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2011年12月31日(土)
2011年いろいろ

今年は十傑に絞りきれませんな…ちょっと分けてみました。ベストワンには★印、観た順。とか言ってベストワンが複数あったりしますが。

■映画
 『AKIRA』
 『その街のこども』
★『十三人の刺客』1回目2回目
 『Pearl Jam 20』
 『マネーボール』

■ライヴ
 面影ラッキーホール『渋谷でだけ出して』
 THE BACK HORN『KYO-MEIワンマンライブ 第二回夕焼け目撃者』
 kowloon、toe、mouse on the keys『chaotic, exotic tour 2011 final』
DATE COURSE PENTAGON ROYAL GARDEN『GAP(golden after play)』
 yanokami『SUMMER SONIC 2011』
 PiL [PUBLIC IMAGE LIMITED]『SUMMER SONIC EXTRA』
 LÄ-PPISCH『GEN Chang Night vol.3』
 矢野顕子 × 上原ひろみ『今年は2人でさとがえるツアー 〜Get Together〜』
 J.A.M × 菊地成孔『spiral records presents CHRISTMAS SPECIAL LIVE 2011』
TOKYO No.1 SOUL SET『全て光』

■演劇
 『金閣寺』
 『沼袋十人斬り』
 『南へ』
 『散歩する侵略者』
 『奇ッ怪 其ノ弐』
 『無防備映画都市』
 『トータル・リビング 1996-2011』
 『エオンナガタ』
『太陽』
 『ルート99』

震災、原発事故と言う現在が常に頭にこびりついた状態でライヴや演劇を観る日々です(極端な話ハラカミくんが亡くなったのも、これらと無関係ではないと思っている)。それはこれからも続く。そんななか、3.11直後に観た以下の作品は、ステージに立っていたひと、ステージを続けるために尽力したひとたちのことも含め、ずっと忘れることはないと思います。

『国民の映画』
『灰の人』
『I Love Poo』
Wilko Johnson
『欲望という名の電車』1回目2回目
Kylie Minogue

『欲望〜』はキャストやスタッフのツイート読んで日々ハラハラしていたな……。ウィルコが「予定通り日本にライヴをやりに行くよ!」とサイトにメッセージをあげてくれたときはとても嬉しかった反面とても心配だった。幕張の被害を目にしてショックを受けた直後、会場に集まった華やかなドラァグクイーンたちの「私たちはここへ楽しみにきたのよ!」と言うパワーに圧倒されたり。

ソフトでは断然これ。

mouse on the keys『irreversible』

そしてスズカツさんのこの2本。観ることが出来て本当によかった。

『クラウド』(初日2回目3回目楽日上演台本について
『ウエアハウス[circle]』(初日楽日

それとなんだ、なんと言うか菊地成孔がいてよかったなーと思った2011年でした。2012年がいい年になりますように。



2011年12月29日(木)
『全て光』

TOKYO No.1 SOUL SET『全て光』@LIQUIDROOM ebisu

毎年恒例、と言ってもやはり今年は特別。トシミくんが「毎年やる意味ってあるのかな?と思ったんだけど…こうやって皆に会える、元気でいるってのを確認しあえるってのはいいなって」と言い、ビッケは「初期から聴いてきてるひとは俺たちと一緒に熟成してきてるしね(笑)生存確認だよ!毎年、生きてたよー、生きてるよーって!」と言った。そうだねえ。

トシミくんの口から直接震災のこと、福島のことを聞けてよかった。それに対する考え方、姿勢も。トシミくんは福島県富岡町の出身なのだ。こう書くだけで、それが何を意味するのかが伝わってしまうのは悲しいことだ。でも、それで終わってしまう訳にはいかないのだ。自分の出来ることから協力していきたいし、いろんな情報のなかからそれを何に、誰に託すのかを決めていく。

そんなこんなでやはり例年とは違う空気は確実にあり、昔の曲も結構やった。「O'TAY」も随分久し振り。ビッケ歌詞忘れてた(笑)。そして、そこにはこの日のパーティのタイトル通り“全て光”に満ちたような美しいフロアの光景があった。ソウルセットのライヴでのフロアを見るの、本当に好きなんだ。メンバーの三人が全く違う趣味趣向のように(ビッケがトシミくんに「もう20年一緒にやってるけどね、トシミくん俺のことぜんっぜんわかってない!!!」てMCに大ウケ)、毎年この場に集まるひとたちはてんでバラバラだ。共通点は音楽が好き、ソウルセットが好き、それだけ。ライヴが終わるとそれぞれの方向に、違う場所へとバラバラに帰っていく。音楽だけが、音楽だけで繋がっている個人が年一度集まるフロア。他意なく、詮索も牽制もなく、自分の好きな音が鳴り、自分の好きな言葉が放たれると素直にそれに反応する。その姿がフロアに溢れている。

「ミラーボールを発明したひとにノーベル平和賞を」と言ったのは菊地成孔だが、けだし名言。ヒロシくんの頭上スレスレでまわるミラーボールは、そこにいる全てのひとたちが笑顔になるようなピースな光をフロアに降らしてくれた。

トシミの「紅白のリハ」も聴け、ゆるゆるのMCも楽しく、ヒロシくんのトラックには毎度のごとくシビレまくり(ここは毎年変わらんな・笑)ビッケの「また来年生きてここで会う迄解散!」の言葉をあとにフロアを離れる。また来年、生きてここで会いましょう。それ迄、自分の信じた道をそれぞれしっかり歩むのだ。

今日は北へ、今日は南へ
青葉を揺らぎ、ホコリを立て
嵐の中に身を隠し
つま先立ちで進んでゆく

前のめりだけに注意して
転ばぬように心がけ
留まることに決めたのならば
手を合わせて叩けばいい



2011年12月28日(水)
『FRONT CHAPTER』

BOOM BOOM SATELLITES『FRONT CHAPTER』@LIQUIDROOM ebisu

『FRONT CHAPTER』が帰ってきたよ!今回はニコ生での中継もありましたが、MIOさんが奇跡のチケットゲットで会場で観ることが出来ました、ありがとー!いやもうこの規模でブンブン観ることはないと思っていた…リキッドで観るのって何年振りだ、と言うか恵比寿に移転してから観たことあったっけ?新宿のリキッドではもう何度も観たものですが…ビニール人形投げててガラガラのときとか(涙)。

と言う訳で妖怪はお客をもてなしたくてごはんとおやつをてんこもりで出す子でした…腹いっぱいです。いやもうこのはりきりっぷり、微笑ましい。服装は普通でした、と言うか田中ちゃんみたいな服装でした(わかりづらいたとえ)。

冗談はさておき、音のレンジ、音数の多さ、音域、BPMがなんと言うんだろう、悪い意味ではなく幅が狭く感じた。ある一定の箇所に音が集中している印象で、その分的に当たったときの破壊力が半端ない。これならweb中継しても充分に迫力が伝わるのでは…と思いました。実際その場で聴いた印象は、かなりの音量だったのでこちらの耳がバカになってしまい、中盤以降一定の音が聴き取れなくなった。そうなるとどの曲も同じように聴こえてしまう落とし穴が……。

しかしそこを繋ぎ止めてくれるのが川島さんの歌なんですねー。いやあ、やっぱりふたりそろってブンブンサテライツ。

yokoさんのドラムはところどころ難儀していた印象がありましたが(スネアの音がバラッバラになったり)、力任せに叩かないでいいところは安定していて格好よかったです。と言うか、既存の曲もyokoさんの得意な分野を活かしたドラムパターンへと徐々に移行していってるのかなと思いました。となると、今の3人での「LIMBO」や「Scatterin' Monkey」を聴いてみたい気もします。昔からずっとモードを変え乍ら演奏し続けている「DIG〜」の他にも、初期の名曲は沢山ある。それらは今聴いても全然古くない。怖いもの見たさ(聴きたさ)もあるけど、どうかなー。やらないでいるのは勿体ないなあとも思ったり。

