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■ 自立の精神を忘れてしまいそうになる
彼は
私が存在するだけで
それだけで 君は僕の大きな力になってくれている
と、そう言ってくれる。
私にとっても
彼はそのような存在なのだけれど、
彼がいないと
私の持つ世界の 半分程は閉じてしまう。
彼を
彼の存在を知らなかったころは
一つの完成された世界にいたつもりだった。
設計士の彼を失ってはいたけれど、
設計士の彼が
私に 新しい世界を与えてくれた訳ではなかった。
一人で楽しめるものを
二人で共に楽しみ合い、
喜びが2の階乗になる
要は2倍になるだけの事なのだけれど、
私は単なる2倍ではなく
2の階乗だと思っていたのだ。
設計士と一泊旅行を計画していたけれど 叶わなかったし
設計士の事務所に行く事も 私はなかった。
そして
設計士の車の サイドシートに座すことすらなかった。
でも
今の彼は
こともなく それらの私の願いを叶えてくれた。
私がねだったのではない。
彼が 自ら私をそのようなポジションに いざなったのだ。
そして今、
私の立ち入ったことのない
深夜の東京を
六本木を 恵比寿を 麻布を 渋谷を 新宿を
余すところなく 教えてくれる。
今も私は
彼のエスコートなしに
それらの街に 足を踏み入れることは出来ない。
女性一人では
とてもそれらは不似合いで
気おくれしてしまう。
彼の隣にいる 彼のお気に入りの女性として
どこでも遇される。
その心地よさは、誰も私に与えてくれなかった種のものだ。
私の持つ世界の 半分程は閉じてしまうというのは、
その様なことなのだ。
バーで 今夜も彼が言う。
「ほら、同じザクロのカクテルでも、
あの女性たちのグラスと 瑠璃ちゃんのグラスを比べてごらん。
瑠璃ちゃんのグラスの方が、ずっとエレガントだ。」
確かに
脚高の私の ザクロのカクテルと
向かいに座っている女性の 足のないグラスのカクテルでは
その受ける美意識に 格段の差がある。
彼の その種の美意識を
バーテンも知る故に
彼がエスコートする 彼の特別な女性として映っている私に
スペシャルなサービスが提供される。
私の窮地には
さりげなく駆けつけ
私に代わり 敵を追い払ってくれる。
そんな心地よさに
私は 自立の精神を忘れてしまいそうになる。
それが 怖い。
2009年01月12日(月)
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