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JIROの独断的日記
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2006年09月10日(日) 旧大蔵省が担当していた銀行検査が金融庁に移管された背景=○○○○しゃぶしゃぶ

◆小泉政権の経済政策--金融庁の変質

「小泉政権の経済政策検証」の本論からはややそれる、こういうことも次第に忘れられてゆくので

下世話な内容だが書いておくべきだと思ったのである(下世話な話は、後述する)。



金融庁は、今年度に入ってから、金融処分庁と言われるほど、金融関連各業種に対して、行政処分を言い渡している。

十分な資産査定をしないまま不動産証券化商品を販売していたJPモルガン信託銀行、証明書類を顧客の了解なく作成するなど違反行為が続出していたアイフル、

取引先企業へのデリバティブ商品の押し付け販売を行っていた三井住友銀行、

カネボウの粉飾決算に加担するなど監査法人としての体質が問われた中央青山監査法人、

保険金の不当な不払いなどの法令違反が続発した損保ジャパンなどがあり、いずれも一部業務の停止を余儀なくされた。





金融庁は金融機関の監督官庁だから、それは違法なことではないが、これだけ、処分が続くと、素朴な疑問を抱く。

今まで、各金融機関は全く問題なかったのに、昨年から今年にかけて、急に違法行為に走ったのだろうか?
実は前から行われていたのに、金融庁が見逃した、又は見て見ぬふりをしていたのではないか、という疑いを抱かざるを得ない。



さらに、各業種で、あたかも見せしめのように業界大手が処分対象となっている。

他の銀行、信託銀行、消費者金融、監査法人、損害保険会社は全部、清廉潔白なのであろうか?

金融機関への検査はかつては大蔵省検査局が担当していた。その時代は数年に一回検査するかどうかだった。

現在の金融庁は、すくなくとも銀行・保険会社、信託銀行などには、毎年検査に入っている。しかも一度検査に取りかかったら、何ヶ月も居座るのである。

前述した、今年度、処分された各業種の各社は、昨年は何も指摘する事がなかったのに、その後突如「違法行為」を始めたのだろうか?

どうせ、今年も金融庁検査が入ることは分かっているのである。そうだとしたらあまりにもドジではないか。


◆金融庁という役所が出来たそもそもの発端は、大蔵官僚の「ノーパンしゃぶしゃぶ接待スキャンダル」である。

昨日、小泉政権経済政策検証(第2弾)において、◆金融庁のやりたい放題という項目を掲げた。

ざっと復習すると、りそな銀行が国有化されたのは、財務状態が悪化していた、という基本的な理由もあるが、危ない銀行は他にも某信託銀行など、いくつか存在した。

その中で、特別に「りそな銀行が」生け贄にされたのは、当時の頭取が小泉政権の経済政策をかなりはっきりと批判して、

「生意気な奴だ」と睨まれたことによる。これは丸の内の常識である。



次に狙われたのはUFJ銀行であった。

UFJ銀行は三和銀行と東海銀行が合併した銀行である。このうち、三和銀行に対して旧大蔵省検査局、

現在の金融庁は、すさまじい「恨み」をもっている。

大蔵省時代の検査は、なれ合いであり、各「都市銀行」には、大蔵省の動向をウォッチする「MOF担」(モフたん。MOFとは、Ministry of Finance。大蔵省のこと。

