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2010年04月30日(金)
『中山祐一朗 スローリーディングスタイル』

『中山祐一朗 スローリーディングスタイル』@スローコメディ・ファクトリー

般°若に来た時、このお隣のお店は何なんだろう…と思っていました。夜じゃないと開いていないんですよね。ここらへん昼にしかうろうろしないから知りませんでした。スローコメディ・ファクトリーはイヴェントもやっているビールバーなんだそうです。

今回阿佐スパの中山さんがリーディングをするとのことで行ってみました。定員35名、すげいレア。お客さん女性ばっかり、にゃきゃやまさんのモテっぷりを見た(笑)。

いろいろ出た案から、中山さんに縁のあるひとたちに『眼鏡と中山祐一朗』と言うお題で書いてもらったテキストを読みますと言うことで、一時間予定でゆったり始まりました。合間合間に、中山さんがテキストにまつわる裏話を挟んだり、文献の元となった出来事について説明したりしているうちに時間は大幅にオーバー。「これも読む予定だったんです、せっかく持ってきたからやっぱり読む」と『食』にまつわるテキストも読み、二時間超のイヴェントになりました。得した気分。

その『眼鏡と中山祐一朗』の執筆者、ちょう豪華。篠井英介さんのテキストが出た時はビックリした!河原総代や千葉雅子さん、中村まことさん、イケテツと猫のホテルの面々、福田天球さんや山内圭哉さん、村岡希美さん、新井友香さん等々。皆が皆その人柄が浮き彫りで面白いのなんの、そしてそのテキストから浮かび上がる中山祐一朗と言う役者の人柄の面白いこと!殆どのひとが「思ったことを全部口に出す」「言わなくていいことを言う」「頭の中で思うだけにしていればいいのに…」「こどもがそのまま大きくなった」と書いているのがおかしくておかしくて。「こういうのは事前に内容を知らない方がいい」と、中山さんはほぼ初見で読んだそうで、読み乍らしどろもどろになったり、「そんなつもりは…」と言ったり、あげくの果てにはその言ったことを憶えていないと言う、あまりにも中山祐一朗なリーディングでした(笑)。

とは言うものの、寄稿者の人物評や思い出話をぽつぽつ話し、その中に彼らへの敬意を折り込むと言う気配りを見せる大人な面(笑)もあり、中山さんの魅力がよく感じられたイヴェントでした。楽しかったー。イケテツに対してのあれやこれやがよかったな。ギャラも殆ど出ないような頃から一緒に芝居をしてきて、今こうやってお互い違うフィールドで活躍している。河原さんとの関係もそう。

それにしても中山さんの食への興味と言うか執念を思い知ったな…(笑)楽屋で薫製作って嫌がられているって話はよく聞いていたが。で、それをすんげー長塚くんが嫌がっていて、演出家としてもいらついていて、でも出来上がった薫製を食べたらそれがあまりにもおいしいので結局怒れず今に到るって話が面白かった。いつか料理本の材料表を絶叫朗読する前衛公演をやってみたいそうです。そりゃ観たい!



2010年04月29日(木)
『鉄男大図鑑』+お蔵出し予告

『鉄男大図鑑』@PUBLIC/IMAGE.3D

歴代『鉄男』のイメージボード、スチール写真、各国で公開された時のポスター類、フィギュア原型等の展示。最新作『鉄男 THE BULLET MAN』の絵コンテも展示されていたので、ネタバレ嫌なひとはご注意を!と言っても、『鉄男 THE BULLET MAN』公開前に展示終わっちゃうんだけどね……。

撮影した16ミリカメラ(スクーピック)も展示されていて、はあー、このカメラであの作品たちが…とニヤニヤした。

塚本監督のコンテはとても味がある絵。『電柱小僧の冒険』を観ているひとには判ると思うのですが、エンドロールで流れていたあの絵柄です。沢野ひとしさんみたいな感じの揺れる線。『鉄男II THE BODY HAMMER』のタイトルシーンのコンテが面白かった。まだサブタイトルが決定していなかったのでしょう、横にスライドする“TETSUO”に続けて入る文字が、“ナントカ☆ブントカ”と書いてありました(笑)。

これを観てしみじみいろいろ思い出したのですが、自分は塚本監督の撮るおかしみがつくづく好きなんだなあと。『鉄男』の野菜炒めとか、『鉄男II』の、ちぎれた受話器をそっと廃材にかけるところとか。『BULLET BALLET』の「ごはんはいいよ〜!」とか、出血が水芸みたいだったりとか。四畳半で起こるホラー、お鍋で作った妖怪探知機、叩っ切られるダイコン。登場人物たちは、楽しそうにネガティヴな道を走る。

マイナーなプランでメジャー映画を撮る苦労をよく話していたのを思い出しました。最新作のプランはかなり前からあったのに、なかなかクランクインに到らなかったのは、マイナーなプランに製作がなかなか就かなかったと言うこともあったようです。ようやくここ迄来た。公開がとても楽しみです。

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■と言う訳で
『鉄男 THE BULLET MAN』公開に向けまして、5月22日の公開初日迄に、過去オフラインの方で出していた塚本監督トークイヴェント(1999年『海獣冒険譚』、2000年『TSUKAMOTO AMUSEMENT NIGHT』『TSUKAMOTO COUNT DOWN!』、2001年『TSUKAMOTO MIDNIGHT!』)の模様をこちらに掲載していきます。
今回テキストを発掘して読み返してみましたが、言っていることが一貫しているし、言ったことは時間がかかってもしっかりやり遂げているんですよね。『鉄男』シリーズの集大成とも言える『鉄男 THE BULLET MAN』公開前に読んで頂ければと思います。



2010年04月28日(水)
ミヅマ三人衆、うさ公、御名残四月大歌舞伎千秋楽

会田誠+天明屋尚+山口晃『誠がいく、尚がいく、晃がいく ―ミヅマ三人衆ジャパンを斬る―』@高橋コレクション日比谷
自分が今迄観た中でいちばん間近で『ジューサーミキサー』を観れました。展示位置が高くないのです。過去観た時は全て床面から数メートル上に展示されていて、見上げる遠い感じだったけど、このギャラリーでは床面から数十cmのところから展示されている。目の前!で、“あれ”が観られます。いやもうすんげいいい!すんげいいや!ひとりひとりの表情が細かく観られるし、ひとりひとりの身体も細かく観られます。底に行くにつれその身体がどんなふうになっていってるかもなー。もうこれ何度観たか憶えていないくらい観てるけど、気持ちわるいとか怖いとかそういう感情がわかないのが自分でもどうかと思う。すごい作品にはすごいとしか思えませんよ…。作者の倫理観とかフェミニズムとか知らんわ、ご本人も作品解説で、どう言っても伝わらないだろうと思うしフェミニストからはなんやかや言われ続けるだろうと書かれていましたが。
まあひとには勧められません……。
あとみんなといっしょシリーズの『寅次郎 二歳』が観られたのも嬉しかった。これもご本人解説によると「アーチストのアーチストぶったクロッキーやエスキースの鼻持ちならなさがいやで、意識的にそれを外れるようにして描いたもの」。これも最高です。二歳のこどもって、こうなんだろうな〜としか思えないよ。
あああ、会田さんのことばかり書いている。山口さんの綿密な狂気に天明屋さんの任侠魂炸裂っぷりも素敵です。
いやもうミヅマって頭おかしい、大好き。こんなのが有楽町のド真ん中で展示されてるってのが痛快。

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『ゴーゴーミッフィー展』@松屋銀座8階大催場
カツアゲされまくりました……。
それはともかく、今回コラボものが多かった。大人ファンのことも視野にしっかり入れてきてるんだろうなあ。展示場の閲覧用デスクとスツールは深澤直人さんデザインのもの。ミニマルで削ぎ落とされた無駄なしのラインをブルーナカラーが彩り、家具にも芸術品にも見える素敵さ。販売もされていました。ほ、ほしい…でも置く場所ない……。
展示方法も凝っていて、ブルーナさんが絵を描くバストショットを壁面スクリーン、手元ショットを床面に設置された絵本(スケッチブック?)型のオブジェ面に映していたりと、立体的なコーナーも多かったです。今回初期の原画も結構あって、色指定になる前――ポスターカラーで彩色した原画もあって、興味深く観れました。
こどももおとなもうさこちゃんを観てにっこり。そして出口にあるグッズ売場を手ぶらでスルーすることはかなり困難(笑)。55歳おめでとう。
・ブログもあるのよん→『ゴーゴーブログ』
会場の様子がわかります。

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歌舞伎座さよなら公演『御名残四月大歌舞伎』第三部@歌舞伎座

