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2012年01月29日(日)
『青春漂流記』

劇団鹿殺し『青春漂流記』@紀伊國屋ホール

開演が一時間遅れ、本番中に地震があると言うハプニング続きでしたがいい千秋楽でした。

入場すると随分静か。時折思い出したように音楽が鳴り、あ、そうか客入れの音楽がかかってないんだ、と気付く。そのときは単に演出なのかなと思い、チラシ束を眺めていると鹿殺しの面々がTシャツ姿で出て来た。音が鳴らない、我々は音がないとどうにもならない芝居をしているので、音響機材を交換して復旧させる、よって一時間開演が遅れるとチョビさんが恐縮しきった様子で話す。他の劇団員も申し訳なさそうにしている…門人くんは手を合わせてごめんなさいごめんなさいと言う仕草。本番に合わせて丁度よく動けるようにアップしていて、もう身体は出来上がってるんですけど、また一時間後にも合わせてきますので!とチョビさん。

と言う訳で一旦解散、お茶などしつつチケットとってたのに行けなかった(まあ自分のミスでダブルブッキングしちゃったからだけどな…)『十一ぴきのねこ』の話等を聞く。はああ、観たかった。

さて戻って開演。こういうのってアスリートと同じで、身体と緊張感をピークに持ってったところで腰を折られると言うのは演者にとってとても厳しい状況な訳ですが、そこは皆さん集中力を切らせない仕事っぷり、素晴らしかったです。そしてその「皆で力を合わせてアクシデントを乗り切る」様子に劇団っていいなーとしみじみ思ったものでした。青春と言うもの、人間関係や環境の変化や、さまざまな困難に直面し挫折を経験し、それでもいつかこのひとたちと逢えてよかった、あの日々を一緒に過ごせてよかった、と思える予感。「あ〜あ」と嘆き乍らも、前進しようとするラストシーン。その姿を眩しく感じました。

彼らの指針ともなるような年長者を客演に迎えるのは『岸家の夏』同様。高田聖子さんは笑顔の裏にある苦しみや悲しみを表現する力量も、過呼吸になりそうな運動量と台詞量を笑いに転化するさまも、レオタード姿になってしまう潔さも(笑)全てが格好よかった。廣川三憲さんのジョージ・イソノも妙にあのヴィジュアルが似合っていた…なんだ、本家には及ばないとしても(某ボーイジョージさんね)あのヘアメイクは顔が大きいと映えるんだな(笑)。



2012年01月28日(土)
『下谷万年町物語』

『下谷万年町物語』@シアターコクーン

あれは何だったかな、蜷川さんの著書かインタヴュー集か、あるいは『Note』に載っていたのか…ことあるごとに言っているのかも知れないけど、「自分で書かないからこそ作家が書いたことは全て再現する、それは演出家の意地でもある。しかし唐さんのト書きには毎回悩まされる!ああっ作家に嫉妬する!」という言葉と、その例として『下谷万年町物語』を挙げておられたのをよく憶えていて。あと「100人の警官が黒いチューリップを持って…」の『黒いチューリップ』ね。「作家は書けばいいけど、こっちは舞台上にあげなきゃいけないんだよ!」「もう意地でも再現する!」って(笑)。蜷川さんは今回も「ト書きは全て再現するよ!」と強調してましたね。

そして自分の唐さん体験と言えば『佐川君からの手紙』が最初。なんでこれ読む気になったか当時小学生。そして『匂いガラス』『安寿子の靴』等のNHKドラマ。そのラインナップに宮沢りえさんが出演した『緑の果て』もあったのです。すっかり唐さんの描く言葉と映像の美しさに魅了され、上京後早速憧れの紅テント(その頃はもう状況劇場ではなく唐組だったんだけど)へと向かってひっくりかえったものでした(笑)。あの映像美はドラマの演出家、三枝健起さんの手腕が大きかったんですね。しかし唐さんの操る言葉は圧倒的に美しい、と言う印象は変わらなかった。

と言う訳で、念願のこの作品が今観られただけでも嬉しく、しかもそれに宮沢さんが出るってだけでもう満足してた部分があった(笑)。果たしてその世界の猥雑で美しいこと!「(たらいに張った)水のレコードをまわす」、「脳味噌と脳味噌がおまんこする」。なんて輝く台詞たちか。清水邦夫さんもたらいに張った水を描写する台詞を書いていましたが(『真情あふるる軽薄さ』)、ガラス、鏡、水と言った物質に対する感性とそれを言葉へと変換する技、少年が男女に対して抱く純粋な憧憬の表現にシビレまくりました。そしてその男女と言うのが、女優と演出家と言う関係なのだ。彼らの劇団旗揚げを追いかけていく文ちゃんの心中いかばかりか。

言葉に耽溺してる間にストーリーの流れにおいていかれることもしばしば(笑)。しかしそこらへん、演者たちから首根っこをつかんで引き戻してもらった感じです。宮沢さん、舞台のひとになったなあ…とえらそうなことも思ってしまいましたが、この年齢になり、野田さんやルヴォーとの仕事を経た今蜷川さんと組んでこの作品をやった、と言うのがとてもいいタイミングのように感じました。以前の台詞回しだったらここ迄こちらも入り込めなかったかも知れない(歌のとこだけは我に返ったけどな!ごめんな!)。啖呵を切る男装の麗人キティ・瓢田も素敵でしたですが、その白いスーツの下から現れるドレスの真紅、スリットからこぼれる腿の蒼白は目を見張る妖艶さ。そして裸足。ポン中のお瓢から溢れ出す言葉のひとつひとつが痛切に響きました。その痛切さはおまんこおまんこ連呼する文ちゃんにも通じる。西島隆弘くん、初見でしたがいいですね!また蜷川さんと組んでほしいな。藤原くんは初演も出演してたんじゃないの…と思えるくらいのなじみっぷり。文字ヅラだけでは気付きにくい、台詞に潜む笑いの要素をテンポよく引き出す。アングラのイメージを体現出来る数少ない若手という印象です。とか言って、藤原くんも今年で30歳なんだわねー!時の経つのは早いわねー!

本水を使う演出と言うのは開幕前から話題でしたが、いやー景気がいい使いっぷり。ビニールシートが配られた前列の皆さん、演者が瓢箪池にの畔に近付く度「落ちる?落ちるの?」とびくびくしてたっぽい…ばっしゃばしゃ水飛沫飛ばしまくってたもんね。藤原くんなんかびっしょびしょのままステージから転がり落ちてくるし(笑)。照明が灯るともに長屋の全景がバン!と現れ、瞬時に劇世界へと観客を引きずり込むヴィジュアル提示は美術の朝倉摂さん、照明の吉井澄雄さんと蜷川さんが得意とするところ。あーもー大好きー。

おかまちゃんたちも皆さん素敵だったなー。六平直政さんがガッツリ化粧をすると渡辺えりさんに似ると言う新しい発見もありました(笑)。そして大石さんの女装、おかまちゃん云々置いといてすんごい美しいんですけど…堀さんや塚本さんも意外に(失礼)キレーで驚いた。ちょ、かわいいマジで!バイタリティ溢れるキュートな彼女たちとともにその名前も消え去った下谷万年町。お瓢も洋一もいなくなり、大人になった文ちゃんだけが水面を見つめる。サフラン座と軽喜座で合同公演を打とう、なんてくだりに状況劇場と天井桟敷のことを連想してしまうのは、後追いで当時を知った者故のセンチメンタリズムか。リニューアルした文化村に初めて行ったこと、シアターコクーンやオーチャードホールのステージに使われていた床材をリノベーションしたインテリアが販売されていたのを見たこともあってかせつなくなったりしました。

と言う訳で『黒いチューリップ』の再演もお願いします…手塚とおるさんのデビュー作(当時10歳?11歳?)でもあるよね、これ。



2012年01月26日(木)
『フワリカ!! PART21〜SINGER SONG-WRITER NOW!! 2012』

エガワヒロシPRESENTS『フワリカ!! PART21〜SINGER SONG-WRITER NOW!! 2012』@Koenji HIGH

エガワヒロシさん主催のシリーズライヴ。今回はSSWくくりで、出演はmimlus、大塚利恵、小林建樹、エガワヒロシ。mimlusはエレピとサポートドラムのデュオセット、大塚さん、小林くんはエレピ弾き語り、エガワさんはバンドセット。

小林くんのライヴホントに久し振り。もともとすごいマイペースな方で滅多にライヴをやらず、やってもものすごくキャパ少ないスペースだったりしてなかなかチケットをとることが出来なかったのです。今回やっととれた!しかもライヴ当日は小林くんの誕生日、その上9年振り(!!!)に新譜がリリースされた嬉しい日になりました。ダイジェスト試聴出来るので張っておきます。販売は小林くんのサイトから

Album『Rope』Digest 2012/1/26 release !


