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2010年05月30日(日)
熊谷和徳『WeLcoMe To My TAP WORLD!』

熊谷和徳『WeLcoMe To My TAP WORLD!』@赤坂BLITZ

いやーこれはよかった!タップとインプロ。演奏はKey:菱山正太、Tp:タブゾンビ(SOIL &“PIMP”SESSIONS)、B:池田潔(SLEEPWALKER)、Drs:みどりん(SOIL &“PIMP”SESSIONS)と言う布陣。おおっ好みのメンツ!どういう経緯で?と思ったら、10年程前N.Y.から帰国した熊谷さんがジャズクラブに板を持ち込んで、夜毎セッションしていた旧友たちとのこと。うわーそうだったのか、知らなかった。

プログラムには8曲クレジット。オリジナル曲と、ウェイン・ショーターやスティング等のカヴァーで構成。勝手知ったると言う感じで、まるで会話をしているかのように滑らかに展開していきます。熊谷さんがヴォーカルのバンドと言う風情。コンダクター的な役割もなくもないけど、皆が熊谷さんに合わせると言う感じでもなく、お互いのリズム、リフにどう乗るか、そこからどう走るか、停滞なく心地よい緊張感が持続するタイトな2時間弱。

熊谷さんがタップでリズムを刻むので、みどりんとどういうふうに絡むのかなーと思っていたら、DrsとPercと言えばいいのか、面白い掛け合いになっていました。熊谷さんの低音のタップは激しいリズムの時でもどこか暖かみがある。板が文字通り木の板だしね。スティック、マレット、素手でドラムとサンプリングパッドを駆使したみどりんのソロもよかったなあ。そしてタブゾンビと菱山さんの相性がよかったようにも感じた…タブくんは丈青と組んだのばかり(=ソイル)観ているので新鮮。そして座奏のタブくんてのも新鮮。

しかし熊谷さんがタブくんとみどりんに「CD返して。クラッシュとマイルス、あとルーツ」と言ったのにはウケた。逆じゃないのか…てかマイルスなら自分で買いなさいよタブくん(笑)。ふたりは美ぎ島MUSIC CONVENTION IN MIYAKO ISLAND 2010に出演していたため宮古島から当日入りだったそうで、「ちゃんと来てくれてホッとした」と熊谷さん。ちょっと開演が遅れたのはこのせいかな?

ファラオ・サンダースの「Love is Everywhere」でおひらき。「ここがまたスタートだと思っています。これからもまだまだがんばらねば…」と、明るくなったフロア二階を見つめて手を振っていました。その先には赤ちゃんが。お子さんかな(カヒミがいたかは知らない)。夏には東京フィルと共演。いろいろ楽しみです。



2010年05月22日(土)
『鉄男 THE BULLET MAN』とか

『鉄男 THE BULLET MAN』@シネマライズ 2F

ラーメンで言えば、全部入りでした。塚本晋也全部入り。塚本監督のフィルモグラフィ全部をブチ込んだ最新作でした。あなた(誰よ)の隣に座って「ここ!ここが『ヴィタール』!」「ほらほらここは『鉄男II』!」と耳元で叫びたいくらいだが映画館でそんなことをしていたらつまみ出されてしまう。それ以前にとても気味がわるい。

例えばライド家の地下室は『HAZE』の意匠。日本家屋風の板張りの床は『双生児』、天井や壁、床を虫のように素早く走り回るさまは『ヒルコ 妖怪ハンター』『悪夢探偵』。トモロヲさんの役は『鉄男II』のコーヒーを飲む男のパロディでもある。アンソニーが美津枝のボディと対面するシーン(ファスナーを下ろすと魂の抜け殻の顔が現れる)は『ヴィタール』、ビルとビルの隙間から見える風景、「やつ」が自分の身体を誇示するシーンは『BULLET BALLET』。パート毎に分かれるブルーとイエローのカラー、登場人物の心理によって異なる色調に映る血液、黒と言う色の美しさ、等々。そして皮膚の湿り気、脚フェチ、自転車愛。徹底したアナログ手法。

とは言うものの、得意のコマ撮りを使っていない。ストーリーを貫くテーマも、20年前とは少し違う。いや、違うと言うよりは一歩踏み込んだと言うべきか。都市と肉体、容れ物としての身体、意識の行方、命への眼差し。そして9.11以降の「戦争をしたがっている、待っているひとたちがいる」と言った、はっきりと姿を現さないものに対して感じる不穏な空気、対象が曖昧な恐怖。折に触れて怖がりだと言う監督が、今こんな映画を撮ったことは至極納得出来ます。

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・このインタヴューから引用
僕は実をいうとあまりテレビを観ないし、夜中の討論番組も観ないんですけれど、ちょっとテレビをつけて人々の発言を聞いていると、戦争を体験している人がいなくなるのを手ぐすね引いて待っている人達がいるという感じがしたんです。
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20年の間にこれらの道を辿った鉄男は、破壊への憧憬を前に立ちすくむ。これは今しか撮れなかった鉄男だ。

そして映画館でこそ、の音。家でこんなん聴けるかい。効果音は勿論、石川忠さんのサントラ(ホント塚本作品と相性いい)を閉鎖的な空間で大音響で聴ける、耳だけでなく全身で音を感じられる至福感。格別です。Nine Inch Nailsが手掛けたエンディングテーマもいい。ちなみにシネマライズの初日初回は「従来6のところを9」のヴォリュームで鳴らしたそうです。舞台挨拶の際、監督が音の大きさについて問うと「まだデカくていい」が断然多く、「もう勘弁して」は監督曰く「28人ですね」(笑)。「じゃあ次回からは9.5で」と言っていました。しかし音量だけじゃなく、他のバランスもいじっているように思うんだけど、ここらへんどうやってるんだろう。音圧は結構なものでした。立川シネマシティでは井出祐昭さんと増旭さんの音響設計で聴ける仕様だそうなので、こちらへも観に行ってみようと思います。本編もだけど、NINの音がここでどう鳴るかも興味がある。

ストーリーは随分解りやすくなっています。説明も多い。アメリカ公開も決まったとのことで、ターゲットをかなり拡げているようにも感じました。しかし「やつ」についてはますます解りづらくなっている感じも。『鉄男II』では素性を明かしてましたもんね。ここらへんは初代の『鉄男』にグッと寄っています。数箇所蛇足と感じるところはあったけど、それは個人の好みかな。特にラストシーン。今後「中で暴れる」彼をどう抱えていくかの解釈に深く関わってくるので、ひっかかりはありました。

いやそれにしても塚本さん、50歳であの少年体型はすごいですね。歳相応の面差しとすごいギャップ。「やつ」の不気味さがよりアップしていました。

そしてやはりあるおかしみ、ふふふふふ。鉄化したアンソニーをゆり子が叩くとお寺の鐘ですか?てなゴ〜ンって音がしたり、ゆり子がアンソニーの鉄をはがしてあげてるシーン(かさぶたか日灼け後みたい・笑)、もうたまらん。深刻なシーンなのに満面の笑みで観てしまったよ。そしてやっぱり自転車!ホント自転車好きだな!

舞台挨拶も観ることが出来ました。塚本監督、エリック、桃生さん、中村さん、ステファン。桃生さん、かわいい!と言うか役とガラッと違う!ハツラツとしたお嬢さんと言う感じで、受け答えもハキハキ。ああ〜んこういう女の子大好き。中村さんはミステリアスな雰囲気そのままで素敵だったー。エリックはエリックだった(笑)いいヤツ!ステファンは通訳を交え、この作品に関わった経緯、参加出来た喜びを話してくれました。そして塚本監督はいつにも増して様子がおかしかった(笑)。やっと公開初日が来た!観客に届けられた!と言う高揚感と安堵感溢れる舞台挨拶。上映終了後、ロビーで見掛けた川原さんが、ホッとしたようないい顔をしていたのが印象的でした。

いやもう楽し過ぎた。あー早くリピートしたいよー。

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『ゼブラーマン ゼブラシティの逆襲』@渋谷TOEI 1
いろいろと気が抜けて寝てしまいました……。しかし数分毎に目が醒めてまだらで観ているのにも関わらず、話の流れが見失うことがなかったのだぞ。これはどうなんだ……。三池さんもクドカンも好きなんだけど…キャストも好きなひとが揃っていたんだけど(何せほうかさんやせっちんさん迄出ている)……ううーん。
それにしても仲里依紗がかわいくてエロくてもう大変だった。仲さんに尽きる。もう仲さん大好き!いやーたまんねー!そして翔兄ィかっこえー!

そういえば『鉄男TBM』の舞台挨拶、三池監督いらしてたと聞きましたが見付けられなかったー。残念。



2010年05月21日(金)
『BULLET BALLET/バレット・バレエ』PREMIERE VERSION

『BULLET BALLET/バレット・バレエ』PREMIERE VERSION@cinema rosa 2

塚本監督の作品は、出来上がったらまず海外の映画祭に出品して、そこでの反応を見乍ら一般公開迄に手を入れていくパターンが常なのですが、この度その海外上映版が日本でも観られる機会が設けられました。しかも、上映館のシネマロサがあるのは、この映画のロケ地だった(乱闘シーン等)池袋!

・『BULLET BALLET/バレット・バレエ』PREMIERE VERSIONについて

11分長いもの。塚本さんはカットマスターで、短く、ソリッドに作品を仕上げます。苦労して撮って思い入れがあるシーンでも、全体の流れに沿わないとなるとばんばん切る。しかし今回機会があって見直したところ、長いのもいいんじゃね?と思ったそうで(笑)公開してみようと言うことになった、と。上映用のフィルムは今回かかる一本しか現存しないそうです。

長いヴァージョンと言っても98分。冗長な感じは全くしないものでした。増えていたり長くなっていたところは、

・なめんじゃねえぞってバスルームで泣くところ
・クラブのシーン
・発砲→爆発→戦争のシークエンス
・銃密造についてのチャット部分
・ヤクザ(井筒さん・笑)が殺されるシークエンス
・その後合田が同じ現場で銃を探しているところを中国人マフィアに見付かって、追い返されるシーン
・合田が千里を探すシーン
・合田、警官、後藤の追いかけっこ
・千里が合田の部屋で遊ぶシーン

この辺りかなー。まるっと足されたシーンは少なく、各シーンがちょっとずつ長くなっていた感じでした。その分合田の心の動きが解りやすくなっていた。おえーんまた観たいー。一週間だけの上映じゃ勿体ない。

千里が合田の部屋で遊ぶシーン大好きー。あの部屋、巣みたいなんだよね。

発砲→爆発→戦争のシークエンスはプログレスヴァージョンでも衝撃的で、音と画面のシンクロの迫力は瞬きするのも惜しかったところ。ここが今回強調されていたのも、合田の銃への執着、妄執に繋がりやすくなっている。多分この時点で、合田は実際に銃を手に入れても、そしてその銃を撃っても生きていることの実感を取り戻せないことに気付いている。それは後藤に銃を向けられた時にも変わらないが、工藤と対峙することによって目覚めさせられる。あるいは、千里とアジトへ向かう道行で。

いやーそれにしても、何度観ても工藤=井川比佐志さんが格好いい。序盤のニコニコしたおじさんの本当の顔はこれだった。いや、ニコニコも本当の顔なんだろうな。ああしてしか生きる道がなかった時代、それを経ての今の穏やかな生活。しかし、元の道にはいつでも戻れる。最後は銃でなく、素手で千里と後藤を痛めつけたことも印象深い。結局あの世にもこの世にも、持っていけるのは自分の身体だけ。

前にも書いた憶えあるけど、これ「おっさんが少女とこういうふうになりたーいって妄想を撮ったようなもんじゃん!」と言われてしょんぼりしたことがあったんだけど(自分が撮った訳でもないのに(笑))、観直す度に思いますよ、「いや、その妄想は観る価値があるね!」塚本監督の作品って、どれもが塚本監督の妄想で、その画面、その音をこうやって見せてもらえることはとても嬉しい。

と言う訳で、『鉄男TBM』前に過去作品をスクリーンで観直すことが出来てよかった。いよいよ明日は初日です。



2010年05月20日(木)
METROFARCE『LIMBO島』『PiPi ZAZOU』『盗賊どもの夜会服』(Deluxe Edition)発売記念ライヴ

METROFARCE『LIMBO島』『PiPi ZAZOU』『盗賊どもの夜会服』(Deluxe Edition)発売記念ライヴ@Shibuya O-WEST

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追記:チケットが上記タイトルだったんでそのまま書いたが、『盗賊どもの夜会服』のリイシュー間に合ってなかったんだった。

3枚同時発売なぞと大風呂敷広げて、到底無理無理とつい数日前に白旗宣言。
『盗賊どもの夜会服』は、もう1枚LIVE盤付けると大言壮語…して音源発掘までには至るもEdit作業には程遠い。そこまで手が回らない。
あたしが3人いたらいい。
降参です。ちょっと延期です。皆さん、そして伊藤社長はじめBridgeの皆さん、ごめんなさい。堪忍な。
あくまで延期、ちゃんと時間をかけていいものにしたいのです。
・『無頼亭日乗』

