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2006年07月09日(日) |
トロンボーンで「熊ん蜂の飛行」を吹く男。 |
◆お薦めCD。世界でただ一人、ソロで食っている、クラシック・トロンボーン奏者。
今日のお薦めはかなりマニアックなので、もしも気が向いたら、という程度でお読み頂きたい。
1958年スウェーデン生まれのトロンボーン奏者、クリスティアン・リンドベルイという人がいる。
クラシックの世界で、ソロ・トロンボーン奏者として食える、というのは、殆ど奇跡である。
トロンボーンは、ジャズのビッグバンドや吹奏楽では常連であるが、クラシックでは、オーケストラですら、出番が無いプログラムの方が多分、多い。
例えば、モーツァルトの交響曲は41曲あるが、トロンボーンの出番は一度もない。「魔笛」というオペラや遺作の「レクイエム」でかろうじて使っているだけだ。
トロンボーン協奏曲、というのは、実はかなりある。アルブレヒツベルガーという人の曲など私は結構好きだ。
また、かの有名なメンデルスゾーンのバイオリン協奏曲を初演したバイオリニストは、ライプツィッヒ・ゲバントハウス管弦楽団(メンデルスゾーンはこのオーケストラの指揮者だった)
のコンサートマスターだった、フィルディナンド・ダヴィッドという人物なのだが、このバイオリニストは作曲もした。
そして何故か、「トロンボーンの為の小協奏曲」(毎コンでトロンボーン部門がある年は、必ず課題曲になる)を書いている。大変美しい。
(ここ、インディアナ大学トロンボーン科のサイトで、楽譜を見て、音を聴くことができる)。
しかし、世界の大部分のオーケストラはコンサートプログラムにわざわざ「トロンボーン協奏曲」を入れようとしない。
客を呼べないからである。
だから、ソロ・トロンボーン奏者の需要は無きに等しい。
◆気絶しそうな上手さ
それなのに、クリスティアン・リンドベルイ(Christian Lindberg)がソリストとして食えるのは、無茶苦茶に上手いからである。
リムスキー・コルサコフという作曲家の歌劇「サルタン皇帝の物語」の中に「くまんばちの飛行」という、ずっと16分音符の細かい動きを続ける曲がある。
演奏時間にしたら、1分程度であるが、ピアノ、バイオリン、チェロ、フルート、あらゆる楽器で、
速く、上手く弾ける吹ける(ピアノや弦楽器や、木管楽器の場合、「指が回る」という云い方をする)テクニックを披露したときに、
(速いのだけがテクニックではないけど、素人にも一番分かりやすいでしょ?)この曲を演る。
リンドベルイは、トロンボーンで「くまんばちの飛行」を吹いてしまうのである。テンポを落とさずに、である。
他の楽器と異なり、トロンボーンは音程の変化はスライドと呼ばれる部分を伸縮させることによって行う。
全くスライドを伸ばさない状態を第一ポジションといい、半音下げる位置を第2ポジションという。第2ポジションまでが約9cmである。
第7ポジションまであるが、先に行くほど少しずつ、幅が広くなる。とにかく、音程の変化に要する運動量が非常に多い。
因みに、ポジションに「しるし」がついているわけでも、「ストッパー」がついているわけでもない。
トロンボーン奏者は弦楽器奏者と同じく、ただひたすら練習によって、正しい音程が出る各ポジションまでの距離を身体に覚え込ませる。
極めてユニークな管楽器であるが、必然的にキーやバルブを押えて音程を変える他の全ての管楽器よりも、「速い」音の動きを演奏するときは不利である。
「くまんばちの飛行」を吹くことなど、常識的に考えると絶対に無理なのであるが、その常識を覆したのがリンドベルイで、ただただ、驚嘆するしかない。
輸入盤になるが、Amazonにありますね。中古でも何枚かある。
The Virtuoso Trombone (トロンボーンのヴィルティオーゾ)というこのページで試聴ができる。
一曲目が「くまんばちの飛行」である。
◆モンティの「チャールダーシュ」その他もすさまじい。
この他、やはり、「速い」演奏を披露したいときに、いろいろな楽器で演奏されるモンティという作曲家の「チャールダーシュ」がある。
ジプシー音楽から題材を拾った曲だが、曲中間部では、演奏者の腕が鳴る。
そして、「スコットランドの釣鐘草による変奏曲」は、トロンボーン用に書かれたものだ。
「スコットランドの釣鐘草」は、誰でも聞いたことのある美しいメロディーである。これを、もとに変奏曲にしてある。
変奏曲の手法としてはいささか初歩的だが、第一変奏では、八分音符、第二変奏では三連符、最後の変奏では16分音符となる。
つまり、段々、音の動きが細かくなるのである。
最後になると、上で紹介した他の曲と同様に、「トロンボーンでこんな速い動きができるのか!」と驚かれることであろう。
ブラスバンドでトロンボーンを吹いている(いた)人などは、当然リンドベルイを知っているだろうが、
「普通の」クラシック聴きは、あまり管楽器のソロ、しかも金管のソロに興味を示さない。
しかし、この世か人類が滅びる前に(?)、リンドベルイの演奏を、一度ぐらいは聴いてみることをお薦めしたい。
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2004年07月09日(金) 「曽我さん一家、1年9か月ぶり再会」曽我さんが別人のように強く見えた
2003年07月09日(水) 民放は大抵「ヤラセ」である。