『Window』『Shadow』から2曲ずつ(新ミックス。バックトラックも多少変えてるかな)と、新録6曲(うちインスト2曲)、アルバム未収録のライヴテイク1曲の計11曲。新録6曲中5曲は多分全部の楽器を自分でやってる。あの独特の声で奏でられる、不意に刃物をつきつけてくるような鋭い言葉たちも健在です。ライヴやMySpaceで発表されていた楽曲も。「B.B.B」の音源、ずっと待ってた!Drsに宮川剛さん、Bに千ヶ崎学さんの名前がクレジットされていたのも嬉しかったです。このトリオのコンビネーション、とても好きだった。またいつかこのバンドでのライヴが聴けるといいな。

さてこの日のライヴ。

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セットリスト

01. 告白
02. B.B.B
03. あおいだ空
04. 祈り
05. ヘキサムーン(ビートルズ「ノルウェイの森」のカヴァーを挿入)
06. イチゴ

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エガワさんに「天才」「僕は音楽やってなくても死なないけど…自分が自分じゃなくなる感じはすると思うけど。でも小林くんは音楽やってないと死ぬと思う」と紹介されておりましたが、改めてホントそうだろうなあとするりと思えてしまう、凄みのある内容でした。鍵盤に指を落とし、第一声をあげた途端に場の空気をガラリと変えた。本人気の向くままに演奏しているような趣で、MCも入れるには入れるんだけど、話し乍らそのままピアノを弾き出したり、練習してきたと言うバッハをいきなり弾き出してつっかかって、「あかんわすっっごく練習してきたのに」と何度も弾きなおしたりして。あといきなり「Happy Birthday 俺」を唄い出したりね。しかしその全てが音楽になる。「あおいだ空」の言葉の選び方、その響かせ方には圧倒されるばかり。

なんだがグレン・グールドを連想してしまうくらいだった。グールドはバッハを得意としていましたね。ちなみに小林くんも左利き。このひとに関しては、天才と言う言葉をするりと使えてしまうな……。

バッハを弾いた際「この時代のひとたちは数学的に音楽を考えていて…それってなんだか機械的と言うか冷たいイメージでしょう?でも聴いてみると暖かみがあったり、心を打つものだったりする」と話していたのが印象的でした。そして、その要素を小林くんが作曲や演奏に取り入れたらまた恐ろしいものが出来るのだろうなと思い、ゾッとしたのですが。もともと複雑な構造をポップスにするりと組み込んでくるひとだから。そう言えば小林くん、以前日記に菊地さんの著書読んでるとかDVD買ったとか書いていたなあ。いいぞいいぞニヤニヤ。そこからどんなものが作られていくか興味があるし、それを聴いていきたい。発表する場が、ライヴする機会が沢山あればいいなと思いました。「40になりました。はぁ〜、40かぁ〜」なんて言ってたけどこれからも、これからが楽しみだよ。ひたすら待ちたいと思うし、場が出来ればそこに行くだけです。

終わったあと「いいね!」と話していた男のひとがいて嬉しくなっちゃったな。このひとのライヴ、うわっとなるひと多いと思うの。思えば私もライヴから入ったなー。だからあの、これからもライヴを…お、お願いします……。ワンマンでたっぷり聴きたい気持ちもあるのねー。いやでもご本人のペースでやっていけるのがいちばんですから、あの、ホント。

小林くん以外の出演者は初見。mimlus、大塚さんも魅力ある声と演奏でほっこり聴きました。エガワさんのバンドはああっ、聴いてきた洋楽多分すっごい被ってる!好きなバンドもきっとすっごい被ってる!と思える音作りで思わず親近感を……フレーミングリップスの映像も、ね(笑)。エガワさんが進行の際口にした「シンガーソングライターはひとりでやってる、ひとりの世界で闘ってる、だからこそ聴いてくれるひとを求めている」との言葉が心に残りました。



2012年01月24日(火)
『ある女』(菅原さんver.)

ハイバイ『ある女』@こまばアゴラ劇場

さて菅原さんver.。ネタバレありますので未見の方はご注意を。

うわあん菅原さんの女装、中途半端に綺麗(ほめてる)だから今回はタカコ寄りで見ちゃったよ!やっぱ男がひどいよー!不倫してる男はこれとかNODA・MAPの『ザ・ダイバー』とか観ればいいと思うよ……ひいー(泣)。

そもそも森って、結婚してるってのを言わなかったのはまあタイミングを失ったとかあるとしても、部屋を別に借りるってのがもうさ…言い出せなくてぐずぐず嘘を重ねるタイプ。こういう男は追及されてから「あのときの気持ちは本当だったんだ!」とか言うんだわね…で、実際それはホントにそうだったりするんだわ。そして中盤の映像部分の独白にあるように現実的には何の役にも立たない哲学をこねくりまわす(ここらへん大久保にも通じる訳で)んだよねー。め、めんどうくさい………。

そうそうそこで面白かったのは、大久保の哲学に関しては意図的に聞き流せるような仕掛けがある(映像のナレーションもそうだし、立ち呑みバーでガネーシャの話をしているシーンもそう)のに対し、森の独白はしっかりその思いを観客に伝えようとしていたところ。それを提示した後に結婚を控えた部下にいいことを言う森、嫁と別れたとタカコに告白する森のシーンを入れて、おっ森いいとこ見せ始めた!と思わせといて、ご懐妊の嫁連れての箱根旅行でタカコとバッタリ、と言う身も蓋もない結末を用意するところ。彼の哲学はぺらっぺらですよーって引導を渡したようなものです。この容赦のなさ、すごいわ岩井さん。

しかしこのボタンのかけちがいっぷり…もし森が告白したときタカコが「今の状況大丈夫になってきてる」と言わなかったら?とか思っちゃうよね………たらればって無力だわー。序盤の「お風呂すごく綺麗になったよ」と浴槽をキュッキュッ、と鳴らすシーンが思い出されてドーンときた。そうそうこういうちょっとした幸せな光景が要所要所で入ってくるんです。ふたりが他者と関わらず、ふたりだけでいる状況では彼らは幸せなんだよね。

どんな状況になってもあれよあれよと受け入れてしまうタカコは度量が大きいと言えば聞こえはいいが、その包容力と言うか受け入れる力をもっと他のことに使いなよ!と思わせられること半端ないですよ。方向が間違ってる……。そんな彼女が最後に暗闇でぼそぼそと語る諦めと痛切な思い(それが等々力さんとエッチなことしようよって話題なのがまたもやーんとするのだが)が苦しくせつなかったです。で、せつなくなった自分にもやもやするよ…あんなに笑って観てたのに、予想以上にダメージ大きいです……。

菅原さん、あの面妖だか妖艶だかな顔立ちとナチュラルメイクがこの人物像に異様にハマる。隙あらば変顔しようしようとしてるのにふとした瞬間に繊細な表情を見せ、絶妙なスカートの丈からすっと伸びる美脚(そうなの女性的な美脚なのこれが)にドキッとさせられます。ロン毛なので地毛を使うかなと思っていたけど岩井さん同様ショートボブのヅラ着用でした。ここらへん岩井さんの女装がほぼいつもこれなんで合わせたのかな。そもそも「競演とか考えてない。演技プランは全部永二くんで、僕はそれを稽古場で見て真似する」と岩井さん仰ってましたが(アフタートークでも言ってた)やっぱり演じる身体と声が違うと印象も変わりますね…岩井さんのタカコはつきはなして見られるクールさ、菅原さんのタカコはつい気持ちが寄る危うさ。

現代口語ならではの女性の言葉遣いも状況を把握するのに役立つなー。「おんぶしてけー」とか。普段そんな「〜なのよ」「〜だわ」って使わないもんね……声色も投げやりだったりするじゃない。そうそうその投げやりな物言いがラストシーンですごく効く!「彼氏みたいなの作ってくる」も名言です。そして「脱ぐぬぐぬ、ぬぐぬぐぬ(♪トルコ行進曲)」の爆発力はすごかった。実際に言いそうな状況ではあるわ…これ台本指定なのか菅原さんのプランなのかすごく気になる(笑)。