とのことでした(苦笑)。無理せずのんびりやっておくれ……。
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今月は塚本監督絡みのことばかり書いている…まあおまつりですから。と言う訳で?メトロも縁がありまして。1989年の『鉄男』のイヴェント@芝浦インクにヨタロウさんが出演してるんだよねー。他の出演者は、トモロヲさん、ケラさん、オーケン、泯比沙子さん、いとうせいこうさん。わかるようなわからないような(笑)。まあほら、当時メトロにいたバカボンがかけもちしていたパール兄弟の曲には「鉄カブトの女」ってのもありますし……いやそれどうでもいいか。どうなのか。

そんなメトロも30周年、随分長くやりました。しかしライヴ前のメルマガにヨタロウさんが「松田聖子と同期です」と書いていて、松田聖子のすごさ迄思い知ったり。ちなみに「JAYWALKも30周年だったけど、祝えなかったみたいです」だそうです(黙)。

30年の間にはあれがありこれがあり、あのひとが出て行きこのひとがやってきて、盆暮れにしかライヴをやらないと言われており乍らそれすら守られない時期もあり、このままなくなっちゃうのかな、なんて思ったことも何度もありました。サさんとも話してたけど、このひとたちってやる気出すとうまくいかないと言うか(苦笑)メジャーデビューした途端に三原くんがスターリン高校に転校したりとかね。ベースはこのひとしかありえんだろうってなバカボンが抜けたのも痛かったし(結局その後ベースを加入させることはなく、サポートも呼ばず、GUNちゃんがギターからベースにコンバートするところに落ち着いた)、横川さんとはゴニョゴニョゴニョ、そして玄一さんも離れてしまった。

でもメリィさんが玄一さんの話をふっと出してくれたり、『PiPi ZAZOU』ボーナスDVDのコメンタリー録りでバカボンやチャバネと会った話をしてた。「バカボン呼んでも喋らないし、次第に呑み会みたいになってきて、最後にはGUNとチャバネがケンカしてた。チャバネと次に会うのは10年後だ」だって。おまっ久々に会ったのに何してんだ(笑)。そんなこんなでメリィさんは「10年後またこんなことやれるかって言うともう無理だよね〜」なんて言うし、他にも誰それが病に倒れたとか身体が弱ったとか、暗い話題も出るけれど、そこは歳とっていけばあたりまえのこと。いつかは皆会えなくなるんだし、なら今会えることに感謝しないとなと思いましたよ。

そして、もうメトロと仕事することもないのかも知れないな(ライナーで対談はしてたけど)、と言う横川さんの曲「LIMBO島」「DO THE TARASCON」は今でも定番(やってない時期もあったっけ?思い出せないや)。誰も何も言わないけれど、言いたくもないのかも知れないけど、こうやって過去の曲を大事にしてくれているのは密かに嬉しいことです。ひとの思いなど届かないところ迄曲は行ってしまうものだ。

『LIMBO島』からは全曲演奏、『PiPi ZAZOU』もほぼやったかな。何せ初っ端が「サカモギ・ソング」!!!ヨタロウさん曰く「20数年振りにやった」。外は大降り。メリィさん曰く「ヨタロウの 泣かした女の 涙雨」だそうです、ははは。いっつもネタにされるけど、ホントあめふらしだよねー。雨じゃなかったライヴを思い出せないくらいだよ、毎回毎回……。上野洋子さんと東京子(あずまきょうこ)さん(笑)をゲストに迎えたナンバーもよかったよう。バスガイドのコスプレ(「メトロ」と書かれた手作りの旗も持参)で出てきた東京子さんとヨタロウさんの「東京のバスガール」すごくよかったなー。発車 オーライ 明るく 明るく 走るのよ♪

そうそう、『LIMBO島』は直販で買うのがいちばんいいみたいですよっと。ライヴ会場で買うとシークレットトラックも入ったオマケCDが付きます。この日は予想より随分売れたようで(よかったね)、ライヴ前に物販に行ったら『LIMBO島』も『PiPi ZAZOU』も売り切れてた!ライヴ中ヨタロウさんが「今とりに行ってるから終わったらあるから!どこにとりに行ってるかと言うと、俺んちの玄関(笑)」って言ってた(笑)。

「会場を出たら、星が出てますんで!」とGUNちゃん。GUNちゃんGAIAのTシャツ着てた。メリーさんもえらい古いTシャツ着てたな。ものもちいい(笑)。30th Anniversaryは今後も続くので、楽しみに続報を待ちたいと思います。さまよえる楽隊メトロファルスは神出鬼没、蜃気楼の向こうに現れたらふらふら追いかけていくのみ。



2010年05月19日(水)
塚本晋也お蔵出し/おまけ『映画はこうしてつくられる Vol.5 六月の蛇』(2003年)

2001年秋以降の塚本監督ネタはこの日記を掘ればアホ程出てきます…。自分でも何書いたか検索しないと思い出せん。で、まとまったもので今読むと面白いものはこれかなあ…と、2003年に行われた、ニューシネマワークショップの講座の模様にリンクを張っておきます。塚本監督がどうやって、何を考えて映画を撮っているか、のしっぽがちょっと掴めるのでは。

・『映画はこうしてつくられる Vol.5 六月の蛇』(1)
・『映画はこうしてつくられる Vol.5 六月の蛇』(2)
・『映画はこうしてつくられる Vol.5 六月の蛇』(3)
・『映画はこうしてつくられる Vol.5 六月の蛇』(4)

今読み直してみた。定年を60歳から70歳に延ばしたって言ってた!(忘れてるしと自分ツッコミ)それは嬉しいなあ。あと何本撮れるか。そして『鉄男アメリカ』で稼いで『野火』の資金に充てたいって言ってる(笑)。これは『TSUKAMOTO MIDNIGHT!』で話している「ダメになっちゃった戦争映画」のことですね。監督が今でも絶対撮りたいと言っているプランです。

9.11以降に撮られた『鉄男TBM』、そして撮られるかもしれない(撮ってほしい!)『野火』。どんなものが観られるのだろう。怖くもあり、楽しみでもあり。

と言う訳で、『鉄男 THE BULLET MAN』公開迄あと一日(書いてるのは金曜日)!沢山のひとに観られますように。



2010年05月18日(火)
『鉄男II BODY HAMMER』『玉虫』

『塚本晋也大図鑑「鉄男II BODY HAMMER」「玉虫」』@シアターN渋谷 シアター2

上映前にエリック・ボシックさんによる作品紹介付き。『塚本晋也大図鑑』初日に初めて素のエリックを見たんだけど、いやはやこのひとすごくいいキャラだわ〜。初日、盛り上がるといいなあ。なんかもーエリックを喜ばせたい!(笑)エリックの笑顔が見たいよ!そんなふうに思わせられてしまう好人物。

先代の鉄男たちを「僕の先祖」と言っていたエリック、喋る喋る。だんだん作品紹介と言うより、進行で出てきた川原伸一さんとの漫談みたいな状態に。エリック「TETSUOのDrill chincoがね!」(発音がよすぎて聴き取れない)川原さん「えっ?」エリック「Drill chinco!Drill chinco!」川原さん「あ、ああ!ドリルちんこね!」エリック「そう!Drillちんこー!」みたいな(爆笑)。『鉄男II BODY HAMMER』については、エリック「カワハラ、これ出てる!」川原さん「ああ、そうなんですよ。スキン軍団のひとりで…ぼんやりしている間に巻き込まれちゃって、ぼろぼろになっていって……。今の自分を暗示しているような役です(弱った笑顔)」なんて話してました。だ、大丈夫?『鉄男 THE BULLET MAN』公開初日も目の前、プロモーションやら何やらで激務続きなのでしょう。かなりおつかれのご様子。それなのに上映会場にまめに足を運んでくれて有難い…。『塚本晋也大図鑑』最終日の21日には、監督とエリックが来場して『「鉄男 THE BULLET MAN」プレトーク』が行われます。きっと川原さんも来る!是非観に行ってみてくださいな。

『鉄男II』から上映。14日付のとこに書いたゲリラ撮影のシーン、監督が「店員さんが本当の誘拐かと思って追っかけてくれて、カメラ追い抜いちゃう勢いで」と話していたのですが、注意して観てみると、トモロヲさんが「こども、こどもを」と言ってるのを聞いたWAVEの店員さんがスキンを追っていくのが一瞬映ってる(笑)。ごめいわくをおかけしました…WAVEいい店!なくなっちゃったけど!(泣)他にもゲリラで撮ったんだろうなあってシーン沢山あるよ…(黙)。ここらへん、『塚本晋也読本 SUPER REMIX VERSION』のトモロヲさんのインタヴューでいろいろ語られてて面白いです。これ、『塚本晋也読本 ―普通サイズの巨人』の増補版なんだけどやはり買ってしまった。思うツボです。いやでもその増補部分が濃いーしインタヴューもかなり追加されているのでいいのだ。

『鉄男TBM』はリメイクではなく新作だそうだけど、『鉄男II』を観ていると二重に面白いと思えるのでは。予告編観てるとそんな感じがするー。ちなみに『鉄男TBM』予告編のナレーションってエンケンさんですよね。

『玉虫』は唯一スクリーンでの上映を逃していた塚本作品だったので、今回観られて嬉しかった。『female【フィーメイル】』の中の一本。『Jam Films』シリーズで、5人の女性作家が書き下ろした原作を5人の監督が撮ったコンピレーション映画です。『玉虫』は小池真理子さん原作、22分の短編。一作品につきフィルム一巻分の長さと言うのがルールだったそう。塚本監督がFinal Cut Proでノンリニア編集、完パケ迄手掛けた初めての作品だそうです。

女を美しく撮るのに定評がある塚本監督ですが、いやもうホントそーだよね。キレイに撮るってのとはまた違って、生命力を撮る感じ。石田えりさんの美しさ、妖艶さ、年齢を重ねたことによる身体と表情の深み。魅力が溢れています。ピンクのふわふわのチュチュを着て「渚のシンドバッド」を振り付きで唄うその姿のかわいらしいことと言ったら!そしてここ大事、しっかりエロい!

そして加瀬亮くんもものっそ美しく撮られていた…影によって顔の造形を浮かび上がらせる感じ。いやあ、これはすごくいい……。このひとにしては珍しい役柄です。もうすぐ公開の『アウトレイジ』でも似た職業の役をやっているようですが、『玉虫』の中では「何をやっている仕事」と言うのは明確に話されません。ふたつのシーンから想像するしかない。で、その旅館でのシーンと、女の家に初めて来たときのギャップがすごい。大楽源太さん(!)を撃つ寸前(足で押さえられてジリジリジリの数秒間)の表情も滅多に見られないものでした。小林薫さんも相変わらずの色気ジジイっぷり、絶妙のキャスティング。

塚本監督の撮るセックスシーンって、それは格闘技ですか?てな感じのものが多いのですが(笑)『玉虫』のそれは、映像以外のエロが仕込んであってうわっとなりました。音がエロい。どうエロいかは説明しづらい…あー、この音があったかー!てなもんで。そんなにエロ映画詳しくないんですが(笑・いやホントに)、この音の使い方は私は初めて聴きました。いやあ、すごい…こういう使い方があったか……感心もしてしまったよ。和室じゃないとダメ、畳じゃないとダメ。あの音は。

一枚層を加えて見るものにエロを感じさせると言うのもお得意ですよね。写真、TV映像、ガラス窓の向こう側。22分の作品に塚本汁が凝縮されています。濃い。



2010年05月17日(月)
塚本晋也お蔵出し『TSUKAMOTO MIDNIGHT!』(2001年)

塚本晋也お蔵出し、最終回です。『鉄男III』のプランが二転三転していた頃ですね…“アメリカ映画のふりをした”ってのにかたまりつつある(笑)。監督本人がインタヴューでも話しているように、ハリウッドでのプランは「身体が鉄に変化する」ことに対し明確な理由を求められて大変だったよう。最後には自分たちの手で撮ることにしたとのことですが(配給はアスミックエース)、それでよかったんじゃないかな。不屈のインディー魂、撮りきることが出来て本当によかった。

あと1回おまけがあります。『鉄男 THE BULLET MAN』公開初日前にはアップしたい。

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2001年1月6日
『TSUKAMOTO MIDNIGHT!』@BOX東中野

●『TOKYO FIST/東京フィスト』
●トークイベント(塚本晋也監督、石井聰亙監督、利重剛監督、川原伸一助監督)
●じゃんけんオークション(『鉄男II』トモロヲが着ていたパジャマ、『BULLET BALLET』鳥の死骸模型、きりなちゃんが使ったカミソリ模型、池袋でのケンカシーンでチーマーと達也さんが使った武器セット一式、塚本氏が何かの映画祭の副賞で貰った時計にその場でサインを入れて(塚本氏曰く「『もういらないや〜』ってあげるんじゃないですよ!大掃除したら出てきたからってあげるんじゃないですよ!」))
●『フィルムメーカー』
●甘酒タイム(しょうがつき)
●『鉄男II/TETSUO II BODY HAMMER』
●『ヒルコ/妖怪ハンター』
●『電柱小僧の冒険』

塚本組助監督の川原伸一氏が司会進行。今回は「こたつもなく、先週の反省を活かして(笑)ふつーに」(塚本氏)て事で、ビールを飲みながらののんびりしたトークになりました。途中から利重さんがどんどん酔っ払っていきました(笑)。