といろいろなことを考え乍ら聴きました。それにしても、川島さんがライヴのMCでこんなに喋ったのは初めて聞いた。もう十数年観ているが、多分史上最長MC。岩手の方なので、やはり思うところがいろいろあったようです。ワンマンは昨年の幕張以来だし、ライヴの場でオーディエンスに自分の言葉をちゃんと伝えたいと思ったのかな。誠実なMCでした。それにしても喋りがおぼこい。「やっぱりワンマンライヴはいいですね」と言った直後に対バンツアーの告知するぼんやりっぷりも含め面白い……最後のお辞儀もとっても律儀。MIOさんの近くにいたおとこのひとが「なんだかかわいいなあ…」と言っていたそうですよ(笑)男に迄かわいいと言われる40代。素敵だわー。

今後このバンドがどうなっていくかは判らないけど、まだ当分は聴いていきたいです。安定を目指しているバンドではないし、パターンが固まりきる訳でもない。やっぱり次を期待してしまうのです。



2011年12月26日(月)
『マニアックヘブン Vol.6』

THE BACK HORN『マニアックヘブン Vol.6』@STUDIO COAST

バックホーンのマニアックなイヴェント。ようやっと初めて行けましたが仕事が終わらずライヴは1時間も聴けませんでしたーい(黙)

しかし入場するなりユーミンのカヴァー「春よ、来い」をやっており、こーれーのー山田くんの歌が素晴らしく!鳥肌がたち!ここで風邪ひいたな(バタリ)。通常のライヴでは殆どやらない曲を主に演奏、と言うものなので自分たちのナンバーばかり(インディー時代のとか)をやるのかと思っていたので、カヴァーにはびっくりしたー。いやあ、よかったなあ。

ライヴ終了後にギャラリーはゆっくり観られたのでよかった。メンバー全員絵が描けるってのはいいですよねえ、しかも皆なんというか、異様な…ああこういうバンドだなあ、って絵。先日発売の『音楽と人』巻頭特集用に菅波くんが描いた絵の原画も観られてよかった。そうそうこの特集、すごくよかったんだ。プロモーションと関係なく特集組んでくれて、今年彼らに起こったこと、彼らが起こしたアクション、その経緯、についてメンバー個別でじっくりインタヴューをして記事を書いてくれた。編集とライターさんに感謝します。

来年行けたらちゃんと最初から参加したいでする。



2011年12月25日(日)
『ア・ラ・カルト 2 〜役者と音楽家のいるレストラン〜』

『ア・ラ・カルト 2 〜役者と音楽家のいるレストラン〜』@青山円形劇場

「23回全部来てる方いらっしゃいます?」との問いにちらほら手が挙がる。デザートパートのストーリーではっとしたけど、思えば高泉さん、宮城出身だった。篠井さんはショウタイムで「厄落としよ〜(笑)。今年はつらい思い、悲しい思いをした方が沢山いると思います。でもね、生きてる間は楽しくいきましょう」と言い、「Life is a Cabaret!」を唄った。篠井さんの言葉、7月にハラカミくんが亡くなった直後のライヴで菊地さんが言ったことを思い出してうえーんとなった。そうだよ、そうだよね。

リニューアル2年目の『ア・ラ・カルト』は軌道に乗ってきた感じ。中山さんのギャルソン姿も板についてきた。この日のゲスト篠井さんとは共演もした仲と言うこともあるのか、ズカズカ相手のフィールドに入ってきてる様子がかなり面白かったわー。アドリブで進めるパートのところとか、「ヤな感じの店員…」とか言われてた(笑)。中山さんてこういう無意識ドSな部分が出るようになると俄然光るよねー(笑)。

「昔アンケートに『高泉さんの女装がよかったです』って書かれたの!(爆笑)」と高泉さん。篠井さんとは怪女優と言うジャンル(笑)で雑誌に載ったりしたわね、と言うところから、ジェンダーフリーダムでいることについて、それは舞台でないと出来ないと言うこと、そして以前は山田のぼるに代表されるコドモの方がちゃっちゃと出来たが、今はマダムジュジュの方が簡単と言うか楽に出来る、と言う話がとても面白かった。続けていると気付くこともあり、続けていくことで新たな発見もあるのだ。

父子はいなくなり、老夫婦も行方をくらました。タカハシは独身になり、ノリコさんはもういないのだなと思うと胸が痛むけど、それもまた人生。新たな愛着がわいているレストランにまたいろんなひとたちが集う。来年も、これからも楽しみにしています。

あーあとこないだも書いたけど今年はPTAのライヴ1回しか行けなかったので、林さんのピアノを堪能出来て嬉しかったです。アンコールではクリスがサンタ衣裳で出て来て(当然似合うことこのうえない)「HoHoHo!!! Merry Christmas!!!!!」とすんごいテンションで他のメンバーが吹き出していた。あ、アメリカ人……(笑)。

今年はこれで観劇おさめ。よいおとしを。



2011年12月24日(土)
『その妹』

『その妹』@シアタートラム

武者小路実篤の戯曲。多少なりともブラッシュアップしたのかな。それにしてもシェイクスピアばりに説明過多な台詞です(笑)。具体的な言葉数も多い。それを1.2倍速くらいのスピードで役者たちが語り倒す。とにかく台詞回しが速い!しかしこれを皆さん乗りこなす乗りこなす。所作も皆綺麗。付け焼き刃のひととそうでないひとの差って舞台に立つとテキメンに判るし、そこに演出がちゃんと目を配っているかってのも同様です。扱う題材にもよるけど、この作品に関しては、単純にスキル必須だなと思いました。

しかしそれだけだと「うーまーいーなー」で終わってしまう。膨大な台詞量から登場人物を多面的に映し出すのも役者と演出の力量。亀治郎さんと蒼井優ちゃんのザ・女優(え)対決みたいな様相もありつつ、しかしタイトルロールだけに妹オンステージみたいなところもありました。これは女優冥利に尽きる役柄ですな…処女と妖女の両面を好きなだけ出せる。ちょっと妖女の方をドロッと出し過ぎたかなと言う印象はありました。あーこれは計算づくだ、と思わせられてしまうような。まあ、意識して計算しているのではないのがコワいところなんですが。これはあれだな、西島の妻が会うなりピーンときたように、女性から見ると「この女、うまいことやりよる…!」と思うけど、男性からすると「うわあん可哀相、助けちゃる!」となっちゃうかしら。まあ実際可哀相だしな……。

なので、ボロクソ言われている男のところに嫁に行っても、妹はうまいことたちまわれそうな気がしましたとか言うと鬼みたいですな私(笑)。確かに兄妹の過酷な運命には同情しますが、実際心が寄ったのは西島なんですよね。いちばん気の毒なのは西島な気がするー。段田さんの巧さもあってうえーんてなりました。

演出も堅牢。兄妹の「ズルい」面を強めに出して笑いを誘っていました。そして男のじゅんじょーよりも女のおっかなさが解りやすく出てた。しかしこれ、男のひとが観たらそうは思わないんだろうか(笑)。河原さんがそれをどこ迄見据えてこう打ち出したか、を知りたい気もします。