両方観て思ったのは、初見時はスカしてタカコや男性たちには知っているところがある、とか言ったけどそれどころじゃないわ、自分にもある要素だわ!だから共感しちゃうしダメージ大きいんだわ!と言うことです(笑)。いやー面白かった(青ざめ乍ら)、正直に素直に自分と向き合おう……。

タカコをとりまく人物たちを演じた面々の、ふわーっとしたぼやーっとした得体の知れなさも効果的。彼らの存在がタカコの地獄巡りを一種おとぎ話のように見せ、そのおかげで最後迄笑って観ることが出来る。そして笑って観たからこそ最後に複雑な痛みを残す。タカコから男を奪っていく(と言うか男がこっちに寄って行く訳だが)別々の女性を両方とも永井さんが演じていたり、『て』でDV暴君を演じた猪股さんがタカコをただただ受け入れる等々力を演じていたのも興味深かったです。等々力とタカコが滝を見るシーン、うっかりタカコと一緒に泣きそうになった!男性陣のネジの外れっぷりもよかったわー。そして上田さんの声とニヒルな表情、あれで厳しいことバシバシ言うのがすんごい魅力的だった。で、あんだけ正論言っといて最後「お父さんのこと、あれ、適当です」なんだもの、最高。

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この日は天野天街さんを迎えてのアフタートークがありました。ノーメイクの岩井さんはタカコ役のときより目がどんよりしてなくてシュッとしてたよ!タカコの目は映像でも印象的だったけど文字通り魚の死んだ目のようだったんだよー。

天野さんの感想としては「死にそうだなーと思った」。岩井さん「えっタカコじゃなくて?オレが?」と狼狽(笑)。あーニュアンスとしては理解出来る…なんかすんごい死の匂いが近い…ストーリー自体の結末だけでなく。今回3人の女性に取材して、ア○ム徳永のセックス教室にも実際に行って取材した、と言う岩井さんに対し天野さんは「自然と経験したことが出てくることはあるだろうけど、取材はせず、書きたいことが浮かんでくるのを待つ」書き方だそうです。ひたすら机に向かって待ってる。「それって努力が目に見えて現れないので周りに理解されなさそうで辛いですね」って言われてた(苦笑)。

興味深かったのは「女性をおじさんが演じてると、もっと酷い目に遭わせよう遭わせようとなる」って話。そもそも悲惨な話をホントに女性が演じると洒落にならないツラさなのでおじちゃんが演じると言うフックなのですが、相乗効果も生まれる訳ですね。そして終盤の暴力描写、このシーンを「なつかしいわー(ほっこり系で)」と言った方がいて、岩井さん「ゴッツイわー」と思ったそうです。今回内容が内容なのでちゃんと感想話してくれるひとがいなくて、どう思われてるのか…と仰ってました。確かに面と向かっては感想言いづらいでしょうね。しかしその数少ない反応に「なつかしいわー」て、それ確かにゴッツい(笑)。

質問に答えて菅原さんもちょこっと登場。アゴラ劇場はステージの下に楽屋があるようで、下からの出入口から首だけひょこっと出して質問に答える菅原さんはプレーリードッグのようでした。「タカコのような女性をどう思いますか」って質問だったんだけど、「男にしてもああいう、つい嘘ついちゃったりとか思い当たる部分もありますし…」とかもごもごとなって質問に対する答えになってなかった(笑)。

あと猪股さんがオリザさんに似てる、いやオリザさんはもうおばちゃんみたいになってるって話にウケた。



2012年01月22日(日)
『青木さん家の奥さん』

南河内万歳一座・内藤裕敬プロデュース『青木さん家の奥さん』@ザ・スズナリ

久々。ヒー流石の根強い人気演目、スズナリちょー満員。外との温度差すごい、暑い。笑い過ぎて具合が悪くなった(笑・酸欠もあったのだろうか)。内藤さんと荒谷さん、新人役の鈴村くん、ギターの鈴木さん以外は日替わり。河野さんがレギュラーではなくこの日のみってのに若干ガーンとなりましたが別にゲスト扱いと言うこともなく勝手知ったるなんとやら(笑)、「ひからびたねこ」は相変わらず素敵でした、ニ゛ャー。

実質ゲストはモダンスイマーズの小椋さんのみで、そりゃまーもういじられるいじられる。「今日は小椋デーだから」って無茶振りされるされる。以前小松正一さんが同様に追い詰められて言葉が出なくなり「………ペス!」と意味不明なことを口走って缶コーヒーと休憩を与えられたことがありましたが、今回は新人くんからハグとともに芝居を止められると言う屈辱(爆笑)。しかも鈴村くん、「もう見てられない」と言いたいつもりが「見るに堪えない」と言ってしまいその微妙なニュアンスを責められて逆に攻撃の矛先が向けられてしまっていた。そして小椋さんは追い詰められると下ネタしか思いつかないひとでした(微笑)。

そうそう下ネタと言えば今回小学生くらいのお客が結構いたのでドキドキした。隣席がお兄ちゃんと妹らしき小学生だったんだけど、彼らは下ネタや歌謡曲ネタはわかんなかったらしく沈黙しており、なでしこジャパンや内村航平くんネタでけらけら笑っておりました。あまりの熱気に妹ちゃんは途中たどたどしくセーターを脱いでいたがちっちゃいので後ろの席のひとの視界を遮ることもなく、ドッカンドッカン笑ってるとこだったので邪魔にもならず。静かなシーンでは身じろぎせずに観てた。かわいいそしていい子ー。

思えばこの話、仕組みとしてはとてもシンプルでちっちゃい子もすいすい観られる内容ですよね。で、おっちゃんおばちゃんになったらなったで内藤さんたち演じる酒屋の先輩の言うことにうんうんと頷き、若いなら若いで新人くんの焦燥と前途に共感を寄せることが出来る。そして現れないのは青木さん家の奥さんだけでなく、事故を起こした酒屋の店長もそうで、ゴドーはふたりいたのかもなあなんてことも思ったりして。久し振りに観たからこその収穫もありました。最後の第三舞台を観てそう日も経っていなかったので、『朝日〜』から『ゴドー〜』を思い返していたってタイミングもあったかな。

そして配達セット(瓶ビール20本入りケース×2+米10キロ×1袋+ミネラルウォーター2リットル入りペットボトル×2。勿論全部中身入り)にネットカバーをするようになったのは「昔大惨事になったからや」と河野さん言ってたけど、その大惨事見てる…そのときは水じゃなくてしょうゆとお酒の一升瓶使ってて、何かの拍子でしょうゆ瓶が割れて中身がばしゃーんと……しばし拭き掃除タイムが入り、芝居が終わる迄おしょうゆのいい匂いが消えなかったのでした。

てなことを思い出したりもした。もう何演観てるんだっけか。そしてぴーとさんからのツイートを読んで「あれ、勝村さんはユベントスのレプリカユニ着てたからきっともっと後だ…確かサッカーW杯があった年だった……」と気になって検索してみたら、私が観たのは1998年の三鷹星のホールでしたわ。二日酔いで、出てきた最初からおえーおえー言ってて、「おめー酒くせーんだよ!」と散々いじられていたのだった。そして前述の小松さんが出たのもこの回だった。で、勝村さん今迄何回青木さん出てるっけ?とまた検索したらぴーとさんのブログがヒットした(笑)。webが普及する以前の感想がこうやって起こされているとすごい有難いわー!そして結局しょうゆ瓶が割れたのは何年だったか見付からないわー!(泣)あれいつだったかなあ、三鷹だったと思うんだけど。

よだん。「ザ・スズナリ」のロゴって「ザ・ベストテン」のロゴに似てますね。20年は通ってるのに何故今頃気付く……。



2012年01月21日(土)
『ある女』(岩井さんver.)

