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JIROの独断的日記
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2006年07月16日(日) 「陸自、イラク撤収、危険と隣り合った2年半」陸自に死傷者が出なかったのは良いが、イラクへの自衛隊派遣は違憲である。

◆記事:陸自、イラク撤収、危険と隣り合った2年半(日本経済新聞7月19日付朝刊)

事実上の「戦地」に足を踏み入れてから二年半――。国論を分けた陸上自衛隊のイラク派遣がようやく終わった。砂じんの舞うクウェートの滑走路を踏みしめ、無事に撤収できたことを喜び合う隊員たち。

だが、この間にサマワの宿営地を標的にした砲撃は計十三回、陸自の車列の脇で爆発物が破裂するテロも起きた。

サマワ住民とのトラブルも少なくなかったが、最終的には危険と隣り合わせの復興支援活動を一人の犠牲者も出さずに完了させた。



「無事に犠牲者を出さないことが私の最大の使命だった。率直に言ってほっとしている」――。

気温五〇度。熱風が吹きすさぶ灼熱(しゃくねつ)の砂漠にあるクウェートのアリ・アルサレム空軍基地の滑走路に、

最後の陸自隊員を乗せた航空自衛隊のC130輸送機が舞い降りた瞬間、額賀福志郎防衛庁長官に笑みがこぼれた。

陸上自衛隊は二〇〇四年一月に先遣隊がサマワ入りして以降、延べ約五千五百人の隊員を派遣。道路や学校などのインフラ整備を担った。

治安維持を担う多国籍軍の活動とは一線を画し、可能な限り、住民との接点を探った。

政府は延べ雇用者数など様々な数字を並べて「人道復興支援活動の成果だ」と強調する。

住民からも自衛隊に感謝する声が相次いだ。

ただ、日本の誠意がどこまで伝わったかとなると不明確だ。

撤収に際し、陸自はサマワのあるムサンナ州のドワイニ評議会議長らにアラビア語で書いた支援活動に感謝する手紙がほしいと頼んだ。

議長は「趣旨がよく分からない」と拒否。陸自は「隊員の士気を上げるためで、強要したつもりはない」(幹部)と釈明する。

宿営地がイラク軍に譲渡されることに反対する地主らは見直しを要求。日本が払ってきた年間約三千万円の地代をイラク軍が支払うかどうかはっきりしないためだ。

二年半のサマワ暮らしの最後の最後に悪い後味が残った。



海外での武力行使を禁じる現行憲法下では、自衛隊は治安維持の任務には加われない。

だが、治安が比較的安定していたサマワでもロケット弾による砲撃がときどきはあり、英豪軍の宿営地への砲撃も頻発した。

去り際が最も危ないとの判断から最後の撤収部隊は真夜中にサマワを出発し、タリル空港までの約百キロを休みなく走破した。

「自衛隊が一人の死者も出さなかったのは奇跡だと言ってもよい」と話す政府関係者もいる。

〇四年春、邦人ジャーナリスト二人が武装グループに殺害された際、クウェートの米軍基地に棺(ひつぎ)が運び込まれた。

輸送活動に携わっていた空自隊員はこの光景を今も思い出すという。

陸自も万が一に備え、小さな棺をサマワの宿営地内に持ち込んでいた。隊員の一人はこう振り返る。

「死を覚悟しなければいけない。そういう任務だった」


◆コメント:情に棹させば流される。

陸上自衛隊が2年半にわたるサマワでの人道復興支援活動を終えた。幸い1人の死人も出なかった。

それはそうなのだが、いつも現地の子どもたちとニコニコしていたわけではない。危険な目に遭っている。

無論、自衛官に責任はない。自衛隊のイラク派遣を決定した内閣の責任である。

東京新聞は、昨年自衛隊が初めて武力を行使する寸前だったことを曝露している。
◆記事:イラク陸自 実弾装てん 車列襲撃 発砲寸前だった(7月19日 東京新聞朝刊)

昨年六月、イラクに派遣されていた陸上自衛隊の車列近くで爆発があり、高機動車が破損した事件で、爆発直後、車列の隊員が銃に実弾を装てんし、戦闘態勢を整えていたことが分かった。