川:お三方がこういう場で一堂に会するのは初めてだそうですね。
塚:そうですね、こういうトークショーでは初めてですね。僕と石井さん、とか僕と利重さん、石井さんと利重さんって組み合わせはありましたけど…プライベートでは結構あったんですけどね、3人で話すのって。
川:知り合ったきっかけ等を聞かせて貰えますか?
塚:きっかけっても…いつの間にかって言うか。石井さんとは…日芸の先輩後輩で、ってその頃は知り合いでも何でもなくて僕が石井さんのファンだったんですけど。
石:(笑)
塚:石井さんが映画学科4年の時僕が絵画科1年で。その頃にはもう石井さんはバリバリ映画撮ってて、僕は撮ってなかった…て言うか撮りたくても撮れなくって悶々としてて。食堂とかに石井さんがいると友達が「今石井さん来てるぞ!」つって、わーって見に行って「うっわスッゲエ、本物だよお〜」とか言って。あっあとね、僕が学校で電話かけてる時にね、石井さんが横に電話かけに来てね、「今度の映画で車8台とお、バイク何台壊したいんでえ、手配ヨロシク(巻き舌)」とか言ってて!「うわあ、かっけー!」と思ったりしてたんですよ。とまあ、そんな感じです。
石:(笑)そんな風には言ってないよお。

塚:利重さんとも、まあいつの間にか(笑)今度の映画にも出させて頂きました。
利:『クロエ』ですね。メインキャストで出て貰って。カップルが二組いて、永瀬正敏さんとともさかりえさんのカップルと、塚本さんと松田美由紀さんのカップル。
塚:僕は絵本が大好きな、ちょっとキてる役で。でも僕と松田さんのカップルって組み合わせも…。
利:凄いですよね(笑)終盤10分くらい、塚本さんが大暴れする大芝居をノーカット一発撮りでやったんです。塚本さん、最近沢山出てますよね。
塚:はあ。
石:凄いよねー。しかもうまいよねえ。利重さんもだけど…利重さんは自分が監督してるのには出てるっけ?
利:あー、自分のでは、ちょこっと顔出しで、演技もない程度でならあるけど、メインでは…塚本さん良く出来るね。自分で監督やって演技してって、大変ですよ。他の役者に強く言えなくなっちゃいそうで、「その演技はダメだよお」とか。で、自分は「こんくらいでいいや」って(笑)。
塚:あー、座長公演みたいな感じでね。
利:そうそう。
塚:自分は全然稽古しなくって、「うーん、こんなもんだろ」って(笑)自分で監督して自分で出るってのにはあんまり抵抗ないんだけどな…。あっでもさ、人んとこに呼ばれたら自分が監督とか、全然考えないよね。
利:そう!考えない。
塚:よく「人んとこで出演してる時に、現場を監督の目で見てしまう事はありませんか」って質問されるんだけどね、全然そんな事はない!
利:そうそう、映画監督はね、非常にいい役者ですよ(笑)すんごい素直。「どっか悪いとこなかったですか?何でも言って下さい!」(大笑)
塚:(笑)「何でもします!」ってね。ワガママ言わない。監督にとってはいちばん扱いやすい(笑)すごーい、すなおーな。
利:塚本さんにも出て貰ったし、青ちゃんにも出て貰った。
塚:青ちゃんじゃわからないって(笑)青山真治さんですね。
利:そうそう、もうすぐ『EUREKA』が公開になる青山監督。彼もうまかったなー。
塚:そういや利重さん『EUREKA』に出てるよね、バスジャックの犯人。
利:そうなんですよ、お互いね(笑)あと大島さんにも出て貰った事あるけど…。
塚:大島って、大島渚さん?
利:そう。
石・塚:ひぇー。
利:大島渚さんも、すごい素直だった。
塚:石井さん、出ないですか?
石:いや、僕は…(笑)。

利:実はオファーした事あるんですよね、僕石井さんに。でも丁度その頃石井さん『水の中の八月』を撮ってて、現場を離れられないって事で…残念だったなあ。出たら絶対いいですよ。すんごい存在感あるの。観たいなあ。
塚:もうね、石井さんしか考えられない役をやってほしいですね!…あー、石井さんに是非やってほしい役あったんだけど。いいや、ダメになっちゃったから言っちゃえ、ダメになった映画の。
石:ダメになっちゃったの?何の映画?
塚:戦争映画。お金出してくれるってとこがあったからプロットを見せたら、戦争映画はお金かかるからダメだって。
石:あー、塚本さんの戦争映画!観たかったなあ…残念。もうホンは書けてるの?
塚:いや、まだプロットだけ。いつかはやりたいんだけど…最初は兵隊さんがふたりでダラダラ歩いてるだけって話をやりたくて、それなら戦争シーンいらないし大丈夫だと思ってたんだけど、だんだん戦争映画なら戦争のシーンをやっぱり撮りたくなっちゃって。で、その兵隊さんの役を石井さんに。「肉って喰った事あるか?」ってセリフを(笑)「なぁおまえ〜、肉ってぇ、喰った事あるか〜?」(石井氏の声マネで。また過剰なアフレコを活かしてます…本人の前でなんて事を…(笑))
全員:(笑…っていいのかどうしようかわからない曖昧な雰囲気に…)
塚:フツーの人が言ってもなんて事はないセリフなんですけど、石井さんが言うと味があるんだなー。出演者が全員映画監督とかって面白そうですね、素直な現場(笑)。
利:僕が監督してる時って、現場が楽しいかどうかが凄く大事なんですよ。現場が楽しくやれてるかなって。そこに細心の注意を配るんですけど。しばらく撮れなくてと言うより撮らなくて、敢えて撮らなかったんですけど、いろいろ他の生き方も考えたんですけど(笑)。
石:利重さん朝の顔、朝の顔(笑)。(編注:利重氏はNHK朝の連続テレビ小説『やんちゃくれ』にメインキャストで出演していた)
利:(笑)でもやっぱりね、久し振りに撮ってみて、映画撮るのってなにものにも代え難いって思った。『クロエ』の現場は本当に楽しかったですよ。現場が楽しかったって事は保証付き(笑)。

川:お正月はどう過ごされました?
塚:1日は僕のお父さんとお母さんとこ行ってえ、2日は奥さんのお父さんとお母さんとこ行ってえ、3日は大掃除してえ…何のことはなく、ごくごく普通のつまらないお正月でしたよ。…何でそんな事訊くのよ。
川:いや、映画とか観なかったですか?
塚:映画?…観なかったなあ(笑)お二人は何か観ました?『バトル・ロワイヤル』観ました?
石:いや、まだ観てない。
利:観てないなあ。
塚:あれ、あれ観たいんだけど。『ダンサー・イン・ザ・ダーク』。
石・利:ああ、ああ。観てないなあ。
塚:(笑)利重さん、何か観たのない?
利:うーんとね……『グリンチ』を観た(笑)。
全員:(笑)
利:面白かったですよ。ジム・キャリーがまたね、凄くてね。
塚:そうかー。でもなんでまた『グリンチ』を。
利:年末迄ずーっと『クロエ』の編集やってて、やっと出来たー、やっと終わったー!って感じだったの。その「終わった!」ってのを実感したくて、こう、映画ーッ!て感じの映画を観たくて……あっ!あとね、正月はTSUTAYAで『大空港』を借りて観た!
全員:だ〜いく〜うこ〜う!(爆笑)
塚:なんで!なんで!(大笑)
利:なんか観たくなって!でもねやっぱ面白いんですよ!『大空港』とか『ポセイドンアドベンチャー』とかね!「やあっぱ『タイタニック』より『ポセイドン〜』だろ〜」とか言って!
全員:(爆笑)
塚:あ〜、でも確かに『タイタニック』の、船がこう縦になっちゃって人がきゃあ〜って落ちてくとこ、CGの。あれより『ポセイドン〜』の、スタントマン使って実際に落ちちゃうヤツの方がやっぱいいな〜と思っちゃいますねえ。
利:でもお正月って何か観たくなりません?『大空港』。
全員:なるなるなる!
塚:『大空港』とか、あと『大脱走』!
全員:ああ、ああ、ああ〜!(爆笑)
塚:お正月の夜中、TVで大概やってる。ここに来てる若い人『大脱走』なんて知ってるのかな(笑)スチーヴ・マックイーンがさあ、カッコよくってさあ!くーっ!って。スチーブって言っちゃうとこがまた古いな(笑)。
利:なんだろ、今年TVでやらなかったからビデオ借りちゃったのかな。
塚:条件反射で。
利:そうそう。観ないと落ち着かない(笑)。
塚:しかしお正月にTSUTAYA…地味な(笑)。
石:でもいいよねー、『大脱走』。ダメなヤツとか弱いヤツが逆境に立って、頑張る映画っていいよねー。
塚:あー、スポーツものとかで弱いチームが頑張るヤツとか。『みにくいアヒルの子』みたいなのとか。
全員:(笑)
塚:あれが原点ですよ。『みにくいアヒルの子』大好きでねえ。『電柱小僧の冒険』とかモロにそうですよ。皆にバカにされていじめられてたのに、最後、美しい白鳥になって、ぱあーっと。

利:塚本さん、スポーツ映画は撮らない?
塚:え、スポーツは今やったヤツで…。(トークショーの前に『TOKYO FIST』が上映された)
利:あれはスポーツ映画か!?(笑)石井さんは撮ってみたいスポーツってあります?
石:う〜ん……競歩とか…。
全員:(笑)
塚:それはなんで。
石:マイナーなとこで頑張ってる人を撮りたいんですよ。
川:そういえば石井さん、むかーし時代劇撮りたいって仰ってましたよね。それがこの前の『五条霊戦記』だったんですか?
石:そうです。むかーしから言い続けて、やっと実現しましたよ。
川:そのお話とか、今後の予定を訊きたいんですが。
石:いや、僕の話はいいですよ(笑)今日は塚本さんを盛り上げようと思って来てんですから。
塚:そういう事は最後にまとめて訊きなさいよ。
利:カーリングとかは?(ひとりで話を戻してる)
全員:(笑)
利:カーリングいいじゃないですか。めちゃめちゃマイナーじゃないですか。
塚:ありゃー今ならハイスピードで撮らないとォ!
塚:ハイスピードで、こうスローにしてね!(ジェスチャー)
塚:こうね!(ジェスチャー)
全員:(大笑)
塚:カーリングってあれ難しいの?
利:難しいんじゃないですか?あの、タワシでこするテクニックとか。こうね!(またジェスチャー)
塚:ね!(ジェスチャー)
石:あはははははは!いや、僕は競歩で。
利:なんでそんなに競歩にこだわるんだよう!(酔っ払い)

川:今後の予定などを聞かせて下さい。石井さん、『五条〜』の後は。
石:また永瀬くんと浅野くんに出て貰ってる『ELECTRIC DRAGON 80000V』って言うすん〜ごいバッカらし〜い映画が公開になります。まだハコが決まらないんですけど。
塚:最近は映画館を押さえるのが大変なんですよね。
石:そうそう。
川:いつ公開なんですか?(このボケっぷり…かわいいよ…)
塚:だからまだ決まってないって言ってるでしょ!尺は?どれくらい?
石:1時間ちょいってとこ。6月辺りには何とか公開出来るかなーと思ってるんですけど。(編注:2001年7月にシネマライズで公開)
塚:そっかあ。
石:ばっか〜な、内容ない〜って感じで1時間。
塚:ばっか〜なんですか?(笑)利重さんは『クロエ』ですよね。
利:はい。年内には公開の予定です(編注:結局年内は無理で、2002年6月にシアター・イメージフォーラムで公開)。結構皆さんの評判もいいんで。塚本さん次回は?
塚:いろいろプランはあるんですけど…最近は4年に1本のペースになってるからなあ…。
石:それだけ撮れれば充分ですよ、充分!(このひとが言うと重みが…)
塚:石井さんにそう言って頂けると嬉しいなあ。
利:でも塚本さんっていっっっつも撮ってるよね実は。休んでないんだよね。
塚:そうなんですよ。会社行く様に毎日毎日現場行くって感じでいっつもずっとやってるんですけど…気が付くと2年とか3年とか経ってて。戦争映画はポシャッちゃったしなあ…そろそろ『鉄男III』やるか(笑)。
(会場から「おお〜」とどよめき)
塚:アメリカ映画のふりをした『鉄男III』を。オリジナルなロゴとか作って、ユニバーサルみたいなロゴを。で、アメリカ映画だと思わせるの(笑)。
川:あははははは(ニコニコで困ってる)
塚:最後迄内緒なの。アメリカ映画のふりをしたまま終わるの。説明しないの。で、騙して帰らせる、ってとこかな〜(大笑)。あとは何かあったかな…あっ、DVDが出た。全作品出たから嬉しくて、書斎の机に並べて「えへへ〜」とか言ってる。パッケージ縦に並べて。
石:いいな〜。俺出てないからなあ。(編注:この後2001年4月3日に『五条霊戦記』、同年5月25日に『逆噴射家族』のDVDがリリースされました)
塚:ええっ!?出てないんですか?石井さんなのに…そうですか…DVD出る以前はレンタルビデオ屋さん行って、コーナーがあると「えへへへへ」とかニヤニヤして眺めてたんですけどね。順番に並べ直したりして。で、誰か来たらわっと逃げて、その人が手にとるのを隠れて見てて、「えへへへへ」とかって。で、いなくなるとまた並べ直して。
全員:(大笑)
川:と言う訳で、今日はどうも有難うございました!
全員:有難うございました〜。