『実録先代萩』『助六由縁江戸桜』。一年半くらいさよなら公演をやっていて、「実のところいつ閉まるんだっけ…?」なんて思った時期もありましたが、いよいよ本当にさよならの日がやってきました。本興行は本日で千秋楽、30日の閉場式を以てこの歌舞伎座は幕を閉じ、改修工事に入ります。

昼過ぎから銀座に来ていたので、ひとまず17時過ぎに歌舞伎座前へ。二部の上演中にも関わらず、すごいひとだかり。報道陣も沢山いて、インタヴュー録りやレポートをしている。周辺の横断歩道では、携帯やデジカメを持ったひとが信号の変わる度に立ち止まり、『本日千秋楽』の垂れ幕たなびく最後の劇場の姿を撮影しています。中央分離帯に取り残されそうになってるひともいた(笑)。向かいの通りも見物人でごった返していました。仕事の手を休めて感慨深そうに様子を眺めているお店のひともいたなー。改修工事中はお客さんが減るだろう。大好きなお弁当屋さんもあるので、新橋演舞場に行く時や、銀座に出向いた時は、足を伸ばして買いものしようと思ったり。劇場前で46年間甘栗を売っていたおじさんは、これを機に引退するとのことで、出店にご挨拶の張り紙がありました。栗は当然のように売り切れていました。

裏に回ったり、周辺を散歩したりしているうちに三部が開場。ひとごみをかきわけて入口へ向かうと、あ、サイモンさんだ!本興行最後のもぎりを務めてらっしゃいました。私も何度かもぎってもらったことがあります。この日は隣の方にもぎってもらいました。サイモンさんにはファンも多いのでしょう、プチ渋滞になってた(笑)。おつかれさまでした、と声をかけているひとも。

ロビーはとても華やか。奥さま方が笑顔で挨拶しています。ふと見上げると二階にもじゃもじゃしたひとがいる。篠山紀信さんが撮影されていました。開演ギリギリ迄劇場内をうろうろ。歌舞伎座のお稲荷さんにもお参りを。売店は品薄、めでたいやきは焼いてるのに売り切れ(予約でいっぱい?)。ここでもお店のひとに最後の声をかけているひとが沢山。ご高齢の方も多いので、閉場と同時に引退される職員さんがかなりいるとのこと。改装後にはどんなひとたちが持ち場に就いているのかな。コーヒーを売ってくれたおばさんに挨拶をして席に着きました。

直前にタさんから「昨日は芝翫さんが体調不良で休演、代役が福助さんだった」と聞いて冷や汗が出ましたが、しっかりしたご様子で出ていらしたので胸をなでおろす。『実録先代萩』の浅岡、素敵だった!それにしても大向こうの量が半端ない。最後の最後な上にオールスターキャストなもんだから、出てくるひと出てくるひとに悉く声が降る。こんなにいっぺんに大向こう聴いたの初めてです。しかし声を掛けるタイミング以外の劇場内の空気は研ぎすまされていました。普段は結構寝てるひととか喋ってるひととかお弁当の包みをガサガサ言わせてるひととかが必ず何人かいるんだけど、流石にこの日は雰囲気が違ったなあ。まあ、寝てるひとはいたのかも知れないけどね(苦笑)。

『実録先代萩』は子役が出ずっぱりで、台詞も多い。亀千代を千之助くん、千代松を宜生くんが懸命に演じます。狙ったかは判らないけれど、次世代に未来を託す思いが感じられる、現歌舞伎座の最後にぴったりの演目でした。とは言うもののこれ、結構酷い話なんだよね…千代松無理矢理連れてかれちゃうんだもん。泣きの動作が思いっきり振付けなんですが、それでももう可哀相でたまらんもん。しかもふたりともかわいいだもん。かわいいそうだよー!幸四郎さんの鬼ー(役が)!浅岡はずっと嘆きっぱなしです。演じるだけでもう憔悴しそう。芝翫さん、おつかれさまでした。

それにしても最後の花道での片倉小十郎(幸四郎さん)と千代松はビシッと絵になって格好よかったわ…割れんばかりの拍手が響き渡りました。

休憩時間もおべんと食べずに場内をうろうろしみじみ。

とうとう最後の演目です、歌舞伎十八番の内『助六由縁江戸桜』!海老蔵さんの口上で幕を開けました。出てきた途端わあっと声が上がり、続けて大向こうがどばどばどばっ!いずれは海老蔵さんが團十郎を襲名し、新しい歌舞伎座で助六を演じるんだよなあと思うと、続いていくものの計り知れなさに思わず身震い。ちなみに海老蔵さんは来月新橋演舞場の『助六由縁江戸桜』で助六を演じます。こちらは三浦屋格子先より水入り迄。

それにしてもちょう豪華キャスト。助六を演じたことのある方が4人も(菊五郎さん、仁左衛門さん、三津五郎さん、海老蔵さん)出ている。彼らが團十郎さんの助六を盛り上げる、花を添える!ちょー贅沢…目が回る(笑)。

で、助六です。ああ助六です助六です。結構じらすんだよねー。しかし彼が出て来る迄もド華やか、まずは並び傾城でドーン!続いて揚巻の道中でドーン!白玉出てきてドーン!たすけてー!並び傾城の時点でもう豪華絢爛と言っていい程なのに、40kg超と言われる衣裳(タさんに教えて頂いた参考:今回白玉を演じた福助さんが揚巻を演じた時の話)を身に着けた揚巻が花道に現れた瞬間と言ったら。もう場内に突風が吹いたかのように空気が動いた感じがしました。なんだろう、あの場にいたひと全員が揚巻を見つめるために首や目線を動かした、それが風になったかのようだった!ホントに!いんやもう豪奢過ぎてこっちの感覚もおかしくなってきて、数多に挿された簪を見ているうちに、「あれ?ガンダム?」みたいな……。もうさ、衣裳とかそういう次元じゃない!でも装置ってのも違うぜ!着ている人物含めて芸術品です。あんなん着て優雅な身のこなしが出来ること自体信じられん…動けるだけでもすごいのに。玉三郎さんすごすぎる……!そして福助さんの白玉!ふたりが背中をそらして決める場面はため息とどよめき!だってこれ、相当踏ん張らないとひっくり返っちゃうって。足だけでなくて、肩も首も腕も胸も腰も。女形の(筋)力を思い知りましたよ……。

ちなみに並び傾城の五人の中に新悟くんもいるのです、うふふ。この中から未来の揚巻や白玉が…と考えるとまたしみじみ。

で、意休も出てきていよいよ助六の出。花道入口の幕がシャッと開く音とともに大喝采!花道で出端、團十郎さん格好いい!いやーもうどうしようってなもので。語り、踊り、一挙手一投足がキマるキマる。拍子木もバシバシ入る、これが長い!のに緊張感が切れない!いや〜長かったな、wiki見たら20分くらいやるもんらしい。ようやく本舞台に入ってきた助六さんはモテモテですよ。いや〜モテるねえ、モテの権化ですねえ。客席もやんややんやで、見栄が決まると屋号飛びまくり、助六と言えばの言い立ての前には「待ってました!」そして始まる長台詞「いかさまなぁ、〜」!拍手、拍手、拍手!

で、なんやかんやあって股くぐりです。出てきた通人里暁の勘三郎さん、やってくれました。もともとこの場面の里暁は即興上等なので皆待っていた感じ。出てきた途端にわあっとどよめき、客席も「来たよ!」「やってくれよ!」と言う雰囲気。「股をくぐれ」と言う團十郎さんに「あなたをどっかで見たことがある…夏雄さん(團十郎さんの本名)と言うひとに、似ているなあ」。もう大ウケです。続けて「孝俊(海老蔵)くんが落ち着いてよかったですね」「このひとニューヨークで換金する時『せんだらーず』って言ったんですよ、千は日本語だよ!」やらなんやらつつきまくり、「大病を克服して本当によかった」と言ったところで大拍手。しかしその後「治療で血液型が変わってあたしと同じになったんですよ」でドッとわく。團十郎さんちょっとブルブルしていたような気がするけどなんとか耐えました。続いてのターゲットは助六の兄さん(曽我十郎)の菊五郎さん。「今日いらしてますね!」と寺島しのぶさんに目をやって(見えてるんですねー)、「世界に羽ばたくしのぶ!」と話を振ります。この時点で菊五郎さんかなり危なかったんだけど、「昨日食事奢ってもらったんですよね」との言葉に遂に陥落。おかし過ぎる!なんかもうここらへん、ふくろうをからかうりすのナトキン(@ピーターラビット)に見えたよ…しっぽ喰いちぎられちゃうよ……。

