でした。


そのステージには、相互リンクを貼らせて頂いている、

ヴィオラ奏者のふっこ様が乗っておられたので、演奏終了後

あの、素晴らしく上手なトランペット奏者はどなたですか?

と伺ったら、同じ芸大(東京芸術大学音楽学部。日本で音楽大学の頂点。)で

学生時代からのお知り合いの神代修さん、とのこと。


今の日本のプレイヤーのレベルは非常に高く、それは先人の苦労の

賜で、より良い練習法、奏法、教授法に関する情報の蓄積によるものだと

素人ながら、想像しますが、非常に失礼ながら、私がクラシック音楽を聴き始めた

40年前、はっきり言って、日本のトランペットの水準は、さほど高くなかったのです。


私は、

トランペットという楽器は、日本人には無理がある楽器なのではないか。

口腔周囲の骨格とか筋肉とか唇や歯の形状などの器質的要因が致命的で、

もしかすると、日本人から「本当に上手いトランペット奏者」は現れないのではないか。

と、やや大袈裟にいうと半ば「絶望し」かかったことがあります。


しかし杞憂でした。2009年1月、「クリスマス・オラトリオ」で聴いた神代さんのピッコロトランペットの

輝かしい音と卓越した技巧は今でも鮮明に頭の中で再現できるほどです。

その神代修さんのCDをご紹介します。


◆お薦めするのは「ヴェニスの謝肉祭-トランペット・ニュースタンダード Vol.2-」です。

これはですね。Amazonにあります。
ヴェニスの謝肉祭-トランペット・ニュースタンダード Vol.2-

私が最初のレビューを書きました。

このブログで改めて、文章を書くよりも、このレビューは

私のヘタクソな文章でもマシな部類なので、手抜きをするつもりではないのですけど、

自分の文章だから、良いでしょう。転載します。
日本音楽史上最高のトランペット奏者

私が最初にクラシック音楽を聴き始めたころ、当時の方には失礼だが、

私は、トランペットという楽器は、日本人にとって「本当に上手くなる」ことが不可能な楽器なのではないか、と思った。

しかしこのCDを一度聴けば分かるが、私は自分の不明を恥じる。神代修さんのトランペットは驚異的に上手く、そして芸術的である。

まず、音が大変柔らかく、ふくよかだ。「ベニスの謝肉祭変奏曲」は、音だけ聴かされたら、

本来、これはコルネットの為に書かれている曲なので、神代さんの音は誤解を恐れずに書くならば、

「コルネットを用いているのだろうか?」と錯覚するほど美しい。

その美しさは、ゆったりと歌う時も、極めて高度に技巧的な細かい音型においても、

また、あらゆる音域、最低音域から、通常の最高音域からさらにオクターブ高い「超高音域」まで見事に保たれている。

音のコントロールが完璧で、如何に難しいパッセージにおいても発音が明瞭であり、音が粗くなることが決してない。

神代修さんは日本音楽史上最高のトランペット奏者であると思う。

また、伴奏を務めた神代さんの母校、常総学院高等学校吹奏楽部の諸君も素晴らしい。

普段、コンクールの課題曲の練習では決して触れることがないであろう、ハイドンやフンメルにおいて、

バランスが完璧で、ソロが引き立つ音量を心得ているが、伴奏であっても単調にならず、

音楽的であろうとする、吹奏楽部諸君の意思が聴き手に伝わる。

さすがは、日本音楽史上最高のトランペット奏者を輩出した吹奏楽部である。

やはり、ダメですなあ。もっと練らないと。

ハイドンやフンメルのことももう少し詳しく書くべきでした。

が、聴いて頂いた方が早いです。

「ヴェニスの謝肉祭」による変奏曲(アーバン/ハンスベルガー編) ですが、

アーバンというのは、全ての金管楽器で共通して使える「アーバン金管教本」を書いた人です。

昔も今も金管専攻の学生でアーバンを知らないということはあり得ません。

これは日本語版ですけど、外版ならトロンボーン、チューバ用のヘ音記号

(低音部記号)版もあります。これを本当に全部吹けたら、ラッパに必要な技術は

ほぼ、全て習得した、と言って良いほどですが、逆にいうとそれだけ難しいです。


話がそれましたが、曲です。


「ヴェニスの謝肉祭」による変奏曲(アーバン/ハンスベルガー編)



