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2008年02月09日(土) |
「<経産省>北畑次官が『デイトレーダーはばかで強欲で浮気』」←この種のマスコミ報道で気をつけるべき事。 |
◆記事:<経産省>北畑次官が「デイトレーダーはばかで強欲で浮気」(2月8日20時57分配信 毎日新聞)
経済産業省の北畑隆生事務次官が1月に開かれた講演会で、短期に株式売買を繰り返す「デイトレーダー」や投資ファンドについて、
「ばかで強欲で浮気で無責任で脅す人」などと発言したことが8日、分かった。北畑次官は「不適切な発言で、申し訳ない」と釈明したが、
甘利明経産相が同日の閣議後会見で「若干過激な、誤解を生むような表現を使った」などと苦言を呈した。
講演会は、経産省所管の財団法人・経済産業調査会の主催で1月25日に東京都内で開かれ、会員の企業関係者ら約130人が出席した。
北畑次官は講演会でデイトレーダーについて「競輪場か競馬場に行っていた人が手数料が下がったので、パソコンを使って証券市場に来た」と批判。
「会社の重要な議決権を与える必要はない」と指摘し、デイトレーダー向けとして「無議決権株式」の上場を主張したという。
また、株式を長期保有する機関投資家と、高額な配当を迫る投資ファンドなどを引き合いに出し、「同じ株主でも、いい株主と悪い株主に分かれてきた」と発言した。
北畑次官は8日取材に応じ、「会員だけの講演会と勘違いしていた。難しい話なので、聴衆の関心を引くためにおもしろおかしく発言してしまった。
不適切な部分だけ引用され、つらい思いをしている」と説明した。
一方、甘利経産相は、同次官から謝罪を受けたことも明らかにし、「部分的な引用で曲解されないことが大事」と語った。
◆コメント:発言の一部だけを読むのではなく、文脈を確かめることだ。
最初に断っておくが、私は北畑次官を擁護するつもりも、非難するつもりも無い。
この発言自体は、ひとまず、どうでも良い。マスコミの報道をどう読むべきか、について書こうとしている。
ちょうど1年前、当時の柳澤厚労相が講演で、「女性は産む機械」と発言した、といって、散々叩かれた。
その時にも私は同じ事を書いた(ココログはこちら)。
マスコミはこういう場合、原発言をそのまま紙面に掲載せず、物議を醸しそうな言葉をピックアップしてアレンジするのである。
北畑次官の発言のスクリプトはまだ、見つからないので、昨年の柳澤厚労相の発言を例にとると、実はこういうことだ。
【産経新聞】女性は「産む機械」柳沢厚労相
柳沢伯夫厚生労働相は27日、松江市で開かれた自民県議の決起集会で、
「産む機械、装置の数は決まっているから、あとは一人頭で頑張ってもらうしかない」と女性を機械に例えて少子化問題を解説した。
柳沢氏は「これからの年金・福祉・医療の展望について」と題し約30分間講演。
出生率の低下に言及し「機械って言っちゃ申し訳ないけど」「機械って言ってごめんなさいね」との言葉を挟みながら、
15−50歳の女性の数は決まっている。産む機械、装置の数は決まっているから、あとは一人頭で頑張ってもらうしかない」と述べた。
厚労省は昨年12月、人口推計を下方修正。
この時、柳沢氏は「子供を持ちたいという若い人たちは多い。その希望に応えられるよう、できる限りの努力をしていきたい」と話していた。
(2007/01/28 03:40)
よく読めば分かるとおり、「女性は子供を産む機械」という言葉は、発していない。確かに政治家としては、不注意であるけれども、
この発言が大騒ぎになったのは、マスコミが恣意的に、柳澤発言の単語を巧みに組み合わせて、あたかも、柳澤氏が、
「女性は子供を産む機械だ」
と、断定的、恣意的、差別的発言を積極的、挑発的に行ったような印象を、世間に与えたからである。
◆「ホロビッツはヒビの入った骨董品」の原発言と報道。
私が、初めてマスコミのこのようなスタンスに気付いたのは、ホロビッツというピアニストを巡る報道を見たときである。
ホロヴィッツという20世紀を代表する名ピアニストが晩年(1983年)、初めて来日した。
その時の演奏は、後で判ったことだが、風邪薬か何かを本番前に飲んでいたことなどが原因で(と言われている)ボロボロだった。
普通のピアニストならば、「カネカエセ!」の怒号が飛んでもおかしくないぐらい。始めから終わりまで、全部ミスタッチだったと言って良い。
その時会場に来ていた、音楽評論家の吉田秀和氏にNHKがインタビューしたとき、
氏は次のような(細部まで正確ではないが、かなり近いと思う)感想を述べた。
「僕はね。人間をモノに例えるのは嫌いだけれども、敢えて言えばこういう音楽家は骨董品の壺みたいなものでね。古くて多少汚れていても、マニアからすれば、たまらない。垂涎の的。
しかし、普通の人にしてみればただの古い壺なんですよね・・・・。ただねー・・・。骨董品としても・・・、ちょっとヒビが入ったねぇ・・・。残念です。もう十年早く聴きたかった」
これをマスコミは、
「吉田秀和氏がホロヴィッツを『ヒビが入った骨董品』と酷評」
と、報道した。マスコミによる「アレンジ」とはこういうことなのだ。
「・・・ただねー・・・。骨董品としても・・・、ちょっとヒビが入ったねぇ・・・。」
という、吉田氏のためらいがちな、批評と、
「ホロヴィッツはヒビの入った骨董品」
を比べると、明らかに後者には、殆ど「問答無用」の攻撃的意図が感じられる。
しかし、繰り返すが、吉田秀和氏はそう言う直裁的な表現はしていなかったのである。
この後、もっぱら「ヒビの入った骨董品」という言葉が独り歩きをしてしまった。
ただ、話題が多くのひとの関心のない、「クラシック音楽」という分野での出来事だったので、全く騒ぎにはならなかったが。
吉田発言も柳澤発言もマスコミが、原発言を形を変えて、センセーショナルなセンテンスにアレンジしているという点では全く同一である。
センセーショナルに仕立て上げた方が、新聞は売れるし、テレビは視聴率が上がる。
我々は、マスコミ報道には、非常に頻繁にそのような恣意が含まれていることを勘案して記事を読み、ニュースを聞くべきなのである。
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