2010年05月15日(土)
『ロトチェンコ+ステパーノワ』『シティボーイズのFilm noir』

『ロトチェンコ+ステパーノワ ―ロシア構成主義のまなざし』@東京都庭園美術館

最近ではBunkamura ザ・ミュージアムと言ったところでも展覧会が開催されて、ちっちゃなブームがきているような?ロシア・アヴァンギャルド。混んでてビックリした…バウハウスならともかく、ロシア・アヴァンギャルドファンこんなにいたんだって言う(笑)。8年前の『極東ロシアのモダニズム1918-1928[ロシア・アヴァンギャルドと出会った日本]』は町田市立国際版画美術館でしかやらなかったし、6年前のワタリウムでのロトチェンコ展は全館使う程作品がなく企画展のなかの1セクションって扱いだった(でもこれは工夫のある面白い展示だった!)。いろいろ観られる機会が増えていくのは嬉しいな。

ロシア・アヴァンギャルドと言えば、フランツフェルディナンド『You Could Have It So Much Better』のアートワークの元ネタになったこれとかが有名ですね。



この『「レンギス(国立出版社レニングラード支部)あらゆる知についての書籍」国立出版社レニングラード支部の広告ポスター』も勿論展示。構成主義を代表する作家アレクサンドル・ロトチェンコと、彼のパートナーだったワルワーラ・ステパーノワの作品展です。合わせて約170点。ステパーノワの作品がこれだけ観られる展示ってのは、すごく珍しいのでは。

先日観に行った『ゴーゴー・ミッフィー展』のブルーナさんも影響を受けたキュビズム、未来派との共通性も多いロシア・アヴァンギャルド。20世紀初頭に興った芸術運動ですが、政治と密接に関わっていたこともあり短命でもありました。1917年のロシア革命前後から1930年代のスターリン体制になるくらい迄。ロトチェンコと広告エージェント『マヤコフスキー=ロトチェンコ広告=コンストラクター』を組んだ詩人マヤコフスキーは1930年に自殺。文化革命が進むなか、形式主義者として批判にさらされたロトチェンコは1931年に芸術団体『十月』から除名、1951年にはステパーノワと共にソ連芸術家連盟モスクワ支部からも除名されます(ロトチェンコは1954年、ステパーノワは1958年に会員資格を回復)。そして1956年にロトチェンコが、その2年後の1958年にステパーノワが亡くなります。

多くの芸術家が粛清され作品が散逸していくなか、ロトチェンコとステパーノワの娘ワルワーラとその夫、孫のラヴレンチフは、ふたりの作品を守り続けたそうです。そして1991年にソ連が崩壊。ロシア国立プーシキン美術館とロトチェンコ・ステパーノワ・アーカイヴ所蔵による作品群は、子孫の尽力がなければ目にすることが出来なかったであろうもの。混乱の時代を生き抜いた家族の物語をも観たような気持ちになりました。

シェイプを徹底的に突き詰め、線、面のみの構成に到ったストイックの極みとも言えるロトチェンコの作品と、シンプルであり乍らおおらかで、力強さとチャームが同居するステパーノワの作品はいいコンビに思えました。ロトチェンコが撮った写真の中にいるステパーノワは、どれもいきいきとした素敵な表情をしています。

絵画も初めて観るものが多く楽しかったのですが、やはりテンションが上がったのはポスター群。圧倒的に格好いい。落ち着いたアールデコ様式の庭園美術館内に、強烈な色彩のポスターが並んでいる光景のシュールなこと!印刷物もありましたが、ポスター原画が多数展示されていたのが嬉しかった。印画紙のコラージュに、直接彩色してある一点もの。タイポグラフィも全て手書きです。丁寧にコピーの訳文も付いていましたが、これがもうすっごい直球なの。「当社の株主でなければソ連国民とはいえません」「バターより3倍安い!」「国営デパートで 買え!」てな感じ(笑)。これだけストレートな言葉が並ぶ中、クッキーのパッケージに「招いていようとなかろうと 頼んでいようとなかろうと お客はあなたの家へ かならずやってきます」「パンはひからび バターはネコが舐めちゃった」って書かれているのに大ウケしつつ、かわいいなーと思ったり。アジ広告も多いけど、ユーモアがある。

カタログデザインは服部一成さんと山下ともこさん。装幀内容ともに充実してます、これで2,500円ってかなりおトクだと思う。亀山郁夫さんのテキスト『「でも、私には出口がない」――ウラジーミル・マヤコフスキーとロシア・アヴァンギャルドの悲劇』に、時の流れに抗うことが出来ない個人を思い、だからこそその個人が残した作品たちを記憶に刻み付けておこう、と思いました。

ステパーノワデザインの布地を再現したタオルハンカチ等もあり、グッズもかわいいものが多くて、いろいろむしられて帰ってきました。

売店にみけねこがいました。お店の子と言うより庭園に住んでる子が勝手に出入りとかしてる感じ?(笑)毛とかがびがびなんだけどそこがいい。なでても我関せずなねこらしい姿でたいそうかわいかったです。次回ここに来る時も会えるといいなあ。

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『シティボーイズのFilm noir〜トーク祭り〜』@ゆうぽうとホール

「10月に新国立劇場でお会いしましょう!」

毎年GW恒例の本公演は「諸事情あって」10月だそうです。もうやらないのか、トークイヴェントに移行していっちゃうのか曖昧だったから、まことさん本人の口から聞けてよかったよ。やっぱりほら、皆さん年齢的にね…ここ数年ずっとそんな感じだけど。しかしそこらへん、だんだん本人たちもネタにしてきているのがここ数年の傾向。今回も辞世の句を発表し合ったりしてた(苦笑)。映画の内容も死や人生の後半に関するものが多くて、ゲラゲラ笑いつつ、ひとのはかなさについて実は考えたりもしましたよ。あっけない人生、あっけない命。ちょっとしたことでぽっと消える。

今回は小さな映画祭と言うことで、自分たちで作った短篇映画を4本流してそれについてぐだぐだ喋るイヴェントでした。まあぐだぐだです。ぐだぐだなのにラインナップは結構豪華で、『南極料理人』の沖田修一監督の『俺の切腹』、『東京DOGS』の脚本を書いた福田雄一監督の『マジメくん』、きたろう監督の『ドキュメント中村有志』、まこと監督の『ダーク オン ダーク』が上映されました。音割れも結構あって、何故ゆうぽうとホールで…?と言う感じではありましたが内容はぐだぐだな面白さ。ああ楽しい。

台詞が与えられないトークイヴェントと言う場の中で炸裂するきたろうの無邪気、しげるのサービス精神溢れるこわれっぷり、有志の神経質なダメ男っぷりはなかなか…観られそうで観られないものなので興味深かった。有志の「ここだけの話」と下ネタには観客ドンびき。それを無邪気にどんどん暴くきたろうさん、こえー。

そして普段は傍若無人なきたろうとしげるをひたすらツッコミしっかり進行を務める役なので忘れがちだったまことの狂気が、自身の監督作品に顕著に現れていたのにはたまらんもんがありました。やっぱり一筋縄ではいかないわー。TVとかでは抑えてんだなあって部分が溢れ出てましたよ。怖いひとだなあ、好き好きー。

果たして10月、ふわダンスの完成形は観られるのか?観られないと思います。あー楽しみだー。

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なんだか奇妙なハシゴになって楽しかったです。



2010年05月14日(金)
塚本晋也お蔵出し『TSUKAMOTO COUNT DOWN!』(2000〜2001年)

サービス精神溢れ過ぎで空回りしたイヴェントです(笑)。今回もトライベッカから帰ってきて翌日にはもうトークイヴェントやってるし、間を空けずに全国の試写会に飛び回ってますね。各地の映画館での音調整にも立ち会っているようですし、こういう草の根的なところホント好き。

ちなみにこのイヴェントで娘・黒子役だった(…)黒木久勝さんは、塚本組の助監督/脚本担当として活躍されている方です。『鉄男 TBM』でも書かれてますね。いろいろとイジラれ担当でもあり、かわいがられているようです(笑)。愛すべきスタッフと言えば、ヨコピンの愛称で親しまれていた撮影助手の横山克典さんが有名(?)。『鉄男II』でのゲリラ撮影(渋谷WAVE!)の時カメラを持って逃げる担当だったのに、しっかり逃げ遅れて警備員につかまり、フィルムを没収されたひとです…って、あのシーンをゲリラでやったらそりゃ怒られるだろう。ここらへんの話は『鉄男II』VHSビデオの特典映像『東京の夜』で監督と田口さんが詳しく話されています。『東京の夜』は明日発売の『完全鉄男』で誌面再現されているようです。

トーク中で話題になっている、当時現役だった監督がふたり鬼籍に入られたこともなんだか感慨深いです。塚本監督も50歳。本人言うところの「映画監督としての定年」迄あと10年です。まだまだ沢山撮ってほしいな、60歳過ぎてもね。

****************

2000年12月31日
『TSUKAMOTO COUNT DOWN!』@BOX東中野

●『普通サイズの怪人』
●『鉄男/TETSUO THE IRON MAN』
●年越しそばタイム(その間スクリーンでは紅白歌合戦を上映(SMAP、細川たかしの辺りでした))
●トークイベント((敬称略)塚本晋也、川原伸一、黒木久勝、塩田時敏、藤井かほり、塚本耕司)
●『電柱小僧の冒険』
●『ヒルコ/妖怪ハンター』
●じゃんけんオークション(『ヒルコ』学校のプレート(塚本中学校)、『東京フィスト』ひづるのドレス(デートで食事、「いい嫁入り道具が出来たわ」のシーン)、『BULLET BALLET』B1ポスター(校正用に直接プリントアウトした1点ものにトーク出席者のサインを入れて)、スタッフ私物『双生児』フランス版ポスター(トーク出席者のサインを入れて))
●『BULLET BALLET/バレット・バレエ』

年越しでめっちゃ盛り上がりハイになって記憶もおぼろげ。もっと沢山面白い事あったのに〜!(悔)短いですがその雰囲気をお楽しみ頂ければ…。
かわいい赤のはんてん姿で監督が登場。場内リアクションに困りどよどよと失笑。
「家でいつもこうだから、こうしないと落ち着かなくて。ここは僕の家(って設定)なんですよ…自分の家なのに何説明してんだろ(笑)誰もいないのに(笑)だからここは家なの!(自分に言い聞かせている)」
「家ではずーっとTVの前にいて、リモコンカチャカチャやって、どこがいいかな〜、どこがいいかな〜って」
「でも大体はNHKにしちゃうのね。どっかの寺からの中継とか〜」
つってるうちカウントダウンも間近に。
「えっどうしよう、どこがいい?どこでカウントダウンする?サザン?サザン?あー段取り決めてないのバレバレじゃん!」
「あっ年越しちゃう年越しちゃう!」
…面白すぎます塚本さん。そんなこんなで無事年越し。

客席から「誕生日おめでとうございます!」の声(塚本氏は元日生まれ)
塚:あっ、有難うございます。って、ここ家なのにどっから声が?(笑)背後霊かな。
川:お、お客さんに何て失礼な事を!(フォローに必死、川子こと塚本組の川原助監督。和服にかっぽうぎ姿で塚本氏の妻を熱演(笑)似合う…。後れ毛をなおす仕草が美しすぎます。ゲストにおそばやお酒を運び、背後霊ことお客にも気配りを利かせ、壊れた娘(同じく助監の黒木氏。つりスカートハイソックスみつあみで塚本家の娘・黒子を演じるも自爆気味。現場ではいいムードメーカーだそうです。いいキャラだ…)や傍若無人のダンナのフォローにと良妻賢母振りを発揮。嫁にしたいです)
塚:そうなんですよ〜…厄年なんですよね…もう去年から始まってるみたいで、去年ぎっくり腰になって…。ロケハンに行ってて泊まってた旅館から出て、自転車乗ろうとした途端ギクッて。そのまま出かける事も出来ずに旅館で寝て過ごした。
塩:気を付けた方がいいよ、僕も厄年に酷い目に遭ったもん。飛行機の中でさ、尿管結石になってさ。
藤:ええ〜?あれって凄い痛いんですよね?
塩:すっごい痛いんだよ!映画祭で外国に行った時で、もうすぐ着陸しますからベルトを締めて下さ〜いって時になっちゃってさ、もういてもたってもいられない位痛いのに、ベルトなんてもう!あれは大変だったよ。耕司さんもやったんだよね?
耕:ええ。でもそんなには。大きくなる前に出しちゃったって言うか、動く前に。
塩:中で石が動いちゃうと痛いんだよね。…って、そんな事はいいんですよ。監督も厄払いしないと。
藤:そうですよー、私も厄年は大変だった…。(あっけらかんとオフレコ的な話をサバサバ話す藤井氏。男前…)