それにしても、クリスマスイヴに観るにはあまりにもしょんぼりするストーリーであったよ(泣)。



2011年12月22日(木)
『spiral records presents CHRISTMAS SPECIAL LIVE 2011』

『spiral records presents CHRISTMAS SPECIAL LIVE 2011』@スパイラルホール

週間天気予報でこの日だけ雨になってたのでウケてたんだが持ち直したよ!今日は誰か晴れ男がいましたのん…菊地さんと丈青が揃ってて雨が降らないライヴなんていつ以来だ、思い出せないくらいだ(笑)。

それにしてもJ.A.Mと菊地さん、こんなに相性がいいとは。いや相性がってのとは違うか、どちらも流石のプロだなあと…ミュージシャンシップの成せる業ですな。そしてその温度感はジャズメンならではと言う感じがする。お互いがお互いの懐をパンと開いて、そこに無防備にポーンと入っていく。毎日会うひとは違う、毎日相手が変わる。ある種エロティックでもあります。こういうシアワセもあるのよね。

それにしてもJ.A.Mってこんなに楽しそうに演奏するんだと初めて気付いたよ!(鈍)いや、これ迄J.A.Mって寒い山の上で豪雨のなか合羽着て、いい音楽がいい演奏でやってなかったらもうこんなとこおらんわ!てな過酷な状況でばかり観ていたので(要するにフジで観る度悪天候。しかもものっそい降る)殺伐上等みたいなイメージで…もうその印象が強過ぎてですね……。こんな、室内で、シッティングで落ち着いて観たの初めてだったんですものー!グランドピアノで丈青の音聴くのも初めてでわあーいとなりました。

丈青リードでみどりんと秋田ゴールドマンはガッツリピアノに意識をひっつけて即反応する運び。みどりんも秋田さんも終始ニコニコ。丈青は殆どふたりに目は遣らず、時折笑みを零してひたすら鍵盤を見てる。ここに菊地さんが加わるとどうなるのと言うと、やはりみどりんと秋田さんがソリストにぴったり寄り添う感じでした。この献身的とも言える演奏が素晴らしく気持ちがいい。そして自分のソロとなると内に向く、このバランスが絶妙。丁々発止の態でいてアンサンブルも鉄壁。

菊地さんはゲストソリスト扱いなので、ステージ前方中央での演奏。よって他の三人とのアイコンタクトは殆どない。序盤は楽譜を追っていて、途中から客席に目をやりつつ演奏していた。ちなみに楽譜、透けた裏側から見えたんだけど3〜4行くらい迄しか書いてなかった。冒頭のユニゾンになるところだけオタマジャクシで起こしてあって、あとはコード名だけだったっぽい。途中はインプロってことですよね…こういうの、このひとたちには珍しいことじゃないんだろうけど実際目にするとうへー(平伏)となるわ。コルトレーンの「Miles' Mode」をやりました。丈青も菊地さんも耳で感じる(と書くとなんだかエロいが実際その趣もある訳です)スタイルで、目は一切向けなくても他の三人の音の動きによって微笑んだりうはははと笑ったりしつつ展開を変えていく。

オーラスは「MINT」。J.A.Mのナンバーに菊地さんが加わったこれが素晴らしくよかった、「Mirror Balls」を思い出す“甘いもん”だった…ほろり。コード展開も似通ったところがあったし。ジングルベルや「A Night in Tunisia」のフレーズを折り込んで演奏。最初丈青がジングルベル入れて、それに菊地さんが笑って反応してフレーズを繰り返した(勿論ここでアイコンタクトなどはない)。これがベタにならないのよ、あのフレーズなのになんでこう物悲しくせつなく聴こえるのか!いやこれはホントよかった…意識は音にすごく集中してるんだけどぶわっと脳内で映像が浮かぶときってあるんだけど、4年前のオーチャードホールでの「Over The Rainbow」が思い出されたなー。この日、UAのヴォーカルで「A Night in Tunisia」やったんだよね。それで思い出したんだろうけど、そこからあー今年はいろいろあったなあとかすっかり年末気分になった。

思えば今年はDCPRGばっか行っててNKDSは逃しまくったし、PTAは新宿文化の1回のみ(ブルーノートは震災で仕事のスケジュールがわやくちゃになってたとこで行けなかった)だったし、ロストクインテット+1は混んでて殆どの視界が前のひとの背中だったので(笑)菊地さんがブイブイ吹くの見たのは久し振りだった。素直に嬉しかったわー。そしてこんなにぽわんと身を任せて演奏する菊地さんを見たのも久し振り…と言うか珍しいような気もしたな。他のではやっぱり刺すか刺されるかみたいな緊張感がどこかにあるから。今回は裸で泳いでるみたいな印象すらありましたよ、ここに刺客が現れたら即落命ですわ。で、そういう危なっかしい面を晒すからこその演奏の儚さを聴けたようでそれもシアワセに感じたところでした。勿論演奏そのものはピンと張ったワイヤーのような芯が通っていましたよ。

「今回菊地さんに来てもらったんですけどー…一緒に演奏するのー…すっごい楽しいです……」とニヤニヤ丈青。MCゆるい(笑)。最後は全員が握手、一列に並んでお辞儀。並び順をおろろっと入れ替えたりして微笑ましー。演奏とギャップがあり過ぎる(笑)。

色香たちこめるステージでした、いい夜。J.A.M × 菊地さんで今回のコンサートを企画してくださったspiral recordsに感謝します。



2011年12月20日(火)
『欲望という名の電車』

青年座交流プロジェクト『欲望という名の電車』@世田谷パブリックシアター

今年二回目の『欲望という名の電車』。『青年座交流プロジェクト』と言うことで、演出に文学座の鵜山仁さん、出演者に金内喜久夫さん、山本道子さん、塾一久さん、川辺邦弘さんを招聘する企画。鵜山さんは『欲望〜』オペラ版の演出もなさってるんですよね、観てみたいよー。

そして特別枠客演としてステラに神野三鈴さん、スタンレー(スタンリーじゃなくてスタンレーよ、今回)に宅間孝行さん。迎え撃つ?青年座はブランチに高畑淳子さん、ミッチに小林正寛さん。高畑さんが『欲望〜』に出演するのは三演目で、看護師、ステラときて今回初めてブランチを演じるとのこと。念願の役を演じるのが待ち遠しかったようで、今年始めに出ていたTV番組で「早くやりたい!」と話していたのが印象に残っています。

鳴海四郎訳で観たのは初めて。意訳や簡略、カット&ペーストが面白い効果を生んでいました。テンポよく間延びがない。具体的なところで言うとミッチの「南北戦争は終結ですか?」が「西部戦線異状なし、ですか?」になっていたり、スタンレーがステラに肉を持って帰って来る箇所が序盤ではなく、ブランチがスタンレーのことを「彼は野蛮人、いいえ人類以前の類人猿で、洞窟で待っているあなたに肉を持って帰ってくるのよ」とかむちゃくちゃ言った直後。これはウケてた。あと「アンブラー&アンブラー、クラブトゥリー」も出てこなかったな、取り立て屋の会社名と判らずスタンレー(と観客)が呪文か何か?と一瞬ぽかーんとするところ。タマーリ売りは出て来ないけど花売りは出てきて、こわれゆく女ブランチを死の世界へと誘う役割を担う。この花売りを演じる津田真澄さんは後に看護師の役でも登場し、やはりブランチの死を象徴する役回り。そしてラストシーンのステラはこどもを抱きしめて嘆き悲しむが、スタンレーの腕の中には戻らないヴァージョンでした。

どこに光をあてるかによって作品の印象が変わり、ストーリーと人物像の新しい面が見えてくる。インターミッションの挟みどころもカンパニーによってさまざまで、その違いも面白い。今回は「時には神様がこんなにも早く…!」の後。