あ、今思い出した。股くぐる時に里暁が手ぬぐい(ハンカチ?正方形だった)を被るんだけど、リバーシブルで三升と重ね扇に抱き柏柄だった。仕込みも完璧です(笑)。

やっとふたりの股をくぐった勘三郎さん、花道でもいろいろ語ります。「皆さんよく券(チケットって言わないところがいい)とれたね」「徹夜でとったひともいたんだよね(後日聞きましたが、勘三郎さんと仁左衛門さんは夜中徹夜組に声をかけに行かれたそうです)」「お別れですね」「沢山使って頂いて有難うございます」。そして「新しい劇場で、また沢山夢を見させてもらいましょうよ」。拍手と歓声、ジーン。

そしてお母さま登場、ひいーとなる兄弟。揚巻の心意気が素敵過ぎる…いやー揚巻はホント格好いいですね、やっぱりあれだけの装束を身にまとうひとは人間力がないと着物に負けるわ。五代目坂東玉三郎がいる時代に生まれたことを幸福に思うー!揚巻の情、しかと観させて頂きました。去る助六、見送る揚巻。歌舞伎座独特の、横長の舞台に速やかに幕が引かれる。鮮やかな幕切れ。

拍手は止まぬがカーテンコールはなし。清々しい千秋楽でした。そう、歌舞伎はこれでおしまいではなく続いていくのです(勘三郎さん、最近乗ったタクシーの運転手さんに「来月から三年間仕事なしですか?」て言われたとか・苦笑)。新しい歌舞伎座が開くのを楽しみに、しばらく他の劇場で。おつかれさまでした、沢山の夢を有難う。



2010年04月27日(火)
矢野顕子『ここが音楽堂!』弾き語りツアー

矢野顕子『ここが音楽堂!』弾き語りツアー@東京国際フォーラム ホールC

ピアノ弾き語りのライヴを観るのは随分久し振り。弾き語りのアルバム自体が久し振りだからね、出前コンサートも都内ではなかなか実現しないし。歌とピアノ、やのさんの真骨頂。ハズレは絶対にない。

しかし、やのさんは言った。「もう52年弾いているけど、まだまだピアノについて分からないことが沢山ある」。やのさんをしてこう言わせてしまうピアノと言う楽器の奥深さ、そんなやのさんの演奏を聴くことで毎回更新される自分の中のピアノと言う楽器の素晴らしさ。運搬が容易ではない楽器なので、大概のピアニストは、そのホールに設置されているピアノを弾く。一期一会のものもある。長い間放っておかれていい音が鳴らなくなっているものもある。やのさん曰く「もういいっすよ…」とひねくれてしまっているものもある。「そんなことないよ、いい音だよ」とコンサートの間励まして、それに応えてくれるピアノもあれば、最後迄理解しあえないピアノもある。

この日のピアノはとてもいい子だったそうです。歌の間にも、MCをし乍らピアノにずっと触っているやのさん。コードを弾く、パッセージを繰り返す、指を冷やさないためと言うのもあるだろうが、全てがこの日この時にしかない曲になる。「『音楽堂』のツアーだから、この中からの曲をメインに…と言いつつ、そうはならないんですけどね(笑)」。過去の弾き語りアルバムからの曲も、どのアルバムにも収録されていない曲もあった。そして『音楽堂』からの曲も、ピアノアレンジが変わっているものがあった。

どれも素晴らしかったのですが、個人的なハイライトはRCのカヴァー「恩赦」から「きよしちゃん」への流れ。やのさんの歌と演奏は勿論、観客の集中度もすごかったように思う。

もともと歌とピアノだけで、音ひとつすら聴き逃すまいと言う空気が張りつめているやのさんの弾き語りコンサート。MCで、物音をたててはいけない、と落としたチラシ類を無理な体勢で拾おうとして肩を脱臼したお客さんの話(「出て行くのがステージから見えていたんです。気持ちが悪くなっちゃったのかなと思っていて…終演後スタッフの方が『退場されたお客さまは、肩を脱臼されて……』と。……ええ?脱臼!?エルレガーデンのコンサートじゃないんですよ、私のコンサートでですよ!」(笑))が出たのですが、実際それくらいの緊張感が常にあります。私もお腹鳴らしちゃまずいと開演前におかし食べたもん(笑)。ちなみにそのお客さんは元気になられて、次のコンサートにもいらっしゃったそうです。よかったよかった。

閑話休題。でも、「恩赦」「きよしちゃん」の時は、音を立てちゃいけない、静かにしていなきゃいけない、なんて自制はどこかへ消えていた。やのさんの歌とピアノ以外に、意識が向かなかった。他のひとのことは判らないけれど、自分はそうだった。そして、静まり返っている客席から、立ち上るような熱を感じた。声をあげずとも、身体を動かさずとも、ホールの中は熱気で満たされているようだった。最後の一音の残響が消え、やのさんがピアノから指を離した途端、弾かれたように歓声と拍手が響き渡った。

ゲストの細美くんとのコーナーもよかったです。細美くんとても緊張していたみたいで、それがこっちにも伝わってきてドキドキし乍ら観たよ!ふたりの共作曲のリリース、是非実現してもらいたいです。

立花ハジメさんのステージアートも、不穏な世界が続く中、唄い続けるひとへの敬意が溢れているように感じられるもので、とても印象に残った。

終演後、ホールに清志郎の声で「恩赦」が流れた。もうすぐ一年になる。真夜中の歌舞伎町で訃報を聞いた時のひんやりとした空気は、ずっと憶えていると思う。きよしちゃん、いい曲だね、きよしちゃん。きよしちゃん、ほんっとぉ〜にいい曲だね、きよしちゃん。Everything's gonna be alright. We'll do anything to end this fight.

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■ふとっぱら
前日行ったポンチさんから「綾鷹がもらえた」と聞いていたので、ペットボトル一本だろうと思っていたら。やのさんのメッセージカード(ちゃんと封筒に入ってる)入りの二本セットしかも箱入りしかも紙手提げ付きのものが終演後配られました。あわわわわ有難うございます



2010年04月25日(日)
猪熊弦一郎展『いのくまさん』

猪熊弦一郎展『いのくまさん』@東京オペラシティアートギャラリー

2006年に出版された谷川俊太郎さんのテキストによる『いのくまさん』を基盤とした展覧会。猪熊さんの仕事を紹介する絵本が立体的になりました。

『顔』『鳥』『猫』『色』『形』の5セクション。浅葉克己さんのタイポグラフィによる谷川さんのテキストがプリントされた大きなビニールシート垂れ幕でエリア分け。段ボール素材やアクリルドームで作品をシンプルに飾り、展示場を遊び場のような雰囲気に。一見落描きにも思えるドローイング(多分ホントの落描きも混ざってると思う笑)、油彩、水彩、木炭、ミクストメディアが綺麗に並ぶ。うきうきして天井の高いフロアを進む。かわいいねこ、ブッサイクなねこ、ブッサイク=かわいい。あーねこはかわいいー。いのくまさんの描いたねこたちは、紙の中でやんちゃに暴れ出しそうだったり、うとうとしてたりするみたい。

しかしフッツーに年譜に「マティスに『君は絵がうますぎる』と言われた」とか書いてあるのがすごいわ(笑)。天才同士が出会うこと自体は珍しくはないけ…と言うか必然でもあるだろうけど、なんてえんだ、一緒の時代に生きていて、海を渡って交流してるってことがすごい…。

『ぬりえをしよう』セクションに置かれていたおみやげのぬりえを貰って帰ってきました。久々にぬりえをやってみるか。

グッズ売り場には例の『猫』も置かれていました。いのくまさんがかいねこを疎開先に連れて行ったことで起こったあれやこれやなエッセイ『みっちゃん』が掲載されています。

東京オペラシティアートギャラリー収蔵品展『ジオメトリック・イメージズ』、project N『喜多順子』も面白かったです。喜多さん描く動物や魚、涼しげでかわいい。



2010年04月24日(土)
『2人の夫とわたしの事情』『SUPER TOKYO』

『2人の夫とわたしの事情』@シアターコクーン

どコメディなんですが、ケラさんが演出したからこその黒いものが見え隠れするスリリングな舞台でもありました。うすい皮膚が何層にも重ねられたような登場人物の感情が瞬時に表面に浮かんだと思えば、次の瞬間には身体の中に沈んでいる。幾重にも折り重ねられたそれは、観る側がちょっと注意を逸らした途端にも顔を出すので、“その瞬間”を見逃しただけでも解釈が変わりうる。

そしてその、一見イージーに見えるストーリー展開を複雑に構成した脚本・演出を軽々と乗りこなしているように見えてしまう巧い役者を観ると言うのは最高に楽しい。台詞量もかなり多かったのに、誰も噛まねえよ。これって最近あんまりないんだよ!悲しいことだけど!で、こんだけ巧いと、噛んだとしても逆に、役本人が噛んだように見えてしまう次元迄行ってる。イギリス人を日本人が演じている時点でもうそれは事実ではないんですが、それを巧い役者が演じると真実になるのだ。

