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2010年03月05日(金) |
「米金融規制法制化の素案判明、銀行の自己勘定取引を禁止」←それは、どうかな。 |
◆記事1:米金融規制法制化の素案判明、銀行の自己勘定取引を禁止(3月4日7時11分配信 ロイター)
新金融規制案「ボルカー・ルール」の法制化に向けて米オバマ政権がまとめた素案が3日明らかになった。
銀行の自己勘定取引を禁止したほか、他の大手金融機関の自己勘定取引も制限する。
ロイターが入手した素案によると、銀行がヘッジファンドやプライベート・エクイティー・ファンドに投資および出資することを禁止する。
金融機関が他の金融機関と統合する際、負債総額が金融システムの10%を越える場合、
統合を認可しないとしている。最終案は3日中に議員に提示される見通し。
オバマ大統領は1月、ボルカー・ルールを公表し、金融システム内でリスクが高まることを
防ぐために追加的な予防手段が必要と説明した。
議員や金融関係者からはボルカー・ルールでは今回のような金融危機を防止できないとの
懐疑的な見方が出ていたが、素案では提案の最も厳しい項目が維持された。
銀行以外の金融機関が自己勘定取引を行う場合は厳格な監視下に置かれ、リスク行動に対して量的な制限を設けるとしている。
素案は「これらの提案は、より安全で回復力の強い金融システムをつくるための包括的な改革の一部だ」としている。
ただ、実際にボルカー・ルールが法案に盛り込まれるかは不透明。上院銀行委員会のドッド委員長はこれまでに、
銀行による自己勘定取引の禁止を法案に盛り込むことは困難との見解を示している。
◆記事2:銀行以外も厳格な規制下に=米政府の金融規制強化案(3月4日13時34分配信 ウォール・ストリート・ジャーナル)
オバマ米大統領が1月に発表した金融機関のリスクの高い取引を規制する金融規制強化計画の
法案原文の概要が明らかになった。それによると、銀行子会社を持たない金融機関も厳しい規制を受けることが分かった。
同計画は、ボルカー元連邦準備理事会(FRB)議長が提唱したことから「ボルカー・ルール」と呼ばれており、
オバマ政権は商業銀行が自己勘定取引を行うのを禁じることを打ち出した。
ただ、その詳細は発表時点では示されておらず、3日に公表される予定になっている。
法案原文の概要では、商業銀行でない「大規模な」金融機関についても、資本や流動性に対する規制を厳しくし、
リスクに関する情報開示を強化することがうたわれている。ゴールドマン・サックス・グループなどは、
商業銀行子会社を切り捨てても、当初予想されていたよりも厳格な規制を課せられそうだ。
概要によれば、一つの金融機関の負債が買収に伴い金融システム全体の10%以上に達するのを禁じ、
銀行がヘッジファンドや未公開株ファンドに投資・出資することも禁じる。
これに対し、上院は法案審議の過程で銀行の規模やリスクをめぐる規制の実施に当たっては
規制当局の裁量権を増やし、ボルカー・ルールの骨抜きを図るとみられている。
◆コメント:商業銀行(普通の銀行)を標的にしてますが、大混乱を引き起こしたリーマン・ブラザーズは投資銀行。AIGは保険屋。
アメリカ政府は「商業銀行」の自己勘定取引を禁止する、と言っています。
銀行には二種類あります。「商業銀行」と「投資銀行」です。
「商業銀行」は日本の銀行を考えればいい。預金を預かって、融資をして利ざやを稼ぐ銀行。
商業銀行の自己勘定取引というのは、銀行はお客さんから預かった預金を、
自分の判断で、為替や債券(国債、社債)、株などの相場が変動するマーケットで
「ディーリング」をする、ということです。これを禁止するというのです。
投資銀行というのは、預金を預かったりしないんです。お客(普通の事業会社など)が資金を調達しようというときに
社債を発行したりする、そのアドヴァイスと手続きを行って、手数料を稼ぐのです。その他、これから株式を公開しようという
会社を手伝って、これも手数料を取るわけです。それから、M&Aという言葉を見たことがあるでしょう?
企業の買収・合併の総称です。そのアドヴァイス、手続きをして、これもまた手数料が収入になる。
投資をしたり、リスクを取るのはお客さんで、投資銀行自身は、リスクを取らない。
勿論、手数料で儲けが貯まれば、その資金を自己勘定として、自分でもディーリングするのですが、
あくまでも、本質は、自らはリスクを取らないのが投資銀行。自分の資産を持って、リスクを取るのが
商業銀行、ということが出来ます。
だから、米国の金融規制強化策では、まず、商業銀行に「ディーリングをしてはならん」というのです。
しかしですね。2008年9月15日に破綻して、世界不況の引き金となったリーマン・ブラザーズは「投資銀行」です。
投資銀行なんだけど、お客からの預かり金(預金じゃないです)をあたかも自分の資産のようにして、
ディーリングしてたんですね。
しかも、低所得者向け住宅ローンである「サブ・プライムローン」を証券化した
金融商品にも投資していたのです。そうしたら、アメリカの不動産価格が暴落し始めて、
サブプライムローンを借りていた低所得者層は、借金を返せなくなった。サブプライムローンが
焦げ付いた、不良債権化した(言葉は違っても意味は同じです)から、それを証券化した金融商品も紙屑同然になり、
価格が暴落した。それに投資していた、つまりそういうサブプライムローン関連商品を買ってた投資銀行である
リーマン・ブラザーズは大損して、債務超過になって、資金繰りもつかなくなって、潰れたんです。
また、リーマンと違って救済されましたけど、やはり大損したAIGは「保険会社」です。
保険屋さんも、商業銀行じゃないから「預金」は集めませんけど、保険料をお客は毎月払い込みますから、
巨額の資金が手許にある。それで、ちょっと難しいですけど、「デリバティブ」って聞いたことあるでしょ?
金融派生商品ですが、これも、マーケットで売買されるんです。ディーリングの対象なんです。
で、AIGはこのデリバティブ投資というか、デリバティブ・ディーリングで大失敗して、
資本を取り崩しても埋め合わせできないぐらい大損したのです。勿論、リーマンと同じように
AIGも、サブプライムローン関連商品に投資していて、これも当然巨額損失をだしました。
ただ、AIGはFRB(連邦準備制度理事会)から850億ドル(約8兆円)緊急融資して貰い、政府の管理下におかれたので
リーマンのように、「倒産」は免れました。そのかわり、政府の管理下に置かれました。
このように見てみると、オバマ政権が発表した、「金融金融規制強化案」はですね。
ちょっとピントが外れてるのです。
確かに理屈では、まず、自らリスクを取る商業銀行の自己勘定取引を禁止、になるのですが、
実際に世界恐慌寸前の原因をもたらしたのは投資銀行と保険屋なのです。
米政府は、こちらに対する規制もやる、とは言っていますけれど、
商業銀行よりは、甘いんです。それはちょっと違うんじゃないの?
と言いたいです。
アメリカだけならまだしも、アメリカは、何でも自分のルールを世界各国が同じように実行するべきだ
といい出す国ですから、この「金融規制強化策」が日本の金融機関にも適用されることになると、
日本の銀行は株式投資ができなくなります。
株価が暴落するでしょうね。銀行は貸出と債券投資しかやってはいかん、というのですから。
銀行が株式を保有している会社は自社の株価が暴落するから、自己資本が減ってしまいますし、
これらの会社の株を買っていた一般投資家もひとたまりもないですよ。また、大混乱します。
そういう問題に発展しかねないので、ひとごとじゃないんです。
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