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2009年06月18日(木) |
樫本大進氏は既にベルリン・フィルのコンマス席で弾いていますね。但し正式に就任するかどうかは分かりません。 |
◆ベルリン・フィルは、良いオーケストラですが、日本での熱狂はやや異常です。
私は別にベルリン・フィルの回し者ではありません。
また、出来ることなら、音楽は生で聴くのが一番であることは言うまでもありませんが、
現実問題として、私の経験では、日本では、特に生のベルリン・フィルとウィーン・フィルに関して異常です。
普段、オーケストラなど聴かない人まで、「ベルリン」「ウィーン」というと目の色を変えるように感じます。
企業が接待用にチケットを買い占めることすらあるようです。だから、まず、一般庶民は諦めるしかない。
私は、これほど、オーケストラが好きで、子供の頃からベルリン・フィル、ウィーン・フィルのレコードを聴いてきたわけです。
見栄でクラシックを聴いているわけでもないし、本当に好きだから30年以上も聴いている。
だから、(ものすごくおこがましいのですが)、「聴くに値する客」だと思います。
しかし、未だかつて、日本で、チケットが取れた試しがありません。
特別のコネが無いとベルリン・フィル、ウィーン・フィルは聴けません。しかも滅茶苦茶高い。
◆ヨーロッパでは、ベルリンもウィーンも特別扱いされず、簡単に安く聴くことが出来ます。
以下の記述、嫌味に感じたらごめんなさい。
私はロンドンに4年間駐在しましたが、キザな書き方をするならば、これは
音楽の神様からのご褒美だったのかも知れません。ヨーロッパでもクラシック愛好家は少ないのですが、
それでも、毎日の様に、ロイヤル・フェスティバル・ホールとか、バービカン・センターでコンサートをやっています。
ヨーロッパの中というのは、地図で見ると感覚的に分かりませんが、現地で暮らしてみると、英・仏・独・伊、墺(オーストリア)、スイス
辺りはお互いに非常に近接していて、日本国内を移動するぐらいの時間で飛行機で、直ぐに何処にでも行けます。
ですから、ベルリン・フィルも、ウィーン・フィルも毎年殆ど必ずロンドンに来るのです。全然珍しいことでも特別なことでもありません
(因みにヨーロッパ人にとって、日本は、日本人から見たヨーロッパよりも遙かに心理的に遠いのです。文字通り「極東」、「地の果て」です)。
更にヨーロッパ人は、お互い、自国の文化水準にプライドをもっているので、例えばイギリス人は、
ベルリン・フィル、ウィーン・フィルの演奏水準の高さは正当に評価しますが、日本のように、ミーハー的にチケットが
売れるわけではない。ベルリン・フィルのチケットが、公演1週間前に、日本で言うところの「S席」を5000円ぐらいで買えてしまいます。
電話一本で。ウィーン・フィルも同じ。あれは、嬉しかったです。
但し、日本に帰国してからは当然、元の状態に戻ります。だから、十数年、生のベルリン・フィル、ウィーン・フィルを聴いていません。
しかし、生には及ばないにしても、ITの発達が思わぬ恩恵をもたらしてくれました。
◆ベルリン・フィルのコンサートを高画質、高音質で、インターネットで観て、聴くことが出来ます。
繰り返しますが、私はベルリンフィルと何の利害関係もありません。
ただ、ご存じない方も多いだろうと思い、紹介するだけです。
ベルリン・フィルの公式サイト(英語版)を見て下さい。ここから先、少々英語が分からないと利用できませんが、
さほど難しいことではありません。
今年1月から、ベルリンフィルはコンサートの映像と音声をインターネットで配信する、Digital Concert Hallという
サービスを開始しました。
ベルリン・フィルの定期を生で見ることが出来ます。但し時差を考えると、日本では明け方になってしまうので(マチネーは当然例外)、
過去の演奏をオン・デマンドで見る、Archiveが実用的だと思います。シーズン・チケットを買うことも可能で、
勿論、それを買うのは自由ですが、必ずしも全部が全部、自分の好みのプログラムとは限らないですから、