塩:石井輝男監督(編注:2005年逝去)も元日生まれなんだよね?
塚:らしいですね。
塩:石井さん、どうだった?(編注:塚本氏は石井監督の遺作となった『盲獣VS一寸法師』で主演)
塚:いやあ、元気でしたよ。若い若い。僕がちっちゃい頃に観た、いとこのお兄ちゃんに連れてって貰って観たあの「きゃーっ、こわーい!おどろおどろしーい!」って言いつつ目が離せなかったあの映画のイメージまんま。まだまだやれるって感じだった。僕、映画監督って仕事を、体力的な面から60歳が定年かなと思ってるんだよね、だとしてあと20年しかないんだよねえ。最近のペースが4年に1本とかになってるから、うーんあと5本かあ〜とか思って…やりたいのはたっくさんあるんだけどなあ…。でもね、石井さんを観てるとまだまだって感じで…。
塩:元気だねえ。
塚:そういえば『この映画がすごい!』の付録DVD見た?あれに『バトル・ロワイヤル』のメイキングが入ってて、深作(欣二)監督(編注:2003年逝去)がバーン!って机ひっくり返してて。「表情が弱〜い!」とかって。で、ビックリしてる子供に「そう、その表情!」って。あれ見てああ、60越えてもいけるかなって…。でもね深作監督って、一緒に中国の映画祭に行ったんだけど、時々ヤバいんじゃないかって思う時があった。
塩:ギラギラしててまだまだ現役じゃあ〜って感じ?
塚:いや、って言うか…あの、
塩:……(!ピーンときた)ああ〜、ヤバいって、ぼ、ボケちゃってるかもって言う意味で。
塚:そうそう。一緒に行動してると、どうも…「あれっ?」って思う瞬間が何度かあって…。パネルディスカッションの時も腕組んでうーむって考えてる様なふりをして、寝てたりしてた。船漕いでた。
全員:(笑)
塚:でもそこで「深作さんどうでしょう」って訊かれると「うーん、それは…」って、話がちゃんと繋がってるの(笑)でもあの『バトル・ロワイヤル』の演出現場を見て、60で定年かあ〜って思ってたけど、まだまだやれるなあと思った。

塩:しかし去年は役者仕事多かったですね。主演もあったし。『サンデイ ドライブ』ね。あれは面白かったなあ。俺キネマ旬報の年間ベストテンに投票したよ。『BULLET BALLET』にも投票したかったんだけど、自分が出てるのは(編注:塩田氏は『BULLET BALLET』に出演している)ダメだって言われて入れられなかった。(『サンデイ ドライブ』の)現場はどうだった?
塚:斎藤監督って、カット数が物凄く少ないんですよ。僕が2000カットくらいだとしたら80カットくらいなの。
全員:ひえー。
(会場中ザワザワどよどよとなる)
塚:その分リハーサルが凄い綿密で。何かやってやろうって気持ちで、いろいろ仕込んで行ってもダメ。ことごとくそれを潰されちゃう。
塩:頭真っ白にされちゃうんだ。
塚:そう。朝集合して夜迄、みっっっちりリハーサル。カメラ回す迄が長い長い。「もういいんじゃないですか」つっても「うーん、もう一回」って、同じ事を何度も繰り返して、何も考えられなくなったって時に「じゃあ本番」。演じるひとを空っぽにして、そこから出てくる何かを撮るひとですね。あれはしんどかった…。出来上がったものを観たら「ああ、そうだったのか」と思ったけど。打ち上げの時に首締めてやりました(笑)

塚:最近何か映画観ました?
全員:観てないなあ(笑)
塚:『ダンサー・イン・ザ・ダーク』観たいんだけどな。
全員:ああ。
塚:『バトル・ロワイヤル』も。
全員:ああ、ああ。
藤:『ホワット・ライズ・ビニーズ』が凄い怖いって聞いたんですけど。
塩:あれは浮気をした男のひとが怖い映画だよ。
藤:話はそうだけど、女友達は観た後ひとりでお風呂場にいるのが怖いって。

その後いろんな話で盛り上がりましたが失念…ごめん〜ごめん〜!DVDの宣伝をして全員退場。ところがマイクが生きていて、袖に引っ込んでから「ダメだこりゃ〜」「失敗だよ〜」て言ってるのが丸聞こえ!場内爆笑でやっと気付いた塚本氏「あっ、やべっマイク!」の後、声は聞こえなくなりました(笑)。



2010年05月09日(日)
灰野敬二×山川冬樹@SuperDeluxe

灰野敬二×山川冬樹@SuperDeluxe

ロングセット、公開レコーディング。 SuperDeluxeのレーベル・目玉レコードからリリースされるそうです。すごく面白かった!どうなる?どういく?と必死で追っていて、あっと言う間の二時間。

面白かったと言うもののものすごい緊張感で、終わった時にはもうぐったり。真っ暗なフロアはどんどん暑くなる。録音もあったから空調止めてたんじゃないかな。だから風など吹いていない筈なのに、壁に張られたフライヤーが剥がれて落ちる。テーブルに置いてあるフライヤーの束がビリビリ言う。音圧がすごい。

山川さんの馬頭琴+ホーメイソロからスタート。しばらくして灰野さんが現れ、声を乗せていく。そっからはめくるめく世界ですよ…レイナルド・アレナスかって言う。もうあれよ、山川さんアポロン灰野さんセイレーンみたいな。南米からギリシャかい。適当に言ってます。声対声、心拍音対オタケビ、倍音対怪鳥音(イルカみたいでもあった)、シンバルキック対ハンドシンバル、ギター対ギター、猫対犬。最後のは手が滑りました。いやしかし灰野さんがニャー!と言い山川さんがワン!と言ってももはや何の違和感もない(え?)。

山川さんは心拍速度を意図的に変えて、繋いだ聴診器から音を出すんだけど、これが文字通り生きる速度を自分で決めているようにも見える。死ぬ迄の心臓の鼓動の回数はほぼ決まっていて、それはどのいきものも同じだと言うけれど、山川さんが鼓動の速度を変える時、そこに人間と言う存在は稀薄になり、どんないきものかすら曖昧になっていくようだった。“命”そのものを見ているよう。命が奏でる音楽が、光のように暗闇からぽつんと浮かび上がる。

シンバル蹴るのを空振りする山川さんや、暗闇なのにサングラスを外さず、楽器を持ち替える際ステージ上をうろうろする灰野さんの佇まい、心拍音に同期して光る電球等はインスタレーションでもある。これは音源には入らない。どうパッケージされるか楽しみでもあります。録音されたものを改めて聴く時、そこにはどんな音がなっているだろう?新しい発見もありそうだし、取りこぼしてしまうところもあるだろうな。その違いが面白いと思う。

それにしてもどうやって組み立ててってるのかなあ。ふたりの頭の中にはどう流れていくか、相手がこう来たらこう行こう、と言う感覚はあるのだろうけど。アイコンタクトも全くと言っていい程とらず、ひたすら自分と相手の音のみを探っていくふたりはとても格好よかったです。



2010年05月08日(土)
『第9地区』『ウルフマン』『塚本晋也大図鑑「鉄男」』

たまたまこの並びになったんだが、みんな身体が変容して「うああああああ〜〜〜〜〜!!!!!」ってなる話だった…しかもみんないい話だった……と言う共通点?が。観に行く前にちょこちょこひとの感想読んだりしてたら、『第9地区』について「『鉄男』を初めて観た時の感覚を思い出した」みたいに書いていたひとが複数いて、へええ?と思っていたのですが、成程と思うところもありました。以下全部ネタバレしてます。

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■『第9地区』@渋谷東急
ぎゃーんなんじゃこの話ー!すごいヒューニズムあふれる話ー!
で、それがうまいことどっちのヒューマニズムにもズッパまりなんですよ…「人道的・博愛的」なヒューマニズムと、「人間さまがいちばんだぜ」と言うヒューマニズム。エイリアンの方が人道的博愛的で、人間さまが王様だぜ〜てのが地球人。
は〜つくづくにんげんが嫌になった…ヴィカス(シャルト・コプリー。初めて観た役者さんだけど妙にいい味出してます)はフッツ〜の気のいいにんげんなんだよ。嫁さんのこと大好きだし、昇進したら嬉しいし、嫁さんの父ちゃんにがんばってるよーてアピールしたいしだからカメラの前ではいい仕事してるよって見せたいし、危険が迫ったら自分を守るために戦うし。で、この自分を守るってのが曲者。無意識な差別意識とかさー。身につまされまくった…(泣)。
で、人間よりも人間らしかったクリストファー・ジョンソンとそのこどもちゃん。ちょういいひと(?)たちだった。律儀に三年後ヴィカスを助けるために戻ってきそうだよ…あんな酷いことされたのに!こどもちゃんがヴィカスになついちゃうとこもかわいかった…あーそれなのにヴィカスあんなことしてー!酷いよ!クリストファーもひと(?)良過ぎ!
まあそこらへんも、エビちゃん皆がそうと言う訳ではなくて、クリストファーだったから、なのかも。
で、エビちゃんになっちゃったヴィカスがクリストファーに似てきてる感じのラストシーンにもジーン。もうっこのラストシーン、こにくらしいわー!にんげんてやっぱり環境に左右されるのかな、それに影響されずに自分を保っていられるひとってのは本当にすごいなーとしみじみ。これはエビちゃんたちにも共通するかな?個人って大事。
そしてヴィカスの嫁さん、いいひとだったー。ヴィカスも元に戻れればいいけどね、でも戻ったら戻ったで大変だよなあ。でも、待ってる嫁さんが不憫だ……。
最初は笑って観ていたが、だんだん泣けてきた……。エイリアンが故郷に戻る迄の話でもあって、流れとしては『E.T.』みたいでもあった。は〜、ジョンソン父子ちゃんと帰れてるといいな……。
いや〜よく出来てんなあ…ブロムカンプ監督ってすごい。

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■『ウルフマン』@渋東シネタワー 4
ベニシオさんが狼男ですよ。メイク要らずとか言うな!変身したベニーはどっちかと言うとゴリラマンぽかったが、あのヘイゼルの瞳がとても綺麗に撮られていて印象的。異形のものになる困惑や悲しみがにじみ出ていたよ!
狼男ってなんとな〜く知ってはいるけど、どういう話かはちゃんと知らなかったのです。『ハウリング』は昔TVでやってたのをなんとなく観た憶えがあるけど、原作?みたいなのは知らなくて。この『ウルフマン』は、1941年の『狼男』のリメイクになるんだそうです。ストーリーはごくシンプル。なので画ヅラのあれやこれやで惹き付ける部分も多くなる。変身シーンの特殊効果や、殺戮シーンのグロさは結構なものでした。
しかしホプキンスも変身するとは思わなんだ…ビックリした(笑)。父と子の対決と言うテーマもあったんですね。劇中劇として『ハムレット』が出てきます、さもありなん。いやー、ハムレットを演じるベニーが観られるとは……嬉しい誤算(?)。コスチュームプレイでもあって、1890年代のファッションに身を包むベニーが観られたのも楽しかったです。

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■『鉄男』@シアターN渋谷 シアター2
『塚本晋也大図鑑』初日。上映前に『新旧鉄男対決』として、『鉄男 TETSUO THE IRON MAN』『鉄男II BODY HAMMER』の田口トモロヲさん、『鉄男 THE BULLET MAN』のエリック・ボシックさん、塚本監督のトークイヴェントがありました。進行はずっと塚本組で助監督/プロデューサーをされている川原伸一さん。

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この模様はUSTREAMの保存映像で観られます。生中継もしていました。
・makotoya_ch on USTREAM

関連記事はこちら。
・シネマトゥデイ:世界で熱狂的な支持を集める新旧「鉄男」俳優が登場! 伝説のツーショットに新「鉄男」エリックも大興奮!!
・eiga.com:塚本晋也監督、新旧“鉄男”の舌戦に板挟み
・ぴあ映画生活:最新作『鉄男 THE BULLET MAN』公開を記念して“新旧鉄男”が対面!
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エリックが興奮気味で面白かった…。こんだけ上がってれば細かくレポートしなくても大丈夫だ(笑)。よって自分の感想を。
余計なお世話だけど、塚本監督と周囲に温度差がある感じがしていたので、そこらへん監督はどう思ってるのかなーと気になってたところはあって…いや、公開に向けて盛り上げていこう!ってのはいいんですけどね、ヒットしてほしい(と言うか沢山のひとに観てもらいたい)し、勿論自分もすごく楽しみにしているし。でも『各界著名人も絶賛!』とか、そんな煽るもんなのかなーとか……。
今回『デニーロも出演を熱望?オファーを快諾!』みたいな記事を書かれたことについて、どうしてそうなったかを、監督本人が丁寧に根気よく説明してくれたことにちょっとホッとしたと言うか。本人からの話を直接聞ける場があってよかった。
そしてトモロヲさん『鉄男 TBM』にも出ているそうです!これは嬉しい。
で、久々にスクリーンで観た『鉄男』、何度観てもやっぱり面白いー。16ミリで、ひとつのレンズでとってても「これは広角(レンズ)です!」と念じ乍ら撮ると広角で撮ったように見えるんですって(笑)。気合いって大事だよ……。
塚本さんとこは最新作が発表になると、過去作再上映の企画を毎回のようにたててくれて嬉しい。スクリーンで観てほしい、と言うのがあるからでしょう。で、やっぱりスクリーンで観た方がいいと思う。

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最初に書いた『鉄男』と『第9地区』の共通点ですが、倫理観がしっかりしているところ、妙におかしみがあるところ、そしてきっと監督はロマンティストなんだろうなーと思えるところ。ほろりと来るシーンが意外とあるんだよね…。鉄男もエビちゃんになったヴィカスも愛するひとに花を贈るんですよ。あ、“やつ”も鉄男に花持って会いに来たな。同じ日に観た体験は印象深いものになりました。



2010年05月07日(金)
塚本晋也お蔵出し『TSUKAMOTO AMUSEMENT NIGHT』(2000年)

今読むとフッツーにギャスパー・ノエが飛び入りしてんのがすごいな。もう随分長いつきあいですね。先日もふたりでTVに出てた。

この後の2002年にギャスパーは『アレックス』を発表し一気に名を知られる監督になりましたが、内容が内容なのでそれがメジャーに繋がるかと言えばそうでもない(笑)。しかし「次は何を撮る?」と常に注目されている監督であるのは確かです。

ギャスパー監督最新作『エンター・ザ・ボイド』は来週土曜日から日本公開。トークイヴェントで話されている“舞台が東京”の映画はこれのことでしょう。約10年かかったんですねえ。音作り(音響効果のクレジット)はダフパンのトーマ・バンガルテル。えーと、左のひとだっけ?(そんな憶え方…)ちなみにダフパンは年末公開予定の『Tron Legacy』のサントラを制作中だそうで、こちらも楽しみ。

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2000年3月25日
『TSUKAMOTO AMUSEMENT NIGHT』@CINE AMUSE east

『BULLET BALLET』公開に併せての楽しい企画上映!シネアミューズさん素敵な一夜を有難う!