今回のヴァージョンは、登場人物造形の記号化が明確だなと感じました。スタンレーはDVでステラはビッチ、ミッチは(セカンド)童貞。二面性もハッキリしてた。ステラは状況によって「ブランチ」「姉さん」「あんた」と呼び方を変え、スタンレーに金をせびる前後で態度ががらりと変わる。べそをかいたり無邪気にはしゃぐスタンレーはかわいらしくすら見える。ミッチは意識する女性とふたりきりになると豚のように鼻を鳴らす。各人の欲望の在処が見えやすくなり、その欲望は“夢中”と等価だと示す。

そして今回うわー!となったところはふたつ。ステラの、次女のノホホホホ〜ンっぷりがすごい出てた!次女だから解る、あのノホホンっぷり…女きょうだいがいる(≒男きょうだいがいない≒跡継ぎとしての男がいない)ひとにはピンとくるのではないか、あのきょうだいげんかの微妙なニュアンス……あるあるある!なんか今回そこがすんごいしっくり来たわー。姉ちゃんすまねえ!と心の中で叫んだわ(笑泣)。最後のシーンも、ステラは「やめてー!ブランチに何するの!」とかなんだかんだ言ってるけど、連れて行かれる=ブランチが死の世界へと旅立つ現場を見送ってはいないんですよね。これは「あなたはひとが死ぬところは見ないで綺麗な葬式にだけやってくる」と言うシーンに繋がる。

もうひとつは宇宙(たかおきと読むのですね…今回初めて知りました)くん演じるイヴニングスターの集金人がコドモコドモしていたところ。これすごい効果的だった!パンフレットにもあったけど、この子性的対象として扱われたのは初めてなのでは、と思わせられる。もーあれよ、あのー幼少の菊地成孔のことを思い出した…あれはトラウマになる……つ、つらい!てかコドモに手を出してはいかん!いーかーんーよー!そしてそれによってブランチのヤバさが際立つのです。あーこんなことしてりゃそりゃ近所で評判になるわ、ヤバいババアがいるぞ!って…ベルレーブにいられなくなる訳だわ、そしてここにもそろそろいられなくなるわ。説得力あったよう(泣)。

そうそうあとひとつあった。スタンレーがブランチとああなっちゃったー、ってのは酒が入ってたのが大きいなと受けとれたところ。そうなる迄のスタンレーの酔いっぷりが陽性なんだよ。で、それが豹変ってんじゃなくて元の人柄からのグラデーションに見える。前半のポーカーし乍ら酔っ払うシーンと地続きに、自然に見られました。ブランチのドレスのストラップが片方外れると言うちょっとしたところもポイントになっていました、この辺り、スタンレーとステラのセックスシーン同様、新劇的とも言える具体的な演出によってとても伝わりやすくなっていました。

高畑さんのブランチは精神が崩壊していく過程の提出が素晴らしかった…怖かったし可哀相だったよー(泣)。肉感的で豪快なイメージのある女優さんですが(彼女が演じたステラも観てみたかった!)、高畑さん演じるブランチは、気丈に家を守って来た長女がとうとう持ちこたえられなくなる程の傷を負った姿ととれました。ブランチはそれだけのことをされたのだと納得させられる。高慢さよりも自分と違う人種とどう接したらいいのか判らず混乱している感じを押し出していて、今やそっちの種類の人間である妹にも怯えている様子がよく出てた。ミッチとのデート前に極端な躁状態に陥っていたり、観ている側に「あれ、このひとおかしい?」と言う不安をポイントポイントで見せていくのも巧い。ミッチにアランのことを語るシーン、兵隊たちがトラックに「ひなぎくのようにつみとられていく」思い出を語るシーン、圧巻でした。

カトリーナ被害で廃墟になった遊園地をモチーフにした島次郎さんの舞台美術もすごくよかった、入場した途端わあっとアガったよー。ブランチとミッチがデートで出掛けた場所が、思い出とともに朽ちていったかのよう。そのセットの上で、クラウンのような仮面を被り演奏する小曽根真さんのピアノも素晴らしかったなー。ブランチの幻聴であるポルカにディスコードを交えて曲調を狂わせていく。効果音の配置も絶妙で、電車の通過音が移動したりねこがよく鳴いたり、なんかもーブランチでなくとも心がざわざわして落ち着かない。この作品、つくづく音を観る芝居だなあと思った…。

高畑さんがカーテンコールで見せた表情が印象的だった。ブランチを演じきった顔、座長としての顔。真摯な表情で拍手に応え、最後の最後にぽろっと笑顔が出た。高畑さんが看護師役の頃からずっと応援してきたのかな、と思わせられる彼女と同年代らしき男性ファンが何人もスタオベしていて、そこにもジーンときたなー。そういう関係って素敵だ。隣席が懐中時計+オペラグラス持参のおじさまだったんだけど、ブランチがミッチにアランの話するところでさめざめ泣き出していた。いくつになっても感動出来るっていい…そういうのも含めて、豊かな観劇体験が出来たなあと嬉しかったです。

幕が下りてすぐに再演してほしい、高畑さんのブランチにまた会いたいなと思いました。

そうそう、パンフレットの『日本での上演記録』頁に、ZAZOUS THEATERの『銀龍草』が作品変更の経緯とともに紹介されていたのが嬉しかったなー。編集の大堀さんありがとー(涙)。



2011年12月18日(日)
『ピカレスク・ホテル』

『ピカレスク・ホテル』@赤坂RED/THEATER

17年振りの『ピカレスク・ホテル』!ぎやーん嬉しい!『ピカレスク・ホテル』とは何かと言うと、1991〜1994年にプラチナ・ペーパーズが今はなき新宿THEATER/TOPSで上演していたシリーズ。舞台はホテルの一室、男女のふたり芝居二本立て。音楽はピアノの生演奏。受付にはイケメンのベルボーイ(ああっ当時イケメンなんて言葉もなかったよ!)がおり、席に案内してくれる。これTOPSが狭い+開演時間が近くなるとどどっと入場者が増えてしまい、いちいち案内してると開演時間に間に合わなくなるので途中から半券切るだけになっちゃった(笑)のもいい思い出です。

脚本は初期は全て堤泰之さんでしたが、途中からゲストを招くようになりました。演出は全て堤さん。思えばその頃の堤さんは四本立ての『ラフカット』も全作脚本演出していたし(追記:失礼!全作手掛けていたのは演出のみでした。それでもすごいが…)(これも後に「流石にもう無理!」となりゲストを迎えるようになりましたが)多作でしたね。しかもどれもクオリティが高かった。切れ味鋭く登場人物の心の機微を描く、上質の短〜中編を数々生み出している方です。

今回のゲスト作家は中津留章仁さん。演出もご本人でした。中津留さんのお名前は新聞記事(・asahi.com『震災・原発すぐ反応〈回顧2011・演劇〉』)で見たばかりで、丁度気になっていたところ。公演前のインタヴューによると(・観劇予報『いよいよ開幕!「ピカレスク・ホテル」演出家対談』)先輩から「クリスマスシーズンだから心温まるものに」しろとプレッシャーをかけられている(笑)。

と言う訳で、新宿から赤坂にお引っ越ししたピカレスク・ホテル。RED/THEATERは実際のホテル(赤坂グランベルホテル)の地下にある劇場で、おおっいい転居先ではないの。ベルボーイ(いたー!)に半券に切ってもらい入場すると、小林洋さんのピアノリハが始まっていました。贅沢な客入れ。ベルボーイが宿泊客の荷物を部屋に運び込み、開幕です。堤さんの『リボン、ちゃんと結びなさい』と中津留さんの『男か、女か、』、45分ずつの計90分。