ハイバイ『ある女』@こまばアゴラ劇場

やーやっとハイバイ観れた。ダブルキャストのまずは岩井さんver.から。……いやはや面白悲惨でどうしましょう。

不倫をしている複数の女性を取材し、社会的に道を踏み外していくひとりの人物を組み立てている。これがまた「あーあるある」と「ないない」の絶妙な綱渡り。しかし最終的には「これって珍しいことではないんだろうな」と思ってしまう。60〜70%は実話だそうだが、彼女の、そして彼女が関わった男性たちには知っている要素があるし、実際友人知人にそういう人物もいる。どこかで思いとどまる、どこかで引き返す、それが出来ないこともないのだが、ずるずる関係を続けたり、もしくはタイミングの善し悪しでこうなってしまう。ある程度迄踏み込めばこうなることは自明なのだ。

「妻がいると言うことを男が話さなかったから」「男が金をくれたから」で片付けることも出来るようにも描かれている。男性が何を思って、何を考えているかが表面には浮かんでこない。反面女性の心情は映像によって一人称で語られる。金を受け取るか、受け取ったらどうやってそれを還元するか、男性にとって自分の価値とは何か。そうして彼女は社会的に道を踏み外して行くが、その社会と言う枠組みを外せば、何を、どこが間違っていたか?と言う事実にはたと気付く。人間的に?性的に?

悪いことをしている、後ろめたいことをしている、そうだっけ?私何か間違ってるっけ?と思っているうちに思わぬところに立っているぼんやりとした意識。その都度悩み(ですらないかもしれない)を打ち明けられる定食屋の娘が社会的な正論を言い、その父親はただただ笑って話を聞くばかり。そうやって気付けば彼女は出口がない冥い道へ迷い込む。果たしてそこは死の世界か、光は見えてくるのか。闇から聴こえてくるのは、ただただ笑っていた定食屋の父親(彼も時を同じくして死の縁をさまよっている、かもしれない)の声。その声を求めてひたすらふらふらと進むある女は、きっとどこにでもいる女。人間が社会を形成する際に生じる不可解さ。

岩井さんの雑な女装(ほめてる)のおかげでこうやって俯瞰で観ることが出来る。笑い乍らこれはまずい、まずいんじゃないのか…と不安を抱えつつ、最後の数分でその不安が思わぬ(いや、どこかで予想は出来るのだ)展開で結末を迎える。その冷徹とも言える手腕はおっかな面白い。久し振りの新作だそうなので以前はどうだったんだろう…『て』はDVDで観たのですが。そうなんだよー『て』も『その族の名は「家族」』も舞台逃しちゃったんだよね、悔やまれる。

映像と音楽、照明にリズムがあって格好よかったです。スタイリッシュですらあった。暴力的なシーンをほぼ暗闇にする演出が、歪んだ笑いを呼ぶのに一役買っていた。思い出したのはTHE SHAMPOO HAT『砂町の王』。対照的な暴力描写。

さて今度は菅原さんver.を観ます。菅原さんの女装には定評があるので(せめて女性役と言え・笑)あの女性像がどんだけ悲惨なものとして描き出されるか楽しみでもあり怖くもあり。



2012年01月19日(木)
mouse on the keys × kowloon

mouse on the keys × kowloon@Nine Spices

うはーむちゃむちゃ面白かった、最初から全部の楽器セッティングしてて(ステージぎゅうぎゅう)入れ替わり立ち代わりお互いのメンバーがお互いの曲に参加、ツーマンだけどほぼ全編セッションと言う構成もちょーいい!おおまかには2セットずつ、全員→グラデーションでkowloon→motk→kowloon→motk→全員って感じ。インターミッションがないので場が間延びしない、プレイヤーは大変だろうが。しかしここらへん川崎さんを筆頭に体育会系なノリで、皆さん汗だくになりつつ楽しそうでしたよ。終始ゲラゲラ笑いどおしのスリリングな2時間。

なんたってopが全員で「metallic, exotic」、しかもvo(と言うかシャウト)ネモジュンですよ…楽し過ぎた……。前奏(ってこの曲に前奏も何も)の間センターに忍者のようにかがみこんでて、このひとって普段から自分が演奏してないときは屈んで後ろのプレイヤーを見えやすくしてくれるので(ここらへんカメラマンは見習っておくれ…motkとkowloonが出てるライヴって何故ああもカメラマンが多くしかも堂々とステージとフロアの間に立ち塞がって撮影するのか。しかも今回割り込んできて私のドリンク倒しやがりましたわよー。まだ殆ど飲んでなかったのに!キー!)今回もそうかと思えば!メロが始まるとこでいきなり立ち上がってドギャー!と!楽器ぎゅうぎゅうのステージ上で立奏はネモジュンのみ、しかもセンターなのでもはやネモジュンオンステージです(笑)。これにはもってかれたわー。

それにしても細身のスーツで髪をなでつけ、メガネメガネでケイレンダンスを炸裂させつつシャウトするネモジュンの姿はリーマンズを彷彿とさせた。今リーマンズつってわかるひと何人いるのか(泣)これです↓。



リーマンズとはパール兄弟のライヴやヴィデオクリップに出没していたダンスチームで、CDデビューもしました(笑)。メンバーはラッキィ池田、加藤賢崇、手塚眞、ECD等。それはともかくネモジュンはどちらのバンドにも参加でバリッとテナーとソプラノ吹いてくれました。格好いいー。

その後1曲やってkowloonの3人だけに。「telepathy」「カラヴェラは踊る」「lazyboy」「tones of nowhere」と『metallic, exotic』からのナンバー中心だったかな。低音ビリビリ、特に「lazyboy」はすごかったー。低音は鉄兵さんがmicroKORGとベース併用で担当してるんだけど、今度はどの曲でどっちを使ってるか憶えて帰りたい……。

梅木さんだけが残りmotkの3人と入れ替わり。さーて何をやる…「最後の晩餐」キター!ツインドラムで爆音!!!そもそもPAが超爆音で最初からヤバかったんだが、この曲はもうドラム馬力合戦みたいになっておふたりともドッカドカに叩くもんだからあっという間に耳がガタガタです(笑)すごかった。しかも今回梅木さん側にいたので川崎さんの音があまり聴こえん、ガーン。いやでも梅木さんのドラムちょーよかった…全体重のっけるみたいな重い音。ツインドラムはこれの他に何曲かやったんですが、自分とこのナンバーをやるドラマーがリズムキープと展開部分のポイントを押さえて、ゲストとなるドラマーがその上にどうのっかるか、を聴いていくのがすんごく面白かった。単純に音の量(数=厚さ的にも音量的にも)も倍になるので曲が化ける化ける。川崎さんと梅木さんが向かい合ってニヤニヤし乍らドバドバ叩いていくのがもー楽しくて楽しくて、爆音が顔に当たって頬が震えるのですごい変な顔して観てたと思う自分(笑)。

motkは今回佐々木さんが欠席、ホーンはネモジュンのみ。『irreversible』収録の(予告で使われてる、ドーバー海峡渡るとこ!)「outis」発展型も含め、インプロ部分がどんどん面白くなってる。「forgotten children」のブレイクのとこって、いつから8のカウント入れるようになったっけ?ライヴだと当時出した音源より大分速くなってるので、それに対応してのことだろうか。「soil」の6〜5〜6拍子の展開も以前より判りにくく=なまりつつ移行していってるところも興味深い。そしてベースレスのバンドに鉄兵さんが入るとグルーヴがひと捻りされてグッとくる!「spectres de mouse」では鉄兵さんギターでノイズ入れてたけどこれもよかった。

川崎さんはツイート通り痩せており(顔のラインがシュッとなってた)ガーン、そりをひくいぬらしさが…と(私だけ)おののいたものだが演奏には何ら影響ありませんでした。シンバルの芯をしっかり捉える澄んだ音と骨太でハードなドラミング。そして今回清田さん側だったのでピアノの手元がよく見えて嬉しかったー、軽やか。ピアノ音を清田さん、低音とオルガン的な音を新留さん、と緩く判断しているのだけど、今回清田さんの手元が見えていることで新留さんが弾くピアノ部分もよく判った。「toccatina」はふたりのアンサンブルをじっくり聴ける好きなナンバーです。あーまたO-EASTの二階から観たいよー、上から見るのがいちばんアンサンブル視界が開けるんだよねー。新曲もたまってきているようだしそろそろ新譜を…そしてEASTでレコ発を……待ってますよー!

