JIROの独断的日記 DiaryINDEX|past|will
◆日本音楽史上、最高のトランペット奏者だと思います。 神代修(くましろ おさむ)さんのトランペットを聴いたのは、 トランペットという楽器は、日本人には無理がある楽器なのではないか。 と、やや大袈裟にいうと半ば「絶望し」かかったことがあります。 しかし杞憂でした。2009年1月、「クリスマス・オラトリオ」で聴いた神代さんのピッコロトランペットの 輝かしい音と卓越した技巧は今でも鮮明に頭の中で再現できるほどです。 その神代修さんのCDをご紹介します。 ◆お薦めするのは「ヴェニスの謝肉祭-トランペット・ニュースタンダード Vol.2-」です。 これはですね。Amazonにあります。 ヴェニスの謝肉祭-トランペット・ニュースタンダード Vol.2- 私が最初のレビューを書きました。 このブログで改めて、文章を書くよりも、このレビューは 私のヘタクソな文章でもマシな部類なので、手抜きをするつもりではないのですけど、 自分の文章だから、良いでしょう。転載します。 日本音楽史上最高のトランペット奏者 やはり、ダメですなあ。もっと練らないと。 ハイドンやフンメルのことももう少し詳しく書くべきでした。 が、聴いて頂いた方が早いです。 「ヴェニスの謝肉祭」による変奏曲(アーバン/ハンスベルガー編) ですが、 アーバンというのは、全ての金管楽器で共通して使える「アーバン金管教本」を書いた人です。 昔も今も金管専攻の学生でアーバンを知らないということはあり得ません。 これは日本語版ですけど、外版ならトロンボーン、チューバ用のヘ音記号 (低音部記号)版もあります。これを本当に全部吹けたら、ラッパに必要な技術は ほぼ、全て習得した、と言って良いほどですが、逆にいうとそれだけ難しいです。 話がそれましたが、曲です。 「ヴェニスの謝肉祭」による変奏曲(アーバン/ハンスベルガー編) Arban The Carnival of Venice これはですねー。変奏は殆ど全て難しいのです。特に最後。 この部分。 ヴェニスの謝肉祭の最後の変奏。 音の跳躍を伴いながら、部分。 低い音が主旋律で、すぐオクターブ上に跳び、装飾的な早い音型を吹く音型が続きます。 上の早い音の動きとて勿論、指が回らないといけないですけど、それよりも低音に下がるときに キチンと鳴らすというのは、ものすごく難しいのです。どんな人でもこの箇所の低音の音色はやや 損なわれる。これは仕方が無いです。マルサリスだろうが、ナカリャコフだろうが、アンドレだろうが 同じです。 神代さんは、ここが明瞭です。この域に到達するためには、 何と言っていいか分からないほど、長い苦しい修練を必要とします。 次の二曲は、クラシックのトランペットを勉強する人間で、 これを勉強しない、ということは絶対にあり得ない。 あまりにも有名なハイドンとフンメル。まずはハイドン。 ハイドン:トランペット協奏曲 (本図智夫編曲) 変ホ長調 第一楽章 Haydn Trumpet Concerto 1st Movement どんな楽器でも同じだと思いますが音の「立ち上がり」というか「発音」。 一つ一つの音の頭がくっきりと明瞭であること、しかし、決して乱暴にならないこと。 それが、速い音型においても保たれているということが、美しくきこえるためには 必要ですが、神代さんは私が書くのは僭越ですけど、完璧なんですね。 また、旋律を美しく「歌う」ということ。「歌心」とかいいますが、それがないと、 いくらテクニックがあっても、聴いていてつまらない。神代さんのフレージングや 歌い方はとても美しい。ウィーン・フィルの首席だった、アドルフ・ホラー教授の お弟子さんということですが、ホラー教授のコンチェルトを聴いたことがないので これは想像ですが、ウィーン・フィルの金管はヴィブラートをかけません。 オーケストラでかけないのは普通ですが、多分、ソロでもかけないのではないかと。 フランスのモーリスアンドレなんかは、ずっとヴィヴラートを用いますけれども、 ちょっと、振幅が細かすぎるのです。弦楽器ほどではないですが。 神代さんのビブラートは、ご本人の趣味でしょうけれど、ちょうどいいのです。 細かすぎず、ゆったりとしたヴィヴラートが、音の美しさをより一層際立たせています。 カデンツァは、神代さんのオリジナルでしょうか。初めて聞くカデンツァですがとてもいいですね。 最後は、最高音域まで駆け上がって降りて来る。聴いている者にとっても非常に快感です。 最後はフンメルの第三楽章です。これを聴くと上手さ加減が直ぐにわかります。 フンメル:トランペット協奏曲 (本図智夫編曲) 変ホ長調 第三楽章 Hummel Trumpet Concerto 3rd Movement これは、プロも学生さんも今や当たり前のように吹きますが、 本当に聴いて、「上手いっ!」という本番は、案外少ないものです。 ここでは、軽やかでしかし明確なタンギングがないとリズムが引き立ちません。 馬がパカパカ駆けるような軽やかなリズムですから。 細かいはなしですが、再生開始後1分ちょっとの所。 三楽章より(1) ここを正しい音程でちゃんと吹くの難しいです。40年前、皆吹けませんでした。 それから、装飾音が細かいこの部分。↓ 三楽章より(2) 難しいのですけど、何気無く吹いておられます。 大して難しくなさそうにきこえる。これは本当に上手いからです。 フンメルは最後まで意地悪です。ラッパは「ド・ミ・ソ」そんなことは無いのです。 一番最後です。↓ 上から一気に駆け下りて下の音を十分に響かせるのは大変です。 三楽章より(3) 素晴らしい。 【読者の皆様にお願い】 是非、エンピツの投票ボタンをクリックして下さい。皆さまの投票の多さが、次の執筆の原動力になります。画面の右下にボタンがあります。よろしく御願いいたします。
2010年11月19日(金) 【号外・緊急連絡】【バレエ】吉田都さんの「ロミオとジュリエット」本日23時20分から。
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