いーやーぴーとさんの真似しちゃうとまさに盤石の面白さ、揺らがないわー。45分で登場人物の心境と立場が入れ替わっていくさまをスリリングに見せつつ笑いも満載。演者の巧さとリレーションシップも多大に貢献しています、キャスティングの妙。これらはどちらにも共通。そしてホテルの一室、男女ふたりきり、と言うある種セクシュアルなシチュエーションをどう見せるか。

堤さんはエロティックな男女関係を、中津留さんは結婚と言うテーマを提示。おかやまはじめさんを最終的に屈服させる内田慈さんが素晴らしかったー!てか知らず知らずの間に追い詰められていくおかやまさんの見せる男の弱さも見事。あと内田さん、アクビちゃんに似てる(笑)かわいい。長谷川朝晴さんはヲタ気質を男のロマンへと巧みに変換。一歩間違えるとうわちょっとこのひと危ない、となってもおかしくない人物なんですが、長谷川さんが演じると不思議ちゃんでも社会の一員としてやってけるんだぜ!みたいな…バランスのとりかたが上手いなー。江口のりこさんは不思議ちゃんを通り越してもはや宇宙人(これはストーリーにも関係してくる)…すごすぎた、コメディエンヌっぷりを堪能させて頂きました。声がまたいいのよー、だいすき。そんなふたりが揃うと、ああいるよね宇宙人、とフツーに納得させられてしまう。心温まったよ中津留さん!

いやもう楽しかった…いい年末。チラシには「新しい『ピカレスク・ホテル』シリーズ、スタートします」とあったので、また公演があるのを楽しみにしています。



2011年12月17日(土)
『ルート99』

さいたまゴールド・シアター『ルート99』@彩の国さいたま芸術劇場 小ホール

ううむ、ゴールド・シアターハズレないわ…素晴らしかった。岩松さんもおっかなすごいわ。岩松さんの作品、最近戦争について書くことが多かった様子のここ数本を見逃していたので、今のモードはこうなのかといろいろ考えるところもあった。そしてそれは、岩松さんの厳しさの端々から垣間見える、対象への愛情をも感じるものだった。若者の思いに寄り添い、年長者へ敬意を払う。「常に戦前としての戦後を用意する」戦争への静かな怒り。当然岩松さんなので戦争反対とか声高に叫ぶものではなく、その状況におかれた生活者の日々を描く。一触即発の人間関係、コップに張られた水の表面張力のような状況を描くのが得意なひとだが、それを戦争に適用すると、語弊があるかも知れないがこんなにもしっくりくるのかと驚きもした。

外国の軍用基地がある特殊な土地に暮らすひとびとは、籠のなかの鳥のようでもある。鳥が籠から飛び立つとき、彼らはどこ迄生き延びるか。一幕終盤のあの台詞を、劇団最年長の重本さんに用意したところがもう岩松さんの恐ろしさ。完璧に憶えてはいないがニュアンスとしては、「移動するときには、その本人に覚悟が出来ている。だから動く、それで命を落とすことになっても。私は移動することが出来ない、身体が既に動かないのだから。それは幸せなことだ。覚悟しなくてもいい」、と言ったようなことだ。もう動けないので受け身でいるしかない。

しかしその台詞を重本さんが口にすることで、その恐ろしさが感動に変換される。覚悟しなくてもいいと言うが、重本さん演じるミラにはあるがままを受け入れる覚悟がある。ゴールドシアターならではのマジックだ。この土地に生き、この土地で死ぬ人物の見る鳥の姿。岩松さんは鳥をある種の象徴として登場させることが多い、そこには愛憎が滲み出ていて微笑ましい。岩松さんの芝居で鳥の話出てくるとせつなくてにっこりしちゃうな。

岩松さんならではのユーモア溢れる言葉も多く(「よ、よんく……!」に大ウケ)、それを楽しみ乍ら格闘する演者と蜷川さんたちの余裕も感じる。そう、余裕がある。劇団員と演出家がもめるシーンや若者をからかうシーンは、おばちゃんたちのかしましさがもうすっごい鬱陶しい…このパワーは歳とらんとゲット出来んよ、見習うべきなのかどうなのか(笑)。ネクストシアターの役者も参加しているが、彼らとの対比も面白く観られる。小ホールの機構を存分に利用し(何せ岩松さんの大好きな階段もある!)、舞台の奥行き、客席上の足場も使う。彼らはゆっくり歩き、ゆっくり階段をのぼりおりする。座布団に座る姿は、正座しているときの方が楽、とすら見える身体がそこにある。そのゆったりした身体に即しているからだろうか、3時間30分の上演時間が全く長く感じられないのだ。勿論そこには岩松さんの話運びの巧さと(季節柄ぴったりな『忠臣蔵』も盛り込んできた!)、それを区画整理する蜷川さんの手腕もあるのだと思うが。せつなく豊潤な時間を過ごせました。

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■クリスマスケーキやオードブルも予約受付中だった
『ザ・ショウ・マスト・ゴー・オン』のときはすぐ駅に向かってしまい、さい芸のどの辺りがリニューアルしたか判らなかったので今回早めに来て劇場をうろっとしました。外観では変化ないように見えましたが、カフェペペロネのレイアウトがちょっと変わってたかな。そこでおひるごはんを食べたー、相変わらずうまかったー。さい芸はクリスマス仕様で、夜になったらイルミネーションの他にキャンドルも飾られてて綺麗でした

■ガレリアでは
ゴールド・シアターの写真展をやっていました。アラーキーの撮影した劇団員の写真もあり格好よかった。各作品への寄稿文もパネル展示されており、岩井秀人さんのエッセイも顔写真付きであってニヤニヤした…依頼された文字数大幅にオーバーしたんでカットされまくったってやつ(笑)このテキスト好きなんだよ……全文はここで読めます↓
・【エッセイ】さいたまゴールド・シアター第4回公演『聖地』――ハイバイ 岩井秀人
あー『聖地』また観たいなあ、再演してくれないかなあ

■てか
与野本町の駅周辺がリニューアルしててヒィとなった。ガチャパン売ってたパン屋さんがなくなってた(泣)



2011年12月15日(木)
『深呼吸する惑星』

第三舞台 封印解除&解散公演『深呼吸する惑星』@紀伊國屋ホール

開演20分前程に到着し、ロビーに鴻上さんがいるのを確認し、物販でパンフレットとトランプを買い、置きチラシ類をひととおり見て劇場内に入った途端「More Than This」が流れ出して狼狽。ちょ、心の準備が…気をしっかり持て……。ごあいさつを読む。折り込みチラシを眺める。出演者や演出家が次に手掛ける作品のチラシも入っている。姉が来たので話などして、敢えて気が散ることをする。思えば第三舞台も夢の遊眠社も、ひとあし早く上京していた姉から話を聞かされたものでした。

リピートの予定はなし、一回こっきり。細かい小ネタ(絶対あるだろう)もなるべく見逃したくないので、泣いてる暇はないわよー。と思っていたけど、あのオープニングでもうドーンと。いやホント遅刻厳禁ですわ。そしてこの幕開けのシチュエーションにはつい『東京サンシャインボーイズの罠』を思い出した。彼らも礼服をすんなり着こなす年齢になったのだ。別れのときが来た。

しかしその後は終盤迄泣かずに観られたよ。完全にネタバレシャットアウトしていたので、ギャーとなることも多々ありそういうところも楽しかったです。本当に楽しかった。映像に出て来たあのふたり、役者たちのあの動き、登場人物の名前や関係性、さまざまなことが思い出される。舞台上に立っていないひとたちのことも思い出す。