さて恒例川崎さんのハンドマイクおはなしタイム。これ見始めた頃は酔っ払ってんのかな…と思ってたけど、毎回こうなのね(笑)。あけましておめでとうございまーすに始まり年頭のご挨拶やら告知やら2回就職した話やら僕のドラムはスラッシュメタルだ云々からの〜、日本軽湿の会会長圭作くんによる軽湿の説明(要は呑み)からの〜、ふるまいテキーラ(ふとっぱらー)でかんぱーい。新年会の様相です。そしてメンバーに1月生まれが多いのでそのお祝いもって。自分も1月生まれつーか誕生日の前日だったので嬉しかったー。あ、そんでそのとき圭作くんが今回のライヴを思いついたきっかけってのを話して。どっか外国のライヴで観たんですって、全出演者の楽器を最初から全部セッティングして、入れ替わり立ち代わりで一晩中ライヴするっての。急に企画持ってって告知する間もあまりなかったのに沢山来てくれてうれしいー言うてました。よかったよかった。

で、この辺りから場がまったりと…演奏の構成は見事なのにMCになるとゆるゆるです。ステージ上が暑い!水くださーいビールくださーい僕は水道水あるーとか皆ごちゃごちゃ言いつつペットボトルの水回し飲みしてたり、ここはサッカー部のロッカールームか(笑)。そして思い出したように告知せな!と清田さんが「今日はTシャツおとしだま価格で1,000円でーす」と言い出したり。ゆるい…演奏とギャップがありすぎる…面白過ぎる……。

そのうち「ダイブしたいけど今日女性が多いから危ないかな…俺が支えてやる!てひとは前に来てください」とか川崎さんが言い出して、男性陣がはりきって待機(笑)。実際飛び込むと言うよりゆ〜っくり身体載せる感じになってたわ。せっかくなので担いできました、縁起ものとして(笑)。ナウシカのようにゆるゆると運ばれていく川崎さんを見送る季節の行事になるとよい。そんなことしつつリクエストに応えて「『最後の晩餐』?ハイやります、いや『最初の晩餐』やろう」と圭作くんと清田さんが一緒にあの高速フレーズを弾くと言うちょーおいしい演奏、ギャー豪華!

アンコールは「じゃあ新留くんにドラムをやってもらって…新留くん実はドラマーなんですよ。それをね、無理矢理ピアノ弾かせてるって言うね」。そうだったのかー!道理でドラムやるとき板についてるわけだ。しかしその時点で川崎さんのドラムには鉄兵さんのギターが突き刺さっており(笑)セッティングどうすんのってな話です。崩れたキットをかきわけ新留さんがようやく座り、梅木さんとちょっと打ち合わせ。「いい?いける?」と散々ひっぱって演奏されたのはNapalm Deathの「You Suffer」、ドッッッ!!! 1秒の曲(爆笑)これ、ライヴで初めて聴いた(笑)。いやーん面白かったー楽しかったー!なんだかもう支離滅裂な感想ですが実際の内容がどしゃめしゃだったのでこれで勘弁してください。

そういえば今回ちょー至近距離で爆音聴いたのに耳の回復が早かったわー。今はもう全然大丈夫。ライヴ中はいい加減ヤバいかな、これからは耳栓用意してこようか、そろそろ後ろに下がらないとまずいか…と思う程キてて、音によっては耳がズキーンて痛む程だったのに。数日耳鳴りが治まらないときもあるのに何故だ。使う音域の幅とかにもよるのかな。



2012年01月15日(日)
『深呼吸する惑星』大千秋楽ライブビューイング

第三舞台『深呼吸する惑星』大千秋楽ライブビューイング@TOHOシネマズ六本木ヒルズ スクリーン5

エントランスでタイムテーブルの電光掲示板をぼんやり見ていたら、スクリーン6がライブビューイング会場となっている。自分が持っているチケットはスクリーン5。どうやら2スクリーン使うようだ。チケット購入人数に対応して収容ホールを増やしてくれたのだと思う。こういうの、シネコンのいいところ。どちらもスクリーンも完売していた。

入場すると、場内は穏やか乍らもぴんと張りつめたような空気。パンフレットでの対談でも書かれていたが、男性客が目につく。そうだ、第三舞台は男性客が多かった。既にスクリーンには福岡の観客席が映し出されている。音声は入っていない。入口で受け取ったごあいさつ(そう、配布してくれたのだ。劇場に足を運べず、今回のLVで初めてこの作品を観るひとたちへの配慮に感謝)を目を通しつつ話していると、突然スクリーンに鴻上さんが現れた。あちこちから小さな声があがる。鴻上さんは「もうすぐ始まります」「どの会場にいますか?ツイートしてください」「少し待ちます」とクロッキー帳に書いて示す。ひとりでやっているので両手では足りず、クロッキー帳を床に置いたり携帯を開いたりペンを拾ったりとあたふたしている。最終的には全国30箇所の会場全てからレスポンスがあったとのこと。最後の書き込みは「それでは、最後の第三舞台です。んじゃ。」だったかな。この「んじゃ。」も懐かしい言葉だ。

LVは流石の板垣さん仕事。ストーリー展開のポイントとなる背景や照明、そのシーンで台詞を発してはいないがキーになる人物の表情を、絶妙のタイミングで的確に抜いていく。具体的にひとつあげると、二満月の儀式の説明前にしっかりこの月を捉えたところ。既にこの作品を観ていたから気付くところであるが、数秒後には初見のひとたちにも、あれがふたつの満月であることが解るようになる。舞台を直接見ているならば説明後に自分で背景にフォーカス出来るが、舞台中継だとそうはいかない。だからカメラがどこを捉えるかが重要になる。ほんの少し先の予測を拾い、それ以上は強調しないこのさじ加減が素晴らしい。あと音がよかった。マイクで拾っているので若干ノイズが入ったり途切れたりする箇所はあったが、それはほんの少し。台詞は勿論、役者がステージに走り込んでくる際の足音が、臨場感あるものとしてこちらにも伝わってきたのが嬉しかった。

最後の作品がこれでよかった。『深呼吸する惑星』でよかった。鴻上さんが劇団員にこの役を書き、ここにはいない彼を投影させたようなあの役を客演の若い彼に書き、彼らはそれを全うした。解散公演の千秋楽だと言うのに、彼らがブレることは決してなかった。各所各所で、場所や、人物や、過去の時間に別れを告げるシーンがあり、それは舞台に立っている彼らにも、それを観ている私たちにも、確かに実人生を重ね合わせるものだった。しかし芝居の流れは決して滞らなかった。これが、彼らが「母艦」である劇団の歴史を通じて培ってきた、そして母艦を離れた先で身につけた、舞台に立ち続ける者としての強さなのだろう。それを最後に目にすることが出来てとても幸福だった。

そんな彼らが、カーテンコールの挨拶と、大入り袋を投げる段取りでわたわたしていたのも微笑ましかったな。同時に喋っちゃったり(笑)。出演者がひとりひとり順番に挨拶してる間、後ろに映っていた筧さんの口が終始動いていたんだけど(顔は正面向いてる)あれは独り言なのか隣の役者さんと喋っていたのかすごく気になった(笑)。

鴻上さんが劇団員に向けて、それぞれ印象に残っている役を挙げていく。役名がコールされる度、ああ、ああと頷く。『天使は瞳を閉じて』からの役が多い。ぴーとさんも書かれていたけど初日通信の小森さんが書かれていたことを思い出した。劇団員たちが、鴻上さんの書くものに追いついた作品。鴻上さんが彼らに宛てて書いた役であり、彼らが自分のものとして、自分以外には出来ないものとして創り上げた役。そして観た者には、それが20年以上の前のことであっても、鮮やかに思い出される愛しい人物たちだ。

最後、数々の舞台写真とともに上演記録が映し出された。続いて「第三舞台をつくったひとたち」と題して、歴代出演者、スタッフのクレジット。会ったこともないのに知っている名前が並ぶ。チラシや配役表を何度も読んでいるからだろう。そんなふうに向きあった作品、劇団は決して多くない。そしてガッツリ鈴木勝秀を見逃さない辺りつくづくスズカツバカである。吉田さんは紀之、朝、ヨシダ朝どの表記?とオロオロしてる間に見逃しました……。最後に、鴻上さん。そして、「and You.」。

そうだ、「まず第一舞台がありまして、それはスタッフとキャストが力を合わせた舞台のこと。第二舞台は観客席。第三舞台は、第一と第二の舞台が共有する幻の舞台。劇団の自己満足に終わらず、お客さんが付き合いで来ているだけでもない、最上の形で共有する舞台、ということで第三舞台と名付けました」 。それが第三舞台だった。

