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2024年09月28日(土)
BÉJART BALLET LAUSANNE JAPAN TOUR 2024 Bプロ『だから踊ろう…!』『2人のためのアダージオ』『コンセルト・アン・レ』『ボレロ』

BÉJART BALLET LAUSANNE JAPAN TOUR 2024 Bプロ/ミックス・プログラム『だから踊ろう…!』『2人のためのアダージオ』『コンセルト・アン・レ』『ボレロ』@東京文化会館 大ホール


長身のダンサーは腕や脚のストロークも大きく、その分リズム(文字通り)とズレていくことが多い。それはそれで優雅で美しいが、大橋さんはボレロのリズムにジャストなムーヴだった。音にぴったりということが心地よさを生み、“踊る”ということを思い出させてくれる。そのさまがリズム(テーブルを囲むダンサーたち)へと波及していくかのように、音楽と共にある『ボレロ』だった。

思えばジョルジュ・ドンもそんなに大柄ではなかったものね。

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『ボレロ』のメロディーを踊るダンサーはチケット発売前にスケジュールが発表されていて、ジュリアン・ファヴローは初日の金曜日だった。ううーん平日、厳しい…前回(2021年)ジュリアンで観たし、また観られるかな、大橋さんのメロディーは日本初披露だし……と、大橋さんの回を選んだのだった。その後ジュリアンの引退が発表された。いつが最後になるか判らないものですね。エリザベット・ロスも、キャサリーン・ティエルヘルムのメロディーも観たかったですよ。そりゃ金と時間があれば全部観たかったですよ〜!

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■『だから踊ろう…!』
振付:ジル・ロマン
音楽:ジョン・ゾーン、シティパーカッション、ボブ・ディラン
衣裳:アンリ・ダヴィラ
照明:ドミニク・ロマン

コロナ禍でツアーが出来なかった2021年にローザンヌで創作、発表された作品。この年亡くなったパトリック・デュポンに捧げられている。instaに続々とアップされていくリハーサルや初演の様子を観ていて、日本でも上演してほしいなあと思っていた。うれしい。
コンタクトが多いバレエという踊り、ひとが集まることにすら恐怖があった日々の鬱憤を晴らすかのような、踊ることの喜びに満ちた作品。笑顔で踊るダンサーが多くてこちらも笑顔に。エアリーでカラフルな衣裳にもJoyが詰まっている感じ。
最後にポワントを脱ぐという演出はダンサーによって違うらしい(何の暗示だろう?)。この日観た大橋さんは脱いでいた。カーテンコールのとき、フロアに置かれていたポワントを回収するところがなんだかかわいかった。
ジョン・ゾーンやボブ・ディランという選曲も好み。ゾーンは『人はいつでも夢想する』でも起用されていて(しかもよりにもよってNaked Cityの「Blunt Instrument」)、ジルは「(ジョン・ゾーンの音楽を)尊敬している」と話していた。
今作やジルの振付作品をBBLのレパートリーに残すかはジル次第だそう。上演権はジルが持っているということかな。今後ジルが振付作品を発表する機会はあるのだろうか。

■『2人のためのアダージオ』
(『マルロー、あるいは神々の変貌』より抜粋)
振付:モーリス・ベジャール
音楽:ルードヴィヒ・ヴァン・ベートーヴェン
衣裳:アンリ・ダヴィラ
照明:リュカ・ボルジョー、ガブリエル・プティ

踊るジュリアンを観られるの、私はこれが最後になるのかな(涙)。観られてよかった……ジュリアンとエリザベットのパートナーシップはやはり格別。銃殺刑直前の兵士と、彼に歩み寄る死のダンス。煙草という小道具も粋。今こういうシチュエーションで使われるのにいい小道具って何になるのだろう? と思ったりもする。
それにしてもエリザベットのタフなこと。『だから踊ろう…!』にも出ていたし、ソワレでは『ボレロ』でメロディーも踊る。この日はのべ5本分踊ったことになる。十市さんと同い歳。現時点でメロディーを踊っている最高齢のダンサーでもあるらしい。すごい!