個人的に「うわあ、第三舞台だ!今私は第三舞台を観ている!」と実感したのは、ヘンなところだけど筒井さんのパンプスに透明のビニールテープ(多分)が巻かれてあるのを見たときでした。ダンスの際に脱げないよう固定してあるの。今でこそ透明のビニールストラップってあるけど、当時はなかったものね。それにストラップとはちょっと違って、ぐるりと靴を一周しているのだ。後々劇中にダンスがある公演で見掛けることもあったけど、あの靴の仕込みを初めて見たのは第三舞台だった。

SF。連想される作品があった。それは事象がモチーフとして扱われているだけで、ストーリーの流れは違う。勿論結末も違う。いつも元のなにかがある訳ではないし、今でも全部は判らない。しかし自分も知っている事柄から発想されたものなのかな、と思えるものが舞台に載っていることが嬉しくもあった。私も歳をとり、知っていることも多少は増えている。無駄にこの十年を過ごしてはいなかったのだ、と思えた。第三舞台に再会したときに恥ずかしくない自分でいたいとか、そんな畏まったことを考えてこの十年を過ごした訳ではなかった。それでも生きていれば、全く成長しないと言うことはないのだ。

これ迄の作品に出て来た人物やものごとの面影を端々に感じさせ乍ら、これからのことに目を向ける。とてもとても優しい目線。根っからの悪人はおらず、皆懸命に生きている。そして未来に対して絶望を抱かない。諦めも選ばない。そして、ひとを信じることをやめないでいる。信じるための強さを、自分の弱さを認めることで手に入れる。ひとりで立ち続ける。

興味深かったのは、高橋くんの役をあるイヴェントに参加させようとする辺りの展開。政治的に利用する方向へは行かずに、共生の象徴として喜ばしいことだと思う素直な感覚を、小須田さんの役は持っていた。そこには好意的な笑顔だけがあった。悪意や思惑がない。それによって何かが壊れるかも知れない、涙を流すようなことがあるかも知れない、と言う思いが心の片隅にあったとしても、それを引き受けようとしている笑顔。脚本も演出も、演じたひとたちのありようも。この劇団の資質を表しているような気がした。祖国なき独立戦争を続ける者たちに寄り添い、彼らの涙を拭うハンカチだ。

高橋一生くんを客演に迎えたことは効果的だった。若い世代へのバトン。そして若者の姿のままで時を止めている「彼」への思い。大きな役回りだ。

第三舞台をリアルタイムで観られたのは二十年。全ての作品を観ることは出来なかった。熱狂的なファンに気後れしていた自覚もある。しかし彼らはそんな一観客に、最後の公演を観る機会をくれた。この二十年間をどうにかくぐり抜け、あの頃はバカだったねえ、でも若いなりに真剣で必死だったんだ、無駄なことじゃなかったんだと笑い合える場を、第三舞台は最後に用意してくれた。そのことにただただ感謝します。紀伊國屋ホールが残っていたことにも。有難うございました。第三舞台に会えてよかった。

帰宅したらバッグからキリアスの花弁が出てきた。おみやげだ。舞台を観るのはこれで最後ですが、大千秋楽ライブビューイングには是非参加したいです。



2011年12月14日(水)
遠くは近い

矢野さん、zAkさん、U-zhaan、データをサルベージした仲間たち。作品を世に出してくれて有難う。

ハラカミくん、本当に有難う。ずっとずっと聴いていきます。



2011年12月13日(火)
『強制コント大全』

びわ湖商業スワンボート部『強制コント大全』@ザ・スズナリ

キチガイ役者を多数輩出してきた山の手事情社。初代キチガイ成志さんが退団した後誰がそれを継ぐのか?と言うところ、このふたりがいた訳ですヨ!柳岡香里さんと清水宏さん、そのふたりが久々に相見えるとなればそりゃ行きますヨ!もうこの笑いジワどうしてくれる…この乾燥の季節に!こんな!拷問みたいな!コントを!勘弁して!!!笑い過ぎて過呼吸になりそうだった。終わった後すごいおなか空いた。おいしいごはんを食べて帰宅後は丁寧に保湿のお手入れしたわよ!お互い歳とりましたわね!

ふたりが揃うの観たのっていつ以来だっけか…山の手だと『home』、じてキンだと『蠅取り紙』か?清水さんのサタデーナイトライブに柳岡さんがゲストで出たりはしていたようですが、それは行けてないので。op含めコント8本で構成。うち強制コントは3本。強制コントとはなんぞ、と言う方にご紹介。被ってるけど両方張っちゃう。

びわ湖商業スワンボート部「強制コント大全」PR at スズナリ


びわ湖商業スワンボート部「強制コント大全」


要は柳岡先輩に言われたことはそれがどんな無茶ブリであろうとも全て再現しなければならない、と言うやつです。衣裳は勿論ジャージです。アルトの声でクールにそして残酷に次々と無理難題を繰り出す柳岡先輩に、汗や涙役者汁その他もろもろをまき散らし、清水さんが全力で応える。今回はそれに瀧川さんも加わり右往左往です。そりゃもう柳岡先輩の格好よさが浮き彫りですよ!あーもーちょーかっこええ、柳岡さん!素敵!ぽわーんとなった!

ゲストに入江雅人さんと矢野デイビットさん。あのテンション清水にあくまでもフラットに対応する入江さん、持ち味全開です。ぶっつけコントもあったんですが、二日目だったからそんなぶっつけでもない、と自分でつっこんでおられました、あくまでフラットに。あーかっこええ。矢野さんはボクサーからちっちゃなこども迄幅広く演じており、終始弱気な子な役回り。コワモテ(宣美の彼ですよ!ゲストなのにチラシの表面彼だけって言う・笑)とのギャップがすごい。

通常のコントでは『ウルトラマンエイジ、実家に帰る』が面白かった…もう、なごむ……「お姉ちゃんに手をあげるなんて!」が「お姉ちゃんにビームを出すなんて!」になる世界。それが繰り広げられるのが和室、こたつ、卓上にはすきやき鍋、おとうさんははんてんにももひき。そして泣くとガラモンみたいな顔になると指摘される柳岡さん……悲喜こもごも。『スワンボート日本代表引退記者会見』もよかったなー、柳岡さんと清水さんで瀧川さんを脱線質問攻めにし、本意ではない答えを引きずり出す鬼会見。

それにしても今でもあのテンションを維持出来る清水さん、やっぱりどっかおかしい……二日間の公演だったのですが「やっぱり没ネタもやりたい!」と言うことで、急遽二日目はマチネに追加公演があったんですよ。てことは、この日は二回上演だった訳で……それであのテンション。前説込みのop(本人「これは前説ではなくもう本編にジワジワ繋がっているのだ、こうしてゆる〜く始まるのだ」と仰ってましたが・笑)のためだけにオバチャンコスプレをする手の抜かなさも特筆すべきところです。おかしい、キチガイだ(笑)。最高だ。

その前説で気付いたけど、そーだわスズナリって下手側にも非常口あるわ(笑)避難経路については以前からずっとあるアナウンスだけど、それが「地震があった場合」と特定されるようになったのは春以降ですね。

あーもー楽しかったー。と言えば、今週観る芝居、全て90年代から馴染みのあるものばかりなんです。こうしてまた会えてすごく嬉しいよ!



