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2007年05月28日(月) |
松岡氏の自殺そのものには言及を避ける。一般論。死んだ日から、死者に鞭打つことはなかろう。/【追加】日経のコラム「春秋」 |
◆他人が死んだことを「ネタ」とは何だ。
以前から、時事ネタという言葉が嫌いだ。ネタとは「種」を逆さにしただけのことで、
「漫才のネタ」という具合に、芸人の符丁だ。
時事問題を「ネタ」と考えること自体、私は間違っていると考える。
それは、天下国家の出来事を、読者にウケるための手段としてしか捉えておらず、
本当は、取り上げている問題そのものはどうでも良く、ただ、アクセス数なり「人気ブログ投票」で上位を占めることが目的なのだろう。
世の中の問題を論ずるのは、世の中がどうあるべきかを考えるためであり、自分の自己顕示欲を満たす為ではない。
まして、人が死んだときに、それを「ネタ」と称する人は、神経を疑う。なんという薄情さだ。
◆「村八分」は何故「八分」か知っていますか。
村八分とは、何か。
江戸時代以降、村落で行われた私的制裁。村のおきてに従わない者に対し、村民全体が申し合わせて、その家と絶交すること。
「はちぶ」については、火事と葬式の二つを例外とするところからともいう。
村八分は、要するに、ある家、一族を仲間はずれにするが、例外がある。その家が火事になったとき。弔事があったときである。
このときは、いくら何でも助けてやらねば、或いは手伝ってやらねば可哀想だ。という訳だ。情がある。
◆談合事件をうやむやにして良いとは言わない。ただ、今日ぐらいそっとしてやれ。
松岡農水相については、今日発売された週刊誌のうち、週刊ポスト、週刊現代、サンデー毎日が、主に「緑資源談合事件」を
取り上げており、周知の通り全国紙各紙も度々この問題を取り上げている。
松岡氏は、議員宿舎に事務所を構えており、議員宿舎の光熱費は全て国庫から出るのに、政治資金収支報告書で、光熱費を
計上していたことも問題となった。
それに関しては、私も2007年03月18日(日) 「松岡農相光熱水費問題」
に書いた。
これらを全て、松岡氏の自殺により、何となく葬り去るというのは正しくない。
しかし、世の中の本日のブログを見ていると、「死に水は『なんとか還元水』か?」とか、「松岡は卑怯だ」とか、
もはや、一切反論できない死者を、一人の人間の自殺を茶化し、嘲笑っている文章が多いのに驚き、嘆かわしく思う。
そこまで日本人は薄情ではないはずだ。「村八分」がそれを端的に表している。
それとも、今の世代は、「村八分」の「情」が全く分からないのであろうか。
談合、政治資金の不正計上は許されない。しかし、もう一度書くが、
弔事を茶化してはならないのである。
◆【追加】日経の「春秋」が見事である。
人が死んだことについて書いた文章に「見事」という形容詞を付けるのは、どうかと思ったが、あえてこの言葉を選んだ。
「見事」とはどういうことか。
全国紙・地方紙のコラム、社説のいくつかに目を通した。多くは要するに、
「松岡農相の死は痛ましい。しかし疑惑があったことは確かだ。それをうやむやにしていけない」
という趣旨である。間違ってはいないが当たり前だ。
これに対して日本経済新聞のコラム「春秋」(29日付)は、そんなことは分かっている、という前提で書かれ、
「もののあはれ」、を感じさせる。故・松岡農相に問題があったことはわかっているが、今日はそれには触れず、
さりげなく同氏の功績を挙げ、しかし、必要以上に美化もしていない。
大人の文章であり、今日のコラムでは最もこちらの心の琴線に触れた。
日経に怒られたら削除するが、皆さんにも読んで頂きたいのでひとまず全文を転載させて頂く。
春秋(5/29)
青田風が吹き渡り、卯(う)の花垣でホトトギスが鳴く。透明で明るい日本の初夏。
生命のみずみずしい存在感が山野にあふれ、街にも青葉の生気が満ちるこの季節に、松岡利勝農相は、自らの命を絶った。
澄明な光にそむくように、向けられた疑惑はそのままに。
▼1985年に国会で議決された政治倫理綱領では、政治倫理に疑惑をもたれたら、議員は自ら説明して責任を明らかにするとしている。
「なんとか還元水」の問題も、安倍首相が妙にかばい立てをせず、野党がもっと切り込んで、
松岡農相を釈明へと踏み出させていれば、自死という悲劇は避けられたかもしれない。
▼日本では政治がからむ疑獄事件に、自殺がついて回る。板挟みに悩む管理職が、思い詰めて死を選ぶことが多い。
時の権力の一翼を担う現職の閣僚が自殺するのは、戦後初という。「なんとか還元水」問題のほかにも、命を賭して守るべきものがあったのだろうか。
▼農学部を出て農林官僚になり、農林業を基盤に政界に転じた松岡農相。
海外からの圧力に呻吟(しんぎん)する農業の再生へ、日本の優れた農産物を世界に売り込む攻めの農政に取り組んだ。
日本食を文化として世界に広げることにも熱心だった。
干拓、ダム、林道など開発事業への依存から、農業のソフト化へ。農政の大きな宿題を抱えながら逝った。
この文章は、「だから、今後誰がどうすべきだ」のたぐいを一切書いていない。そこに、「情」を感じた。
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