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2009年06月16日(火) |
「<日銀>総裁、景気底打ちの判断は示さず 楽観論に慎重姿勢」←この表現が適切です。 |
◆記事:<日銀>総裁、景気底打ちの判断は示さず 楽観論に慎重姿勢(6月16日21時3分配信 毎日新聞)
日銀は16日の金融政策決定会合で、景気判断を「下げ止まりつつある」に変更し、
従来の「悪化を続けている」から2カ月連続で上方修正した。在庫調整の進展などに伴い、輸出と生産の改善がより進んだためだ。
だが、雇用・所得情勢は依然不安を抱えたままで、会見した日銀の白川方明総裁は
「(消費などの)最終需要を慎重に見ている」と述べ、景気が底を打ったとの判断は示さなかった。
日銀は5月の決定会合で「輸出・生産が下げ止まり」と判断したが、今回はさらに一歩進め、
「輸出・生産は持ち直しに転じつつある」に改めた。5月の決定会合後に発表された4月の鉱工業生産指数や輸出が前月に続いて改善したからだ。
また、米ゼネラル・モーターズ(GM)の破綻(はたん)も市場に大きな混乱を及ぼさず、
日経平均株価は先週末、終値で1万円台を回復した。こうした状況を踏まえ、白川総裁は上方修正の要因を
(1)在庫調整の進展(2)(市場の)極端な不安の後退(3)積極的な金融・財政政策の効果−−と説明した。
ただ、白川総裁はこれらの要因について「自律的回復を保証するものではない」とも指摘し、楽観論とは距離を置く姿勢を鮮明にした。
輸出・生産の持ち直しは「昨秋以降の急速な悪化の反動」(アナリスト)との見方が強く、
大幅減産のあおりで低迷した雇用・所得の好転につながる道筋が見えないからだ。
4月の失業率は5年5カ月ぶりに5%を突破しており、夏のボーナスは大幅な落ち込みが必至。
日銀も今回の景気判断で「雇用・所得環境が厳しさを増す中、民間需要は弱まっている」と指摘した。
先行きも「最終需要の動向に大きく依存する」との見通しを示し、
白川総裁は消費や設備投資の動向を見極めない限り、「景気底打ち」は判断できないとの考えを強調した。
一方、企業の資金繰りなどの金融環境について、日銀は「改善の動きが見られる」としつつも、「なお厳しい」との判断を維持した。
日銀の社債・CP(コマーシャルペーパー)買い取りなどの資金繰り支援策は9月末に期限を迎え、
日銀は市場の動向を踏まえて打ち切りや縮小の是非を判断する方針だが、景気や金融システムの回復の度合いに左右されそうだ。
◆コメント:「上方修正」と言わない方が適切です。
15日(月)、16日(火)、と日銀の金政策決定会合が開かれ、その結果は、恒例で、ただちに公表される。
2009年 6月16日 当面の金融政策運営について(現状維持、12時34分公表) (PDF, 94KB)
そこでは、最初に「結論」ともいうべき景気判断が示され、4月7日開催の決定会合までは、
わが国の景気は大幅に悪化している。
だったが、5月22日の決定会合では、
わが国の景気は悪化を続けているが、内外の在庫調整の進捗を背景に、輸出や生産は下げ止まりつつある。
になり、本日(16日)の会合では、
わが国の景気は、大幅に悪化したあと、下げ止まりつつある。
となっている。この表現だけを捉えて、日銀が景気判断を「上方修正」した、と報じているメディアが多い。
全部引用していると長くなるので見出しだけ拾うと、
景気は「下げ止まり」に=2カ月連続で判断を上方修正−日銀(時事通信)
政策金利の現状維持を全員一致で決定、景気判断を上方修正=日銀(ロイター)
景気判断 2か月連続上方修正(NHK)
景気判断を上方修正 日銀決定会合「下げ止まりつつある」(日本経済新聞)
景気判断、2カ月連続で上方修正 日銀決定会合(朝日新聞)
と言う調子である。
しかし、こういうのを「早とちり」というのであって、金融政策決定会合の後、必ず行われる日銀総裁記者会見で、
白川総裁は、「──今回の景気判断について上方修正と見ていいか。」との質問に対して、
日本銀行では4月末に公表した展望リポートにおいて、すでにわが国経済は悪化のテンポが徐々にやわらぎ、
次第に下げ止まりに向うという見通しを示している。本日の判断は、こうした見通しに沿った動きを確認したもので、
従来の見通しを修正したものではない。
上方修正の修正ということについてだが、例えば雨が降っている時に天気予報で明日の天気について雨が止むなどの見通しを立て、
翌日に予報通りになった場合、天気予報を修正したとは日本語ではいわない。寸分違わず予想通りというつもりはないが、
基本的には予想通り展開している。私も委員会メンバーも上方修正したとの受けとめ方はしていない
と、答えている事に注意するべきである。「展望レポート」は日銀が日本経済の見通しについて半年に一度発表する報告書で、
経済・物価情勢の展望に過去のレポートが載っている。
白川総裁が言いたいのは、4月30日の展望レポートで既に、
わが国経済は、大幅に悪化している
との基本的見解を述べたが、同時に、
2009年度前半は、国内民間需要は引き続き弱まっていく一方で、内外の在庫調整の進捗を背景に、輸出・生産の減少に歯止めがかかっていくと予想される。
このため、わが国経済は、悪化のテンポが徐々に和らぎ、次第に下げ止まりに向かうとみられる
という予想をしている。大体そのとおりになっているのであり、これを「上方修正」とは言わない、ということである。
日銀総裁が「私も委員会メンバーも上方修正したとの受けとめ方はしていない」と述べているのに、マスコミが勝手に、
「日銀が上方修正」と報ずるのは正しくない。
結論的に繰り返すが、日銀は、景気にはまだ不安定要因があり、更に個人消費など需要の動向を見極める必要があるが、
リーマン・ブラザーズが破綻した直後のような勢いで景気が転がり落ちる状態からは脱しつつある、と述べているのである。
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