2011年12月11日(日)
『今年は2人でさとがえるツアー 〜Get Together〜』

矢野顕子×上原ひろみ『今年は2人でさとがえるツアー 〜Get Together〜』@NHKホール

い〜や〜、今も呆然としていて何から書いていいのやらと言う感じなのですが……。休憩ありの二部構成、客電がつき終了のアナウンスが流れてもダブルアンコールの歓声と拍手がやまず、終わってみれば2時間50分の長さしかも内容もちょう濃密!一音たりとも聴き逃せない程なので、聴いてるだけのこちらもへとへとになりました。てかやのさんがあんなにぐったりなってるのも初めて見たよ。集中力もだけど体力も要るわ。てか集中力を維持するための体力が要るのだわ。そういう意味では、上原さんが歳をとったらどんなピアノを弾くようになるのかな、それを今後聴いていけるのも楽しみだなあなんて思いました。

ふたりの公式での初録音かな、『はじめてのやのあきこ』収録「そこのアイロンに告ぐ」でスタート(わーい)。矢野さんと上原さんの音を聴き分けづらくあたふた(自分が)。上原さんのピアノは音数が多い+タッチが強いので、矢野さんの音、ど、どれ!?てなくらいでした。ヴォーカルも埋もれ気味。鏡がプレイヤーの頭上一枚ずつと中央の計三枚つられており、それぞれのパッセージが見られるような配慮(美術としても絶妙!)があったので、それをたよりにしばらく矢野さんの音を探す。CDで聴き慣れてる曲ですらこうなのか…こ、これからどうする(笑)序盤はそれで精一杯でした。

そういえば休憩時間、上原さんのピアノだけ調律師さんが入ってた。プリペアドな演奏もしていたし、やっぱりタッチが強いから、一時間ちょっと弾くくらいでもチューニングが動くのかな。

PAの調整もあったのかこちらに慣れが出てきたか、だんだん区別がつくようになってくると、お互いの癖と言うか得意のコード運び、リフ、リズム感等が聴きとれるようになってくる。これは面白かった!上原さんの演奏を生で聴くのは初めてで作品も網羅していないのですが、矢野さんのこれ!と言う節回しやフレーズはピピン!と来ます。思えばもう30年近くも聴いているものね……。基本的には矢野さんは軽やかなパッセージと間(ブレーキ、つんのめりも含めた)を使った独特なリズムがキモで、今回はその間を上原さんのフレーズで埋め尽くしていく感じ。上原さんのコード感は常に動いていて、和音でと言うより連符で移行する印象。で、その移動中にスタンダードなジャズナンバーのフレーズもどんどん織り込んでいく。このコードはあの曲と同じだな、あのフレーズ入れられる、入れちゃおう!的なコード別の引き出しをすんごい沢山持ってそうな感じ。一曲聴いてても三〜四曲、いやもっと?くらいの要素が入っている感じでした。

『Get Together -LIVE IN TOKYO-』からの曲をメインに、各々のソロコーナーもあり。『Get Together』は9月に行われたライヴレコーディングですが、そこからもまたアレンジ等が変わっていました。やはり曲はいきものだ…特にこのふたりにかかると……。どの曲もすごかったんだが、既存の曲で大好きな「CHILDREN IN THE SUMMER」のリアレンジが見事でどーどー泣いた。『Get Together』で聴いてはいたのだが、これはたまらなかった……。もともとは『LOVE IS HERE』収録の曲で、ホーンアレンジが素晴らしいんです。それが二台のピアノと唄で、こういうふうに生まれ変わるのかと!過ぎ行く夏を追いかけて泣くこどもの唄を真冬に聴けた、と言う不思議な感覚も含め、個人的にはここがハイライト。この辺りになってくるともう涙腺がバカになっており、顔がかぴかぴでしたよ。ソロコーナーの矢野さん「しあわせなバカタレ」、上原さん「Cape Cod Chips」も視界がぼやけっぱなしで、ヴィジュアルの記憶があまりない(笑)。

いやそれにしても「しあわせなバカタレ」は激烈だった…絶対やるだろう、落ち着いて聴こう!と覚悟していたのに、震えてしまって歯が鳴りましたマジで。鳥肌もたちっぱなしで、え、これ悪寒じゃないよね、今風邪ひく訳には…と思った程でしたよ。コンサートが終わったら収まったのでやはり悪寒ではなかったよ……。

曲間はおふたりともハアハア言ってるような印象で、汗を拭いたりドリンク飲んだり。「ちょっと休ませて…」「私はナマケモノだから」なんて矢野さん仰ってたけど、いやいやこれホントハードですよ、ナマケモノとかよく言うよ!しかしこれはずっとは続けられないよなあとも思いました、マジで身体がもたないよ。アンコールで出てきた矢野さんが「裏でやのが倒れて、ひろみちゃんに『しっかりして!』なんて言われてると思ったんじゃない?」と言ってドッとウケたけどシャレにならん!またおふたりのコラボがあることを楽しみにしていますが、すぐに、でなくてもいい。そんな贅沢言えない!そして今回のツアー、無事に終えられますように。本編終了時にガッツポーズをし、腕を高くあげたおふたりは達成感に溢れた表情をしておりました。

ダブルアンコールに応えて、最後に演奏されたのは矢野さんの歌(スタンドマイク)、上原さんのピアノの「Green Tea Farm」。ピアノバトルな側面が確かに強いライヴでしたが、歌+ピアノだった矢野さんが歌に専念し、各々のエッセンスをぎゅっと詰め込んだようなこの曲を最後に聴けてやっとホッとした感じでした。矢野さんが歌だけ、ってのは本編でも一曲あったけど、このときはまだ緊迫感に満ちていたのでな……。

全てが終わり、興奮冷めやらぬホールに静かに流れ出したのはyanokamiのナンバー。ハラカミくんの最後の仕事、『遠くは近い』がもうすぐ聴けます。



2011年12月06日(火)
『SYNDICATE NKKH -DCPRG & AMERICAN CLAVE-』

NARUYOSHI KIKUCHI presents『SYNDICATE NKKH -DCPRG & AMERICAN CLAVE-』@Blue Note TOKYO

またと言うかやはり雨。丈青……。DATE COURSE PENTAGON ROYAL GARDEN、ブルーノートに初登場。2ndセットのみ観ました。

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セットリスト(1st、2nd共通だったとのこと)

01. CIRCLE/LINE
02. PLAYMATE AT HANOI
03. CATCH22
04. 構造I
encore
05. DURAN
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ゲストミュージシャン:
(1st:ヨスバニー・テリー)
2nd:ヨスバニー・テリー&リッチー・フローレス from キップ・ハンラハン グループ

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入場してきた姿を見たとき思わず「ガラ、悪っ」と言ってしまったんですが(笑)オラオラ感全開でいらっしゃいました。客席通路からの入場だもんで、ご本人が好きな格闘技と言うかプロレスの選手入場〜、な趣で、高井くんたち舎弟もそれに続いてオラオラ〜、みたいな。バリバリ伝説。しかも西海岸の小僧みたいなファッションです。いやこの格好普段でもしてらっしゃいますが、ブルーノートにそぐわないことそぐわないこと(笑)おまっ、こないだのリキッドはバリッとスーツでブルーノートはこれかい! 研太さんはちょい崩しのフォーマルで素敵にキメておると言うのに! そして類家くんはマイペースだと言うのがよく判るわ…いつでもどこでも安定してるわ……。

そんな訳でAKB48歳は反抗期に入り、しかし恐ろしく場を読む能力が高いのでとてもガラが悪いのに行儀がいいと言うアンビヴァレンスっぷりでした。ブルーノートでDCPRGとか、無理! って言ったけど、出来るもんネー! 見たか高見! みたいな(笑)。ここらへんもプロレスのマイクパフォーマンスの趣があります。

