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2006年05月14日(日) |
「NHKスペシャル 小泉改革の5年」視聴後所感 |
◆番組内容:経済諮問会議は要するに地方切り捨て。
小泉改革というが、小泉首相には何の専門知識もないので、ブレーンを置いた。
それが、経済財政諮問会議である。その構成員に関しては、次の条件を満たさねばならない。
- 人数を、議長(内閣総理大臣)及び10名の議員、計11名以内に限定。
- 内閣官房長官、経済財政政策担当大臣(置かれた場合)以外の議員は法定せず。
- 民間有識者の人数を、議員数の4割以上確保することを法定。
- 上記「議員」の他に、議案を限って、他の国務大臣を、「臨時議員」として、会議に参加させることができる。
今のメンバーは、
- 小泉純一郎 議長 内閣総理大臣
- 安倍晋三 内閣官房長官
- 与謝野馨 内閣府特命担当大臣(経済財政政策)
- 竹中平蔵 総務大臣
- 谷垣禎一 財務大臣
- 二階俊博 経済産業大臣
- 福井俊彦 日本銀行総裁
- 牛尾治朗 ウシオ電機(株)代表取締役会長
- 奥田碩 トヨタ自動車(株)取締役会長
- 本間正明 大阪大学大学院経済学研究科教授
- 吉川洋 東京大学大学院経済学研究科教授
である。小泉改革は要するに、
もう地方にカネはやらない。自分で景気を良くしろ、
ということだが、なるほど、この顔ぶれなら、地方なんか知ったことではない、という結論になるだろう。
◆小泉改革の柱、「公共事業の削減」
自民党がずっと安定的に政権をにぎっていたのは、「国土の均衡ある発展」を心がけたから。
簡単に言えば、地方の陳情をなるべく実現してやったからだ。人が少ないところだからといって、切り捨てることはなかったからである。
ところが、小泉首相が主催する経済財政諮問会議は何を決めたか?
「『国土の均衡ある発展』はある時期までは意味があったかも知れないが、国家財政が厳しくなっている今は、無理だ。
以前のように地方交付税交付金を湯水のように、分配するわけにはいかない」ということである。
つまり、地方は、今までのように国からの助けをアテにしないで、自分達で新しい産業を興すなり何なりして経済を活性化し、自立せよ。というのである。
◆北海道特例の見直し
北海道は、特にインフラ(水道・ガス・電気・電話、道路などの「社会資本」)の整備が遅れていたので、少し特別扱いをしてきた。
公共事業も多く、全国で建設業に携わる人の割合が一番高いのが北海道だったが、経済財政諮問会議は、北海道の優遇を止める計画をしている。
今年の諮問会議のレポートでは、北海道からの要求も強かったので「特例廃止」とは書かなかったが、数年後には再び検討する、と書いてあり、
今度こそ特例は全廃するぞという話である。当然建設業で路頭に迷う人が出るだろう。
◆ある地方経済人の述懐
日経など読んでいると、景気は確実に上向き、という印象を受けるが、地方の景気は全然良くなっていないと口をそろえて訴えていた。
某県の財界の有力者が、経済財政諮問会議のメンバーに、自分の地元では、まだ不便なことが沢山ある。国家からの財政的援助を切られては困る、と迫ったら、
その経済財政諮問会議は
「そんな不便なところへ住まなければ良いじゃないですか」
と答えたという。嘘ではないだろう。あまりにも地方の住民をないがしろにした、侮辱的発言だ。
「不便なところに住む奴が悪い。」ということは、日本中の人間は首都圏及び、その他大都市圏に住めということになるが、そんなことは物理的に不可能だ。
◆地方は地元のことしか考えていないという傾向があったのは、事実だろう。
先に述べたように、自民党が長期安定政権を保ったのは、「地元の声」を無視しなかったことが、大きな要因である。しかし、本当は、
日本国憲法第十五条 第二項 すべて公務員は、全体の奉仕者であつて、一部の奉仕者ではない。
のです。これは、地方は全然と言って良いぐらい無視していた傾向は、否めない。
本来は、国会議員は国家全体をどうするかを国会で議論して法律を制定するのが仕事であり、自分の選挙区の利益を代弁する者ではないのだ。
だけれども、国民の多くはそんなことは知ったことではなく、とにかく自分たちの地元を少しでも暮らしやすくしてくれ、と議員が地元に帰る度に頼み、しばしば東京に「陳情」に来ていた。
そのとき、彼らの念頭にあったのは、「地元」だけであり、他の「地元」がどうなろうが知ったことではなかった。
ましてや「日本全体」や「世界の中の日本」など全くどうでも良い、という意識だったと思われる。
それは、本当は間違っている。
但し、私は「地方」で生まれ育った人間ではない。
だから、地方の住民が、そういう発想になるのは、やむを得ないことなのか、どうなのか、正直言って分からぬ。
◆どうして皆自民党に投票したのか、が不思議だ。
今日のNHKスペシャルを見る限り、小泉首相の懐刀(ふところがたな)、経済財政諮問会議が「国土の均衡ある発展」という概念に意味を感じていないこと。
即ちカネをやってもあまり発展しそうにない地域、言い換えれば「費用対効果」が低いと思われるところは切り捨てようとしていることを
地方の住民は、小泉純一郎氏が総理になってから、かなり早い時点で察知していたようだ。
私が不思議に思ったのは、「小泉改革」=「地方切り捨て」なのに、何故昨年の衆議院選挙で、あれほど自民党を大勝させてしまったのか?ということだ。
選挙期間中、小泉首相が全国を駆けめぐり「改革を止めるな」と叫んでいた。
それは、つまり、もう地方にはカネはやらないぞ、と言っていたわけだが、どこの県でも小泉首相に声援が飛んだ。
自分のクビを絞めることになるというのに。
◆詭弁に引っかからずに「考える」のが肝要である。
多分、その辺が小泉支持率の高さの理由だろう。
じっくり理屈で考えれば、小泉首相続投→改革勧める→公共事業を減らす&地方への交付金を減らす→地方経済はますます不況から脱せなくなる、ということは明らかなのだ。
ところが、実際に小泉純一郎本人がやってきて、あの異様な躁状態で「改革を止めていいのですか」(実際それまで何を改革したのか?)と言われると、
大衆は政策の内容を検証するよりも先に、「あの有名な、小泉首相が自分の顔を見て話しかけてくれた」と、興奮状態に陥り、そのまま自民党に入れてしまったのだろう。
◆今週は、水曜日に小沢一郎と小泉純一郎の党首討論があるから、何を言うか注目。
論理的に物事を話す知能に関しては、民主党・小沢代表の方が遙かに上だ。
問題は、小泉首相という人は、質問に答えないのだ。問題をすり替える。これで誤魔化してくるか。
それとも、先日の千葉補選で民主党の太田候補(現・議員)が「ジャンケンポン・斉藤健」に勝った後なので、
党首討論で再びへらへら笑って誤魔化していると、一挙に小泉首相支持者を減らす恐れがある、と読んで、真面目に答えようとするか。
というわけで、水曜は注目ですね。
昼間見られなくても、ネットで衆議院インターネット審議中継で一年ぐらい保存されているから後で見ることは可能だ。面倒だけどね。
重要な委員会は代表質問や、党首討論要旨は翌日の新聞に掲載されるが、やはり実際に話している時の様子を見た方が、表情、話し方などから、真意をはかりやすい。
勿論見るも見ないも自由だが、ご参考まで。
それでは、今日は、ここまでです。
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