MOFの「担当者」だから「MOF担」)という専任の行員、又はそのグループがいた。

彼らの仕事は、大蔵省の金融行政方針に関して、いち早く情報を得ること。日頃から接待をして、検査に来たときに、

多少の不都合は大目に見て貰えるような「なれ合い」「癒着関係」を構築することだった。

十年も前に出版されたものだが、お笑い大蔵省極秘情報という本を読むと、

当時の大蔵キャリア組の意識構造が分かってなかなか面白い(と同時に腹立たしい)。

大蔵官僚は銀行から、どれほど贅を尽くした接待を受けても、それが普通の事、と考えていたのである。

しかし、官僚も図に乗りすぎた。

1998年1月、東京地検特捜部は、銀行検査を行う金融検査官らを収賄容疑で逮捕し、官僚が受けていた接待の内容が白日の下に晒された。

国民は、銀行業界と大蔵省の癒着に呆れた。大蔵官僚は、銀行に「ノーパンしゃぶしゃぶ」の接待を要求していた。

「ノーパンしゃぶしゃぶ」とは、何かということは、ここでは書かない。

Googleで検索すれば、ウィキペディアの解説をヒットする。

この店の顧客名簿がネット上に論談:ノーパンしゃぶしゃぶ「楼蘭」顧客名簿として、

あまりにもオープンに公開されている。中央銀行総裁もお好きなようだ。

この当時、殆ど全ての銀行・証券・保険会社がこの店で接待していたが、贈賄で検挙された当時の三和銀行のMOF担当が、

自分の会社から逮捕者を出したくないがために、官僚による接待要求がいかに露骨か。接待の実態はどのようなものか、洗いざらい話した。

国民は官僚接待の現実を知り激怒した。

大蔵省からは逮捕者が出たばかりか、自殺者が出た。

未曾有の大スキャンダルであった。そして、それが原因で、大蔵省の金融機関検査監督機能は大蔵省から切り離されて、「金融監督庁」(今の金融庁)に移管された。



これは、「贈収賄事件」だから、接待をした銀行も、接待を受けた大蔵官僚もいずれも悪いのであるが、

これ以来、元大蔵省、現金融庁の検査官たちは、旧三和へのすさまじい恨みを抱き続けていた。

そういう連中がUFJの検査に入ったのだから、ただでは済まなかった。


◆刑事告発されたUFJの経営陣の一人は、「しゃぶしゃぶ」スキャンダル当時のMOF担だった。

金融当局が銀行を検査して、刑事告発するということは、史上初めてのことである。

無論、金融庁には、旧三和に対して「しゃぶしゃぶ絡み」の怨恨があるとしても、それで告発するわけにはいかない。

UFJは、金融庁があまりにもきびしく、貸金を査定して、不良債権を積みますものだから、貸倒引当金を取り崩さざるを得なくなり、

巨額の赤字決算は確実で、2年連続収益目標を3割以上下回った場合、公的資金を注入されて、国有化されてしまうところであった。

パニック状態に陥ったUFJは、これ以上金融庁から「不良債権」を指摘されないために、顧客資料を隠蔽するという最悪の手段に出たが、

資料を隠そうとしているところを金融庁に見つかってしまい、これは、「検査忌避(けんさきひ)」つまり、検査を誤魔化すという重罪であった。

従って、刑事告発もやむを得ないのだが、検査の過程における金融庁の不良債権査定があまりにも厳しく、

どうしても、丸の内界隈の人々は、「これは、『ノーパンしゃぶしゃぶの恨み、忘れまじ』だな」と見なさざるを得なかった。

銀行の企業に対する貸金を不良債権と見なすということは、不良債権を減らせ、というのが小泉改革の基本だから、銀行は企業に対して、

期日が到来していなくても、「早く、カネを返せ」と猛烈な勢いで督促することになる。こうして多くの企業が潰れたのは昨日も書いたとおりである。


◆金融庁検査官のさじ加減一つで、倒産し、苦しむ人がいるのだ。

金融行政はルール行政でなければならない。

検査官がいくらベテランとはいえ、相手の銀行が憎いとか、その日の気分によって、徒に、不良債権を積み増せば、

何の関係もない、リストラして頑張って立ち直りかけている企業をも潰してしまうのである。

背景に「ノーパン〜」があるUFJは特殊なケースだが、最近の金融庁の処分は、ルール行政というよりも、

検査官の裁量行政、つまりやりたい放題。調子に乗リすぎに見える。

これは究極的には、行政府の長、小泉純一郎内閣総理大臣の責任であることを指摘しておく。


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