■『コンセルト・アン・レ』
振付:モーリス・ベジャール
音楽:イーゴリ・ストラヴィンスキー
衣裳:アンリ・ダヴィラ

暗転してすぐにえっまた最初から観たい! と思う。華やかなコールドバレエも、緊密なパ・ド・ドゥも、ストラヴィンスキーの音楽とドンピシャに見えた。ダンサー、照明、空間。それだけで場が祝祭感に溢れる。次いつ観られるのはいつかしら(気が早い)。

■『ボレロ』
振付・演出:モーリス・ベジャール
音楽:モーリス・ラヴェル
装置デザイン、衣裳:モーリス・ベジャール
照明:リュカ・ボルジョー、ガブリエル・プティ

日本人では6人目かな、と十市さんが仰ってました。これ迄の5人(首藤康之、後藤晴雄、高岸直樹、上野水香、柄本弾)は東京バレエ団(在籍/出身)のダンサーですが、本家BBLでは初めての日本人メロディー! やっぱりうれしくなってしまう。後述インタヴューによると、BBLでアジア人ダンサーがメロディを踊るのは、男性も含め大橋さんが初めてとのこと。
先述したように音楽にぴったり。大きく開かれた掌、柔らかく揺れる体幹。音に身を任せているようでいて、音を操っているようにも見える。リズムたちはメロディーに寄り添い、支え、メロディーはリズムへと手を差し伸べる。共に歩み、互いを高め合うかのようにクライマックスへ向かう。
暗転の瞬間、割れんばかりの拍手。ダブルコール、トリプルコールと幕が上がる度、女性からの「ブラボー!」という声が増えてくる。日本人で、女性でといった称賛だけでなく、憧れや目標といった思いも込められていたように感じる。
壇上の彼女を迎えるリズムたちも笑顔。いいカンパニーだなー。何度も礼をしていた大橋さん、最後の最後にちいさく手を振りました。
それにしてもオスカー・シャコンがリズムにいるとドキドキしますね。いちばん最初にリズムのソロを踊るのが彼なのですが、一歩前に出た瞬間に客席が「きたっ!」という空気になる。頼りになるリズムの隊長! って感じ。

近くの席の女性3人組は、終演後もおんおん泣いていた。飛行機で駆けつけたと話していたけれど、ご友人だったのかも。素敵な光景。

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十市さんが撮影した初日のカーテンコール。ほんとにね、また踊るジュリアンが観られたらうれしいな。
そうそう、ジュリアンが引退すると、BBLに男性のメロディーがいなくなる。そもそもジュリアンがメロディーになったときも、久しぶりの男性メロディーっていわれてたよね。本家には男女両方のメロディーがいてほしい


9/28のカーテンコール


東京公演千秋楽のカーテンコール

・ジュリアン・ファヴロー&エリザベット・ロス インタビュー┃NBS News ウェブマガジン
ジュリアン:(17歳でBBLに入団して)「君はキュートでナイスだけど、もっとバレエ以外のところからインスピレーションを得るべきだ」と言うんだ。当時の自分はまだ若くて、音楽も聴いていないし本も読んでいないし、何も返すものがなかったからね。ベジャールはダンサーとの意見の交換をとても大切にしていたよ。
エリザベット:それまでいたカンパニーがクラシックすぎるなと思ってここに来て、1年くらいやってみようと思っていたんです。今ではここをホームだと思っていて、その理由はダンスだけでなくダンスと演劇的なものが両立しているからなんです。
それにしてもジュリアンは受け答えはいちいちかわいい

・大橋真理が“自分を作らない”で踊る「ボレロ」への思い┃ステージナタリー
“リズム”のダンサーたちも、みんなで盛り上げよう!という感じで踊ってくれるんです。終演後は、ダンサーも「僕はあそこでああやったけど、見てくれた?」と話しかけてくれたり。こちらからは全部見えているので「もちろん! 見てたよ!」というやりとりはよくしています。向こうも見てほしくて、けっこう狙ってくるんですよね。
乗越たかおさんによるインタヴュー

・『わが夢の都ウィーン』 の日本公演が実現するときはくるのかな。ベジャール作品の版権もジルが持っていたという話だけど、この辺はどうなったのだろう


ちなみにリズムにBBLだけの来日メンバーだけでは足りないので(笑)、山田眞央さんら東京バレエ団のダンサーが入っていたそうです。なんか見たことのあるひとがと思っていた(笑)