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JIROの独断的日記
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2008年08月15日(金) カール・ベームが語るモーツァルト/交響曲第41番「ジュピター」終楽章。

◆「カール・ベーム―心より心へ」(真鍋圭子著 共同通信社)という本があります。

昨日は、カール・ベーム、ウィーン・フィルハーモニー管弦楽団が1977年に来日して演奏した「運命」の一部を聞いて頂きました。

この時よりずっと前からたびたび、カール・ベームを訪ねてインタビューをしたり、来日時には通訳をはじめとして、

色々ベームの世話をして、カール・ベームから全幅の信頼を委ねられていた真鍋圭子さんという音楽ジャーナリストがいらっしゃいます。

この方の著書、カール・ベーム―心より心へには、3回の来日時のエピソードを含めて、興味深い内容が綴られています。

1973年にミュンヘンで真鍋さんがカール・ベームにインタビューをしたのですが、その時にベームがモーツァルトについても語っていますので、

抜粋して引用させて頂きます(「ジュピター」終楽章の話もあります)。


◆インタビューより抜粋

真鍋:あるインタビューでベームさんは、「モーツァルトは場合によってはワーグナーよりもずっと把握しがたい」と言われましたが、

この点について、少し説明して頂けますか?

ベーム:まさに見かけの単純さゆえに難しいのです。ワグネリアンは、19世紀末の論争の時代から常に、「モーツァルトのあの永遠に繰り返される台本など、

全くどうしようもない代物だ」と攻撃してきました。確かにモーツァルトは同じ言葉を繰り返し使用しているが、それは表現を強めるために必要だからです。

しかし、よく見るとほとんどの場合、ダイナミックを異にしていて、最初に出てきた言葉の意味をより深める効果をあげているのです。

私がいつも云っていることですが、、モーツァルトは彼という人間の持つ全特質、全本性を音楽の中に100パーセント有効に書き表しています。

ただ、私にとってモーツァルトは決してセンチメンタルではありません。多くの人はモーツァルトをあまりにもセンチメンタルにしてしまう。(中略)

モーツァルトは絶対にこうではなかった。彼の書簡集を読んでみても分かりますが、彼はいつも陽気で、愛らしく、様々な事柄に情熱的に取組み、時には

非常に腹を立てることもあった。しかし、彼は、一度たりともセンチメンタルであったことはなかったのです。


◆インタビューより抜粋(続)「私にとってモーツァルトは、全世紀を通じて一番偉大な音楽の天才です。」

 私にとってモーツァルトは、全世紀を通じて一番偉大な音楽の天才です。

考えてもご覧なさい。譜面に書くことを禁じられていた難しい曲をシスティーナで一度だけ聴き、モーツァルトは家に帰って

すぐ譜面に書き付けています。こんなことは音楽家から見てもまったく想像を絶することです。

彼は友人の「君はいったい、どのように作曲するんだい?」という手紙の問いに答えて「作曲なんて君、簡単なことだよ。

ペンを持つ時間さえあればいい。頭の中で全部出来上がっているんだから、それを譜面に書き写せばいいだけのことなのさ」

といっています。この有り余る創作力!(中略)

私は近々ウィーンでモーツァルトの第一交響曲を演奏するつもりです。この曲は音楽会で演奏して成功するような曲ではないことは

当然のことですが、彼が七歳半の時に作曲したこの曲の中に、既に彼の創作理念の根源ともいえるものが含まれていることを、

私は人々に示したいのです。彼は七歳半で字はまともに書けなくとも楽譜は書けたんですよ。この第一交響曲の第二楽章は、

彼の最後の交響曲である「ジュピター」の最終楽章に出てくるんですよ!想像できますか?こんなことが!信じられないですよ。

どれ程の時間が経過しようとも、彼の理念は最初のところから流れ出ているのです。私にとってこれは、モーツァルトがこの世に誕生した時は

もう「完成していた」証明でもあります。(中略)

何処か上からの力というものを信じざるを得ないですね。信仰というのは「信じる」という点において私はどれも同じだと思うのですが、

私が「音楽の力」というものを信じるとしたら、そしてそれが何処かの高みからくるとするなら、私はモーツァルトはそこからの、

我々の路上への突然の啓示としか思えません。(後略)


◆「ジュピター」第四楽章(終楽章)です。聴くときには、難しいことを考えなくていいです。

延々とカール・ベーム氏の言葉を引用したのは、私がいくら「モーツァルトは天才だ」といっても、全然説得力がないけれど、

カール・ベームほどの大家が、このインタビュー当時、既に相当高齢になっているにも関わらず、モーツァルトに話が及んだら

これほど、情熱的にモーツァルトの偉大さを強調しているのを、ちょっと見ていただきたかったからです。

この本には、前述のとおり、晩年3回の来日時のベーム氏の様子などが詳細に描かれていて、大変興味深いのです。

ただ音楽を聴くときは、別に背景の知識とか必要ありません。ジュピター終楽章の素晴らしい構成力。

後世に比べたらオーケストラの規模は決して大きくないのに、音楽はとてつもなく大きく感じられます。

どうぞ。

ダウンロード SymphonyNo41Finale.mp3 (10907.7K)




如何ですか。お気に召したら幸いです。モーツァルトもカール・ベームも喜んでいることでしょう。

それでは。失礼いたします。

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