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2005年09月23日(金) |
「後藤田正晴元官房長官死去」 一貫して論理的な主張を持っていた政治家だった。 |
◆記事:後藤田元副総理が死去、91歳=カミソリの異名、護憲派の論客
抜群の情報収集力と的確な判断力から「カミソリ」の異名で知られた後藤田正晴(ごとうだ・まさはる)元副総理が19日午後8時53分、肺炎のため都内の順天堂大病院で死去した。91歳だった。
徳島県出身。密葬は親族のみで執り行われた。「お別れの会」を東京、徳島で行うが日取りなどは未定。喪主は妻松子(まつこ)さん。(時事通信) - 9月21日15時1分更新
◆コメント:つい最近まで、健在だったのに。残念。
何故、残念かというと、正論を述べる人だったからだ。
後藤田さんは東大法学部から「内務省」という警察・地方行政・選挙などを統括する戦前の役所に入った。
内務省は1947年に廃止になったけれども、その後、警察庁長官まで上り詰めたエリート役人だ。
新聞を読むと「カミソリ」の異名を持っていたと必ず書いてあるが、それは、今の誰かさんみたいに、自分に反対する人間をばっさり切り捨てるということではなくて、
カミソリのように鋭い頭脳、明晰な判断力を持って、はっきりと「言うべき事」を言う人だった、という意味だ。
後藤田さんが偉かったのは、私欲に固執しなかったことだろう。
そりゃ、人間だから多少の権力欲などあったかも知れないし、
政治家だから汚い手を使ったことも有るかも知れない(←本当は無くなったばかりの故人にこういう事を言ってはいけません)が、
総理に、という声もあったのに辞退した。晩年は「いつまでも現役にいるべきではない」と言って、まだ元気だったが引退した。
そう言うところを私は「私欲がない」と言っているのである。
そして、もう一つ、大事なこと。
後藤田さんは、思想が一貫していた。
私は覚えている。
後藤田さんが、第一次中曽根内閣の官房長官の時に、ペルシャ湾に自衛隊の掃海艇(機雷を取り除く為の船舶)を出せというアメリカの強い要求があった。
ところが、後藤田さんは、「絶対にいけない」とテコでも譲らなかった。「これを認めるなら自分は官房長官を辞める」といってまで、中曽根氏を説得し続け、結局止めさせたのだ。
それまで、私は、「後藤田さんて、何だかいろいろ権謀術数を駆使して権力をほしいままにしているのだろうな。頭いいからな」
と、失礼ながら、色眼鏡で氏を見ていたのだが、この時は驚き、感心した。
今、そんなことを総理大臣に言える人がいますか? 郵政反対派があっという間に賛成派になる世の中だ。
後藤田さんは、自民党だけど、徹底的に護憲派。別に左とか右とか関係が無い。
回想録を読むと、その主張の根拠は常に変らなかった。
「自分自身が戦争に行っているから、その時の経験から分かるが、軍隊というのは、必ずエスカレートして、行き過ぎた行動を取るものだ」、ということと、
「日本はアメリカのいいなりになりすぎだ」、
という2点に集約されるのだ。 この思想が不変だったのだ。
だから、小泉首相がイラクに自衛隊を派遣したことを終始批判していた。
「イラクへの自衛隊派遣は間違っている。小泉は戦争を知らない」って言っていましたよ。
官房長官の時から、変っていない。一貫している。
主張を変えないのは、それなりの思想があるからで、本来、そういう人でなければ、政治家になってもらっては困る。
郵政民営化に反対していたのに、小泉首相から公認を外されたらあっさり寝返って、郵政民営化賛成に票を投ずる代議士なんて信用できない。
ここで反論があるだろう。
一貫していると言えば小泉首相も「郵政民営化が一番大事だ」と言い続けている点において、一貫しているではないか、と。
確かに。
しかし、間違った方向に一貫していても仕方がない。
小泉首相の主張には論理性がない。何故郵政民営化が一番大事なことなのか。ついに、最後まで論理的な説明がなかった。
「これが行政改革の始まりなんです」
何故?郵政を変えても、国の政治が全て良くなるわけがない、ということぐらい中学生でもわかるであろう。
後藤田さんが亡くなって、氏の発言を改めて読み返してみた。
そこには、やはり論理性・合理性がある。同じ「一貫性」の持ち主でもここが大きな違いだ。
何しろつい先日まで、健在だったのだから、8月8日に郵政民営化法案が参議院で否決されて、小泉首相が衆議院を解散したときも、見ていたのである。
そして、こういう言葉を残している。
「代議制民主主義だよ、日本は。立法府で通らなかった法律案を、(衆院解散によって)実質的に国民投票に掛けるのと同じような手続きになりつつあるのは、代議制の上からみて、行きすぎではないか。憲法改正のように、国民投票の手続きが憲法で決まっているならよいのだけどね」(8月21日の民放テレビで)
91歳である。本来、もうどうでも良い、と知らんふりをしていてもいいのに、最後まで「論理」を貫かれた。これは、立派だ。
小泉総理は後藤田さんのこの最後の言葉をもう一度よく読んで頂きたい。
後藤田正晴氏のご冥福を祈る。
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