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JIROの独断的日記
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2005年07月16日(土) おすすめCD「序曲・前奏曲・間奏曲集」カラヤン・ベルリン・フィルハーモニー管弦楽団←今日がカラヤンの命日です。

◆カラヤンが亡くなって、16年です。

 

 ヘルベルト・フォン・カラヤンという人はザルツブルグの生まれなのですが、元々はギリシャ系なんですね。

ギリシャへ行くと、確かに欧米人の中でも、特に彫りの深い、ああいう顔の人が大勢います。



 カラヤンは、生前色々と新しいことを始めました。

 昔の「巨匠」はレコード録音を好まない人が多かったのですが、カラヤンは非常に精力的に、自分のレパートリーを片っ端からレコードに録れて、 これが世界中で売れました。

 クラシック以外の大衆音楽の世界ではミリオンセラーとかありますから、それで金持ちになる奴は大勢いますが、人気の無いクラシック音楽のレコードの印税で大金持ちになった指揮者というのは、人類史上、カラヤンが初めてです。



 いつの世の中でも、新しいことを始めると、必ず批判されます。ましてや成功し、大金持ちになった人は嫉まれます。

 でも、そういうことは音楽には関係が無いことです。

 クラシック音楽がポップスなどと違うところは、数百年も前に作曲された曲を、色々な指揮者が、それぞれのオーケストラで、それぞれの解釈で演奏する、ということです。

 ですから、同じ曲を聴いても、演奏者によって、また、同じ演奏者が同じ曲を弾いたり、指揮者ならば、指揮しても、毎回、違った演奏になるわけです。

 当然、それぞれの演奏が比較されます。好みの違いというのは勿論あるけど、カラヤンの演奏が世界中で聴かれるのは、やはり、彼が非常に卓越した音楽性と、指揮者としての能力を持っていたからです。

 名マエストロだと思います。


◆カラヤンの功績:大衆に迎合せずに、本当の芸術を世界に広めた。

 

 カラヤンはレコードに、ベートーベン、ブラームス、ブルックナー、ワーグナー、リヒャルト・シュトラウス(ヨハン・シュトラウスじゃないですよ。全然別の人。「交響詩」っていうのを沢山書きましたね。映画「2001年宇宙の旅」に使われて有名になった、交響詩「ツァラトゥストラはかく語りき」とか「英雄の生涯」とか・・)と言ったクラシックの「王道」、大曲も録れました。

 他方、彼は、クラシックに余りなじみが無い人でも楽しめる「軽騎兵序曲」とか「ウィリアム・テル序曲」とか、「フィンランディア」、「カルメン組曲」のような、いわゆるクラシックの「ポピュラー名曲」を沢山ベルリン・フィルハーモニー管弦楽団という世界一のオーケストラで録音してくれました。



 私は、結果的には、プロになる才能も根性も無かったけれども、トランペットを習おう、と決心したのは、カラヤン=ベルリン・フィルハーモニー管弦楽団の「軽騎兵序曲」や「ウィリアム・テル序曲」をレコードがすり切れるほど夢中になって聴いたからです。

 子供心に、トランペットの音の輝き、フル・オーケストラの分厚い響きに深く心を動かされました。

 恥ずかしいけれども、私は小学校を卒業するときの文集に、「将来、自分はオーケストラのトランペット奏者になる」、とはっきり書いています。


◆私にとって音楽とは、崇高なものです。

 

 その夢は叶わなかったけれども、私にとって、「音楽」とはipodなんかで気軽に聴くものでは無いんです(かといって別に、自宅で正座して聴く訳ではありません。また、他人様がipodで音楽を聴くのは全く自由であることは言うまでもありません)。

 私の中で、音楽とは、「永遠なる美」そのものであり、崇高な「芸術」です。

 そう考えるようになったのは、子供の頃に聴いた、カラヤン、ベルリン・フィルの演奏から受けた感動が大きく影響していると思います。

 ですから、カラヤンにはとても感謝しています。 



 後に、私は、ウィーン・フィルの指揮者、カールベームの「人間の存在を少しでも明るく照らし出すのが芸術家の使命だと信じています」という言葉を読んで、大変感銘を受けました。

 まさしくその通りです。

 私にとってそれ以来、その基準を満たさない音楽や音楽家は、芸術や、芸術家と言えないのです。

 そしてカラヤンは、その尺度から見て、やはり、本当に優れた芸術家のひとりだと考えます。


◆「序曲・前奏曲集」

 

 だからといって、カラヤンの演奏や録音が、あらゆる作品において、常に世界一だ、と考えるほどの狂信者ではありません。

 演奏家と作品若しくはその作曲家との間には、「相性」があります。カラヤンも例外ではありません。

 本日、お奨めするCDに収録された曲は、いずれもカラヤンの十八番です。安心してお奨めできます。

 「序曲」や「前奏曲」は単独で存在する作品もありますが、原則としてオペラにおいて、歌手が登場する前に、オーケストラだけで演奏されるものです。

 これらは、その後に続くオペラ全体を数分間に凝縮して提示する、と言う性格を持っています。ですから、非常に完成度が高い作品が多いのです。

 序曲・前奏曲・間奏曲集というCDには、次のような曲が録れてあります。


  1. 歌劇「魔笛」序曲(モーツァルト)

  2. 序曲「コリオラン」op.62(ベートーヴェン)

  3. 「エグモント」op.84序曲(ベートーヴェン)

  4. 歌劇「魔弾の射手」序曲(ウェーバー)

  5. 歌劇「オイリアンテ」序曲(ウェーバー)

  6. 歌劇「オベロン」序曲(ウェーバー)

  7. 序曲「フィンガルの洞窟」op.26(メンデルスゾーン)

  8. 舞台神聖祭典劇「パルジファル」第1幕への前奏曲(ワーグナー)

  9. 歌劇「ウィリアム・テル」序曲(ロッシーニ)

  10. 歌劇「どろぼうかささぎ」序曲(ロッシーニ)


これで、半分なんですが、全部、名曲ですねえ。いいなあ、これは。

頭から順に聴く必要はありません。

3曲目のベートーベン「エグモント序曲」を聴いてください。こたえられません。曲の主な部分は3拍子ですが、最後、終結部(「コーダ」といいます)になると4拍子に変わり、がらりとムードが切り替わります。


ピアニッシモで始まり、それがどんどんクレッシェンドして、ややテンポが上がり、爆発します。

私の好きなトランペットの音が一直線に空気を貫きます。きっと好きになる方がいらっしゃると思います。

その他。「魔弾の射手」は始めにホルンの四重奏がありますが、皆さんどこかで聴いたことがあるメロディーです。

ウィリアム・テル。チェロ5重奏で始まるオペラの序曲というのは、極めて珍しい。というか、この曲しかありません。

最後、トランペット・ファンファーレで始まる「スイス軍の行進」は勿論有名ですが、チェロの後、「嵐」の部分のトロンボーンを聴いてあげてください。むずかしいのです。

「どろぼうかささぎ」序曲。これは、スネア・ドラム(小太鼓)のソロで始まる。小太鼓が二人いまして、ステージ上、左と右に分かれて配置されます。

一方が他方の「こだま」(エコーという意味です)のような効果を出しています。ロッシーニも天才ですね。

それでは、今日はこの辺で。


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