いやーホントにお松はすごい。この妻の役って、自分の利益を追求して動く人物で、それは当然、何故なら私は皆から愛される存在だから。愛されるのは、私が国の義務を果たし、容貌もよく、気配りも気遣いもこなしていて、素晴らしい人物だから。と思っているひとなんだけど、これって単純な役者が演じたら余程のアホ女に見えるか、ずる賢い悪女にしか見えないですよ。そうなると彼女には哀れみや憎しみばかりが浮かんでしまう。しかしお松が演じるとかわいい!ああそうかもって思っちゃう!この妻には虚飾がない、嘘がない。思ったことを全て表に出してしまうひとなんだ、とちょっと好感すら持ってしまうのです。確かに嘘がないんだろう、最初の夫を亡くした(と思った)時本当に打ちのめされ、悲しんだのだろうし、そして強く生きていこうと思っている。過去に囚われない魅力的な女性にすら見えてしまう。しかしところどころにしっかりアホでずる賢い面も見せてくれるので、観ているこっちはふたりの夫と同様困惑し、ちょっとムカッとし、最終的には妻の幸せと新しい夫への共感と一抹の寂しさをほろりと感じてしまい、うっかり「あー、いい話だったなー」と劇場を出ることになってしまう(笑)。

とにかく妻がどう動くかと言うのがキモではあるのですが、それを受けるふたりの夫も巧くなければここ迄多層的な舞台にはならないなー。段田さんの巧さは鉄板ですが、ケラさんと初顔合わせの渡辺さんがまたよかった。巧いひとってのは素じゃない隙を作ることが出来るひとなんだ。あー、いい舞台を観た!

終盤段田さんが松さんの首を絞めるシーンの演出はケラさんならではだなあと思った。こういうことってホント紙一重で、誰でもうっかり殺しちゃうし、誰もうっかり死んでしまうんだ。自分はそうならないなんて信じられるか。うっかり殺さないで、うっかり生き残ることも同様。

大森さんが体調不良で降板(残念。おだいじに…)、代役でナイロンの猪岐さんが演じた弁護士役がとてもケラ色の強い造形になっており、そこはもうナイロンの舞台を観ているような錯覚すら起こしそうだったのですが、大森さんが演じたらどうなったかなあと思うところはありました。猪岐さん自体はもう、すごくよかった(笑)法をかいくぐることが出来るならば手段は選ばない極端な弁護士像を賢く愚かに表現していました。ここにも巧い役者の底力と言うものを感じました。

戦時中の暗い雰囲気、離婚調停の面倒さ、男女の性格の違いもきめ細やかに描かれていて、エキサイティングな三幕劇でした。

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■LESLIE KEE『SUPER TOKYO』写真展@スペース オー
コクーンの前にこれ。
13歳の時に39歳の母を亡くしたレスリー・キーが、39歳を迎える4月に世に出した写真集『SUPER TOKYO』。39はサンキュー。売り上げの一部は『お母さんの命を守るキャンペーン』に寄付されるそうです。
2008年にスタートしたプロジェクト。その間離れてしまったカップルや家族もいるのだが、写真の中の彼らはとびきりの笑顔。皆がいい顔をしている。きっとこの時の感情には嘘がなかった。それを捉えた写真の素晴らしさも感じました。
そして被写体の笑顔は撮影者の笑顔が鏡のように映し出されたかのようにも感じられました。最後のセクションに展示されていたレスリーは、とてもいい笑顔だった。
所謂芸能人も多いのですが、個人的に俄然面白かったのは写真家を撮ったもの。伊島薫さんや平間至さんのヌードがとても魅力的。“撮る人間”は“撮られる人間”としても最高に素敵な被写体。
ADは井上嗣也さん。写真集もモロ好みのデザインなので買ってしまいそうだなあ。



2010年04月20日(火)
『THE BACK HORN KYO-MEI大会』

『THE BACK HORN KYO-MEI大会』@Zepp Tokyo

ほ、ホントに雨男なのな……。思い返してみれば、確かにバックホーンのライヴの日って雨多いわ。しかも中三日でカッチリ声を戻してきました、お見事。MIOさん曰く「喉を湿気でケアするために雨降らすんじゃないの」……山田くんなら出来そうな気がするよ、不動の妖怪枠決定。

この日は具合もそれなりによかったので楽しく観られたよー。PAスペースの真後ろで観たら音のいいこと!そんで音のデカいこと!バースデイ(と一月のミッシェル映像@リキッド)以外で久々に耳がキーンとなった。ベースの音が粒だって聴こえたよー、ほげー。フェンス越しになるんだけどド真っ正面だし、全体がよく見えるのでよかった。PAスタッフがノリノリで卓を操作してて微笑ましかった。いいスタッフに恵まれているなあと思いました。

で、ツアーファイナルだったんですね。よう知らんと東京公演は全部申し込んでいて、クアトロだけ外れたんだけど(…)。そして松田くんはAXとZeppの間にHEEFESTに出演していたそうです。ぴーとさんとこで松田くんがほめられていて嬉しかった…父兄か。てかこのぴーとさんのブログ素晴らし過ぎてこちらも読んでてもらい泣きしてもうたんですが、リンク張っていいでしょうかどうでしょうか。芝居の方はバンバン張ってしまうが(いつもお世話になっております)、音楽の方はなんと言うかほら、自分にとっての特別なバンドについてのあれやこれやってのはすごく繊細なものだからなあ(いや芝居もそうだけどね…)。と悶々と考える。

で、このぴーとさんのレポを読んでいたこともあり、松田くんの、歌い手いてこそのドラミング、についていろいろ考えつつ観たりしていました。MCでは初めて選挙に出ましたとか初めてプレゼンしますって感じなのに、叩いてる時はどーんとしてるよねー(笑)前の三人も安心だ!年長さんてのもあるのかしら。

「生命線」を聴けたのが嬉しかった。「空、星、海の夜」も!この二曲を爆音で聴くと言う体験も面白かった。帰宅後歌詞集読みなおしちゃった。

で、まあいろいろ考える訳ですよ…ここですごく話が飛ぶが、今年のフジにロキシーミュージックが決まってんですが、このバンドの「More Than This」にはもう個人的に思い出があり過ぎて、しかもなんてーんだ、その思い出ってのは、誰にも言わずに墓迄持っていくだろう感覚すらある訳ですよ。で、そんなん作った方は知らない訳で(笑)。いつ誰がどんな状況で自分たちの作った曲を聴いて心に留めているなんてことは。皆が同じ曲を聴いていても、その曲は聴いたひとの数だけの喜びや悲しみや、そんなものを連れて来る。出会えてよかったなあと思う。

バックホーンにも、そういう曲がいろいろある。そんなことをしみじみ思ったいいライヴでした。

対バンのブラフマンもよかったです、以前ロンナイで観て様子は把握していたので最初から後ろに避難しといた(笑)。OVERGROUND ACOUSTIC UNDERGROUNDのヴァイオリニストであるマーティンがやってるJohnson's Motorcarがサさんと縁があり、面白い話をよく聞くので、OAUも観てみたいな。スペアザは遅刻して観られませんでした…Zeppは遠い。



2010年04月18日(日)
『ザンジバルナイト in 野音2010』

『ザンジバルナイト in 野音2010』@日比谷野外大音楽堂

(昨日からの続き)と言いつつ、真剣にステージに立ってます!なんてリリーさんやみうらじゅんはなんだか気持ち悪いな…(笑)。そんなゆるゆるイヴェント。そういうこっちもゆるゆるで、「今年で三年目で〜す」と言うMCを聞いてあれ、三回とも観てる!皆勤してるやん!と気付く。

そういえばリリーさん、「晴れてよかったですねえ。昨日の野音は怒髪天だったんで、昨日降れと思ってました」と言っていた(笑)こういう腹黒いユルさがいいんだよね……。バチが当たれば因果応報です、それでいいんです。

あとあれだ、話していてようやく気付いたが、ずーーーっとザンジバルとオフレコジャンボリーを混同していた。どっちにもリリーさんが出ている、箭内さんがうっすら関わっている(ような気がする…でも今回箭内さんからは花が届いていた。お客さん側なの?)、あとみうらさんとかトモロヲさんとかグループ魂界隈とか、そしてSDPにソウルセットと被りも多いし…このユルさ加減からして、どうしてここにバリバリ硬派な音を出すスライマングースがいるのか判らん……今回は出演してませんでしたが(はなちゃんはTOKYO MOOD PUNKSに出ていたが)。と言いつつ、川辺ヒロシやSDPのシリアスな面、彼らが対峙してきたことはバリバリ硬派なので、うっすら納得もしている。その乗りこなし方は軽やかで、真摯で、数々の別れを繰り返し乍らどこ迄も走っていく。