レイト上映もあるのでどこ迄中継してくれるかなと思っていたけど、しっかり最後の最後、鴻上さんに叱られて(笑)、福岡の劇場の観客が席を立ち帰路へ就き始めるところ迄見せてもらえました。中継、映画館どちらの配慮にも感謝します。映画館でも各所で拍手がわきおこっていました。

当時第三舞台を一緒に観たかつての友人たちも、どこかの映画館で同じものを観ていただろうか?これから先、人生の最後迄に、彼らに会うことはあるだろうか?そのとき「また会えてよかった」と言うことが出来るだろうか。実際、ここ数年で再会したひともいる。再会出来てよかったと思っている。再会出来なくても、彼らがどこかで第三舞台を観ていればいいなと思う。

この人生で、第三舞台に会うことが出来てよかった。彼らと同じ時代を生きることが出来てよかった。有難う、有難う。



2012年01月14日(土)
『寿歌』

シス・カンパニー『寿歌』@新国立劇場 小劇場

1979年の初演から、さまざまなカンパニーで上演され続けてきた北村想さんの作品。ラストシーン、雪のなかリヤカーをひいていくふたりの舞台写真は何度となく目にしていました。パンフレットによると今回の上演は震災前から決まっていたとのこと。

核戦争後。あまった核ミサイルが花火のように飛び交うなか、ゲサクとキョウコはリヤカーをひいて旅を続けている。そこに突然ヤスオと言う人物が現れ、しばし同行することになる。ゲサクたちは芸で日々の糧を得ていると言うが、果たして行く先々に観客は存在するのか。そもそもゲサク≒戯作とキョウコ≒虚構は生きているのか。ヤスオ≒ヤソの「物品引き寄せの術」は5つのパンと2匹の魚を5000人に…のあれか。さまざまなキーワードを「ええかげん」に散りばめ、彼らはそれぞれの道へ歩んでいく。

関西弁に耳が追いつかずしばし難儀しましたが、その軽妙な言葉がテンポよくやりとりされるさまは気持ちよかったです。ボケとツッコミのやりとりがぽんぽん入れ替わる楽しさも。そんな「ええ加減」な会話から、「ええかげん」な人間の姿と、寄り添うだけで実際には何もしない神(と呼ばれる存在)の姿が浮かび上がる。それは希望か、寛容か。放射能の雪のなかにはほんものの、掌で融けていく雪も混じっている。キョウコは喜んで、天に手を掲げる。

じゅんさんは前髪おろすと色気が出るなー。姿形もあいまって、神(と呼ばれる存在)の暗喩であり乍らちいさくはかない存在のように見える。堤さん演じるゲサクは何かを背負っている暗さを見せ乍らあっけらかんとしたたたずまいで死を迎え復活する。ウサギの話や「あのボタンを押したのは」自分だと言う前後のトーンの切り替え、よかったなあ。キョウコの戸田さんは生と死を素直に受け入れ、それでもゲサクの側を離れないまっすぐさを羽根のような軽やかさで表現して印象に残りました。

そして『アット・ホーム・アット・ザ・ズー』でも思ったけど千葉さんの演出って選曲と音の入れ方が独特だなあ。

個人的には、あのラストシーンはもうちょっと天井高くて奥行きを活かせる劇場で観てみたかったかな。今度カトケンさんとこ(『寿歌』レパートリーでしたよね)が本多劇場でやるので、是非それも観にいきたいです。

よだん。プロジェクト・ナビって名古屋拠点だったけど何故関西弁なんだろう?と思っていたのですが、北村さんは滋賀県出身なんですね。今頃知った。

よだん2。「リオナ、私は美しい」てギャグにあまり反応がなかったのにガーンとなりました(笑)ええとですね、ひとむかし前にイオナと言う化粧品の「イオナ、私は美しい」と言うCMがありまして…(説明するのが虚しい)。



2012年01月11日(水)
岸野さんお誕生日おめでとー

ワッツタワーズ@Shibuya O-WEST

ライヴ初め。なのにいきなり会場を間違えると言うね…遅刻してEAST行ったらシャッターが閉まっていて「満杯でもう入れませんって入口閉鎖しちゃった!?」と焦ってガシャガシャやってしまったよ。受付のおねえさんがその公演はWESTですよと教えてくれた…すすすすみません。向かいでよかった、すぐ行けた。

と言う訳で入場したときにはAlfred Beach Sandalは終わっておりました(泣)。中央に椅子が置かれていたので次は純ちゃんかな、と思う。純ちゃんを観るのはナイロン100%のイヴェント以来。このときライヴ前に、純ちゃんからの近況報告を兼ねたお手紙朗読があったんだけど、今回もあった。もはや恒例なのか。前回同様賢崇さんが読む筈が遅刻で間に合わず、岸野さんが代役。賢崇さんの声色をモノマネして読みますが似ていません(笑)ゲルニカをゲロニカと言い間違えたのにウケた。バンドメンバーもナイロンのときと同じ。

純ちゃんは風邪もひいていて声がかなり出づらそうでしたが、いやこれが歌に異様に合っていたと言うかなんというか…悶絶する少女の咆哮たるやもうね……機械で人権のない私、我一塊の肉塊なり、あなたの指図どおりに生きてきました、ボクはキミだから、冬虫夏草に寄生された蛹、ジンジン、貴方を食べたくて。それらの物語が腫れ上がった喉からかすれた声になって絞り出されるさまたるや…ああ純ちゃんだ、純ちゃんだよー。MCもちいさなちいさな声で、皆静まり返ってひとことたりとも聞き逃さないようにと耳を傾ける。すごくよかったな……。

終盤モニタの音量ちょっとあげてってなジェスチャーと、その後スタッフさんに手を挙げてお礼をする仕草にきゅんときた。ゆっくりゆったりした動作。激しい曲をやっているのに、純ちゃんの周りはしーんとしてる感じ。

さて、RonaldならぬRolandではないYAMAHAのMOTIF XF8だったかな、がセッティング。R&R Brothers名義でしたがSPARKSの登場です。ロン&ラッセルは日本好きでしょっちゅうプライベートでも来日していて今回もそうだったんだけど、丁度毎年恒例の岸野さんのライヴがあるからワタシたちもーと言うことで出演が実現したそう。ラッセルが岸野さんへの謝辞、またすぐに来るよ、あとなんか東京はせまいけどどうのこうの、と言った話をされてました。

急遽決まったので勿論バンドメンバーは他におらず、エレピとヴォーカルのみでのセットでしたが楽しかった!いきなり「Propaganda」だし、ぎゃー。いやはやホントメロディと声が素晴らしい!ラッセルの声とロンのピアノがあればもうSPARKSなんだなあ(涙)5曲くらいだったけど明るく温かくハッピーな時間でした。最後の「Something For The Girl With Everything」では名残惜しいのかロン兄アウトロ何度も繰り返して終わらない(笑)。アンコールは「I Married Myself」でした…し、しみる。最後にマイクを渡されたロン兄、ちいさな声でひとこと「オヤスミナサイ」。うわーん来てくれてありがとうねー。

それにしてもラッセルの私服の趣味はいい…さりげないけどすごいかわいい…二階席だったので靴もよく見えたんだけど、それもかわいい……若々しいなー、歳がわからん。お兄ちゃんも違う意味で歳がわからん(笑)。

さて念願のワッツタワーズ。ヒゲの未亡人、スペースポンチときてようやく観ることが出来たー、うれしい!むちゃよかった……しみじみ笑ってほろりとくるわ。うさぎが届けるレコード屋のうたがよかった…オルガンを弾かないJON(犬)を見たのも初めて。ワッツタワーズではこういう役回りなのね。JON(犬)と岸野さんのダンスはなんか『レインマン』のレイモンドとチャーリーのダンスを思い出して涙ぐんでしまったよ!何故だ!そのちょっと前に岸野さんがJON(犬)を叱りつけた(そういう寸劇です)ときの言葉にああっと思ったのも大きいな。人生いろいろだよねー、この歳になるといろいろあるんだよ!でもこうやってハッピーな気持ちになれるときってのはあるんだよ!栗原さんのベースを聴けたのも久々で嬉しかったー。あと近藤研二さんは、今は2355のうたで名前をよく知られているのでは。

曲間にくりひろげられる岸野さんのお話めちゃ面白かった…マーク・ザッカーバーグとデヴィッド・カッパーフィールドを混同してイリュージョンSNSを作るとか…Facebookに対抗して顔太郎とか(笑)フォントは勘亭流!おともだちになってって言ってきてくれれば即承認するのに!オールナイトにしちゃおう!もうここで皆と暮らしたい(菊地さんと同じこと言うとる・涙)!