ホントのところは、フロア騒然、飛び散るワイン、割れるグラス、そのグラスを踏み散らかして踊るクラウド、大慌てのレストランスタッフ、と言う光景を夢想したのかも知れない。私はした。でもその先には、「そうなる筈ではない場所が破壊された」光景も拡がる訳です。後片付けをする悲しそうなフロアスタッフの顔迄もが夢想される。これって戦争のそれと同じではないの。基本的にひとを怒らせるのはともかく悲しませるのは本意ではないと言うひとなのではないかなー。優しいと言うよりやっぱり筋を通す、と言う意味で。水に沈めて苦しむひとの顔は見たいかも知れないが。それは性的嗜好です。

あとやっぱお店の子だから……。ご実家のお店ではヤクザの喧嘩とかもあったようですが、割れた食器やひっくり返された食卓を片付けるご両親の姿も見ていただろうし。お手伝いも喜んでしていた子だそうなので、やっぱり悲しいなーとか思うんではないかしら。

とまあそんな心理分析みたいなことをしてもねえ。このひとは奥が深過ぎるのでな…だいたいこちらが知ってるこのひとの話は、殆ど本人が話したものだからどこ迄がフカシかは判らない訳ですし(そういう意味では先日の夜電波で、お兄さまの秀行氏からいろいろ間違いを指摘されていたのは面白かった。まず年齢差から間違っている・笑)。

こういうときは「この双子座のAB型の左利きめが!」で片付けたくなりますね(笑)。いやしかし10月のリキッドがあまりにも濃密で不穏だったので、正直ホッとした部分もあった。対処の仕方は本人がいちばん判っているのでしょう。この流れには大いなる設計が施されていて、それが理解されるのは30年後、かも知れないしねー。いやでも身体にだけは気をつけてくれ…ホント……。

とまあ好き勝手書いてますが、松尾さんのこのツイート読んだとき「わわわわわわかる!」と心のなかで叫んだものです。いやホント菊地さんのことだいすきーなんですよ。ホントですよ。おちょくってるのではない! すごく尊敬している!

それはともかく。ブルーノートではブルーノートでしか観られないものが観られてよかったですよ!70分セット(とアナウンスされていたが実際90分はやってたかと)のなかで、1曲1曲をステージ上でどうやって構成/編集していくのか、リアルタイムで観ていけたのはとても面白かった。各パートへのキュー出し、ソロイストへのいきなり振り(笑・研太さんも坪口さんも「えっ、今俺!?」てなってるところがあった)からもその場その場で楽曲をコンパクト化している箇所があるのが見てとれた。自分の席からは坪口さんの音が潰れがちで、田中ちゃん丈青sxの3人は地音含めドカンと聴こえたのでバランスはイマイチでしたが、演奏もキッチリしていたので楽曲の構造/展開が分かりやすかった(聴き取りやすかった)のである意味勉強になったと言うか。「あ、今なまった!」とか、リズムの噛み合わせが明瞭に聴こえた。一度こうやってシャンと聴いて「ここからがこうなってるんだー」と言うのを頭に入れておくと、以降の楽しみが増える感じがしました。次回のスタジオコーストではバカ踊りさせて頂きます。

それにしてもアンコールの導入部分、VS リロイ・ジョーンズで遂に田中ちゃんがソロを! ありがとーきくちさん! このときの田中ちゃんは本日の修行終了〜! てな感じで楽しそうに見えたわー(いや修行っぷりも萌えるけどな←えっ)、こっちもニコニコでしたよ。あとヨスバニー・テリー(若干リバウンドしたようなのは気のせいですか)が加わった際の研太さんのパートリーダーっぷりを観られたのが楽しかった(微笑)。と言えば、テリーがいることもあり今回高井くんがおとなしいなあ、研太さんとテリーを窺ってる感じだなあと思っていたら、アンコールで菊地さんが彼にソロを振ったのも面白かった。アリガスにも回したし、「DURAN」がペン大組若手衆の解放区みたくなってて、やっぱ菊地さんてこういうとこ先生気質だわと思いました。

新章は「CIRCLE/LINE」開け、「DURAN」〆で続いてるかな?「CIRCLE/LINE」はイントロはまんま菊地雅章ver.で、アウトロはCDJランディングと固まったようです。「HARD CORE PEACE」と「MIRROR BALLS」は当分聴くことはないかな…しかしスタジオコーストで「MIRROR BALLS」をやらない手はないだろう、と秘かに今から思っています。



2011年12月04日(日)
『狂言劇場 その七』Aプロ

『狂言劇場 その七』@世田谷パブリックシアター

Aプロ、小舞『暁』『七つ子』『鮒』/『棒縛』/『MANSAIボレロ』。

『棒縛』のなかでいい具合に酔っ払った太郎冠者と次郎冠者がゴキゲンで舞う『暁』『七つ子』。まず通常の?状態の小舞のみを見せ、その後『棒縛』を上演、と言うプログラムが親切で楽しかったー、続けて観たのは初めて。拘束された状態の『棒縛』での舞は、元からどう変化しているのかが判り、面白かったです。

それにしても本当に太郎冠者と次郎冠者はアホの子だ…何度観てもそう思う(笑)アホで気のいい子だねー。

さて初演『MANSAIボレロ』。もともとは万作さんがベジャール振付の『ボレロ』を踊るショナ・ミルクに感銘を受けたところから始まるそうで、二代に渡っての思いが実現したことになるんですね。はじまりは酒場のテーブル上で踊る踊り子に男たちがひきよせられていく…と言う設定の『ボレロ』ですが、その後上演が重ねられ、今では男性も女性も踊っているものです。ベジャールのものも、映画にもなったジョルジュ・ドンが有名ですし、先月の来日公演ではシルヴィ・ギエムが踊りました。今回はこの作品に日本の解釈を加える――古事記の『アマノウズメ伝説』、狂言の舞のなかでも異色である『三番叟』を重ね合わせたものだそうです。

パンフレットで萬斎さんが「(踊り手のジェンダーについて)最後の最後まで疑い、悩み続ける」と仰っていたのですが、これは女形と言う様式がある日本の古典芸能ならではの発想。どちらの性であっても萬斎さんは踊れる訳です。私が観たのは最終日でしたが、女性的な妖艶さをまとい乍らも律動の力強さは男性のもの、と言う印象を受けました。帰宅後検索してみると、装束からして女性がまとうもの、男性がまとうものを混在させる等日々変化していたようです。

「んん?」となったのは、「踏む」と言う行為によって曲に音が加わること。そしてそれは、例えばギターを演奏する際に発生するフィンガーノイズのような「不可抗力」「味」と言ったものではなく、意識して加えられた音だと言うこと。足拍子がリズム音として加えられているのです。足拍子は『三番叟』の特徴とも言えるものだし、重要な要素なのでしょう。しかしバレエの『ボレロ』では着地の音を感じさせないことが必須。前述のベジャールの『ボレロ』を踊るダンサーはトウシューズを履かず、着地音を極力発生させません。狂言の解釈で観る心構えでしたが、個人的には違和感を感じてしまい、「こういうもの」と納得出来るのに少し時間がかかりました。『ボレロ』が本来バレエ音楽なので、そこに囚われてしまったのかも知れません。振袖部分を巻き上げる所作からも衣擦れ音が起こる。これも意識的に発生させているものですね。

踊りそのものは素晴らしく、緊迫感と気迫に満ちたものでした。もう釘付け。完全暗転からひとつぶの光が浮かび上がり拡がっていく幕開けや、奈落へ飛び降りたかのように見せる跳躍と暗転のタイミングが絶妙だった大詰には鳥肌がたちました。何度もカーテンコールが沸き起こる高揚感も『ボレロ』ならでは。萬斎さんいい顔してらっしゃいました。今後舞う側の解釈も変化していきそうなので、継続的に上演してほしいです。また観たい!