と言う訳で毎回誰が出るのか把握していないまま出掛けていきます。ここらへんは無条件に信用しているなあ。しかし今回サンボマスターがちょっと浮いていた。いや、すごくいいライヴだったの。でも、ちょっと面喰らった。あの流れのまま終わったから拍子抜けしてしまった。

ゾノネムがゆるゆる下ネタラップを噛ました後に、曽我部恵一BAND。ウクレレえいじは時間配分を間違えて、終盤のネタはひたすらコールアンドレスポンスと歌に終始(笑)。そしていつの間にか「ザンジバル学園に入学って感じで!」とSCANDAL。い、いいの?こんなかわいくて演奏も歌もしっかりしているガールズバンドなのに、ザンジバルに関わって!いろいろ失うものも多いんじゃないのか…思えばこのひとたちオフレコジャンボリーにも出ていたわ。その時はまだひとり17歳で、最後のセッションには出てこれなかったんだわ(深夜になったので)。リリーさんがだまくらかして入学させちゃったのかしら(笑)。

そして綺麗な青いカーディガン姿でふらっと、MATSURI STUDIOからやって参りました向井秀徳アコースティック&エレクトリック。アコギ一本、ノンエフェクト、ヴォーカルのエコーやループは全部自分の口で繰り返し。フェイドアウトも自力です、「My Crazy Feeling」。「二日酔いで吐きそうです」と言った先から缶ビールで迎え酒、白昼の「The Days of NEKOMACHI」。ユーミンのカヴァー「守ってあげたい」は白眉。ホント格好いいわこのひと……。

SAKEROCKは、メンバー出てきたリハからそのまま本番。リハの時思い出したようにハマケンが踊り唄い、皆微笑ましく見守る。あーマンチカンハマケン、かわいいねー。でもこのひとのTbの音ほんと好き、遊び疲れた夕方、帰りたくないのに辺りが暗くなってともだちも帰っちゃって、とぼとぼ家路に着く時に聴こえてきそうな音。そんな素敵な音を出すのに、ハマケンは乳首を見せまーすとシャツをめくってくねくね踊ってくれました。やれやれとたしなめる星野くん面白かった…。

峯田くんは一年振りにひとまえで唄うそうで、と言うことは、前回のそれって昨年のザンジバルかい。しかし新曲含めどれも今この時にしか聴けない切実さで、こちらも聴いていて気付けば掌に爪が食い込んでるくらい緊張して聴いた。話すことはゆるゆるだし、下ネタ多いしなんだけど、このひとの歌はやっぱりすごいな…。喉はもう元には戻らない気がする、でもだからこそあの声で唄えるものもあるのかも知れないし、それを待っているひとはとても沢山いるんだろうな。無事新譜が出ますように。三浦くん演出『裏切りの街』の劇中音楽はリリースされるそうでよかったねえ。

TOKYO MOOD PUNKSで富澤さんが出てきたら一瞬ドキッとした。アベくんのこと思い出しちゃった……。はなちゃんがリリーさんデザインの萌絵のTシャツを着(せられ)ていたのがすごく貴重。はなちゃん、いいの…?(泣)みうらじゅんさんは山田五郎さんもやってきて、いや〜な歌を。いや〜なんだけど、痛いんだよねえ…。

そうこうするうちDJブースが2セット搬入。あれ、上手側のあれって、ヒロシくんのセッティングだよね…今日は出ないんじゃなかったっけ…?と思っていたら、出たーSDPとソウルセット!スチャセット!おわわわすっごい格好いい、しかもバンドセットじゃないソウルセットってすっっっっっごい久し振りだよ!?ヒロシくんの、BOSE曰く「いつにも増してもっこもこの音を出しています」なトラックがもうっすっごい格好いい!それとガップリ四つに組むシンコのトラック!そこにビッケとBOSEとANIと、かせきにロボ宙が乗っかる!か、か、かっこういい……うわごとのような感想しか出ない。

しかも俊美くんが具合悪いってことで、息子のトーイくんが唄いにきました。「あ、あの、お父さんが、具合悪くなっちゃって……」と、「父」「パパ」「親父」のどれでもなく「お父さん」と言ったのがすごいツボ。その上声が俊美にそっくり!もうびっくり…BOSEが言ってたけどほんと「ちっちゃい俊美くんみたい」だった。「地方はこれで回れるんじゃないの?」と迄(笑)。

BOSEやANIが気遣って、ところどころで腕を引っ張って前につれていったりしていたのにもジーン。ここにいる兄さんら、皆この子が赤ん坊の時から知ってて一緒に遊んだりしてたんだよね……。あーこういうの観ると、長生きしてよかったと思う…そんでもっと長生きしてこういうのもっと沢山観たいと思う……(涙)。あートーイはいい子だなー!兄さんたちも素敵で格好いいよ!俊美くんおおごとじゃありませんように、はやくよくなりますように。

BOSEがシンコのことを「My DJ」つったのにもジーンときた。

個人的にはここでもう電池が切れた感じで、あとはまったり観ました…いやずっとまったり観てたんだけど。頂いたおやつ(有難うございます!)とか食べつつ。猫ひろしもYO-KINGもサンボマスターもよかったよ……いい歌いいネタだったよ。サンボの三人、皆痩せたと言うかシュッとなりましたね。それにしてもサンボは熱かった。これ迄のゆるゆるさから一変、むちゃ熱い!熱い!サンボのファンも熱い!ところどころ酔っ払って転んだりしてるひともいる!今回警備もゆるゆるで、前はブロック毎にいたスタッフもいなかったので、立ち見客がBブロックにもなだれ込んできてカオスってました。それでも殺伐とした感じにならないところがザンジバルなんですかね……。

後で気付いたがサンボマスターって福島県人で、俊美と同郷なのか。そして箭内さんも福島で、だからままどおるズでザンジバル出たのか。箭内さんてバックホーンの松田くんとも福島県人ユニット(ゆべしス)組んでるよね(笑)。『風とロック』のバックホーン特集面白かったなあ。おらも栄純を見習ってリーゼントにするぜ!(嘘)と、脱線したまま終わる。はあー、スチャセット本当に格好よかった、観られてよかった……。



2010年04月17日(土)
『御名残四月大歌舞伎 第一部』

『御名残四月大歌舞伎 第一部』@歌舞伎座

朝の銀座は気持ちがいいですねえ。早起きして第一部です。『御名残木挽闇爭』『熊谷陣屋』『連獅子』。

『御名残木挽闇爭』は顔見世のような趣もあるので、後半はもう、若手の豪華メンバー揃い踏み。セリで上がってきてドーン!揃ってだんまり!思えば海老蔵さんて何度か観てはいるんだが、だんまりは観たことがなかった…もーすげー目力。海老蔵襲名の時のにらみを観たやまこさんが「ご利益ありそう!」と言っていたがホントそんな感じだったよ…すっぴんでも目がバッキリしてんのに、曽我五郎時致の扮装で、もうこどもが泣くでって言う。なまはげ?そんななか小林朝比奈の勘太郎くんはその扮装からして和む和む(笑)。と言うか、あの化粧あの衣裳なのにビッシー!と姿が決まるのでもうすげー格好いいの。

しかし、ただ立って姿を決めてだんまり、と言う構図は、役者の実力と言うかオーラの差と言うかが…残酷な程にあからさまになる。怖い。しかし努力でそこに到達するひともいる筈なんだ、その姿を観ていきたいとも思うものでした。

『熊谷陣屋』は中堅ベテランの皆さんでガッチリ。平家ものですが、この辺りによくあるこどもを身替わりに…と言うあれで、もうつらくてつらくて。吉右衛門さん扮する熊谷次郎直実が出家して、悲しみもしがらみも振り切って去る花道のシーンは、笠で表情が隠れていても全身から慟哭が立ち上がっているようにすら見えこちらも涙が出た…その後ごはん休憩だったので、ごはんはおいしいけど気分は沈むと言う複雑なことに。藤十郎さん演じる相模(熊谷の妻)と魁春さん演じる藤の方(平経盛室)は、このお芝居中ずーっと客席に背を向けて座り嘆き悲しんでいるのですが、もうその背中だけで泣けてきてしまう程なのです。すごい……。最近ちいさなこどもたちが酷くて悲しい命の落とし方をするニュースが多くて、どうしてそうなっちゃうんだろうと思うことも多いのでいろいろ考えちゃったな……。

