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2024年09月14日(土)
『2024 小林建樹ライブ Goodtimes & badtimes』

『2024 小林建樹ライブ Goodtimes & badtimes』@Com.Cafe 音倉


凛とした声と演奏。聴いていると自然に背筋が伸びましたいやマジで。

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ライヴ前に吉祥寺に行ってたんですが、秋のお祭り当日でした。昨年秋のライヴでは下北沢がお祭り当日。お神輿の練り歩きや法被姿のひとたちの間を縫って会場に辿り着いたなあと思い出す……ていうか「昨年のライヴ」なんてさらっと書けることが未だに信じられないですね! 幸せなことです。ちょっと早い時間に着いたので、開場前の音倉に寄ってみるとリハの最中。「満月」が聴こえてきました。おっ、今日やるんだな。いいもの聴いた。

さて今回はリクエスト企画。前回のライヴ後に会場とwebで募った「ライヴで聴きたい曲」を集計しベスト3を演奏する、とのことでしたが、当日蓋を開けてみれば多分全部リクエスト曲で構成したんじゃないかな……と思われる内容でした。ライヴでやってほしい曲イコールライヴで滅多に聴けない曲、になりがちな訳で、いやーレアなセットリストだった。そして構成が変わればイントロ、アウトロ、ブリッジも当然変わります。そもそも同じライヴというものは存在しないものですが、小林さんの演奏と歌、そして用意されたMCにはそれをより顕著に感じる。ライヴそのものが一本の作品になるさまをまざまざと聴かせて頂きました。裏テーマ(というものがあるならば)は夏の終わり、かな? 秋だけどまだまだ暑いもんね。全体的にラテンフレーバーが組み込まれている印象でした。

客電が落とされたあと、ゴツッという音と「いてっ」とちいさな声。楽屋口の近くの柱に飾ってあるギターに頭をぶつけて登場です。笑い声とともに拍手が起こる。緊張がちょっと和らいだかな。今回アコギは1本のみで、普段置かれているスペアはなし。弦が切れる等トラブルがあったときのために用意していると以前いっていたけれど、この日「弦の値上がりがすごい」という話をしていたので、今日は何が何でも弦を切らないぞという意気込み(?)があったのかもしれない。えげつないくらい上がってるんですって、そりゃたまらんなー。この話をしたあと「ここ(のMC)はアドリブなんですよ」とわざわざ断っていたところが律儀。やはりものすごく当日の進行をMCとともに考えて抜いている様子。MCの練習もするっていっていたものなあ。カポの話はもともと考えてきたMCだったようで興味深かった。移調に便利って話ね。

タップ奏法のようなチューニング(ここも聴きどころ。もはや演奏)が終わると、すうっと息を吸い唄い始めました。最前列にいた女性がちいさな悲鳴をあげる。きっとリクエストした曲だったんだろうな。こちらも笑顔になる。

さて自分は何をリクエストしたかといえば、3曲書いてと指定されていたのに実は4曲書いた。そのうち2曲は何を書いたか忘れた。バカなのか。いや、何をやってくれてもうれしいので…というか何でもやってくれという感じでもあるので……直感で3曲書いたあと「あっこれライヴでも結構やってる方だよな? 滅多にやらない曲をリクエストしたい!」と思って3曲目に“〜か「○○○」”と書き足した記憶だけが残っている。ちなみに憶えている2曲は「花」と「ミッドナイト・バス」だったのですが、その後ライヴ告知ツイートでこの動画が流れてきた。「ミッドナイト・バス」〜!!! 端末の前でガッツポーズ。



とはいうものの、「いやいやリハだから…本番でやるかはわからん……」と疑心暗鬼になる当方oasisリスナー。oasisは再結成されても、空港に着いても、ステージに立っても、終演する迄安心出来ない。oasis好きはいつでもキャンセルの不安に怯えている。そしてこの告知動画ではギターでしょ、ギターは前半でしょ、やらなかったんですよ。ええ? と思って。で、ああやっぱやらないか……としょんぼりしたりして。いやいやそれでもいい曲沢山聴けたから……なんて思ってました。

閑話休題。この告知動画を見た時点で「ひょっとしてベスト3といわず少数票もフォローしてくれてる……?」と思う。半分は何を書いたか忘れているので(…)全ての曲が採用されたかは判らないけれど、自分のリクエスト(憶えてる分)は全部やってくれたし感無量でございます。有難う有難う。

という訳でなかなか聴けない曲とともに、普段はピアノで演奏している曲がギターで演奏されたりと、貴重なものがいろいろ聴けました。ご本人も仰っていたけど「スパイダー」のギターver.はレアでしたね。自分がリクエストした2曲は両方ともピアノでの演奏だった。今度はギターver.でも聴きたいでーす☆(終わった先から無理をいう)。ブリッジから次の曲は何なのかを考えるのも毎回の楽しみなのですがが、今回は予想外のところに飛ばされることが多く「おおっ、このリズムから、このコードからこれに行くのか!」とスリリングな面白みも。スキャットもtやdのタンギング(ティリリリ、ディンディン etc.)、裏声との切り替えも気持ちよい響き。もともとの声はそのひとだけの楽器ではありますが、それをどう使うかというのは本人のセンスと技量にかかっているのだなあと聴き入る。小林建樹と菊地成孔は自分内二大スキャッター(そんな言葉あるのか)でーす☆

それにしても今回のギターパート、カッティングの気持ちよさよ。ジプシーキングスのようだった。やはり背骨にラテンがある。カラッとした陽気、カラッとした哀切。光が眩しければ影も色濃い。小林さんの演奏にはいつも情熱(としかいいようがない)が込められている。情熱といえばこの日の「スクリーム」素晴らしかったですね! うおおい! て心のなかで喝采を送りましたが。これの歌詞は本当に言葉が強くて、直截的な単語が使われている。その強い言葉があの声で発せられると、以前chinacafeさんが小林さんの歌声を評した「喉元をぐっと掴まれたかのような」感覚に陥る。良いときも悪いときも(Goodtimes & badtimesですね)どんなときも、“いつだって こうやって やってきた”んだなあ。これからもそうでいてー! でも無理はしないでー!

