空虚。
しずく。



 砂の城。

今さっき、「あの人」からメールが来ました。
・・・油断してました。Eメールだったから。
他愛もない言葉でした。
なのに、どうして叩き壊したくなるのでしょう。

膝に乗せた携帯。
何度も何度も視線を落とす。
「来ないで。見たくない。」
「・・・私が望んでのは、"これ"でしょ?」
ふたつの想いが心の中で交錯してる。

嫌なんじゃないよ。
嬉しいんだよ。
すごく、すごく嬉しいんだよ。
だけど、どうしてなのかな?
かき集めた自分がまたバラバラになっちゃいそうなんだ。
なんで?
やだ。怖い。
どうして、・・・。
あなたなのに・・・どうして・・・?

返信を打つ手が、震えた。
言葉一つ一つが、すごく怖かった。
私が触れたら、全ての言葉は、色褪せてしまうから。
言葉の持つ意味を、消してしまうから。

それでも、返信した。
送信ボタンを押した瞬間、心が悲鳴をあげた。

感じてしまった。
自分がこんなにも恐れている事を。

どうして、どうしてあんな事言ったの?
あの時私があの言葉を言わなかったら・・・、
ずっと、笑いあえる関係でいれた?

私に触れないで!
もう、あなたに嫌われるのは、嫌だ・・・。



"無邪気な子供が作った砂の城。"

"打ち寄せる波にも決して壊れなかった砂の城。"

"ある日、ひとりの人間があらわれて。"

"その子供の目の前で、お城を蹴り飛ばしました。"

"壊れなかったその城は、いとも簡単に崩れ落ちて。"

"ただの、"塊"になりました。"

"それを見て、満足げに去って行った人間。"

"あとには茫然とした子供が残されました。"


"子供はもう一度作りました。"

"あの、砂の城を。"

"今度は、絶対に壊れないように。と願いをこめて。"

"けれど、完成したお城はあのお城とは違いました。"

"自分が手を触れたら、簡単に壊れてしまうのです。"

"子供はそれでも作り続けました。"

"雨の日も。雪の日も。ずっと、ずっと。"

"しかしある日。子供は気づいてしまいました。"

"(一度壊れてしまったものは、もう元には戻らない。)"


"不完全な"お城"達の中で、子供はひとり泣きました。"

"それは、なんのための涙だったのでしょう?"


"子供はお城を作るのを止めました。"

"意味がなくなってしまったのです。"

"そして、自分がここにいる意味も。"


"唯一のものを失くした子供は、どうすればいいのでしょう?"


"・・・誰も、それを教えてなんてくれません。"



傷つくと解かってても、触れずにいられないものがある。
「傷つくのは怖くない。」なんて所詮、綺麗事なんだろうね。

2002年01月13日(日)
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