そして中村さんとこの『連獅子』!何度観ても有難い、なんかここんとこ落ち込んだり具合が悪かったりなんだけど、これで厄が落ちた感じもしたよ…!あかん、めでたく明るくいこうぜ!いやもうホント、伝統芸能を観ると、自分の悩みなんてなんてちっぽけなのかしらーとか思ったりする…何代も積み重ねられてきた大きなものと、自分を待っている客席のひとたち。それらを一身に背負って、ひとり舞台に立つことって、どれだけのプレッシャーと充実感と、自分ではどうにもならないものに動かされている、と言う感覚を受け止めているんだろう。人間ではなく役者と言ういきもの、と言う言葉を使ったのはつかこうへいさんだけど、役者さんには本当に尊敬と畏怖を持っている。だからこそ、いい加減に舞台に立つひとには怒りを感じる。

あー、いろいろ思うことあって舞台そのものの感想があまりない…あれ?いつもか?いろんなことを喚起させられる舞台だったと言うことですとまとめる。

筋書きに舞台写真が入っていなかったので、公演の後半には入ったものが売られそう。ああ、両方買っちゃいそうだな……。



2010年04月16日(金)
『THE BACK HORN KYO-MEI大会』

『THE BACK HORN KYO-MEI大会』@SHIBUYA-AX

バックホーンを観るのは昨年のJCB以来かな、髪の毛短い岡峰くん見るの初めてだわ、そういえば。と言う訳で久々だったのですが、うへえすごくいいライヴだったー、終演後具合悪くなるくらい(トホホ)。ちょっと体調に自信なかったので二階席をとったんだが、熱気って上に溜まるから二階席どんどん酸素薄くなんの(笑)ライヴ酔いみたいになると言う貴重な体験をした…貧血も起こして終演後目の前まっくら。MIOさんすんませんでした……。

andymoriからスタートだったようです。遅刻したので三曲程。さっきぴーとさんのtweetで知ったが鴻上さん観に来てたんですね、と言うか鴻上さん推してるのか。ぬー、じっくり聴いてみたかった…掴めないまま終わってしまいました。二番手はASIAN KUNG-FU GENERATION。10年程前バックホーンと対バンした時の思い出話等してくれて面白かった。シェルターの昼の部、オーディション込みみたいな状況だったそうで、ゴッチは負けるもんか的な気負いもあって、「ふん、簡単にかっこいいなんて言わないもんね」てな感じで表面的にはツーンとしてたそうなんですが、「なのに潔が『バックホーン、かっこい〜い』って!」(笑)しかも「ステッカー迄買って!音源ならまだしもステッカーかよ!」(爆笑)ちょ、面白過ぎる……。で、「客もいなくて、誰に向かって唄ってるのか判らなくなった時期もあったけど、今は沢山のひとが聴いてくれてて嬉しい」と言っていました。フェスや対バンでしか聴いたことがないけれど、訴求力のある曲が多いし、場を作るのも上手いし、自分たちの考えをしっかり持っている感じもする。出てきた時、なんか場がぱっと明るくなった感じもした。好感度も高いいいバンドだなあ。そしてゴッチの声は色気がある。

そしてバックホーンです。「野生の太陽」からスタート。うへえ、あっと言う間に沸点です。「フロイデ」「罠」とたたみかけたと思えば「冬のミルク」と来ましたよ。四月なのにみぞれが降る異常気象な夜にピッタリだったね!(笑・しかもその後雪に…)そしてうわー「美しい名前」が聴けました。久し振り、聴いたの2007年のフジ以来かな?この辺りから血が下がってきたんで(…)曲順がおぼろです。と言うか記憶もおぼろです(おい)。おまえは何しに行ったんだ…いやでもこんな状態で言っても説得力ないが、すごくいいライヴだったんだよ!てかいいつうかもうやばーい感じで…音もすごくて木製バットなのに金属バットなみに球が飛ぶみたいな(なにその例え)身震いするような場面も多々あったわー。しばらくホールでばかり観ていたからってのもあるのかも知れないが、スタンディングで観るバックホーンはいいなあ!

山田くんの声、高音がだいぶ嗄れててちょっと心配になったけど、前はあー、こりゃ危ないな、辛そうだな大丈夫かな、って感じだったのが、この日はそのかすれた声にむしろグッときた。いやでも治るといいね…おだいじに。

そんなこんなで自分内妖怪(=尊敬している)枠の山田くんですが、聞けば雨男だそうで、雨つうか異常気象をつれてくるひとだそうで、成程ものすごく納得しました…雪迄降らすか。そんな異様な気候もなんだかしっくりくるライヴでした。



2010年04月14日(水)
よみもの

■『マンガ脳の鍛えかた ―週刊少年ジャンプ40周年記念出版』
週刊少年ジャンプで活躍されている(た)マンガ家さんたちのインタヴュー集。マンガ家を目指す若い子(小学生くらいの子も含むと思う)たちにも理解しやすいテキストになっていますが、内容は深い。マンガを描き続けると言うこと、いちばん売れているマンガ誌で週刊連載を持つと言うこと、その中でモチベーションを維持し、ルーティンワークに陥らず、自分の描きたいことを伝えるためには?と言ったことがオープンに語られ、丁寧にまとめられています。インタヴュアーは門倉紫麻さん。
第一線で活躍されている方ばかりなので、皆確固たるスタイルを持っている。そしてそれは何年も何度も葛藤した上で見つけ出したもので、持論も手法もさまざま。同じ答えはない。なので、これをまるっと参考にしたからと言って、彼らと同じになれる訳ではありません。その厳しさもオープンにされていて、とても読み応えのあるインタヴュー集でした。だから、『マンガの描きかた』じゃなくて『マンガ脳の鍛えかた』なんですね。使用画材等も紹介されてはいますが、How to本ではありません。
個人的には、徳弘正也さんのインタヴューが読めて嬉しかった。と言うか、このひとのインタヴューが載っていたから買った。イメージのまま…と言うか、ああ、こういうひとだからこそあんな作品を描けるのだなあ、と言う感じで、嬉しかったと同時にますます大好きになった。表現の規制が厳しくなり、今では『狂四郎2030』のようなマンガは描けないと仰っていたのがショックだったな…。大衆の気分が作り上げるファシズム、本質を見極めないまま安易に引かれる予防線。暗澹たる気持ちになる。そうなる前に『狂四郎2030』を描ききることが出来てよかったなとも思ったけど……。
しかし性描写について真面目な話をした後に、「きれいなおっぱいを描けない時は丸形定規を使うといいですよ(笑)!」(手を痛めてからフリーハンドではきれいに描けなくなったそうで)なんて照れ隠しで言っちゃうところがまたうわあ作品まんま!と思った。徳弘先生ラブ!
しかし皆さん作品のイメージまんまーって感じの方ばかりで、そういうところも面白かったなー。車田さんとかうすたさんとか荒木さんとか…ふふふ……

■美術手帖 2010年4月号『ディック・ブルーナの謎』
■MOE 2010年5月号『GO! GO! ミッフィー』
もうすぐ開催の『ゴーゴーミッフィー展』でうさこちゃん散財をするのは目に見えているのですが(=うさ公かつあげ)、気付かないうちに前哨戦が始まっていたようです。気付けばこの二冊が家に……。
美術手帖は、ブルーナさん、彼の作品を初めて日本に紹介した編集者・松居直さん、今春刊行された新装版をデザインした祖父江慎さん、画家の町田久美さん、デザイナーの菊地敦己さん等のインタヴューや、絵本のデザインやテキストのリズムを考察するコラム、ユトレヒト訪問と充実した内容。図版もテキストも満載で、保存版としてもいいものです。
MOEは『ゴーゴーミッフィー展』により焦点を合わせた内容で、展示に出品予定の『25人の作家がミッフィーに贈る手書きのバースデーカード』をひとあし早く掲載。和田誠さん(!)や藤城清治さん(!!!)が描いたミッフィーが観られるよー!前述の松居さん、訳者の松岡享子さんのインタヴューも。
グッズ紹介頁もあり、購買意欲があがる一方です。ああ、会場でどんだけうさ公のかつあげにあうのだろう(しろめ)。55歳のかつあげ番長……



2010年04月11日(日)
FUNK☆de☆変態対バン

イヴェント名がなかったんで勝手にタイトル付けた。

面影ラッキーホール@LIQUIDROOM

対バンは在日ファンクとneco眠る。いやーすごくいい組み合わせだったし内容も充実!いいライヴだったー。それなのに何故こんなにスカスカやねん。チケット売れねーと言うのはもはや面影ではネタの域なのでいいのだが(いやよくない)、何故こんなにいいライヴなのにひとが来ないのだろう。一応この日はKAIKOOと渚音楽祭と被ったことも影響するのでしょーと言うことで……。

そしてウケたのは、アッキーが「ツイッターに『たくさんひとが来て大混雑!』って書けばいいじゃない。そしたら北海道の●●なひとたちが『あ、人気あるんだ面影』って勘違いしてフェスとかに呼んでくれるから」つってたんだけど、帰宅後web見てみたらツイッターで誰もそんなこと書いてなくて、正直に「空いてた」「ガラガラだった」ってのが並んでたことだな(爆笑)。2chには「会場パンパン」「あんなに満杯のリキッドルームは生まれて初めて」と書いてるひとがいて微笑した。

