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JIROの独断的日記
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2002年11月19日(火) 薬物犯罪のおおもとは何か?

先週、警視庁がおとり捜査で覚せい剤を売っていたイラン人を逮捕した。
マスコミの報道の焦点はおとり捜査の是非に当てられていた。

しかし、覚醒剤に関して言えば、問題の本質はもっと別のところにある。

覚醒剤を売ることは無論犯罪であるが、買う人間がいるからこそ、売人がはびこる。

何故、覚醒剤を買う人間が減らないのか、ということは殆ど議論されていない。覚醒剤は所持しているだけで犯罪であることは誰でも知っている。また、濫用により身体に悪影響を及ぼすことはさんざん言われている。それでも、何故、覚醒剤を買う人間が増えるのか?

麻薬類のなかでも、ヘロイン、コカイン、エクスタシーなどと、覚せい剤は薬理作用が逆である。麻薬類は主として酩酊感を得ることを目的として使用される。アルコールもドラッグでこれを飲むことは犯罪でないが、使用目的は麻薬と同じ方向を向いている。

これに対して、覚醒剤はその名の如く、目が醒める薬である。「酔っ払った」感覚にはならない。覚醒剤を使用する人間のかなりの部分はこの覚醒作用を欲している。つまり、シャキッとしたいわけである。このため、夜間ドライバー、漁師、眠る時間を削って研究を続けなければならない大学院生、などの堅気の人間が手を出してしまうことがある。

まことに皮肉な事に、日本人の国民性、「勤勉さ」が裏目に出ている場合が少なくないのである。欧米では、麻薬が社会問題になっているが、覚醒剤はあまり話題にならない。シャキッとする薬はさほど必要としていないのであろう。

米国では難治性うつ病の治療に、短期間では有るが、アンフェタミン、つまり覚醒剤そのものが使われる事があるほどである。

勿論、覚醒剤を使用する人間が良いといっているわけではないし、ダイエット(覚醒剤をしようすると、食欲がなくなるらしい)や性的快感を高めるのが目的で使用するプータローの若いのもいる。これは、論外だ。

しかし、もともと真面目だった人間が、前科者となる危険を冒してまで、「シャキッ」となる薬に手を出してしまうというのは、もしかすると、現代社会があまりにも過酷な要求を個人に求めすぎているのではないか、という考え方も可能である。

つまり、誰もが常に、高く「目標」を掲げて、それに向かって「向上」すべく「努力」しつづけならなければならない、という価値観は人間がまだ十分対応できないほど、強いストレスなのではないか。高度成長期においてはそれでも頑張ればそれなりに報われたが、今はいくら頑張っても給料が下がるような時代である。強いモチベーションを持ちつづける事は非常に困難だ。それにもかかわらず、とにかく、決められた期間内に、集中力を維持して仕事をしなければならない、という世の中が、一部の人を薬物に走らせているのではないだろうか?

昨日のニューヨークタイムズは故・J.F.ケネディ大統領が在任中、大変健康状態がわるく、鎮痛剤、ホルモン剤、中枢神経刺激剤(覚醒剤と似ているメチルフェニデートという薬。商品名はリタリン)、潰瘍性大腸炎の薬、尿路感染を直すための抗生物質、睡眠薬、抗不安薬、抗うつ薬など、驚くほど多くの薬を飲んでおり「殆ど、薬漬けの状態だった」と報じている。もともと身体頑健ではなかったのかもしれないが、合衆国大統領の地位にあるというというとてつもなく強いストレスが身体を蝕み、職務を全うするために薬剤に頼らざるを得なくさせたのであろうことは容易に想像できる。

人間だってあるところで成長はとまる。経済も無限に拡大することは有り得ない。 最早、最盛期を過ぎた日本は、もう少し、皆が静かに、心穏やかに人生を送れるような世の中、成熟した段階に到達する事はできないだろうか。


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