コンサート毎に、チケットを買う方が良いと思います。一つのコンサート毎、さらに、そのコンサートの特定の曲だけを
買うことも可能です。一番最初は、無料の登録が必要です。Signupという箇所から、個人情報を登録します。
すると、登録したメールアドレスにパスワードを送ってきます。それでログインしたら、登録完了です。パスワードは、当然、
その後で、自分の好きなように変更出来ます。
Archiveはデフォルトでは今月分が表示されますが、カレンダの矢印をクリックすると過去に溯ります。
例えば2009年5月には10日、17日、24日、28日、4回コンサートがあります。コンサート全体を買うと9.9ユーロ。約1,300円で、
購入してから48時間だけ見ることが出来ます。ダウンロードは出来ません。
また、或るコンサートの特定の曲だけを聴きたいときは、5ユーロ(約670円)で買えます。
5月10日はベートーヴェンのピアノ協奏曲第3番とエルガーの交響曲第2番、というプログラムです。
エルガーは私の好みだと退屈なので、ベートーヴェンだけ買ってみました。
実はその時、樫本氏がサブ・コン席に既に座っています。
更にその1週間後、小澤征爾さんの指揮で、今年生誕200年になるメンデルスゾーンのオラトリオ、「アリア」という
大曲を取りあげていますが、このときは、樫本氏、コンマス席に座っています。
とにかく、会員登録はただですから、一度、ベルリンフィル・デジタル・コンサートホールを見て、聴いてごらんになっては如何でしょう。
かなりの高画質、高音質ですから、それなりにパソコンのスペックが必要ですが、最近、皆さんがお持ちのものなら大抵問題ないでしょう。
ただ、光じゃないと、ちょっと難しいでしょうね。
◆樫本大進氏は、コンサートマスターに「内定」というのはちょっと語弊があると思います。
昨日の日記でも書きましたが、もう一度。安永さんの体験談をお読みになれば分かるとおり、
コンサートマスターの試用期間は約1年で、その毎回のコンサートで、ベルリン・フィルの他のメンバーが、
これから、樫本氏の「ベルリン・フィルのコンサート・マスターたるに相応しいか」を観察するのです。
毎回のステージが、樫本氏にとって「試験」です。ものすごいプレッシャーだと思います。
そして、試用期間終了後、改めて、ベルリン・フィルの全メンバーによる検討会が開かれ、
侃々諤々の議論が行われます。最後に採決して、3分の2以上の賛成を得られたら、初めて正式に、
「ベルリン・フィルハーモニー管弦楽団、第一コンサートマスターに就任」の発表が為される訳です。
結果として25年間もベルリン・フィルのコンサート・マスターを務めた安永徹ですら、コンサート・マスターに
するかどうかを決めるときには、1時間半も議論が続いたそうです。但しその内容は安永さんも教えて貰えない。
だから、樫本さんは、もうコンマス席に座っているけれど、コンサートの今シーズンは終わってしまったので
(欧米では、7月、8月はコンサートのオフシーズンです。夏が短いヨーロッパでは、この時期は皆コンサートよりも、
陽に当たりたい。バカンス優先です。音楽家自身も同様です)、9月から始まる2009年のシーズンが試用期間の始まりで、
短くとも、来年の6月までは続くのでしょう。絶対にコンマスになれる保証など何処にもない。
日本のメディアでは今のところ、毎日新聞と読売新聞だけが、このニュースを報じていますが、いずれも「内定」という
言葉を用いています。それは、ちょっと、誤解を招き易い。適切な報道ではありません。
しかし、私は、彼の成功を信じたい。
私は安永さんがコンサートマスターを辞めたときに、
もう、一生、日本人がコンサート・マスターを務めるベルリン・フィルなど、見られないだろうな。
と思いました。それを思うと悲しかったですが、まさかこれほど早く、再びそのチャンスが到来するとは思いませんでした。
樫本大進氏のコンサート・マスター就任を見届けるまでは、死ねません。
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