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JIROの独断的日記
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2008年12月06日(土) 【本】宮本文昭氏「疾風怒濤のクラシック案内」/【音楽】モーツァルト Part2。

◆オーボエ奏者、宮本文昭氏著、「疾風怒濤のクラシック案内」(アスキー新書)。

今は、現役を引退なさいましたが、1975年から四半世紀もドイツのオーケストラでオーボエを吹き、

特に、1982年からはケルン放送交響楽団という一流オーケストラの首席を長く務めた、宮本文昭さんという、

大げさではなく、世界的なオーボエ奏者がいらっしゃいます。この方が、ちょうど1年前にアスキー社から出版した、

疾風怒濤のクラシック案内という、大変に興味深い本があります。

正に、音楽の本場、ドイツのオーケストラで数々の修羅場をくぐってこられたであろうプロ中のプロ、宮本さんのこの本は、

素人向けに平易な言葉で、綴れられていますが、少しも権威ぶったところも、勿体ぶったところもなく、

ただ、宮本さんの音楽に対する深い愛情と洞察と、知識と経験が随所にちりばめられています。


◆この本の冒頭はモーツァルトについて書かれています。

「疾風怒濤のクラシック案内」の最初の項は「モーツァルトだって重いときがあるさ」(11ページ)です。

色々な作曲家や演奏家がモーツァルトについて語っていますが、宮本さんのモーツァルト観は、まさに核心を突いている、

と私は思います。ですから、大分長くなりますが、引用させて頂きます。

 ドイツ人は「モーツァルトは軽い」というけれど、僕はむしろヘビーだと思う。

たとえ表面的には底抜けに明るい感じがしても、奥には窺い知れないものを含んでいて、どの作品も一抹のさびしさが影を落としているような気がします。

モーツァルトを聴くときは、ここを気にしてあげるといいと思います。

 僕は、モーツァルトはさびしい人だったと思う。幼いときから神童と騒がれ、まるでさらし者のように各地を連れまわされて、

サーカスの旅芸人のような生活を送っていたから、友だちなんていなかったはずです。

ゲルマン系の人たちは、おだてられるとものすごく増長するところがあるから(僕は長いことドイツで暮らして、そういう恐ろしい増長ぶりをたくさん見ました)、

そうやってチヤホヤされているうちに、本人もだんだんこまっしゃくれた子どもになっていったのでしょう。

映画「アマデウス」で描かれたモーツァルトは多少大げさかもしれませんが、実像とそう違っていないのではないかと思います。

自分で自分をごまかすためにも、ああやって調子に乗っていないと、生きられなかったかもしれない。

でも、本当のところは、大人から「あれ書いて」「これ書いて」と注文されて、とても孤独な日々を送っていたのではないでしょうか。

絶えず満たされないものを心に抱えて。



当時、人々は若き天才をもてはやしましたが、はたしてどれくらい彼の音楽を、その才能の偉大さを理解していたかは疑問です。

モーツァルトの作品は、どれも使われている音の数が本当に少ない。

それなのに、あれだけ独特で美しい世界を創り上げたのですから、それはもう、まさに巨人と呼ぶにふさわしいのです。

もちろん、頼まれて書いた曲の中には、ただ漫然と書き綴って仕上げたと思われるものもあります。

それでもやはり、この人はすごいんですよ。どのパートを見てもムダが全くない。

よくモーツァルトは「書き直さなかった」と言われるけど、そんなことはありません。

残っている自筆の楽譜には、修正の書き込みも多いですし、「やっぱりこれはやめた」というようなメモもあります。

言われているほど、練り直しをしなかったわけではないのです。(中略)


そんなモーツァルトを演奏するには、空想力がものすごく必要とされます。

譜面に書いてあることだけではすまない(というか、そもそも譜面には殆ど指示はありません)。

逆に言えば、その人の持つリズムやテンポ感、間の取り方といったような音楽的センスのすべてが試されます。

センスがない人が弾いたり吹いたりすると、ものすごく退屈な音楽にしか聴こえない。

なので、ドイツのオーケストラの入団試験では、受験者に必ずモーツァルトをやらせます。

いくらほかの作曲家と相性がよくても、モーツァルトを上手に演奏できないのなら、ドイツでは音楽家として認めてもらえないのです。

例えば僕の場合、どのオーケストラでもモーツァルトのオーボエ協奏曲を吹かされました。(中略)