まずは在日ファンクから。結構直前に発表になったので、知らないひとも多かったようです(当日もらったフライヤーにも(つうか当日配ってどうする)シークレットゲストと表記されていた)。わーい観るの初めてー。ハマケン押し語りで聴いていた「段ボール肉まん」もレパートリーなんですね。ホーン×3、Drs、G、B、Voの7人編成。ハマケンはTbも吹かず歌とダンスに専念。そう、踊るんですよ…かなり本気のJBスタイル。なのに妙なおかしみが…いや、そもそも高祖JBがそうか。やっぱファンクは笑えるのが最高だよねー!対バンなので持ち時間は一時間弱ってとこだったんですが、ハマケンは途中衣裳替えもして、スタンドマイクのアクションやダンスも全開です。そしてコンダクター的な役割もバッチリ果たしておりました。しかしそれが妙にヒヤヒヤする。ちゃんとストレッチやった?アキレス腱切っちゃうよ!気を付けて!みたいな動きなんだもん(笑)。MCはハイテンションで唄い踊った合間にやるので、息も絶え絶え。その内容は「ツイッターによかったって書け!……影響大きいみたいだから!」とか(笑)。

そして当然のように演奏が巧い…その巧い演奏の上でハマケンが好き勝手するって言う(笑)しかしアルバムのクレジットを見ると作詞作曲は基本全部ハマケンで、やっぱこのひとすごいなーと思う。そして以前見た時にも思ったが、このひとやっぱりマンチカンに似ている。来週は野音でSAKEROCKが観られるので楽しみ。

続いてneco眠る、こちらも初見、そしてやはり演奏が巧い、これはいい!なのにひとり裸族が混ざっている、そこがいい(笑)。バサバサロン毛でパンツ一丁(ホットパンツか?としばし凝視してしまったが、バッチリアンダーのボクサーパンツでした)、サンバイザーにサングラスのベーシスト。妙な動きといいフリー好きなのかな。めちゃめちゃ動きます。ベースの返りがすごくよかったこともあり、聴く+体感と言う感じでかなり気持ちよかった。G、B、Key、DJ、Drsの5人編成、DJのひとはピアニカも担当。この日は全曲インストで(もともとそうなのかな?)、メロディはピアニカで進める曲も多かったです。ミニマルなリフで展開していき、それが土俗的なグルーヴを生み出すと言うか…阿波踊りみたいな音階もあったり……それでいてプログレみたいな拡がりもあったり。軽快で楽しいのに、低音はドッカドカで疾走感も強力。いやーよかったわー、また聴きたい!

で、面影です。いきなり「温度、人肌恋しい」。わあライヴで初めて聴いた!感激。終演後サさんに言われてハッとしたが、確かにこの曲でのアッキーの唄い方はアケミを思い出す。JAGATARA好きなら面影もきっと好きだよ〜。そしてこの日の面影は音がバリッとしててすごく格好よかった!いつも格好いいけど!最後列下手側の高台にいたんだけど、この位置もよかったのかなあ。面影の演奏って(そしてああ見えてアッキーの歌も)とにかく安定感あるけど、それにしてもよかったな…格好よかった。あかんわー「こんなことしたら殴られるの判ってるけど〜♪」なんて歌詞で胸がギューっとかなってる場合か!「来てくれないそうあの男(ひと)はきっと迎えにはこない」んだヨー!(泣)

エアコールアンドレスポンスや、アッキーのキムヨナ007(バキューン)裸サスペンダーver.等も観られて大層楽しかったです。まあ面影のライヴで楽しくなかったことなどないけどな…。そしてアンコールでアッキーは激しく腰を振って踊っている間に脱げてしまったスウェットの下をフロアに投げ入れたが、キャーっとひとが群がる訳でもなく(むしろいらない)、その後ダイヴかと思いきやフロアに落下したそうで大丈夫ですか(急に見えなくなったのでなにごとかと)。パンツもピンクでしたが腰部分に黒いラインも見えたので、ひょっとしてちゃんとアンダー履いた上で見せる用のピンクのパンツを履いてるんでしょうか。素敵です。そしてそこで面白かったのは、近くで座ってまったり観ていたちょいムチヒゲのおにいさんが、アッキーがぱんいちになった途端むくっと立ち上がりフロアに近付いて行ったことだな。たまらないひとにはたまらないのでしょう。もう最近はすっかりアッキーの裸が神々しく見えます。素で言ってます。

出ると言われているアルバムも「出るんでしょうかね〜?」とのことなので、のんびり新譜を待ちつつ次のライヴが楽しみですよー。とりあえず昨日発表になったのは、7月24、25日の長者町FRIDAY。



2010年04月07日(水)
Jamie Cullum『The Pursuit』Tour

Jamie Cullum『The Pursuit』Tour@JCB HALL

単独公演は久し振り!2006年12月の『Catching Tales』ツアーをAXで観て以来。この日のライヴとてもよかったんだけど、絶不調で(私が)ツラかったんですわ…壁にへばりついて観てまして。で、それがちょっとトラウマになってまして、今回のツアー東京公演は座席ありのJCBとスタンディングのZEPPと二公演あったので、落ち着いて座って観ようかな…とJCBを選んだんですね。ZEPPだと開演時間に間に合わない可能性大だったし。

と言う訳で、初めて座席がある会場でジェイミーを観たのですが、いい面と歯痒い面両方ありました。でもいい面ってのが、座席があるホールだからこそのものだったので、この日この会場で観られてよかったなーと思った!

「シェイクスピアを上演しそうなところだね」みたいなことをジェイミー本人も言っていましたが、JCBホールは確かにグローブ座のよう。アリーナ+三階席迄をビッシリ埋めているのは、老若男女本当に幅広い客層。親子連れもいるし、白髪に蝶ネクタイの品のよさそうなおじいちゃんもいるし、外国人も沢山。某俳優さんもいらしてました。四年間で客層もますます拡がった印象。

段差が大きく縦に積んであるような座席配置で、奥行きがあまりないので後ろの席でも近く感じられたのではないでしょうか。ジェイミー本人も声が届くと判断したのか、それともそうせずにはいられなかったのか(彼のことだからこっちかなー)、何度もマイクを外して生の声を届けてくれました。見やすい!音いい!

ところが、客席がとにかくおとなしい。「You And Me Are Gone」でジェイミーがシンガロングを促すように客席を煽るもとにかく静か。しばらくお互い戸惑った雰囲気になりました。いやあ、ここらへんは本当に難しい…座ってじっくり聴けたのは本当に嬉しくて、早くも「Don't Stop The Music」で涙ぐんだりしていたのだが(笑)、うひー踊りてえ!とうずうずもしてて。でもこの客層の広さでは、スタンディング一択は厳しいでしょうしね…いろんなひとが聴いているってのはホントすごいことだと思うし、いろんなひとたちが快適に観られる場を、と二種類の会場を用意してくれたイヴェンターにも感謝しているし。盛り上がってない訳ではなかったと思うんだけど…。アッパーなナンバーも沢山ありつつじっくり聴かせるものもたっぷりで、楽しみつつもうぬうと考え込んでしまった。

終演後本人がTwitterでこう書いていたので、あー神経使っただろうなあとしみじみ…でもグレイトショウって書いててくれて嬉しい。

そんなこんなでしばらく不思議な雰囲気で進んだんですが、そこは全身音楽のカタマリのジェイミー、魅せる魅せる。一挙手一投足から目が耳が離せません。とにかくよく動く。楽器もとっかえひっかえ。これはバンドのメンバーもそうで、ドラマー以外は皆複数の楽器を演奏していました。それがまた臨機応変。セットリストがないので(そう、毎回ない…と言うか、ジェイミーの頭の中にしかないそうなんです)、次にジェイミーがどう動くかを窺い乍ら、テキパキとそれでいて和やかに持ち場を行ったり来たりしてパートを替えていく。ジェイミーがニヤニヤしつつピアノでフレーズをパラパラ弾いていって、途中でぴゅっと違う曲に移り、バンドの皆さんが慌てて楽器を持ち替える場面には笑いも起こっていました。サックスソロの時も、歌で「コルトレーンのように〜♪」なんて五人くらいの名前を振って、それに応えてどんどんフレーズを変えていったやりとりは盛り上がったー。

恒例の一人多重録音もやっていたし、相変わらずピアノのボディを叩いてリズムを作ったり、弦部分を弾いてハープ音を出したり、そして乗ったり(笑)。椅子も蹴飛ばしてしまう程全身でピアノを弾いたり、しばらくしてその飛ばした椅子を自分でとりに行ったり(笑)。とにかく自分の中の音楽が鳴り止まないと言った態で、そしてそれを表現せずにはいられないみたいだった。そんな彼の姿を観ているうちに、会場も暖まってきた感じ。静かだけどほんわかしているような、いい雰囲気になりました。