発砲には至らなかったが、“戦地派遣”の危険な現実を示した。十四年に及ぶ自衛隊海外派遣の歴史で実弾装てんが判明したのは初めて。

この事件は昨年六月二十三日、前後を軽装甲機動車で警護された高機動車二台がサマワ市内を通過中、道路右側の遠隔操作爆弾が破裂した。

高機動車一両のフロントガラスにひびが入り、ドアが破損した。

複数の防衛庁関係者によると、爆発直後に軽装甲機動車の警備隊員らが車載の五・五六ミリ機関銃を操作して弾倉から実弾を銃内に送り込み、発射態勢を整えた。

同時に砂漠の中を逃走する人物を目撃したが、車列は方向転換して宿営地に戻った。

移動中だった隊員約二十人は武器を所持しており、何人が実弾を装てんしたのか判明していないが、犯人が銃などで襲撃していれば、撃ち合いになった可能性がある。

当時、伝えられたより、はるかに緊迫した場面だった。



自衛隊が武力行使するのは、日本が他国の攻撃を受け、国民の生命に危険が及んだときに、これを守る場合にのみ許される。

東京新聞の報道内容が真実であれば、陸自隊員が自らを守るためとはいえ、

「海外で」現地の何らかの武装集団と銃撃戦に至る可能性があったわけで、これは、日本国憲法に違反する。



イラク復興支援特別措置法が、自衛隊が活動する地域は「非戦闘地域」に限ると規定しているのは、このためである。

イラク復興支援特別措置法の「非戦闘地域」定義は、

「現に戦闘行為が行われておらず、かつ自衛隊が活動する期間を通じて、戦闘行為が行われる危険が無いと認められる地域」

である。

小泉首相は2003年7月23日、国会において、当時の民主党代表管直人氏の、

「今のイラクに非戦闘地域はあるのか。例えばどこなのか、1カ所でも言えるなら言ってみてほしい」
との質問に対して、
「イラク国内の地名とか、よく把握しているわけではない。どこが非戦闘地域で、どこが戦闘地域か、いま私に聞かれても、分かるわけない」


と答弁している

こういう態度を日本語で「無責任」というのである。

それは実際にサマワを見た人物の証言により、一層明らかである。


◆「非戦闘地域」なんて言ってるのは日本の首相だけ(宮嶋カメラマン)

週刊文春の取材でサマワに赴き、陸自の宿営地で自衛隊員と寝食を共にした経験がある宮嶋カメラマンは、

元来自衛隊の海外派遣に賛成していたが、昨年、毎日新聞のインタビューを受けて次のように答えている。

Q:サマワは非戦闘地域ですか?

宮嶋:「戦闘地域ですよ。イラク全土が戦闘地域。日本の首相だけですよ、非戦闘地域だなんて言っているのは。昼間に銃撃戦がある。オランダ兵も殺される(04年5月)。正規軍が戦死しているということなんです。私は自衛隊の派遣は国益にかなうという自説がありましたが、今は自信がありません。大量破壊兵器がいまだに発見できない。多分、本当にないでしょう。つまりあの戦争に大義はなかったわけです。それでも部隊を派遣することで米国に恩を売れると思った。でも6カ国協議を見ても、国連の常任理事国入り問題にしても日本のことを真剣に考えるそぶりがない。米国には裏切られた気分です。ただしこれまでの自衛隊の任務や苦労を無にしたくない。全員が無事で帰ってきてほしい。あんなひどいところでけがをしたり、死んだりしてほしくない」



◆結論:そもそも存在しなかった「非戦闘地域」に自衛隊を派遣した首相の責任は今も重い。

陸上自衛隊が2年半サマワに滞在し、死傷者を出さなかったのは、以上を勘案すると殆ど奇跡的、と言って良い。

陸上自衛隊員が無事に帰国するのは、結果論である。



内閣総理大臣は自衛隊法により、自衛隊の最高指揮権を有する立場にある。

それにも関わらず、自らサマワの状況を視察することは一度もないまま、このような危険な場所に陸自を派遣した責任は重大である。


◆航空自衛隊と海上自衛隊は残留して、何をしているのか、説明がない。

帰国したのは陸上自衛隊だけであり、航空自衛隊、海上自衛隊は今もなお中東に留まっている。

これまでに、私は何度も書いた。最近では4月20日がそれに当たる。

再び書く。

空自の輸送機は、武装した英米軍兵士の輸送を行っている(何故、そのように言い切れるかは、4月20日の日記をご参照いただきたい)。

交戦中の同盟国の後方支援は集団的自衛権の行使に該当し、違憲である。

日本のメディアは陸自撤退ばかりを取り上げ、空自と海自が何をしているか、殆ど何も書かないが、こちらの方が問題なのだ。

特に、海自に関しては空自よりももっと情報が無い。何故、陸自の情報ばかりが伝えられ、空自、海自の情報が国民に伝わらないのだろうか?

自衛隊のイラク派遣を決定した、2003年12月9日、閣議後の記者会見、

イラク人道復興支援特措法に基づく対応措置に関する基本計画についてを読むと分かるが、

この時、小泉首相は次の通り明言したのである。

【質問】 今回、武器弾薬の輸送は行われるんでしょうか。

【小泉総理】 武器弾薬の輸送は行いません。

【質問】 行わない。

【小泉総理】 行いません。

【質問】 それは、実施要項の中とかで担保されるんですか。

【小泉総理】 そうです。

【質問】 そういうことですか。

【小泉総理】 はい。復興支援活動であります。日本は戦争に行くのではありません。自衛隊は復興人道支援活動に行くんです。

この言葉を信じるならば、空自と海自も人道復興支援活動を行っていなければならない。それは、軍事的な行為ではないから、隠蔽する必要は無いはずである。

だが、現実には、空自と海自の活動内容は誰も知らない。

国民に空自、海自の活動内容を知らせないのが、「軍事上の」機密事項であるならば、小泉首相は、記者会見で嘘をついたことになる。

大新聞は、皆そんなことは分かっているくせに、書かない。

だから、私は、マスコミほどの影響力を持つわけは無いが、何度も書くのである。



最後に小泉純一郎内閣総理大臣自身の著書、「コイズム」に収録されている、小泉純一郎氏の発言を紹介しておく。

「コイズム」168ページ
「現行の憲法では、自衛隊の海外派遣はどう考えても無理がある。」



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