つまり演奏家にとっては、モーツァルトをやると実力のほどが知れる、音楽家としての自分の中身が全部ばれてしまう。こわーい作曲家なんです。

非常に分かり易い、しかし、「うーん、なるほど」と思います。


◆【音楽】ピアノソナタ、ヴァイオリンソナタ、協奏曲、交響曲から選びました。

宮本さんの文章を思い起こしながら、聴いてみると、普段聞き慣れたモーツァルトに、新たな思いを抱きます。

最初は、ピアノソナタ第10番です。演奏はイングリット・ヘブラーというモーツァルト弾きとして有名なピアニストです。

バラでも買えますが、私はかつてお金を貯めておいて、ヘブラーのモーツァルト:ピアノ・ソナタ全集を買ってしまいました。

ピアノソナタ第10番ハ長調K.330 です。

Mozart PianoSonata No10 K330 1st

「天衣無縫」という言葉を思い出しますが、明るい中に一抹のさびしさがある、ということは、宮本さんの本を読む前から感じていました。


次は、宮本さんと同じようにドイツのオーケストラしかも、世界一のベルリン・フィルのコンサートマスターを25年も務めている、

安永徹さんの、安永徹 市野あゆみ デュオコンサート(市野あゆみは奧さんです)から。

ヴァイオリンソナタ第28番 です。第一楽章だけ。

ヴァイオリンソナタ第28番 ホ短調 K.304

モーツァルトは全体的に長調が多く、ヴァイオリンソナタもそうなのですが、これは例外的な作品の一つ。

やはり、何とも言えないもの悲しさと明るさが同居しています。


次は、宮本さんが、ドイツでオーディションの度に吹かされた、オーボエ協奏曲です。以前一度載せましたが、

宮本さんの本を引用させて頂いたので、もう一度、聴きましょう。CDはモーツァルト:オーボエ協奏曲集

第一楽章です。

オーボエ協奏曲ハ長調K.314

この曲。色々な人の演奏を聴きましたが、宮本さんは、本当に世界レベルで超一流だと思います。


長くなったので、最後にシンフォニーから、第39番。モーツァルトは全部で41曲の交響曲を書いていますが、

特にこの39番、40番、41番「ジュピター」は押しも押されもしない、名曲。完璧な音楽ではないかと思います。

交響曲第39番から第3楽章です。CDはバーンスタイン=ウィーンフィルの、モーツァルト:交響曲第38番&第39番です。

交響曲 第39番 第3楽章

毅然とした冒頭部。中間部(トリオ)のクラリネットの可愛いメロディー。一度聴いたら忘れられません。

わずか4分の楽章に「モーツァルト」が凝縮されています。

それでは、この辺で。

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2007年12月06日(木) 毎日新聞宛質問状「リタリン報道について。患者が仮処分申し立てを行ったことを何故報道しないのか?」
2006年12月06日(水) 「海自インド洋派遣6年目 無料給油、203億円分」「生活保護 削減額は400億円」←これが「美しい日本」なのか。
2005年12月06日(火) 「ある音楽家の教養の程度は彼のモーツァルトに対する関係で分かる。」昨日(12月5日)はモーツァルトの命日でした。
2004年12月06日(月) 「専門家の意見を聞くことは悪いことではない」(陸自幹部が改憲案について。小泉首相)。小泉流魔法の詭弁術。
2003年12月06日(土) 「首相、涙でイラク復興誓う…2外交官合同葬 」 外交官が亡くなったことは自衛隊派遣の理由にならない。
2002年12月06日(金) 小柴、田中両氏、ストックホルム到着、のニュースを聞いて、色々と思いを巡らせる。

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