●『鉄男/TETSUO THE IRON MAN』
●トークイベント(塚本晋也監督、川原伸一助監督、ギャスパー・ノエ監督)
●『双生児/GEMINI』
●『ヒルコ/妖怪ハンター』

(塚本組助監督の川原伸一氏が司会進行)

川:どうしましょっかね。
塚:どうしましょっかねえ。そうそう、その前にもうひとり…ホント突然な事だったんで通訳の人とかいないんで、大丈夫かな…。今日はね、ギャスパー・ノエがね、来てるんですよ。彼は『カルネ』って言う、ぐちょぐちょの、おもしろーい作品を作ってるんですけど、今東京に来てて。あっちの映画祭で初めて会ったんだけど、なーんかついてくるんですよ言葉も通じないのに(笑)人なつっこくて。僕の映画を気に入ってくれたって、言葉わかんないのに、なーんか話し掛けてきて(笑)で、お互い片言の英語で話したりして。『デリカテッセン』のジュネとキャロんちに連れていってくれたり、いろんな人に会わせてくれたりして。すっごいいい思いをさせて貰いました(笑)。
今何で東京に来てるかって言うと、『カルネ』シリーズの最新作、1が『カルネ』、2が今年公開される『カノン』で、その次ですね。最新作の舞台が東京だそうなんですよ、それで。まぁーたすっごい、ぐちょぐちょのヤツみたいですよ(笑)。

(ノエ監督入場。あいさつ)

塚:何言ってっかわかんないんスけどね、へへへ。
川:ダラダラやるより、質疑応答にした方がいいですかね。質問がある方は挙手して頂けますか?

●質問と言うか感想になっちゃうんですけど…今日『鉄男』を初めてスクリーンで観たんです。今迄ビデオでしか観た事なくって。もうなんて言うか、凄い、凄かったです!
塚:いやあ…有難い話ですねえ…(川原氏に向かって)ねえ(笑)。『鉄男』は、って『鉄男』に限らずなんですけど、絶対スクリーンで観てほしいって思って作ってますので、是非スクリーンで、って感じですね。今回改めての上映なんで、ニュープリントにして頂いたんですよ。だからもうちょっと入って頂けるとねえ(笑)いいんですけどね。

●これって聞いていい事か判んないんですけど…。
塚:はい。なんですか?

●『TOKYO FIST』で、(主人公の)ひづるは死んだんですか?
塚:死んでません(即答)。3人とも死んでません。もう二度と遭う事はないだろうけど、3人それぞれ、別の所で元気に生きてます。死んで終わりって、ヤなんですよ。…アラン・ドロンの映画とかで、よく死んで終わるのが嫌いで。事件が解決して、さあ彼女の所に行こうって車に乗って向かう途中でなーんかわかんないけどこう、車がひっくり返ったりして(笑)死んじゃって。ああいうの、イヤなんです。死んで終わりってのが。北野武さんの映画も…僕大好きなんですけど…『ソナチネ』はね、自分でパーンって頭撃っちゃって終わるじゃないですか、あれがこう…なんかガッカリして。だから、もし僕が死んで終わりって言う映画を作ったりした時には、何かよっぽどな事があったんだと思って下さい(笑)。でもね『BULLET BALLET』もね、死なないで終わるけど「すっごい救われた」って人と「救いようのない映画だ」って言う人がいて、両極端なんですよねー…。
あっそういえばね、当時(『TOKYO FIST』主演の)藤井(かほり)さんと話してたんですけど、『TOKYO FIST』の冒頭のシーンをね、あのージジイとババア…じいさんとばあさんが縁側でお茶飲んでるシーンとかにして、そのうちジジイが入れ歯を外してコップの中に入れるんですよ。そしたらシュワーっとなるじゃないですか。で、シュワーッとなって…泡が消えたらその入れ歯がマウスピースになってるって言う…(爆笑)そういうシーンにしたらとかね(大笑)絶対やりませんけどね!そういう話をしたりしたんですよ。死なないで長生きしてね…って。3人はそれぞれ、今でも元気一杯!(笑)生きてます。

●今の『鉄男』もそうでしたけど、『電柱小僧の冒険』とかでも、メイク、してらっしゃいますよね?
塚:はい(笑)してますねえ。

●メイクはお好きなんですか?
塚:(笑)好きー…ですねえ。あのほらやっぱりアングラ劇の名残りで。川原くんもね、そうなんだよねっ(編注:川原氏は劇団『パノラマ・キメラ』の主宰。今も活動してるのかな?)。
川:そうですね、アングラですね(にっこり)。
塚:もうメイクは気合い入れますよー。特に(アングラ劇の)女の人の、メイクへの情熱は凄かったですね、気合いも時間も凄くかけて。『電柱小僧の冒険』も、もともとは舞台作品だったものを映画にしたんですよ。で、アングラってー役者とスタッフを兼ねている場合が多いんですよ、川原くんの時代はもう違ったかもしれないけど?
川:いや、兼ねてましたね。
塚:役者が、自分の出番じゃない時は裏方もやるんです。音響も出てない人が交替で操作したりするんです。『鉄男』は出演者が4人ですけど、その出演者が重要なスタッフでもあったんです。あれ必ず2人ずつしか画面に出てないでしょ?あれは、出れないんです(笑)。2人迄しか。2人が出て、1人が撮影して、1人が照明。だから、絶対2人迄しか出ない様にストーリーを作ってあって。まず眼鏡の女の人と田口(トモロヲ)さんが出るでしょ。その時は僕が撮影で、もうひとりの女の人が照明なんです。で、眼鏡の女の人がちゃんと殺されて、もう出ないぞってなったら、もうひとりの女の人が「さあ〜私の出番よお」ってバシッとこう(ジェスチャー)メイクして出ていくワケです。で、僕が撮影、眼鏡の女の人が照明。で、その女の人がしっかり死んで、もう出ないぞってなったら今度は僕がメイクして(笑)撮影と照明を女の人2人がやると言う。そういう現場でした(笑)。

●照明はやはり重要ですか?
塚:重要です(即答)。この重要さに気付くの遅かったんですよ。て言うか照明がいるって知らなくて(笑)最初の頃は、逆光で室内撮って真っ黒になっちゃったりして、な〜んで真っ黒になっちゃうんだろーなーとか思ってて。中だと暗くなっちゃうからってわざわざ室内のセットを屋外に作って撮影してたりして(爆笑)なーんて手のかかる事してたんでしょうね、照明やればそんな手間もコストもかかんないのにね。気付けよ!って感じですね(笑)。で、いろいろやってるうちに黒澤明さんの作品とか観て「いくらなんでもこれはおかしい、絶対何か光を人工的にあててるだろう!」ってやっと気が付いて。それからすっごい凝りだしちゃって。TVドラマとかで、ただパーンって真っ正面から照明あてただけって画がよくあるでしょう。妙に明るい。あれがね、大っ嫌いなんですよ。『BULLET BALLET』でも、駐輪場で乱闘するシーンがあって。追っかけっこして、乱闘して、銃パンパーンって撃つ、それだけのシーンなのに(照明にこだわるから)すっごい時間かかっちゃって。何日も何日も夜に…駐輪場に柱あったでしょう?あの柱をしっかり撮りたい訳ですよ。きっかり、影とか、デッサン描くみたいに陰影をしっかりつけて撮りたくて。そのまま、ただぽーんと撮りたくなくて。だからすっごい時間かかっちゃって。ワンカット撮るのに照明動かして、チェックして、撮って、またワンカット…って照明ぐるぐる回して。そう言えば『TOKYO FIST』の時に川原くんにさ、「はいカットー、はい照明ー」「はいー」「はいカットー、はい照明ー」「はぁ、はい〜」「はいカットー、照明ー」「あぁあ〜」って、ひっと晩中照明ぐるぐる回させてさ、あの時川原くん「もう、もう出来ません…」って顔をしたんだよね(笑)。ふっらふらでさ「も、もうダメですぅ」って顔を(笑)。
川:あはははははは(笑泣)もう、あの時はね…顔で訴えたんですけどね。
塚:でも、やらなきゃ映画が出来ないから(キッパリ)。「ん?何?」って感じで、「ほらほら、照明」「はやくして」って。あの時はねえ「俺酷いなーっ、鬼だなー」って思いましたね(笑)。

●演技やセリフ回しがとてもオーバーだと思うんですけど…。
塚:(笑)これもアングラの影響ですねー、舞台の勢いそのまま。あと『鉄男』とかは、お金がなくてフィルムが、ホンットギリギリだったんですよ。だから絶対NGが出せなかったの(大笑)NGが出せないプレッシャーがあると、テンション上がるんですよ、すっごい力入っちゃうんですよお(笑)舞台みたいに、アクションもオーバーになるし、セリフも…妙に力入っちゃって(笑)。今日ってあと何やるんですか?『双生児』と『ヒルコ』?あっそうか、双生児とヒルコちゃんなら大丈夫かな。で、次回が『鉄男II』と『TOKYO FIST』と『BULLET BALLET』?はあ〜、(シネアミューズのスタッフに)いい組み方しましたねえ(笑)。これが『鉄男』、『鉄男II』、『BULLET BALLET』だったらもお〜グッタリでしょうね、キライになっちゃうかもしんないですね、「うわあああー!」「ぎゃー!」みたいのばっかりでね(笑)。

●気の早い話ですけど、次回作の予定は?
塚:あ〜…『BULLET BALLET』と『双生児』にかなりエネルギー注ぎ込んじゃった所があって疲れちゃって、しばらくは…。プランも沢山あるし、いろいろお話も頂いてるんですけどね。ずーっと前から言ってる『悪夢探偵』ってのもやりたいしね、『鉄男アメリカ』もいい加減…ずーっとやるやるって準備はしていたものの、やっと「これだ!」ってアイディアが出たんですよ。あのね、空飛ぶ鉄男空飛ぶ鉄男ってずっと言ってたけどどうやって飛ばすかっていいアイディアが出なくて。最初はジェット機と同化しちゃってとか考えたんだけど、それは違うだろう、面白くねえなって思って。で、思い付いたってのが、こう、怒りのエネルギーがパン!と発射されるんですよ、それが下に向かったら地下に潜っちゃうんですけど、上に向けたら飛ぶんですよ。最初は本人もワケわかんなくて「うわああ〜!」とかって言ってるんだけど、だんだん自分でコントロール出来る様になっていくの。で、実際にどうやって飛ばすかってのは、川原くん達が考えるの(笑)。
川:ええ〜!?
塚:「じゃ、よろしく!」っつって。「君達が考えるんだよ〜」ってね(笑)。それじゃあ、そろそろ時間もなくなってきたみたいなんで…ギャスパー、何かある?
ギ:(鉄男アメリカはどうなってるんだ僕は楽しみにしてるんだ〜云々と英語で言う)
塚:はぁ、はぁ、あ〜よくわかんないんスけどね、へへへ、鉄男アメリカね、へへへへ。今話したんですけどね(笑)。
川:それじゃあ時間なんで、最後!あとひとり、質問ある方いらっしゃいますか?

(おおっ、てらてらが手を挙げました〜!)
●ロケハンとか非常にされてると思うんですけど、『BULLET BALLET』の最後のシーン、ふたりが走る所で、背景の壁に『生(なま)』って字が書いてあるんですけど、あれはああいう字を書いてある場所を探したんですか?
塚・川:ああ〜!(爆笑)ああ、ああ、あはははははは…(力ない笑い)。
塚:あれねえ…あれは狙った訳じゃなくて…ああ、ありましたねえ。あれはもー、一晩中撮ってて最後の最後にフッラフラになって撮ったシーンで、そんな狙ってとかじゃ全然なくって…。編集の時「あ〜、映ってんなあ」って思ったんだけど、結局切らなかったですねえ。「なま」!「生きる〜!」とかのメッセージでは全然ないです(笑)。
●ああ…サブリミナルな効果を狙っての事なのかなと思ったんですけど。
塚:いや、そんな事はないです!(強調)全くそんな。
川:(笑)それではどうも有難うございました!

