同僚のTさんのキャビネットには、テディベアのマスコット付きマグネットが貼りついている。
カントリー風……とでも言うのだろうか。テディベアはギンガムチェック。木製洗濯バサミのようなクリップが付いていて、書類とかメモを挟めるようになっている。たぶん可愛いグッズなのだと思う。テディベアの無表情さ加減だの、へたり具合だのを思うだに、私には「カントリー風の可愛らしいテディベア」と言うよりも、むしろ「磔にされた熊」にしか見えなかった。だが、しかし。それを愛好している人に対して「その熊、磔されてるみたいですよ」と言うほど人でなしではないので、出来るだけ気にしないよう心掛けていた。
が、Tさんと話をしていたらば「磔にされた熊」はTさんの趣味ではなく、前任者が使っていたものを惰性で使っているということが判明した。「好きでも嫌いでもない」というTさんの言葉に、すっかり気を許した私は「Tさん。私ね……そのテディベアを見るたびに『熊が磔されてるみたい』に見えて気になって、仕方なかったんだなぁ」と告白した。するとTさんは驚愕の表情を浮べて、私の肩を鷲掴みにしてブンブン揺さぶりながら言った。
「白蓮さん、大丈夫ですか? 病んでますよ。病んでますって!」
Tさん曰く「こんな可愛いテディベアを見て磔を連想するなんて、ありえない」のだとか。そうか……あれは、やはり「可愛い」というカテゴリーに分類されるグッズだったのだ。まぁ、しかし私も少し失敗したかも。「磔」なんて言葉は職場で口にするもんぢゃない。「アハハっ。私、ちょっと疲れてるのかもね」と笑ってその場を誤魔化した。
「可愛い」をキャッチするのは実に難しい。だいたいからして若い女性の中には何かにつけて「可愛い!」を連呼する人が多いが「どこが可愛いんだ?」と首を傾げることが多くて困ってしまう。可愛いをキャッチする能力を磨くのを今後の課題にしたいと思う。
今年、私が自分に定めたテーマは「脱・オッサン。ウェルカム・フェミニン」なのだが、道は険しそうだ……ってことで今日の日記はこれにてオシマイ。