Arban The Carnival of Venice



これはですねー。変奏は殆ど全て難しいのです。特に最後。

この部分。


ヴェニスの謝肉祭の最後の変奏。



音の跳躍を伴いながら、部分。

低い音が主旋律で、すぐオクターブ上に跳び、装飾的な早い音型を吹く音型が続きます。

上の早い音の動きとて勿論、指が回らないといけないですけど、それよりも低音に下がるときに

キチンと鳴らすというのは、ものすごく難しいのです。どんな人でもこの箇所の低音の音色はやや

損なわれる。これは仕方が無いです。マルサリスだろうが、ナカリャコフだろうが、アンドレだろうが

同じです。

神代さんは、ここが明瞭です。この域に到達するためには、

何と言っていいか分からないほど、長い苦しい修練を必要とします。

次の二曲は、クラシックのトランペットを勉強する人間で、

これを勉強しない、ということは絶対にあり得ない。

あまりにも有名なハイドンとフンメル。まずはハイドン。


ハイドン:トランペット協奏曲 (本図智夫編曲) 変ホ長調 第一楽章



Haydn Trumpet Concerto 1st Movement



どんな楽器でも同じだと思いますが音の「立ち上がり」というか「発音」。

一つ一つの音の頭がくっきりと明瞭であること、しかし、決して乱暴にならないこと。

それが、速い音型においても保たれているということが、美しくきこえるためには

必要ですが、神代さんは私が書くのは僭越ですけど、完璧なんですね。

また、旋律を美しく「歌う」ということ。「歌心」とかいいますが、それがないと、

いくらテクニックがあっても、聴いていてつまらない。神代さんのフレージングや

歌い方はとても美しい。ウィーン・フィルの首席だった、アドルフ・ホラー教授の

お弟子さんということですが、ホラー教授のコンチェルトを聴いたことがないので

これは想像ですが、ウィーン・フィルの金管はヴィブラートをかけません。

オーケストラでかけないのは普通ですが、多分、ソロでもかけないのではないかと。

フランスのモーリスアンドレなんかは、ずっとヴィヴラートを用いますけれども、

ちょっと、振幅が細かすぎるのです。弦楽器ほどではないですが。


神代さんのビブラートは、ご本人の趣味でしょうけれど、ちょうどいいのです。

細かすぎず、ゆったりとしたヴィヴラートが、音の美しさをより一層際立たせています。

カデンツァは、神代さんのオリジナルでしょうか。初めて聞くカデンツァですがとてもいいですね。

最後は、最高音域まで駆け上がって降りて来る。聴いている者にとっても非常に快感です。



最後はフンメルの第三楽章です。これを聴くと上手さ加減が直ぐにわかります。


フンメル:トランペット協奏曲 (本図智夫編曲) 変ホ長調 第三楽章



Hummel Trumpet Concerto 3rd Movement



これは、プロも学生さんも今や当たり前のように吹きますが、

本当に聴いて、「上手いっ!」という本番は、案外少ないものです。

ここでは、軽やかでしかし明確なタンギングがないとリズムが引き立ちません。

馬がパカパカ駆けるような軽やかなリズムですから。


細かいはなしですが、再生開始後1分ちょっとの所。


三楽章より(1)


ここを正しい音程でちゃんと吹くの難しいです。40年前、皆吹けませんでした。


それから、装飾音が細かいこの部分。↓


三楽章より(2)



難しいのですけど、何気無く吹いておられます。

大して難しくなさそうにきこえる。これは本当に上手いからです。



フンメルは最後まで意地悪です。ラッパは「ド・ミ・ソ」そんなことは無いのです。

一番最後です。↓ 上から一気に駆け下りて下の音を十分に響かせるのは大変です。


三楽章より(3)


素晴らしい。

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