岸野さんの誕生日であるこの日に毎年Out One Discのパーティをやってるんだけど、岸野さんご自分の話は全然しないのよね。フロアから「お誕生日おめでとうございまーす」と声がとんで拍手が起こったら「ばっ、私のことはいいんですよっ!」とうろたえておりました。そういうとこ素敵。

最後は皆出てきてだいだんえーん。メイル兄弟も出て来たよ。ロン兄ハット姿!そしてまたあのダンスを見せてくれた!最後にマイク向けられておびえた!「オトコハツライヨ」って言った!(爆笑)ラッセルは岸野さんに「チョウカッコイイ」と言うてました。

終わったあと純ちゃんの唄った「金星」て誰のカヴァーだっけー、平沢進だ!てな話と葬式の話と第三舞台の話をして解散。皆元気でねー。ああいい夜だったー、外は寒かったけどあったかい気持ちで帰りました。ひとは最後は必ずひとりになるけど、それは誰もがそうなんだ。



2012年01月07日(土)
『エンゼルからの贈り物』『北の異才たち』

特別展 森永のお菓子箱『エンゼルからの贈り物』@たばこと塩の博物館

1899(明治32)年創業の森永製菓株式会社。いくつかの戦争や災害から守り抜かれた貴重な資料を通し、その歴史を辿ります。

年代毎に展示されたパッケージは、紙箱のものから錆び付いた缶迄いろいろ。最初にチョコレートを発売したときは、滋養、保健にと言った宣伝文句が書かれているのも今見ると新鮮です。初期に使用された移動屋台の看板には聖書からの一節が。創業者である森永太一郎は製菓を学びに渡米した後キリスト教へ入信したのだそうです。人種差別や解らない言葉に苦しみ乍ら西洋菓子の製法を学んだ太一郎の心境はどんなものだったんだろう。

関東大震災時の従業員日誌も展示。当日は緊急事態なのでと社員をすぐに帰し、以降被災者の支援へと奔走していく会社の様子が書かれていました。軍国主義色濃い時代には東條英機の肖像画印刷されたお菓子のパッケージも。戦争が近付くにつれお菓子が作れなくなり、その辺りの資料が少なくなるのも印象的でした。

そういった歴史的な背景を追っていき、やがて自分が知ってる時代。あーこんなのあったー!あーこれ今も売ってるー!とワクワク進む。この辺りになると、モニタに流れているTV-CMも憶えているものが増えてくる。ところでCM、サウンドロゴが「モリナガ♪」にあたる「ピポピポ♪」の4音から「ピポパ♪」の3音に変わってるんですねー。これは憶えてないわー、いつの間に変わったっけか…並べて聴いてくとあれ?と思うんだけど。キャンディーズが何年か専属契約を結んでいたようで(ここらへんはギリギリ憶えてない…ピンクレディー世代です)、彼女たちが「ピポピポ♪」とロゴを唄ってるものもあってかわいかったー。

チョコボール(キョロちゃんのあれ)の歴代お菓子のカンヅメも展示されてたんだけど、今すごい豪華な感じなのね…カンヅメの形もなんか洗練されてて。タイムカプセル型とかあったよ。なんかまた集めて応募したくなった(笑)。

会期終了ギリギリだったのでカタログが完売していて残念。グッズ販売もあったけど、ぬ〜ぼ〜ものが沢山あった。ぬ〜ぼ〜のお菓子自体は販売終了しているけど、あのキャラクターは今でも人気なのかな。

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青森県立美術館コレクション展『北の異才たち』@Parco Museum

PARCO FACTORYだと思ってて6Fに行ったら場所がない(笑)、Parco Museumは昨年10月にオープンした新しいスペースだったんですねー。最近地下のロゴスにしか行ってなかったから知らなかった…フロア移動してるショップもちょこちょこ。

青森県立美術館は2006年に行った際その景観と建築物、展示作品の美しさと充実っぷりにすっかり魅了されてしまい、また行きたいなーと思っているところ。今回はその所蔵作品を紹介する『北の異才たち』と、美術館創設に関わったスタッフワークを紹介する『青森県立美術館の魅力』2セクション。

初っ端が成田亨のウルトラマンと怪獣のデザイン画でアガる。スタイリッシュなペン画なんだよー。ダダの3つの顔それぞれを描いた作品は来てなくて残念だったけど(これすっごい格好いいの!)、ダダ全身像は来てた!棟方志功の美人画や奈良美智の90年代の絵画も。奈良さんの『あおもり犬』は流石に持って来れませんね(笑)。そして青森と言えば寺山修司、天井桟敷のポスターも。これシルクスクリーンなので量産出来ず、現存するものは少ないんですよね。しかしシルクはいい、システマティックであると同時に手のぬくもりを感じられる印刷方法。

セクション2ではADの菊地敦己さんや建築を手掛けた青木淳さん、スタッフユニフォームデザインのミナペルホネンのコンセプトやコメント紹介。視界の開ける土地にぽつんと建った美術館。白一色の建物に青のネオン管照明がぽわりと灯る風景はとても印象に残るものでした。いつか真冬に、雪と一体化したような美術館を訪ねてみたいなあ。



2012年01月04日(水)
『ミッション:インポッシブル / ゴースト・プロトコル』

『ミッション:インポッシブル / ゴースト・プロトコル』@新宿ピカデリー スクリーン1

ッチャラ〜♪ うれしはずかしM:Iシリーズ初映画館鑑賞です。理由は『ハート・ロッカー』『ジェシー・ジェームズの暗殺』に出演していたジェレミー・レナーが出てるから…しかも先に観て来たリネさんから「スーツで」!「いい味出して」て!と教えてもらい鼻息も荒くピカデリーへおでかけですよ。

そしたらまーっ、オープニングでトム・クルーズの次に名前が出たので初っ端からもううろたえた……しかしその後いつ迄経っても出てこない。ジリジリする…とは言うものの、ハラハラドキドキのストーリー展開なのでいつだいつだと待ってる余裕はありません。忘れた頃に出て来た、しかもスーーーツーーー!あらやだ何やってんのあなた、スーツで分析官とか畏まっちゃって…と思いつつ見ていたらなんかデキる、デキるわこの子。分析官と言う割にやたら不測の事態にすんなり対応出来る…そしてめっちゃ身体キレる…頭もキレるけどねー!どこか憂いのある表情も素敵よ!おほほほほ!(壊れてきた)そして彼演じるブラントの正体が明らかになっていくのですがこれ如何に!て書くとジェレミーが主役みたいですが違います!メインの事件は他にあります!

と言う訳でジェレミー・レナーはデキる子!いやもうジェレミーらぶいわ…「次は僕が富豪を誘惑する役をやる」っつってたけど出来る、出来るよジェレミーなら!インドのエロoyajiもいちころよ!ポーラ・パットンとチームかわいこちゃんの座を争うがいい。いやポーラはちょう男ットコ前なので争うことなくそのポジションを獲得出来るわよ!なんでもマット・デイモンが演じてきたボーンシリーズを受け継ぐと言う話もあるとか、売れっ子ちゃんなの?スターへの道なの?これからも楽しみだわー!