そういえば、「祈り」や「満月」は神戸時代につくった曲で自分でもいい曲だと思っているけれど、こっちに来てからつくった曲がいくつもリクエストされていてよかった、と話していたのが心に残った。「東京に来て何やってたんだって話になるから」というようなこと。東京に住み、東京で暮らす過程で生まれてきた曲たちを、つくり手も聴き手もだいじにしている。それがお互いわかったことがうれしい。あと自分の曲は「儚い」という印象を持たれているんだなあ、という話。このように、近年は演奏した楽曲の解説(アナライズ多め)とともに、それにまつわる悩みや思いを言語化してシェアすることが増えたようにも思います。「ノバラ」の歌詞を書いたときの心境や感覚、光景は「自分以外誰にもわからない」といってましたが、そのわからなさを伝えてくれるようになった。この話、先日アップされたラジオでも出てきましたね。

・小林建樹・ムーンシャインキャッチャー”R" 第31回 ”秋に聴きたい曲特集です”


ところでこの回、Art of Noiseの「Robinson Crusoe」をカヴァーしててビックリした! 当時ライナーなんて付いてない外盤(国内盤より安価なので貧乏学生には助かる)アルバムのなかの1曲として聴いていたやつですよ。あとある程度の年代は知っている、『ジェット・ストリーム』のエンディングテーマな! ドラマの主題歌だったって今回初めて知ったわ。小林さんは最近知ったとのこと。こうやって聴いている曲が重なる瞬間ってうれしいものですね。

さて「ミッドナイト・バス」ですが、ピアノに移ってからの後半で演奏されました。イントロ始まったときはうれしさだけじゃなく安堵で涙腺緩みましたよね。かなり練習したとのこと。ややこしいリフの繰り返しで、歌詞も「そう、そうじゃない、とあっちゃこっちゃするのでやっててわからなくなる。どっちやねんって。花びらをこうちぎるやつ、あるじゃないですか。あんな感じ」とのことでした。映像喚起力が強く、言葉も沁みる。噛みしめるように聴きました。人生の一部のサウンドトラック。

集計1位は「斜陽」、2位は「最初のメロディー」だったそうです。「斜陽」は、「ふんわりとしたなんかいや〜な感じで『ドラマの主題歌になるかもしれないから』って依頼された曲」で、結局その話はいつの間にかなくなった。非常に忙しかった時期ということもあり、どうやってつくったかの記憶が全くないとのこと。「最初のメロディー」は、夜通し起きていて明け方に布団に入ったら、メロディーが浮かんできた。これは、と起きてその他の部分を加えて仕上げたそうです。個人的にはこの曲、TOKYO No.1 SOUL SETの「Jr.」と同じ位置にいます。聴き手にもそれぞれ「自分以外誰にもわからない」受け取り方がある。

そんなリスナーの想像力をどこ迄も広げさせてくれる曲をつくる小林さん、早くも次のアルバムを作っているとのこと、新曲の一部も披露されました。次回のライヴは12月21日とのことです。“次”がある、とわかっているって本当に幸せ。待ってます。

(セットリストはツアー終了後転載予定)

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Setlist(オフィシャルサイトより

Ag:
01. Love(8thアルバム『Mystery』)
02. SPooN(2rdアルバム『Rare』)
03. 青空(2ndアルバム『Rare』)
04. Spider(7thアルバム『Emotion』)
05. ノバラ(ベストアルバム『Golden Best』)
06. パレット(1stアルバム『曖昧な引力』)
07. スクリーム(新曲)
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Pf:
08. モノクローム(5thアルバム『 Shadow』)
09. メッセージ(sg『祈り』カップリング )
10. Midnight Bus(9thアルバム『流れ星Tracks』)
11. 祈り(2ndアルバム『Rare』)
12. 花(ベストアルバム『Goleden Best』)
13. 満月(1stアルバム『曖昧な引力』)
14. 斜陽(3rdアルバム『Music Man』)
15. 最初のメロディー(ベストアルバム『Blue Notes』)
encore
16. Goodtimes & badtimes(新曲)

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・余談。本日は前髪下ろしてました。終演後にゃむさんと(来てるって知らなくて会場でも気付かず帰りの駅で会った)「ほんっと歳とらないよな!」「『歳ヲとること』唄ってるひとがなー!」などと話す(笑)。良い夜でした

・余談2。小林さんには一度でいいから風知空知で唄ってほしかったなあ(あるのかな?)。今はもうない下北沢の、大きな窓から空が綺麗に見えるライヴスペース。観客は振り返らないと見えないけれど、ステージ側は夕闇から夜への変化を眺め乍ら演奏することが出来る。あの光景を見た小林さんが、どんな演奏をするのか知りたかった

・あっでも音倉大好きですよ! グランドピアノあるし配信システムあるし音も照明も綺麗。今の小林さんにぴったりなスペースだと思っています。もはやホームかな?

(20240930追記)
・ライブリクエスト曲 発表!
オフィシャルサイトでリクエストされた曲一覧がアップされました。興味深い! 少数意見もとりあげてくれてましたね。ああこんな曲あった、これもこれもと呟きつつ読む楽しさ