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2005年12月19日(月) |
プロのプロたる所以。 |
◆ショパンコンクール出場者の練習風景
今年は、ショパンコンクールで、日本人が上位に入賞して誠に喜ばしい。
ずっと以前、日本人ばかりではなく、各国出場者の、予備選考から本選までの様子を記録したドキュメンタリーをNHKが放送したことがあった。
本選まで残った出場者が、実際に本選が行われるコンサートホールのステージで練習する時間を与えられていた。
ここまで来たら、通し(全曲始めから終わりまで弾くこと)かな、と思ったのが、さすが素人の私の浅はかさであった。
そのピアニストは、まず、右手だけで弾き、次に左手だけをさらった。
ピアノの初心者は必ずそのような練習をするように先生が指導する。
但し、これは、まだ片手ずつでも満足に弾けないからだ。右、左それぞれが弾けないのに、両手で弾けるということはあり得ない。
これに対して、ショパンコンクールの出場者は次元が違う。
彼らは当然、両手で全く違う動きが出来る。信じられないほど難しいことが出来る。
ショパンコンクールに出なくても弾ける人は沢山いるけれども、ショパンのよく知られた名曲に「幻想即興曲」というのがある。
Fantaisie-impromptu(ファンタジア・アンプロンプチュ。カタカナで覚えておくと、知ったかぶりが出来て具合が良い)。
この曲は、手元に楽譜が無いまま書くので不正確かも知れぬが、左手が6連符を1小節で2回弾くあいだに、右手は15個の16分音符を弾く。左手が12、右手が15。
人間は随分難しいことが出来るものだと思うが、一度習得してしまうと、左手も右手も殆ど自動的に動いてしまうのだ。また、それぐらいになるまで練習しなければいけないのだが、それに慣れすぎると、 一つ一つの音を意識しなくなる。すると、片手ずつ弾けと言われた場合、特に、左手が弾けないことがある。これでは、本当に弾いているとは言えない。
だから、ショパンコンクールに出るような名人ですら、基本に戻って練習するのだけれども、私はこの番組で、ショパンコンクール本選出場者ともあろう人々がこの地道な練習をしているのを知り、驚き、 感動した。
◆第一線の同時通訳者が毎日読んでいるのは、Daily Yomiuriだった。
英語が好きな人は意外と多いが、こういう人々は、少し上達すると、TimeとNewsweekとどちらが良いか(私はどちらもつまらない)、はたまた、英国のThe Economistか、 などという話題を持ち出して、得意そうな顔をするものだ。
ところが、私はあるとき、現在、国際会議や、NHKのニュースなど、第一線で活躍する超一流の同時通訳者が、「私はいつもDaily Yomiuri(読売新聞の英語版)が最も役に立つと思っている」と書いておられて、驚いた。
日本で起きている、最も新しい出来事、新しく話題になった言葉を英語でどのように表現するかを知るためには、日本で発行されている英字新聞が一番だし、Timeみたいなややこしい言い回しより、Daily Yomiuriの簡潔な表現の方が参考になると言う。
また、この通訳者は英英辞典を使うことはなく、使う辞書は殆ど英和と和英だという。
英英辞典をすすめる人は多い。知らない単語を英語の説明で理解すると、如何にも語学力が付いた気分になる。
しかし、それでは日本語ではどういう意味だと訊かれて答えられないようでは通訳にならないのである。
◆司馬遼太郎さんは、未知の分野について書くときは、まず、子供用の入門書を読んだ。
これは、エッセイ集「風塵抄」に載っているのでご存じの方もあろう。
「菜の花の沖」(高田屋嘉兵衛の物語)を書くとき、船舶・航海術などの知識が必要だったが、司馬さんは全然知らなかった。
そういうとき、司馬さんは、子供向けに書かれた入門書を、まず読むのだそうだ。
司馬さんによれば、子供向けの本はその時の一流の学者が書いていることが多く、そういう人は本当に分かっているから、難しいことが実に平易かつ明快に書かれているので、とても勉強になると言う。
◆一流のプロに共通すること
以上の例から分かるように、それぞれの仕事は違うが、一流のプロというのは、常人が驚くぐらい、基礎を大事にするのである。
これらの人々が到達した境地にはとても及ばないが、方法自体は真似できる。実際便利だ。
ピアノはともかく、 例えばネットで何か調べたいときは、Yahoo!キッズがいい。
文化系の私には特に科学的な情報が平易に書かれているのが大変有難い。
2004年12月19日(日) 「目を閉じたまま音楽を聴くほど、馬鹿げたことはない」 (ストラヴィンスキー) 第九の季節ですね。
2003年12月19日(金) <自衛隊派遣>空自に命令 本隊は首相承認経て1月下旬に ←反対。日本が戦争をしてはいけない。
2002年12月19日(木) 全ては幻想である。