柔らかい物腰の中にも鬼っ子発言多数のとこがこの人らしかったです(笑)「でも、やらなきゃ映画が出来ないから」はこの人が言うと怖いわ…。妙に説得力のある名言でございました。
そしてよかったねてらてら〜!塚本さんはひとの目を見据えて話すステキなひとだったわね!



2010年05月04日(火)
『TOKYO M.A.P.S』『MUSIC DAY 2010 / SATURDAY NIGHT R&R SHOW 2010〜SPECIAL Vol.2』

『TOKYO M.A.P.S』@六本木ヒルズアリーナ
六本木ヒルズとJ-WAVEが毎年GWにやっているイヴェントだそうです。今年のオーガナイザーが菊地さんで、初めて知りました。しかしこれ、フリーで聴けていいの?と思う程のちょう贅沢ラインナップ。そして野外の仮設ステージなのにめちゃ音よかったです。
二日目のみ参加、口口口、坪口昌恭、BEATSICK.JP、山下洋輔introducing寺久保エレナを観ました。いやー、皆よかった。坪口さんピアノ使うかなと思ったらモジュラーシンセソロだった。配線コードを沢山持ってきて、その場で繋いでいって音を足したり引いたり。ustreamで手元の映像を同時中継していました。
バッキングに徹する山下さんを観られたのも新鮮…現役高校生のサックスプレイヤー、寺久保さんを前面に出したセット。寺久保さんはセッティングから出てきていてリハも全部観られたのですが(山下さんは全部おまかせで本番迄出てこなかったよ・笑)、スタッフたちがサウンドチェックでステージを駆け回る中所在なさげに音を出していたのでちょっと心配に…ところが!本番始まってみたらこれがすごかった。なんか…悟ったような音だったよ!フレッシュとかそんなんじゃなくて!小学生の時にチャーリー・パーカーを全部聴いて研究していた(!)との逸話もはさみつつ、そのパーカーと言えば、のバードからインスパイアされた山下さん提供の曲「North Bird」も披露。寺久保さん北海道の子なんだそうです。いやーよかったなー。
勿論sxが入らないパートやソロではバリッと山下洋輔な音も飛び出し、年配の観客から「ようすけー!」と歓声が飛ぶ場面も。pf、bのユニゾンの繰り返しからばあっと展開する瞬間がすごく格好よかった!
カヒミ・カリィのリハに菊地さん、おおともっち、ジム・オルーク、熊谷さんが出てきたところでタイムリミット。うわーん同じ日じゃなければ最後迄観られたんだけどなー。この日はハシゴなのでした。熊谷さんは当日発表になったみたいです。あーどんなステージだったんだろう。

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LÄ-PPISCH/筋肉少女帯『MUSIC DAY 2010 / SATURDAY NIGHT R&R SHOW 2010〜SPECIAL Vol.2』@SHIBUYA-AX

思えば筋少観るの初めてじゃないか…?アルバムは何枚か聴いていたが。橘高さん側のアンプ8台積みましたセッティングにビビり、ツーバスのドラムにおわーとなり、開演前からドキドキしたよ!なんかコール&レスポンスにお約束みたいなのがあってそれには付いていけなかったが、曲は知ってるものばかりでむちゃ楽しかった…橘高さんは全然ルックス変わらないし、内田さんはサラサラストレートヘアになっててなんか若返って見えたし(笑)、本城さんは逆にいい感じで歳とったなーって感じになってたし、オーケンはあんなだし、エディはますますパンパンになっていたようだった。
いやー素で「高木、ブー!」とか「ダーメダーメダメダメ人間ダーメにんげーん、にんげーん」と合唱してしまったよ…「釈迦」も聴けて嬉しかったなあ。新曲も格好よかった。そしてアホみたいな感想を言うがすごく演奏が巧いわ……。

最後に上田現がいるレピッシュを観たのは2007年のAXだった。それ以来の、AXでのレピッシュ。いいセットリストだった!なんか…ああ、続ける気があるな、と言うか……。新曲を作りそうとかそういう意味ではないんだけど。リハしっかりやらないと出来ないだろうな、と言う曲が新しく入っていた(3月のチッタには行けなかったので、ここらへんどう動いていってるか判りきれてないんだけど)。「東京ドッカーン」とか。『マイム』は相当しんどい状況で作られたと聞くが、個人的にはとてもとても好きでヤバいと思っているアルバム。特に上田現の詞と曲は今聴いてもゾクゾクする。こうやってまた、ライヴで聴けたことがとても嬉しかったし、これからライヴで聴けるそういう曲がまた増えていくかも知れない、と思えたこともとても嬉しかった。それがいつ迄続くかは判らないけど。

音のバランスは危ういところもある。こちらの耳の慣れもあるのだろうが、エレピのパートを増井くんが弾いていたり、シンセの音を増井くんがtbで吹いていたりするとドキッとする(増井くん大活躍だな・笑)。確実にひとり(もしくはふたり)足りない、と言う感じがする。勿論矢野くんのドラムはとてもいいんです。でも、「爆裂レインコート」を唄うひとはもうこの世にはいないし、「上田現のテーマ」や「ヒゲパワー」をやる機会はもうないかも知れない。それでもこの日の「ハーメルン」から、あ、次は絶対これだ!と何故か思って実際にそうだった「プレゼント」を聴けたことはなにものにも代え難い出来事だった。そして、マグミって作品の中の登場人物の感情を歌に乗せるのが天才的に旨い歌い手だけど、この日の「ハーメルン」や「プレゼント」はコンディション云々と言ったことはどうでもよくなる程のものだった。いや、それだけではなかったような気もする。

ARABAKIでマグミは脚を怪我したそうで「テーピングしとるんだ」とのことだったけど、そんなん言われる迄気付かなかった。と言うか、言われても「おいマジで?」てなくらい動き回って跳ね回っていて。「『リックサック』やってる時にプチッとな…」と言ってたけどええそれ靭帯?アキレス腱?だ、だいじょうぶ?水を飲む回数も多かったし、高音も出づらそうで苦しそうだった。「LOVE SONGS」ではやはりフロアに飛び込んで、クラウドサーフでPAブースとステージを往復した。ブース傍で観ていたんだけど、泳ぎ着いたマグミはかなりヤバい感じで、正直フラフラっぽかった。目もイッてた。Uターンのサポートをするためだろう、PAブース内にいたスタッフが3人フェンスを飛び越えてフロアに駆け込んで行った。

スタッフに持ち上げられてPAブースにあがった時のマグミ、ちょっと立てない感じだったのね。それでスタッフが大丈夫?みたいに手を出そうとしたんだけど、マグミは「大丈夫!助けなくていい!」とでも言うように彼らを手で制した。そしてフロアに振り返って、そこに飛び込むからセンターに集まれ!とジェスチャーをして再び飛び込んだ。ステージに戻った時酸素吸入してたし、しかし間髪入れずに「美代ちゃんの×××」のイントロに入って、あれすぐホーン入るから吹けるか?大丈夫か?と胸が痛くなったが、tpを構えたマグミはなにごともなかったようにホーンパートを吹き始めた。

実は相当調子悪かったんじゃないだろうか。いやあ…惚れ直した(どS)。

アクシデントがあったからこそ、とは思わないけれど、そういう状況にはいつでも遭っているひとたちだから、どんなことがあってもやりきる(プラスに転じる、とは言わない)ことが出来るのかもと思った。代償が大きいこともあるし、望んでそういう状況に足をつっこんでしまう訳でもないだろう。でも、そうなってしまう。もう何度も見た。と言うより、いつでもそうだったような気すらする。今後バンドが続いていっても、穏やかである筈がない。きっとまたつらいことがある、悲しいことがある。それでも聴き続ける。

橘高さんと恭一のアンプ数比べネタがオモロかった。アンコールでは散々サプライズだぞシークレットだぞと前振りしていて誰もサプライズと思ってすらいなかった(笑)水戸さんも出てきて「サイクリング」を、そしてこのイヴェントらしくポコチンコールもした。いやーポコチンロックっていいよねー。ほんと大好きだよ。

レピッシュはやっかいでしんどいバンド。でも大好きなバンド。



2010年05月03日(月)
塚本晋也お蔵出し『海獣冒険譚』(1999年)

1999年11月3日
日本大学芸術学部 芸術祭
TSUKAMOTO SHINYA IN SPECIAL TALK EVENT『海獣冒険譚』@日本大学芸術学部江古田校舎大講堂

塚本氏の母校日芸でトークイヴェントが開催!と言う事で江古田校舎迄行って参りました。日芸の後輩が監督のプロフィールを追いながらインタビューをする形式で、途中参加者の質問コーナーを挟み、各作品の予告編ダイジェストも上映されました。その様子を超ダイジェストでお送りします。テレコ録ってないので自分の記憶だけが頼り。言葉の細かいニュアンス等違いがあると思いますが、話の流れは忠実になる様心掛けましたのでご容赦下さい。

●ご自分の作品をカルトエンターテイメントと呼んでいますが、これはどこから思いついたのですか?
「CMの仕事をやっていたので、クライアントとか大勢の人からいろいろ言われて、自分のやりたい事が出来なかったりして。それがイヤで『鉄男』を作ったんです。で、その『鉄男』を作る時に、あのーほら、つまらないもんを延々観せるだけとかってあるじゃないですか、人が寝てるのを一晩中撮ってずーっとそれだけとか。そんなのを実験映画とか言ってさあ…まあいいや(笑)そういうのはやりたくなかったんで、エンターテイメントをやりたいって思って」

●高校から絵画を本格的に学び始めたそうですが、それは何か目的があっての事ですか?
「もともと絵を描くのが好きだったし、父親も絵を描く人で、絵を基本にしておけば映像とかデザインとかいろんな事をやるのに役立つぞとサジェスチョンしてくれたと言う事もあります」

●絵ってひとりで描きますよね、
「そうですね…って、普通ひとりじゃないですか(笑)ふたりでこう…うーんとか言って描いてたらちょっと(笑)」

●いや(笑)自主映画って言うのもひとりでやるじゃないですか。撮影も、編集も…絵画からの影響があるのかなと思って。
「ああ、そうですね。自主映画ってひとりで絵を描く作業に似ていますね」

●しばらく映画作りを休んで、野外でテント芝居をされていましたよね。演劇の方に映画とは違う可能性を見出したとかってあります?
「演劇と言うより…パンクなライヴを芝居でやりたい、と言う思いでしたね。外で大暴れしたかったんです。それでテントを張って…日芸の中庭でもやりましたけど。建築学科の人に段ボールで作るテントの設計をして貰って、でっかいのを。学祭とかじゃなくて、普通の、平日にやってましたね。あの、中庭にテントが張ってあるの、学食から見るとシュールでしたよ(笑)でもいっつもギリギリ迄準備やってて、告知とか出すの遅れて、ぴあに載っても欄外の小っちゃいコーナーで。だから人はあんまり来ませんでしたねー」

●学校の外でもやってましたよね。高田馬場駅のすぐ近くにテント張って上演しているのを『塚本晋也10000チャンネル』で観たんですけど、大変ではなかったですか?テントを開けるとすぐ横が線路で、騒音とか、学校以外の場所を使う為の交渉とか、近所からの苦情とか、困難な事はありませんでしたか?
「いや、それはあまり苦になりませんでしたね。やっていた演目がSFの、未来に行っちゃう話とかだったんですけど、上演途中でテントが開くと外が思いっきり現代の高田馬場で、そこで真面目なお客さんとか興ざめしちゃったりするって事はあったかもしれないけど(笑)自分達は楽しく(笑)さっきも言ったけれど、外で大暴れしたかったので。大人になるとどろんこ遊びが出来なくなる、でもしたい(笑)でもホントに大人が外でどろんこ遊びをやったら、それはヤバい人になっちゃう(笑)それなら芝居で、と言う感じだったんです」

●CFの仕事をしながら、芝居をされていた時期がありますよね。二足のわらじは大変ではありませんでしたか?
「大変でしたね…会社が芝居をやるのを許してくれてたんです。社長がそういう、何か面白い動物を飼ってるのが好きってタイプで(笑)『うんいいよー』って。でもイジワルで、芝居の稽古が大詰めの時に海外ロケの仕事入れるんですよ(笑)で…その時はもう、ダメでしたね。もうつっまんねえ〜芝居になっちゃって。一度も通し(稽古)が出来なくて、本番で初めて通したって有様で。音楽も、クライマックスのいいシーンで、最高に盛り上がった箇所から流す筈が、前奏の最初っから流しちゃって(爆笑)役者も場を持たす為にうう〜とかって変な動きとかしてごまかして(笑)もう全然ダメ。CMの方も、納得いかないものが出来てしまった。あれでふたまたはダメと知りましたね。それからは必ずひとつに絞る事にしています」

●その後映画に復帰し今に至りますが、8mmで始めた作品から、製作費も増え、16、35mmとフィルムのグレードも上がっていきます。それに関して。
「8mmとか16mmの頃は、フィルムをじーっと見つめて『これ35(mm)になんねえかなあ』とかって思ってましたけど(笑)『1コマずつ撮れば安くあがるかもしれない』とか(笑)。作品を作る毎にフィルムのmmが上がっていくのは、すげえ嬉しいステップアップでしたね」

