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2005年12月20日(火) |
「第九」シーズン真っ最中ですね。お薦めがあります。 |
◆ベートーベン作曲「交響曲第九番、ニ短調、作品125、「合唱付き」
日本の年末は、普段クラシックへ行かない人も、第九は行くという方が多いですね。
昨日も、今日も、明日も、東京は勿論日本の色々な場所で演奏されています。
普段、クラシックは人気が無いですから、日本の殆どのオーケストラは、この「第九」で何とか食べているようなものなのです。
だから皆さん今からでも遅くないからどんどんコンサートに行ってあげてください。
第九に関する限り、日本のオーケストラは世界で一番上手いというか少なくとも慣れているかも知れません。
そして、とにかく作品自体が素晴らしいので、極端にいえば、少々演奏技術が劣っても、感激します。うるさくオーケストラを選ぶ必要がありません。
◆ベテラン・オーケストラプレイヤーでも緊張するそうです。
オーケストラの人は毎年5回も6回もやって、ベテランはそれを何十年も続けているわけですから、段々緊張が無くならないかと思いますが、
それは、素人考えで、先日紹介した「バイオリニストは肩が凝る」によれば、著者であり、N響で30年もファースト・ヴァイオリンを弾いている鶴我さんですら未だに緊張するのだそうです。
そもそも、難しいので、たるんでいられないのだそうです。難しいというのは、単純に技術的な事だけではないとおもいますが。
◆ベートーベンの作品におけるティンパニ
モーツァルトまでは、ティンパニはあくまで「添え物」というか、
アクセントを強調したいときにトランペットや、バス(チェロ、コントラバス、ファゴットなど)と同じタイミングで音を出すだけでした。
ベートーベンの交響曲を聴くと、彼がこの楽器の表現力にかなり期待していたことが分かります。
早い時期から、モーツァルトまでとは違う使い方をしている。
ティンパニは太鼓の中で唯一音程を取れる楽器ですが、モーツァルトまでは2個しか使われず、
高い方が主音(長調ならド、短調ならラ)、低い方が属音(長調ならソ、短調ならミ)と決まっていました。
殆ど例外がありません。
◆第九は第2楽章のティンパニの連打をよく見て、聴いてください。
第九は、他にも聞き所は沢山ありますが、これが一番分かりやすいので、今回は特にティンパニを取り上げます。
ベートーベンの作品においても、ティンパニは2個で、7番までは原則「ド」と「ソ」なのですが使い方がモーツァルトと明らかに違うのです。
ベートーベンはティンパニをソロ楽器として使った初めての作曲家ではないかとおもいます。
ベートーベンのバイオリン協奏曲はティンパニのソロで始まります。
交響曲だけでも1番の終楽章、5番「運命」の第3楽章から終楽章への移行部分に、ティンパニ・ソロと言える箇所があります。
そして第9の第2楽章では、完全にソロで演奏する部分が登場します。
ベートーベンは、ティンパニの常識を破り、F(ファ)のオクターブに調律させています
(本当は実験的に交響曲第8番の終楽章でもF-Fのオクターブを使っています。これが最初です)。
これから第九を聴かれる方は、第2楽章のティンパニをよく聴いて、
奏者のバチ(ティンパニのバチは「マレット」といいます)さばきを見て下さい。鮮やかなものです。
そして、小気味よいアクセントと、聴いている、私たちの腹にズシンと響く低音の快さを堪能して下さい。
「ティンパニ、やってみたい」という気持ちになる方が多いと思います。
◆お薦めCD
第九のコンサートに行きたいけど行けない。或いは何だか面倒くさいと言う方のためにお薦めCDを紹介します。
これは、簡単なのです。
第九と云ったら、フルトヴェングラー指揮・バイロイト祝祭劇場管弦楽団と、決まっているのです。
あまりにも有名であるが故に、Amazonのカスタマーレビューで、何だかんだ文句を言って
★を一つか二つしか付けていない坊やがいますが、
若いときは、こういうことを云いたくなるものです。まあ、それもいいでしょう。
色々云っても結局、歴史的名演であると云わざるを得ないと思います。
CDはソニーとフィリップスが開発したものですが、記録時間を74分に決めたのは、
このフルトヴェングラー、バイロイトの「第九」を一枚に収められるかというのが、基準だったという話があります。
この逸話には異論もあるようなのですが、いずれにせよ、それぐらい、重視されている名演だと云うことです。
◆第九交響曲の最後の部分です。
これが、オーケストラのスコア(総譜)です。作曲家や指揮者になりたいという人は、
こういうのを見て、音楽が頭の中で鳴るのです。それが出来ないと話にならない。
素人は無論、そんなこと出来なくて構いません。
一番最後のページを見てみます。
オーケストラ全員がプレスティッシモ(極めて早く)で、オークターブの音型を繰り返します。
ティンパニは6連符が印象的です。
さて、一番最後の小節はどうなっているでしょう?
休符です。音を出さない、という記号です。それが全ての楽器に付いている。
こう言うのを総休止(ゲネラル・パウゼ。GPと略します)といいます。
第9の一番最後は、静寂なのです。
尤も、この交響曲では、一楽章から三楽章の最後の小節も同様です。
◆音が鳴っているところだけが「音楽」ではないのです。
ベートーベンはフォルティッシモの最後の音が鳴った後の静寂を含めて「音楽」と見なしていることが分かります。
「音が鳴っているところだけが音楽ではない」ということです。
ところが、第九のコンサートへ行くと、ほぼ100パーセント、この休符は無視されてしまいます。
最後の「音」が鳴り終わるか終わらないか、と言うタイミングで、すごい大声で「ブラボー」が飛びます。
ベートーベンはあまり嬉しくないかもしれません。
その意味では、独りでCDを聴くのも悪くないと思います。
フルトヴェングラーは、紛れもなく20世紀の大指揮者です。好みは勿論あります。
昔のクラシックファンは、フルトベングラー派ともうひとりの大指揮者、トスカニーニ派がいました。
今は、このような本物の大家がいないのです。
歴史に名を刻む「巨匠」は何十年とか百年に一人出るか出ないか、というものです。
だからこそ「巨匠」なのですね。
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