それにしてもオリジナル曲もとにかく良いんだけど、カヴァーナンバーが本当に素晴らしい。前述の「Don't Stop The Music」はリアーナのカヴァー、そしてすっかり鉄板ナンバー、レディオヘッドの「High & Dry」。この曲もともと大好きだったのですが、ジェイミーのカヴァーを聴いた時は衝撃を受けたものです。今回も最初のコードが聴こえた途端涙出たー(反射)。原曲とは全くと言っていい程違うのに、新しい解釈と言う感じもさせないくらい彼の曲になっている。ヴォーカルも素晴らしいんだけど、ピアノのリフ(左手で弾く方)がとにかく格好いいんだよなー。

そして終盤、なんとアリーナに降りて来て「Cry Me A River」を!こんな感じ。

・Jamie Cullum "Cry Me a River" (live in Toronto)


これはホールならでは!あわわわわっとスタッフが追っかけて来たのがおかしかった。でも、観客もパニックにならず、とてもマナーがよかった。和やかにバンドを囲んで聴き入っていた。その後ステージに上がったジェイミーが「カモンカモンカモンカモンカモンカモン!」と煽ると前に駆け寄っていくひと多数。それも怖い感じがしなくてよかったな。ギャーッって感じじゃなくて、わあ、前に行っていいんだ、わらわらわらって感じ(笑)。それを暴力的に遮るスタッフもいなかったし。こういう盛り上がり方もあるんだよー。日本のことを「ホームのよう」と言ってくれたジェイミーにそれが伝わってると嬉しいな。桜も見られてよかったね。オーラスはソロで「But For Now」を。次はフジで来てくれるそうです。

「ハイクオリティな音楽を気さくに届けてくれる」と書いているひとがいたけど、本当にそう。とてもいいライヴでした。

(セットリストはオフィシャルに載り次第転記します)

■SET LIST
Don’t Stop The Music
All Over It Now
20 Something
Get Your Way
Love Ain’t Gonna Let You Down
You & Me Are Gone
Frontin’ (Solo)
Mind Trick
Just One Of Those Things
I Get Along Without You Very Well
High & Dry
Music Is Through
These Are The Days
Wind Cries Mary
Cry Me A River (In Audience)
Mix Tape
---------------
But For Now (Solo)



2010年04月03日(土)
『四谷怪談忠臣蔵』

猿之助四十八撰の内『四谷怪談忠臣蔵』@新橋演舞場

猿之助一派初観劇。いやあ、覚悟して行ったんですが、濃い!すげー面白かったんですが、体力吸い取られた感じで帰宅後即沈没、お岩さんに憑かれたかってくらい寝た。お岩さん、憑くなら伊右衛門に憑いてください……。

と言う訳でタイトルの通り南北の『仮名手本忠臣蔵』と『東海道四谷怪談』を一挙上演すると言う着想から、脚本の石川耕士さんがさまざまな創作を加えた(ご本人曰く「綯い交ぜ的パロディ気分は歌舞伎の本質」)もの。右近さんも冒頭の口上で仰ってましたが、どちらも通しで上演すると一日ずつ、計まる二日かかるものを半日に凝縮したもので、ごちゃまぜてんこもりなボリュームです。時間的には四分の一になっている訳ですが、内容はその分凝縮も凝縮、もうぎゅうぎゅう!展開早い!一幕でもうお岩さん死んでしまいますもん。『東海道四谷怪談』では見せ場になるお岩さんの薬飲むシーンや髪梳きのシーンは省略され、とにかくスピーディー。その分運命のようなものに翻弄されるひとたちの哀れさが際立ちます。お岩もお袖もみるみるうちに身を持ち崩し、その果てにあんなことになるんだもんね。で、その身の落とし方がかなり直截的にえげつなく描いてあったので結構ヘコんだ…淫売宿で与茂七と遭っちゃうとことか、直助と通じることになるとことかさー…む、むごい……。

普段の上演では省略されがちな三角屋敷の場や天川屋義平内の場があり、直助とお袖の末路や、塩冶浪士(赤穂浪士)たちが討ち入りの際使う合い言葉の由来等が分かるエピソードが観られたのも面白かった。同時に上演されることで、忠臣蔵の外伝としての四谷怪談が解りやすくなる部分も多かったです。その逆も。なんで小平って薬をあんなにほしがってたんだっけ?とか、伊右衛門ってなんで四十七士に入らなかったんだっけ、とか。

そして前述の“パロディ”部分が突飛でまた面白い。なんで師直(吉良)があんなに塩冶判官(浅野)に意地悪したかってのが、師直に新田義貞の霊が取り憑いていたからと言う感じで、とにかく幽霊がバンバン出てくるんですよ。あと通常では伊右衛門って蛇山庵室の場で苦しみ抜いてその後与茂七に討たれるんですが、『四谷怪談忠臣蔵』ではこのシーンがないので(?)いきなり討ち入りの場面に伊右衛門が混ざって出てきて高家奥庭泉水の場(吉良邸)で落命するって言う。おまっ仇討ちなんてやんね〜とか言っといてなんでここにいるねんって言う。そしてここにもお岩さんが出てきて与茂七の加勢をする(笑)。あと鰻掻きのシーンで「首が飛んでも動いてみせるわ」って台詞が出たり。

演出はとにかく派手!猿之助さんが出演もされていた頃(いや、これからもいつかはまた出てほしいですが…)のスーパー歌舞伎は見逃しているので、こんだけドカンドカンの演出は初めてでもうすごいを通り越して笑ってしまう場面が沢山あったよ…と言うか全体的に客席がウケていたりもしたのでああいいんだなと思ったり(笑)。伊右衛門と与茂七の斬り合いなんて、途中でどちらも刀が飛んで、素手でボコボコやりあって、続けて雪合戦なんだもんゲラゲラゲラ。ここらへんはもう客席からドッと笑いが湧いてドリフのようだった。あとあれは演出なのか猿弥さんの芸風なのか、宅悦のビックリっぷりがもうすげートゥーマッチなの。面相が崩れたお岩を見て「きえ〜〜〜〜ッッッ」と言いつつ鏡を無理矢理見せようとするし(お岩さんいやがってんのに!)もみあいになって「きゃーーーーーーッッ」「ひいーーーーーーーーッ」ってもう、深刻なシーンなのにだんだんおかしみが…面白かった……。宙乗りも本水使いも派手でよかったなー。

本水と言えば、いのうえ歌舞伎の『朧の森に棲む鬼』をふと思い出したんですが、この作品で惜しい!と思ったのは本水使いのシーンだったんですよね。画ヅラの迫力は素晴らしかったんですが、水の音がとにかく大きく、台詞が全く聴き取れなかったのです。『四谷怪談忠臣蔵』での水を使う場面は、台詞は皆無で立ち回りだけを見せていました。『朧〜』は初演だったし、台詞で情報を伝えなければならない部分も多いし、展開も早い。一方『四谷怪談〜』は皆ある程度ストーリーを知っているし、予習してくるひとも多いし、イヤホンガイドと言うものもある。作風の違いもありますが、見せ場として水を使う演出の難しさを考えさせられたシーンでもありました。

初演で猿之助さんが務めた役は右近さんが引き継ぎ、段治郎さんは膝の手術後一年振りの舞台。猿弥さんも倒れた後だし、彌十郎さんも昨年秋体調を崩されていたので心配でもありましたが、皆さん舞台上では全くそんなことを感じさせない(実際終演迄忘れていた)迫力でした。彌十郎さんの大星由良之助(大石内蔵助)が観られて嬉しかった…格好よかったよー。扇ヶ谷塩冶館の場での皆に意見を問うところ、天川屋義平内の場で皆をまとめるところ、素敵だったー!彌十郎さんが澤瀉屋さんとこでやるのは十四年振りだそうです。滝乃屋の門之助さんと大和屋の彌十郎さん意外は殆ど澤瀉屋の今回の舞台ですが、彌十郎さんは猿之助さんのもとで演出助手を務めていた時もあったそうで、今回の役の話が来て感無量だったとのこと。ううう(涙)。

■小ネタ
・今回の舞台では殆どが澤瀉屋のひとたちなので、大向こうが屋号だけだと「澤瀉屋!」「澤瀉屋!」ばかりになってしまうのを考慮してか?役者さんの名前を呼ぶものも多くて新鮮だった。「段治郎!」「猿弥!」みたいな
・雪の場面では黒子ならぬ白子がいた。そりゃそうだ、黒だと逆に目立っちゃうもんね(笑)