●モノクロ作品に関して。
「『鉄男』は白黒で行こうと決めていました。8しか持っていなかったと言うのもあり、最初は8で撮って16にグレードアップする手法もイケるんじゃないかと思って、デレク・ジャーマンが実際そういう作品を撮っていたので、確認の意味でジャーマン特集を観に行ったんです。で、観て『よし、いいぞ』と思ってたんですけど、その特集で16の白黒作品も上映されたんですよ。その色が良くて…粒子が綺麗と言うか、あの、白黒独特の銀色みたいな色が…非常に良く出ていて。で、我慢できなくなって16を買っちゃったんです(笑)。白黒と言っても、僕は白黒も色だと思っているので、例えば『鉄男II』では青と赤、と言う様に基本の色を決めるんですが、それが白黒になっただけなんですよ」

●都市を作品のテーマにする事について。
「例えば深作(欣二)監督だと戦争、若松(孝二)監督だと闘争、崔(洋一)監督だと民族的なもの、と確固たるものがある。でも僕には、世代的にそういうものがないんですよね。東京で生まれ育ったし、都市とか高度成長期とか、それしかないんです。そんなのをテーマに撮っていいもんかなと思ってたんですが、『鉄男』が…あれサイバーパンクとか言われてるけど、僕はエロ映画のつもりで作ってたんですけど(笑)あれの…肉と鉄が有機的にぐちょぐちょになっていく感覚って、僕ら世代の感覚なのかなって。昔の…『サイボーグ009』とかって脳ミソが生身、身体が機械って、かっきり分離してたでしょう。でも今はぐちょぐちょになってる…『TOKYO FIST』にしても、ボクシングって非常に…スポーツったって殺し合いの様なもんですから。リングで人殺しちゃっても罪にはならないそうですからね…そういう、死生観が稀薄になっている現代の都市にもこんな世界が同居しているって言う所も僕らの世代ならではなのかなと。それが作品として成り立っているかなって」

●『双生児』では、忌み嫌っていた貧民窟へ雪雄が外診へ行くシーンで終わります。この他にも塚本監督の作品には割と倫理的なものが感じられるのですが?
「そうですねえ、僕は結構倫理的な人間なんですよ。『BULLET BALLET』は銃をテーマにした映画ですけど、銃器にはいまいちハマれなかった。持ったら結構ハマるんじゃないかと思ってたんですけど、どうしても倫理的な気分が出てきちゃうんです。例えばナイフとかは普段台所で料理とか作るのに使ってて、泥棒とかが来た時に仕方なく使うって言うか(笑)そういうものでしょ。でも銃は最初から人殺す為に作られたもんですからね。撮影に入る前に、撃ちに行ったんですよ。最初は凄く緊張したんですよ。助監督と『ついにこの時が来たか〜』とか言って(笑)ドキドキしながら撃ったんですけど、それは最初の1発2発で、あとは馴れちゃう。あっけない。これが人を殺す道具なのかって…うん、ハマれなかったですね」

●と言う事は、『BULLET BALLET』は「銃はいけませんよー」って言う映画…(爆笑)。
「(笑)そ、そうですね!それもありますね(笑)」

●スタッフ、キャスティングについて。音楽の石川忠さんとは『鉄男』からもう10年になりますが。
「最初はこんな長いつきあいになるとは思ってなかったですね。『鉄男』の時に、鉄を使って音楽を作る人を探してて紹介して貰ったんですけど。『鉄男II』では前回とは違った雰囲気の、静寂の映画にしたかったんで、どうなるかなと思いつつまた頼んでみたら、そういうのもこなしてくれたんで、鉄だけの人じゃないんだなって(笑)『双生児』でも、寓話性のある、無国籍な映画に合った音楽をって依頼して。そういうのにいつも応えてくれます」

●作ってほしい音楽って、どういう風に伝えます?
「結構抽象的になっちゃいますよね、音楽の話は…。口で伝える事もあるし、テープとか持っていって…これはちょっと失礼なんですけど…『こんな感じ』って言う事もある。『双生児』では、北村道子さんの衣裳がチベット民族みたいなイメージだったのでそこからインスパイアされて、チベット音楽を結構ふたりで聴きました」

●そういう抽象的な打ち合わせは難しくないですか?
「うーん、楽ではない…けど難しくもなかった。あんまり不安はない」

●出演者についてです。常連の役者さんが多いですね。
「好きな人を選ぶので…好きな人ってそうそう変わるもんじゃないですから」

●キャスティングの基準は?
「雰囲気を備えていれば、役者じゃなくても構わない。典型的なものを避けたい。僕の映画は現場が長い…時間をかけて撮るんで、メインキャストの人達とはドップリねっちりやりたいんです。それに応えられる、長時間の拘束がきく人をオーディションで選んだり。素人と言うか、そういう染まってない人の方がいい雰囲気を持っていたりするし…ずーっと子役からやってきて、感じよくて『おはよーございまーす!』とか言っちゃう様なのはねえ(笑)イヤなんですよ。逆に脇を固める人は、最初から実力のあるベテランの役者さんを揃えてって感じですね」

●石橋蓮司さんや六平直政さん等個性的な役者さんから、元ボクサーの輪島功一さんやブランキージェットシティーの中村達也さんと言った、他ジャンルからの出演も…。
「石橋さんとかは、もうアングラの王者への憧れから(笑)『双生児』のお手伝いさん役の、もたいまさこさんもそう。(劇団)3○○にいた頃からのファンで。あの役はもたいさんか、早稲田小劇場にいた白石加代子さんかって感じでした。唐十郎さんにもいつか出て貰いたいと思ってて、オファーを続けてるんですけど」

●『BULLET BALLET』では、竹中直人さん自ら出たいと言うオファーが来たそうですが。
「ええ、そうだったんですけど…あのー『BULLET BALLET』はドキュメンタリー風の犯罪映画にしたかったんですね。で、ドキュメンタリー風だと…そこに竹中さんがいると…(笑)『あっ、竹中さんがいるぅ』ってなっちゃうんで(爆笑)竹中さん程になるとねえ(笑)鈴木京香さんはギリギリの線で。役になりきってくれました」

●そういうキャスティングって、脚本を書いている時点で浮かぶものなんですか?
「浮かぶ時もあるし…浮かばない時もあります。『BULLET BALLET』でヤクザの役をやった井筒(和幸)さんはもう、この人以外考えられないって感じで。もう、ホンモノかと(爆笑)」

●役者塚本晋也ってのはどうですか?
「そりゃもう!いい役者です!(笑)監督の要求によく応えてくれますね〜(爆笑)でもそろそろ疲れてきましたね(笑)あのーやりすぎちゃうんですよ。田口トモロヲさんもそうなんですけど、なんか間に耐えられないっていうか(笑)余計に『あぁ…はぁ…うっ…』ってうめき声とか入れちゃうんですよ(爆笑)撮ってる時もそうだし、アフレコでも。田口さん凄いんですよねアフレコ。これいろんな所で言ってるんですけど、凄い過剰なアフレコをするんですよ(笑)『はあ…ぁあ…』(と延々真似をする。これが凄い似てる!)とか凄くやるんですよ(大笑)僕もそうで。編集の時『うわー、やりすぎ!』って(笑)『うわー、オーバーだなあ、恥ずかしいなあ!』って思って沢山切っちゃった。それでもまだ凄く入ってる(笑)」

●監督の作品には破壊衝動がありますが、都庁はまだ壊したいですか?
「(笑)そうですねえ、都庁って出来た時の景観とか評判悪かったじゃないですか、でも僕はいいなーと思ってて。『綺麗でいいなー、壊したいなー、ヒヒヒ』って感じで(笑)いつかオリジナルの怪獣映画は撮りたいですね。で、いろいろ壊して。…今思いついたんですけど、009って世界各国に支部があって活動を報告しあったりしてましたよね。あれの鉄男版で、世界各国に鉄男がいて、破壊の報告しあうの(笑)各国鉄男バージョン!『今日はどこどこを破壊したよー』って報告するの(笑)面白いなあ、イケないかなあ…別に面白くないか(笑)」

●ここで参加者の皆さんからの質問を…挙手でお願いします。
「客席が見えないなあ、来てる人が見えると安心するんですけど」
(客席の照明がつく)

●監督の私生活が気になってしょうがないんですけど…(場内爆笑)。
「な、なんでですか!こ、こわいなあ…」

●今迄でいちばん衝撃的な恋愛体験について教えて下さい。
「えっ!そ、そんな事言えないですよ!まあ〜僕1年前に結婚しましたんで、それがいちばん衝撃的だったって事で、ね」

●『双生児』で捨吉が母親と会うシーンで、側転をしますよね。あれは監督が側転って本木さんに演技指導したんですか。それとも本木さんのアイデア?
「あれは僕ですねー。もう、あそこは側転しかないだろう!って(笑)何で側転かって訊かれると困るんですけど、側転しかないぞここは!って(笑)母親に会って、ウキキーッて感じ。あんなねえ、ドッタンバッタンやったら家のもんが気付かない筈ないんですけどね(笑)音効の柴崎憲治さんに最初に音作って貰った時も、ドッタンバッタン凄くって(笑)あのシーンは風の様な雰囲気を出したかったんで、風の音だけにして貰いました」

●自転車が好きみたいですが、
「あのーひょっとして自転車屋さんの方ですか?」

●そ、そうです。
「あっ、『双生児』のホームページに書きこみしてませんでした?」

●書きました(笑)。
「やっぱり!あのーあれ、インターネットって面白いですねー!あんまり使う方じゃないんですけど、『双生児』の掲示板に行ってみたら昔の同級生とかスタッフの人迄書き込んでて!『ああ、つながってるう!』とか思って!…何の話でしたっけ(笑)」

●自転車…
「あっ、そうですね(笑)自転車屋さん、いつもいらっしゃるんですか?」

●いや、もう辞めちゃったんで。
「そうですかあ。あの時は鎌倉に行ったんですよ。担げるサイズのマウンテンバイク持ってって。もう自転車大好きなんですよ、自転車の映画作りたいんです。って言うかもう作るつもりなんですけど。自転車が好きな男と、いつも寝てる女の話をやりたいんです」
(で、結局何の質問だったんだ?(笑))

●ここで質問コーナーは終わらせて頂きます。では再び…。
「えっ、戻るんですか?もう終わりだと思っちゃった(笑)」

●(笑)いや、まだです。グレートアナログワールドを自認する塚本監督ですが、CGを使う事に興味は?
「…グレートアナログワールド(笑)今はこっちのが特殊になってきてますからね。全編CGCGしたものはどうも…コマ撮りしてガチャガチャってつなげた方が面白かったりもするし。今度やる予定の『空飛ぶ鉄男』でも、こっちの方でやる部分と、デジタルでやる部分とあるでしょうね。『双生児』では、本木くんが同じシーンにふたり出る所…雪雄と捨吉がいちばん過激なスキンシップをする…首絞めあいっこする所ですね、ここにCGを使いました。どちらにしても使いどころが問題」

●今後の予定を教えて下さい。
「鉄男アメリカ。『空飛ぶ鉄男』ですね。そのバクハツ系の前に一発、削りまくった様な映画を…さっき言った自転車をやっちゃうかも知れない。自転車好きな男と寝てばっかりいる女の。ここで自転車への思いを一気に(笑)」

●最後に、映画を作っている人や、ここにいる人にメッセージを。
「メッセージ…(笑)自分が手探りでやってるんで、メッセージなど…うーん…『やればあ〜?』(爆笑)しんちゃんですね、しんちゃん(笑)(クレヨンしんちゃんと晋ちゃんをかけたかったらしい)…そうだな、誰でも思いつく迄は行くと思うんですよ。そこからでしょうね。凄いアイデアを思いついた、でもそれを作るのには6億いるなあ、じゃあ出来ねえなあって、そういう人は、ダメー(笑)。それを形にする迄が才能なんでしょうね。思いつく才能は誰にでもあると思うんです。何が何でも作り上げるってのが大事」

●今日は長い時間どうも有難うございました。
「はーい、有難うございましたー」

そんな訳で大笑いの連続で終わった楽しいトークイヴェントでございました。現場の様子や、監督が作品を作る時に何を考えていたのかの話を聞ける機会はそう多くはないので、興味深い内容でした。

最後に、印象に残った事など。

・オープニングでは、ステージ後ろの大スクリーンで『BULLET BALLET』の予告編を上映。音響も良くて迫力!でした。
・金髪の男のコ集団が最前列に陣取ってておかしかった…ファンってかわいいね。
・モノクロを「白黒」って言ってたのが印象的。
・てれると水を飲む傾向にありました(笑)。
・話がすぐ脱線する。でもそれが面白いんだな〜。間が空くのに耐えられなくて一生懸命、相手を楽しませる為に喋って質問が何だったかわからなくなっていくっていう…。もうおかしかったよー。でもそれを入れると内容が異常に長くなるし(それ程脱線が多かったと言う事か…)、質問がどこに行ったかわからなくなる(笑)ので割愛させて頂きました。いやーホントいいキャラクターだね、監督。お疲れ様でした、有難う〜。