……映画の話もしなさいよ。いやはや面白かったー、景気よくてお正月に観てよかったわーと思いました。核がとか戦争がとかってシャレにならないモチーフを現実世界と切り離して観られるエンタテイメントっぷりにすごく好感が持てるー。ラストのせつなさもよかった。イーサンも嫁も格好いいよ……(涙)。

それにしてもトム・クルーズってやっぱりすごいな。個人的にはアクションスターと言うイメージは持っていないのですが、こういうの観るといやいやいやとんでもない。しかしアクションだけでなく、イーサン・ハントの心境を伝える繊細な演技もしっかり押さえているのでラストが活きるんですよね。心技体充実しまくりだわ…役者=超人なのだなあとつくづく思わせられます。だいたいあのドバイのタワーの壁走ったりってのがCGじゃない(年末TVでメイキングを観た)ってのに腰が抜けた。ご本人「高いところ苦手じゃないんだよね〜」と言ってましたがそういう次元じゃないだろう。鍛錬してこその自信と、絶対的なスタッフへの信頼感があるのだろうなあ。こういうとこってちょっと平常心のタガを外さねばならないところで、それを出来るってのがすごいです。

そして『宇宙人ポール』と二日連続でサイモン・ペッグを観た訳ですが、M:Iとポールでは全然雰囲気違って判らなかった(エンドロールで気付いた)!ポールでは役柄もあってもさっとしたちょいデブちゃんなんですよね。それがシュッとしてる!痩身!華奢なデヴィッド・モースみたいだった。化けるわ〜やっぱり役者ってすごい……。ダイヤ好きの殺し屋を演じたボインのケイト・モス(笑)レア・セドゥーも素敵でした。クールな仕事っぷりでしたが肉弾戦もデキるわよ、ポーラとのガチンコファイトは「ニ゛ャーッ!!!」て感じでコワかわいかったわー。

M:Iシリーズにしてはコミカルな部分も多く(サイモン演じるベンジーがいいポジション)楽しく観られました。内部の人間にことごとく裏切られてきたイーサンが得た最良(最強とは言えん皆ちょっとずつヌケてるから)のチームの見せ場も楽しい。役柄としてはブラントがいろいろ心配。諜報員なのにあなた情にもろいわ!見終わった後だと「そんな気にしちゃダメよ…」と思えるわー(笑)…と結局ジェレミーの話になる。ジェレミージェレミー打ち過ぎてもうジェレミーって文字がゲシュタルト崩壊起こしてきたのでいい加減やめます。

気が早いですがこのシリーズがまだ続くようならまた今回のチームで観たいです!ッチャラ〜♪♪♪



2012年01月03日(火)
『宇宙人ポール』

『宇宙人ポール』@シネ・リーブル池袋1

映画初めがこれでよかったー、面白かったー!ううっいい話。

SFヲタで作家+挿画コンビのイギリス人、グレアムとクライブがSF名作の縁の地を訪ねるアメリカの旅へ!まずはコミコン(日本で言うSF大会+コミケみたいなイヴェント。大規模!)、それからUFO目撃も多く宇宙にいちばん近いと言われるエリア51、宇宙人が星へと帰還する地デビルスタワー。キャー憧れのUFOスポットだヨ!宇宙人に遭ったらどうするどううする?冷静に話して友好的に、俺は落ち着いてるぜ〜とか言ってたらホントに宇宙人と遭遇、クライブは失神+失禁、サイモンギャー。

ポールは60年アメリカに滞在していて『E.T.』や『Xファイル』のスーパーバイザー等をしていたんだけど、お払い箱になって殺されそうなところ逃げ出してきたと言うのでふたりは彼を故郷へ返してあげようと協力することに…しかしこのポールのガラの悪いところと言ったら。見た目は絵に描いたような宇宙人(あれだよ、あれ)なのだけどハッパ大好きピスタチオ大好きスラング使いまくり、しかし絵に描いたような特殊能力も持っている。ハードコアなクリスチャンルースが道中合流し、追っ手も迫る。さてポールは無事故郷へ帰れるのでしょうかー。以下まるっとネタバレしますので未見の方はご注意を。予備知識殆ど入れずに行ったのでのわー!となるシーンがありましたー。

細やかなヲタ心理描写やホモソーシャルをビシビシ感じさせるグレアムとクライブのコンビ、ガラが悪いが義理堅く恩返しの精神は忘れない心は地球人のポール。アメリカと言う土地の広大さ、地方に根強く残るキリスト教を堅く信仰する抑圧された家族、そして銃社会。ポールは身の危険も顧みず60年前事故で殺してしまったいぬのポールの飼い主のもとへ謝りにいくし、ルースの父ちゃんは神を深く信じてる割に無線傍受が趣味でところ構わず銃をぶっぱなすコワレっぷり(笑)。そういう細かいところへのツッコミが丁寧でツボおしまくりです。そしてこれが全てポジティヴな方向へと解決していくのが小粋でブラック、そして楽しい。

そういうアメリカの文化やトリビアが町山智浩さんの監修で細かくそして解りやすい字幕になっていたのもよかったです。かなり情報量あるのであわわとなってるうちに飛んじゃった箇所もありますが、プチ解説も込みになっている字幕はかなり助かりました。

そしてここもツボ!ポールを追う組織の大ボス、ずっと無線や電話の声だけで最後の最後迄姿を現さないのでこれは…と思っていたのですが、登場シーンで爆笑+どよめき。なんとシガーニー・ウィーヴァーなのですよ!シガーニーかジリアン・アンダーソンが出たら面白いな〜、でもいくらなんでも出ないよなと思って観ていたので「のわあ!」とか声に出た(笑)。で、このシガーニーがちょーゴージャスなドレスでアクションドンドンドーン、ギャー素敵!ストラップレスのドレスのブラ部分がずり落ちるのを引き上げ乍ら大暴れです、か、格好いい!そして最後のあっけなさもすごい、なんつう贅沢な…そして出演するシガーニーも男前。ちなみにスピルバーグも声で出演してました。いやはや皆さん面白がっている…作る側の楽しさが伝わってくる……。

個人的には、塚本晋也監督が招待されたり、アマンダ・パーマーが出演したりでここ数年目にするようになったコミコンの様子が見れたのがよかったです。こんななんだー。そしてクライブ役のニック・フロストがおデブのデイヴ・グロールみたいでツボでした。年明けからいいもの観た、楽しかったー!

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映画の前にサンシャイン水族館に行きました。ラッコもペンギンもコアリクイもいたよー!アシカショーも楽しかったー。



2012年01月01日(日)
『没後150年 歌川国芳展』前期

今年も宜しくお願い致します。

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『没後150年 歌川国芳展』前期@森アーツセンターギャラリー

前期。元日なら空いてるじゃろうと行ったら激混みであった。しかも向かう途中の大江戸線内で地震が来て電車が停まるというね…電車内でもかなり揺れてるの判った、ひぃ。年明け早々なんとやら。

あれですね、ヒルズの施設はまるっと開いていて展望台等も営業しているので、初日の出や初詣帰りのついでに見ていこうかーってひとも多かったようです。森美術館の入場券とかは展望台のチケットとセットになっていたりするから、美術館で大騒ぎしてる観光客もよく見掛けます。これどうにかならんか……。

しかし!国芳展は、とにかくひとは多かったが騒がしい輩もおらずよかった。質量ともに充実、武者絵からもう大人気。休日で後の予定を気にする必要がないので、並んででもゆっくりゆっくり観ていけたのはよかったな。版木の展示もあり、武者絵の髪の毛一本一本を癖付けしてる部分も見られた。色を盛らない部分にも細やかな技術が活かされているのに感服。マンガ的な効果線が印象的な『文覚上人那智の瀧荒行』『六様性国芳自慢 先負 文覚上人』の瀧や『暑中の夕立』の雨のタッチもいい塩梅の照明の下で観ることが出来、彫師や刷師の仕事っぷりにも光を当てる内容でとても面白かったです。

昨年原宿の展示ではひとの頭越しにしか観られなかった『龍宮玉取姫之図』を近くでじっくり観られたのも嬉しかったし(野田さんの『THE DIVER』のアレです。うう(涙))、『坂田怪童丸』『金太郎鬼ヶ嶋遊』『六様性国芳自慢 大安 怪童丸』の金太郎もの三作のくま虐待も楽しく観ました、くまかわいいそう。『和漢準源氏 蓬生 桃太郎』も。どうぶつとひとがいっぱいある絵がてんこもりでたまらん!勿論ねこもすずめもきんぎょも盛り沢山。今回団扇絵の展示も沢山あって楽しかったー。季節ものから美人ものからねこから、ああたまらん。三連作も沢山観られた。これ迄バラバラでの展示はあったけど三点揃って観られるのは初めての『たとゑ尽の内』もあったよーぎゃーぎゃわうい!ああ、元日から眼福です。

今回ギャラリー展示の割に(と言ってもかなりスペースあるギャラリーですが)大々的に広告展開が行われていました。地下鉄やJRの駅張りポスターを見た方も多いのでは。ヒルズをあげて盛り上げていた様子で、通常のグッズの他にも、ヒルズ内ショップとのコラボものが多いこと多いこと。レストランやカフェでは展示にちなんだメニューもあったようです。早くもカツアゲ状態でしたが、カタログと和三盆(お正月限定パッケージだったー)、ショコラ迄でなんとか打ち止め。後期が思いやられます……。